IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~   作:シシカバブP

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第46話 全学年合同タッグマッチ②

 1回戦で見事敗退した俺は、さっさとアリーナの観客席に引っ込んでいた。

 一夏と違ってクラス代表じゃないから、のこのこやって来た俺にクラスメイト達も『おつかれ~』ぐらいの挨拶で済んでいた。

 もしこれが一夏だったら『どうして負けちゃったの~!?』とか『優勝賞品が~!』とか非難轟々だったろう。その辺り、女って怖いよなぁ。(遠い目

 

「えーっと、吾妻君?」

「なんだ?」

「これ、一体どういうこと?」

 

 谷本さんが俺の方を指さす。正確には、俺の膝の上に座ってる鈴と、横にぴったりくっ付いている静寐を。

 

「何よ? なんか文句あんの?」

「いや、そもそも凰さん2組の人じゃ……」

「だから?」

「う~んこの。それに静寐も……」

「ここ、私の新しい指定席」

「ええ~……」

 

 周りの視線を全く気にしない二人に、1組一同(本音を除く)絶句。というか静寐さんや、俺が言うのもあれだけど、アンタ堕ちるの早くない?

 

「ほら怜二、あたしを後ろからギュって抱き締めなさいよぉ」

「鈴、せめて部屋に戻ってから」

「いーや♪」

「oh……」

 

 なんだこの、ツンデレのデレ100%な鈴は。抱き締めねば。(使命感

 

「吾妻君♪」

「静寐」

「当ててるの♪」

 

 

「た、鷹月さんまで吾妻君の手に……」

「この調子だと、卒業までに全員が吾妻君の女に……?」

「それは……」

 

 おいおい、ヒソヒソ話しながらこっち見んな。次の試合が始まるぞ。

 

「次はセシリアと清香のペアか」

「相手は4組の子と、3年生のコンビだね」

「簪とグリ姉か……セシリア達、大丈夫かしら?」

 

 さっきまでのデレ顔から真剣な顔に変わり、アリーナに集中する鈴。

 そういえばグリフィンのISを見るの、今回が初めてだな。むしろ上級生の試合自体、今日が初めてか。

 

「あっ、出て来たよ!」

 

 ISに乗ったセシリアと清香が入場すると、反対側から簪とグリフィンも入って来た。

 グリフィンのIS、手足部分がゴツイな。カラーはシャルのリヴァイヴ・カスタムⅡと同じオレンジか。どんな武装が出て来るのやら。

 

「グリ姉のIS、『テンカラット・ダイヤモンド』って名前らしいわよ」

「あっ、見せて見せてー」

 

 鈴が端末を操作すると、周りがワラワラと集まって来た。

 テンカラット・ダイヤモンドねぇ。腰部の左右に浮いてるリング状のビットにも、ダイヤというか水晶のようなものが付いてるけど。

 

 

 そして試合開始のブザーが鳴ると同時に――

 

「それじゃ、いっくよぉぉぉ!」

 

 グリフィンがさっそく仕掛けるようだ。って、武装無しで清香に肉薄してるんですが?

 

「簪ちゃん、セシリアちゃんの相手はよろしくね!」

「了解です!」

「わわわっ! グリ姉がこっち来たぁ!」

「清香さん、なんとか時間を稼いで下さいませ!」

「無理無理カタツムリ~!」

 

 そう言いながらも、アサルトライフルを乱射する清香。しかしグリフィンは弾幕をものともせず突っ込んで行った。

 

「やっほ~清香ちゃん! お姉ちゃんとサッカーしない?」

「なぜにサッカー!? ISの試合してるはずですよね!?」

「ああ、それはね……」

 

 清香のツッコミにニヤッと笑うと、リング状のビットの中心にエネルギーが集まり始める。瞬く間にでっかいダイヤモンドのような高エネルギー結晶体が出来上がり、

 

「いくよ! ダイヤモンド・シューーーート!!」

 

「エネルギー体を!」

「蹴ったぁぁ!?」

 

 ISの脚部でエネルギー体を正確に捉えると、清香目掛けて思い切り蹴り抜いた。

 エネルギーボールはプリズムのような輝きを放ちながら、轟音とともに清香に迫る。

 

「ひぃぃぃぃぃ!!」

「あっ、ナイス回避」

 

 寸でのところで躱した。清香のすぐ横を抜けて行ったボールは、そのまま後方に飛んでいき――

 

――ドゴォォォォォォンッ!!

