IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
第48話 また面倒な……
――スコールside――
いつでも動ける準備だけはしておく。そう考えて動いていた時には、全てが終わっていた。
襲撃するはずだったIS学園のイベントはつつがなく終わり、最後までレインからの応答は無かった。いや、一度だけ向こうから文章による連絡はあった。
『レイン・ミューゼルは、こちらの手に落ちたわよ♪」
それが送られて来た時、私は理解した。襲撃が予期されていたこともそうだけど、レインのことも敵方にはバレていたということが。
そう、全て筒抜けだったのだ。
『それはあり得ません。この通信の暗号強度は、そちらが保証しているものでしょう?』
「貴女から漏れたわけでは無い、と?」
『当たり前です。貴女方と違って、私は優秀ですから』
こちらを小馬鹿にしたような口調が腹立たしい。
しかし、それでも貴重な"学園の内通者"だ。今ここで感情的になって斬り捨てるわけにもいかない。レインを失った今となっては余計に。
「それで、捕縛されたエージェントの行方は?」
『全く。我々教師陣にも警備主任である千冬様から情報が回って来ませんし、IS委員会に引き渡された様子もありません』
「そうなると、学園に抑留されている?」
『そうなんじゃないですか? 確かこの学園には地下区画がありますから』
地下区画……確かにそこなら、人目に付かずにオータム達を監禁出来るでしょうね。
「その地下の情報は?」
『ありませんよ。総責任者である学園長を除けば、千冬様と山田真耶ぐらいしか知らないでしょう』
「山田真耶?」
『千冬様の子飼いのペットです。まったく……千冬様もなんであんな女を飼われているのかしら……!』
この女、よほど
しかしくだらないからこそ、この女――女性権利団体にも顔が利く――を内通者にするのは簡単だった。
なにせ、こう囁くだけなのだから。『男性操縦者の二人を排除するため、我々に協力してほしい』と。この面倒な性格さえ慣れれば、貴重な情報源の出来上がり。
「分かりました。ではまたの定時報告で」
『早くあの男達を始末してちょうだい。千冬様の弟君はともかく、あの小汚い後ろ盾もない牡犬は特に』
そんな身勝手な言い分を言って、通信が切れた。
「地下区画、ね……」
通信機を置き、今後どう動くか、どうやってIS学園の地下区画に侵入するかを考える。
単騎突入……論外。オータムどころかエムすら無力化する存在がいる。無策で突入は出来ない。
無人機……これも論外。技術班は『もう少しで改良型が』とか言ってるけど、それでどうにか出来るとは到底思えない。
内通者に……無理ね。あの女は自分から動くことはしない。自己保身第一の小物。そんな奴に手引きの依頼なんかしたら、即行で裏切るでしょうね。それこそブリュンヒルデへの点数稼ぎのために、情報を売りかねない。
そうなると……
「外部勢力を引き寄せるしかないわね」
とはいえ、こちらは秘密結社だ。しかも攻め込む相手は、国際条約で守られたIS学園。どうやって攻める口実を作るか……
ふと思いついたのが、オータムが乗っていたIS『アラクネ』だった。
あれは元々アメリカから手に入れたもの。そしておそらく、そのISコアも地下区画に保管されていることだろう。
なにせ、ISを強奪されたとなれば国家の恥。そうなると、学園側も鹵獲したISを返却するわけにもいかない。だって"奪われていない機体"を、どう返せばいいって話だもの。
(そうなると、引き寄せる勢力はアメリカ。そうなると、動くであろう組織は……)
私の想像通りなら、あの大国が動かすのは『
アラクネ奪還に動く彼等を囮に、私も学園に侵入してオータム達を救出する。これしか打てる手は無いわ。
やることを決めれば、あとの行動は早かった。
私はテーブルに置いた通信機を取り直すと、国防省に潜伏している内通者に連絡を取った。
――スコールside end――
――――――
―――
「それじゃあ、オータム達がゲロった以上の情報は持ってないのか」
「あ、ああ……。オレは元々、学園に潜伏して情報を送る役だったから……」
「だ、大丈夫っスよね!? 出せる情報が無いからって、ダリルのこと斬り捨てたりしないっスよねぇ!?」
「大丈夫だから落ち着け」
全学年合同タッグマッチも終わり、クラスメイト達からも『上級生相手じゃ無理だよねー』という無難なエール(?)をもらって寮に戻った俺達は、さっそくケイシー先輩とサファイア先輩……もういいや、ダリルとフォルテに尋問を始めた。
ダリルは顔赤くして俯きながらポソポソ喋っていつもとのギャップが激しいし、フォルテはフォルテでダリルのことを擁護しようと必死だ。大変尋問しづらい。
「と、ところで、オレ達はこれからどうなるんだ?」
「どうって?」
「いや、このまま吾妻と一緒に……」
「あ、そういうのいいから」
「「は?」」
ダリルもフォルテも目が点になるが、無理に俺に抱かれる必要とか無いから。
「なんでだよ!? お前のハーレムに入るのが条件だろ!?」
「そうっスよ! はっ! や、やっぱりダリルと私を切り捨てる気なんスね!? うわぁぁぁぁ!」
「ちげぇよ! というか俺からそういうの無しって言質取った時点で喜べよお前ら!」
「いやぁれっきゅん、モテモテだね~☆」
「煽んじゃねぇ!」
見ろよこの部屋の空気。ニヤニヤ笑ってる束以外、みんな呆れた顔してるだろ。
「怜二……どうしてケイシーとサファイアを除け者にする?」
「えっ、ちょっと千冬さん?」
「そうですよ。せっかく怜二君と一緒がいいって言ってるんですから」
「真耶さん!?」
「ダーリン、それ以上は野暮ってものよ♪」
「ナタルさぁん!?」
俺か!? 俺がおかしいのか!?