 

「ぎゃひぃぃぃぃぃぃ!!」

「なんでぇぇぇぇ!?」

 

「あ」

「あ」

 

 ……レーザーと荷電粒子砲を撃ち合っていた、セシリアと簪のど真ん中に着弾。大爆発を起こして二人を吹き飛ばした。

 しかも不意打ちクリティカルヒットだったようで、元々減っていた両者のSEを容赦なく0にしていた。

 

「ぐ、グリ姉?」

「あ~……」

 

 いかにも『やっちゃった~……』って顔のグリフィン。頬を掻きながら引き攣った顔をしていたが

 

「簪ちゃん、貴女の犠牲は無駄にはしないから!」

「味方ごと吹き飛ばして言うことそれですかぁ!?」

 

 簪のことをコラテラル・ダメージとして処理したようだ。ついでに清香のツッコミも無視した。

 

「ば、爆発オチなんてサイテーですわ……」

「せっかく打鉄弐式のお披露目だったのに……」

 

「さあ、仕切り直していこうか!」

「ええ~……」

 

 二人からの恨みの視線もさらっと流すように、清香に試合続行を急かす。これは酷い。

 

「分かりましたよぉ……それじゃあ、えいっ!」

「へぶっ!?」

 

 あっ、重力爆撃でグリフィンが地面に叩きつけられた。久々に見たな、あの武装。

 

「そ、それが清香ちゃんの武装かぁ……あたた」

「えいっ! えいっ!」

「えちょっ、げふっ! ちょっと待ごはっ!」

「近付けさせません! 近付けさせませんよぉ!」

「それ反則ぎゃんっ!」

 

 清香の腕が振るわれるたびに、グリフィンの胴体が地面に縫い付けられる。完全に封殺する気だこれ。

 

「ぐぬぬ……! けどっ、その武装の弱点は分かった!」

「えっ! あ、あわわっ!」

 

 グリフィンが立ち上がると、さっきまでの直線ではなくジグザグに動き始めた。それに対して清香も腕を振るが、グリフィンの移動からワンテンポ遅れて地面が凹む。

 

「その武装、どうしても発動までの動作が遅いみたいだね。これなら回避は可能だよ! そしてぇ!」

「わ~! 来ないで来ないで~!」

 

 半狂乱になりながら腕を振る清香だが、どんどん二人の距離は縮まっていく。そしてほぼゼロ距離になり

 

「とりゃぁぁぁぁ!!」

 

――ゴンッ!

 

「ぎゃふんっ!!」

 

「「「「ええ~っ!?」」」」

 

 清香蹴られた、蹴られたよ!? ナニソレナニソレ! 『サッカーしようぜ! お前ボールな!』ってやつか!? 酷くね!?。

 ご丁寧に頭を蹴られた清香は吹っ飛ばされ、アリーナの壁に激突した。当然というか、SEは0。仮に残っていても、本人が目を回しているからダメそうだ。

 

『勝者、更識簪、グリフィン・レッドラムペア』

 

 審判もこれ以上は無理だと判断したのか、試合終了のブザーとアナウンスが流れた。

 なんというか、とにかく酷い試合だったな。これなら俺と鈴の試合の方が、まだ試合してた気がする。

 

「やったよ簪ちゃん! 準決勝進出だって!」

「うぅ~……」

「簪ちゃん?」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「ええっ!?」

 

 か、簪泣き出しちゃったんだが……

 

「せっかく打鉄弐式が完成したのに! 『私はお姉ちゃんのおまけじゃない』って証明する機会だったのにぃ!」

「いやあの……ま、まだ次の試合があるし、ね?」

「そんなこと言って、どうせまたフレンドリーファイアして私の出番を吹き飛ばす気なんだ! うわぁぁぁぁぁん!!」

 

 周りの目も気にせずガチ泣きする簪に、観客席の誰も野次を飛ばさない。というか、みんな同情の視線を送っている。

 そんな簪をなんとか宥めようとするグリフィンだが、やらかした本人が何を言おうと逆効果になるだけで。あっ、これはアカンかも。

 

「グリフィンちゃぁぁぁぁん……?」

 

「ひぃぃ! せ、生徒会長……?」

 

 振り向けばほら、なんかマズいオーラを纏った刀奈さんが。グリフィンも思わず怯え声で、名前じゃなく会長呼びになってる。

 

「簪ちゃんを泣かせて、ただで済むと思ってないわよねぇ……?」

「いやその、これは……」

「ちょぉぉっと、お姉さんとお話しましょうかぁ……」

「た、助けてぇぇぇ!!」

 

 ISを解除していたグリフィンは、そのまま刀奈さんにISスーツの襟首を掴まれてピットに引き摺られていった。

 アリーナには満身創痍の清香、未だガチ泣き簪を頑張って慰めようとするセシリアが残されたのだった。……なんだこの地獄。

 

 

――――――

―――

 

 

――ダリルside――

 

(くそっ、どうなってるんだよ……!)

 

 第2試合が終わって、次の試合まで時間がある。だからオレは、未だ無人機の襲撃が無い理由を叔母さんに問い質すべく端末を操作していた。

 本来であれば、第1試合が終わった時点で無人機が学園を襲撃、その混乱に乗じて織斑一夏のISを奪取する計画だったはずだ。それが何の音沙汰もないってどういうことだよ!