いや、そんなはずはない! だってこの二人、デキてるんだろ? ならそこに俺が挟まるのは絶対ダメだろ!
「まあ、ダリルんとフォルちーがれっきゅんと一緒のベッドで寝るかどうかは後で決めるとして」
「後はないからな? 二人は元の部屋に戻るんだからな?」
「まーた面倒事が増えそうだってこと。はい、ちーちゃん」
ベッドでうつ伏せになっていた束が、ぽーんと千冬さんの方に記憶媒体のカードを投げる。千冬さんもそれを空中でキャッチすると、持っていた端末に差し込んで中身を確認し始めた。
端末から流れる女性の話し声。その内の片方に聞き覚えがあるのか、教師陣が各々反応する。
「ほぉ、そういうことだったか」
「あの先輩、そういうことって……ええっ!?」
「あら、この声って2年の学年主任じゃないの」
しかも話の内容的に、どうやらもう片方は今回の襲撃を計画したやつらしい。
すっとダリルの方を見れば、俺の視線に気付いて頷く。
「ああ……スコール・ミューゼル、叔母さんの声だ」
「確か、亡国機業の……」
「その女と話してるってことは……その学年主任の先生は内通者ってこと!?」
「その先生、悪い意味で有名だったわねぇ。女性権利団体にも顔が利くから、なかなか手が出せずにいたのだけど」
みんなが驚く中、刀奈さんと虚さんが険しい顔をしていた。いや、すぐにニヤッと笑い出した。
「ですがこの証拠があれば、彼女を処分することが出来ます。さっそく学園長に報告しましょう。織斑先生も束さんもよろしいですか?」
「別にいいよ~☆」
「ああ、私から報告しておこう」
「お願いします」
こうしてさらっと、学園内のスパイは駆除されることが決定した。
「ですが先生、ダリル先輩のように泳がさなくてもよろしいんですの?」
「あ、やっぱオレ泳がされてたのか……」
「湯田先生とケイシーとでは、漏出したであろう情報量が桁違いだ。これ以上の情報漏洩を防ぐためにも、今回は早めに処分したい」
その裏切り者の先生、湯田って苗字なのか。……めっちゃ裏切りそう。(偏見
「さて、束が言った通り、ここでさらに面倒事が増えた」
「さっきの会話にあった地下区画の件ですか」
「そうだ」
「うぅ~……やっぱり私、あんな風に思われてたんですね~……」
「真耶、後で怜二に慰めてもらえ」
「そうします」
千冬さんに言われ、一瞬でスンッとなる真耶さん。いやあの……はい、頭撫ぜてあげますね。
「そもそも、地下区画なんてあったんだね。知らなかったよ」
「私は知っていたぞ。しかし立ち入り禁止区域だったのもあって、そのままスルーしていたが」
「そうなのか?」
「うんっ! ラウラ、ちゃんとルール守ってたよ! にぃに、褒めてぇ!」
「お、おう……」
あっという間にラウラの覚醒モードが……そして真耶さん、そんな羨ましそうに見ない。後でちゃんと同じように頭撫ぜますから。
「束、他に情報は無いのか?」
「他に? そうだねぇ……あっ、これなんかどう?」
そう言って束が『ポチッとな』すると、壁の一部がせり上がると回転し、でかいディスプレイが姿を現した。いやこれ、空中投影のやつじゃダメだったのか?
そんな感想はお構いなしに、中央の四角から大量の線が伸びて、別の四角と繋がっている図が表示された。なんかER図(モノ同士の関係性を表した図)みたいだな。
「この中央の四角が、さっき話に出てた女、え~っと……」
「スコール・ミューゼル?」
「そうそう♪ その女で、裏切り者がこいつ」
『squall』と『Yuda』の四角が拡大される。ということは、この線全部スコールと繋がってる連中ってことか。
「これはまた……って、こいつアタシのクラスの奴じゃない!」
「うわぁ、3年生にも内通者がいたんだぁ」
乱とグリフィンの発言に、俺を含む全員が苦い顔になる。湯田先生以外にもこんなにいるんかい! どうなってんだよIS学園!
「そうは言ってもねぇ」
「はいぃ。しかもこの子達は、女性権利団体からの後押しがあった子ばかりですし……」
「もしかして、女性権利団体と亡国機業ってグル?」
「どちらかと言えば、お互い利用し合う仲ということだろう」
千冬さんがため息を付くと、それにつられてみんな同じようにため息を付いた。束だけだな、ずっとニヤニヤ顔なのは。
「湯田先生と違って、こいつらは"まだ"処分するための証拠が無い。しばらくは泳がせるしかないな。更識」
「ウチの手の者に当たらせます」
「頼んだ」
「それで、このスコール何某がさっきまで連絡を取っていたのがここ」
一度画面が元のサイズに変わり、別の四角が拡大される。
「こいつがなんだと?」
「この相手先の所属、どこだと思う?」
「どこなんだ?」
「ペンタゴン」
「何っ!?」
ペンタゴン……えっ、アメリカ国防総省?
「まさか、アメリカ軍が攻めてくるんですの!?」
「それはないでしょ。ない、わよね?」
「それは無いだろう。だけど……」
なんだよダリル。そこで言葉を切られると気になるんだが。
「ここでオータムが捕縛されたってことは、奴のISもここにあるんだろ?」
ダリルが千冬さんの方を見ると、千冬さんは当然と言わんばかりに頷く。
「どこの国も、ISをテロリストに奪われたと公表出来ないからな。おかげで返却出来ずに学園の秘密区画に……そういうことか」
「ああ。ペンタゴンとしては、是が非でも奪還したいだろうよ。けど通常の部隊は出せない、もし出すなら……『アンネイムド』だろうよ」
「ちっ」
「舌打ちまでしたところ申し訳ないんですけど……アンネイムドって何ですか?」
挙手しながら恐る恐る質問するシャルに、他の面子も頷く。俺も説明プリーズ。
「非公式作戦専門の秘匿部隊だ。そいつらがISコアを奪いに襲撃してくるんじゃないかって話さ」
「ダリル、よくそんなの知ってたっスね」
「オレも一応、アメリカの代表候補生だからな。そういう裏話を聞く機会もあるんだよ」
そんな連中が学園を襲撃してくる、そりゃ千冬さんも舌打ちしたくなるか。下手に倒して表に出したら、アメリカとの関係が拗れそうだぞこれ。
「だからこちらも秘密裏に捕縛した上で、学園上層部がアメリカと適当に手打ちにしてお帰り願うしかないだろう。まったく、面倒な……」
「ですが、そんなことをして亡国機業側にどんなメリットが……」
「おそらく、オータム達の救出じゃないか?」
「救出かぁ……確かに、
途中で言葉を濁して、別の方を見る。そこには――
「みんな、難しいこと話してるわねぇ」
「わふぅ❤」
「オータムちゃんってば、そんなに
「きゃふっ、んにゅぅぅぅ❤」
「救出とか余計! 私はお兄と一緒なの!」
蓮さんの忠実なペットと化したオータムと、頬を膨らませるマドカがいた。これをどうやって連れ帰るのかと。
「これを知ったオレからしたら、完全に叔母さんの空回りなんだよなぁ。というか、よくオータムの調教なんて出来たな」
「束と蓮さんの手腕だ」
「こわっ ……でも、お前になら、ちょ、調教されても……///」
「ダリル、乙女な声が漏れてるっスよ」
一難去ってまた一難。何事もなく平穏無事な時期はないものか。
「それと言い忘れていたが、また転校生だ」
「「「「またですかぁ!?」」」」
クロエがいないので、アンネイムドの単独襲撃+スコールという形に持っていくことにしました。
アンネイムドの『隊長』は女ですが、ハーレム入りはしない予定です。
※エロいことしないとは言ってない
そしてまたもや転校生、次は誰が出てくるんでしょうね~?