 

 そして直通のナンバーを打ち込んだ(もしものために、番号登録していないし履歴も都度消している)ところで、

 

【襲撃は決勝戦の後、閉会式の時に行う。だからバレないように、そのまま試合に出なさい】

 

「……あ?」

 

 オレは何を……

 

(そうだ、叔母さんに襲撃のことを問い質したんだった)

 

 疲れてるんだろうか。一瞬とはいえ、意識が飛んじまうとは。

 それにしても、土壇場で作戦変更は止めて欲しい。いくら臨機応変にとはいえ、閉会式まで襲撃を伸ばすとかヤキモキして仕方ねぇ。

 

「ダリルー、どこにいるっスかー?」

「おっと」

 

(まずい、フォルテに知られるわけにはいかないからな)

 

 今はまだ、フォルテにオレと組織の関係を知られるわけにはいかない。

 だからオレは、携帯端末の()()()()()()。これなら、フォルテが近くにいる時に叔母さんから連絡が来ても大丈夫だ。

 

「ダリル―」

「おーう、ここだここー」

 

 さて、第3試合はまともな内容だといいんだがな。もしダメそうなら、フォルテをイジって遊んでるか。

 

――ダリルside end――

 

 

――スコールside――

 

 無人機襲撃が失敗に終わり、私は頭を抱えていた。

 襲撃失敗自体はある意味想定通りだ。技術班の連中がどう思っていたかは知らないけど、あんな欠陥品がISに勝てるはずもない。

 もちろんISも操縦者は人間、疲弊するまで継続的に物量で押す手もあるでしょうけど、費用対効果が悪すぎる。って、それは今はいいわ。問題なのは――

 

「レインと連絡がつかない……」

 

 襲撃が失敗した時点で、作戦継続は不可能。ならばレインにはそのまま潜伏してもらって、以降の作戦に改めて動いてもらう。

 けれど、作戦中止を伝えようにも、端末からの応答が無い。彼女のISにプライベート・チャネルを繋ごうにも、そちらもなぜか通じない。

 

「まさか、あの子がスパイだってバレた?」

 

 いや、それは無いはず。もし捕まったのなら、ISを取り上げられて反応が無くなっているはず。けれどヘル・ハウンドの反応はまだある。それはつまり、レインがまだISを持っているということ。

 学園側に怪しまれている。けれどまだ特定されたわけじゃないから、足が付かないように潜伏している? それなら辻褄が合うわね。

 

「どちらにせよ、静観するしかない、か」

 

 私が『ゴールデン・ドーン』で襲撃する手もあるけど、それは本当に最後の手段だ。モノクローム・アバターが半壊している以上、私が単独で敵陣に突っ込むことになる。それはあまりにリスキーだ。

 それでも、いつでも動ける準備だけはしておきましょう。

 

――スコールside end――

 

 

――――――

―――

 

 

 第2試合が終わって、第3試合が始まる前に小休憩が入る。

 その間に俺や鈴は、公衆の面前でガン泣きしたことを思い出して顔を真っ赤にしてる簪の頭を撫ぜたり、疲れ切ったセシリアやグリフィンにボコられた清香を労ったり。

 

――♪

 

 と、メール?……束からか。

 

『スパイちゃん、さっそくどこかに連絡しようとしてたよ。れっきゅんの催眠が発動してたっぽいから、亡国機業だっけ? そこに掛けようとしてたんじゃないかな?』

 

「なるほどねぇ」

 

 俺が試合前に掛けた催眠、あれは亡国機業と通信しようとすると発動するようになっていたのだ。そして発動すると、以下のような暗示が掛かる。

 

 【襲撃が無いことを疑問に思わなくなる】

 【スパイであることがバレないよう、亡国機業との連絡手段を断つ】

 

 これでケイシー先輩は、タッグマッチが終わるまで何もアクションを起こさなくなる。あとは――

 

「あとは怜二が(性的に)食べて終了ってわけね」

「……そうなんだけどさぁ」

 

 手籠めにすることに対して抵抗が無くなってきてるけど、そうやって再認識させられるとなぁ。俺って、ホント屑。

 

――♪

 

 おっと、次はなんだ? 真耶さんからだ。

 

『倒した無人機を回収する予定だったんですけど、海上に墜としたせいでみんな海底に沈んじゃったんですぅ! 探すの手伝ってくださいぃぃ!!』

 

 う~んこの。

 

「うっそでしょ……」

「マジだ。鈴、お前も手伝ってくれ」

「うへ~、仕方ないわねぇ」

 

 こうして俺と鈴、そして試合が無いセシリアと清香の4人で真耶さんと合流。ISに乗って海中に潜り、残骸漁りに精を出すのだった。




セシリア&簪不憫。
そして連行されるグリフィン。あれ、刀奈は次の第3試合に出るのでは……?

遅延型催眠発動。
これでダリルは袋のネズミ状態になりました。彼女は一体どうなってしまうのか、それはタッグマッチが終わってからのお楽しみということで。

まーやん、やらかす。
眼鏡キャラはPON。古事記にもそう書かれている。
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