IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
合同タッグマッチから日を跨ぎ、1年1組の教室はいつも通りのSHRを迎えていた。
いつも通りの……
「今朝はですね……その……転校生を紹介します」
「「「「またですかぁ!?」」」」
うん、『また』なんだ。済まない。って、バーボンハウスじゃねぇんだぞと。
「1学期にデュノアさんとボーデヴィッヒさんが来て、2学期もですか!?」
「3組に凰さんが来たから、これで2人目じゃん。もしかしてまた代表候補生?」
「代表候補生って、そんなポンポン寄こせるものなの?」
ざわつく教室。みんなが言いたいことは良く分かる。俺らも昨日散々ざわついたから。
そんなみんなを、千冬さんが『鎮まれ馬鹿ども!』と出席簿をバンバン叩くことで黙らせる。うーん豪快。
「そ、それでは入ってください」
「失礼する」
そうして教室に入って来たのは、白髪でオレンジ色の目をしたボーイッシュ系女子、古臭い言い方をすれば『宝塚』と言うべきか。
「私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ。是非お見知りおきを」
「ローランディフィルネィさんは、オランダの代表候補生とのことです」
「か、かっこいいかも……」
「ていうか、また代表候補生!?」
「今年は何人候補生が編入してくるのよ!?」
本人と真耶さんの紹介に、またもや教室中がざわめいた。
入学時点で既に在籍していたセシリアと簪を除けば、後は全員編入組だからな。えっと、鈴、シャル、ラウラ、乱……これで5人目か。ホント、どうなってんだよ。
「むむっ!」
真耶さんの隣で教室を見渡していたローランディフィルネィが、突然ツカツカと歩き出して……えっ、箒の前で止まった?
「失礼、名前を聞いてもいいかな?」
「な、何だ突然……篠ノ之箒だが」
「なんと素晴らしい……貴女こそ、私の100人目の恋人になるべき女性だっ!!」
「「「「はいぃぃぃぃぃ!?」」」」
「……は?」
突然の告白でクラスメイト達が絶叫する中、真顔になった箒から飛び出してきた言葉が『は?』だった。
そりゃ、いきなりあんなこと言われたらそう返すだろうよ。俺が箒の立場だったらそうする。
「照れなくてもいい。凛々しくも華麗に咲く気高き華……君に出会えたのは正に運命!」
「……」
「あのぉ、ローランディフィルネィさん? そろそろ自席に着いてくれると嬉しいんですけどぉ……」
「おっと、申し訳ない。運命の出会いについ。それでは箒、また後で私達の間の絆を深めよう」
「カエレ」
最後はもはや睨む元気も無くなったのか、機械的な発音で手をシッシと振って奴さんを追い払った。
「(ねぇ怜二君、今回のハニトラって……)」
「(いや、昨日部屋で見た資料にも書いてあったか……?)」
清香とコソコソ話しながら前を見るが、真耶さんも千冬さんも唖然としていた。あの調子だと、二人も知らなかったんだろう。
「(しかもさっきのセリフが本当なら、すでに99人恋人がいるってことだよね……怜二君の先輩?)」
「(あんな奴の後輩になりたくねぇ……)」
しかしこれはこれで、色々問題になってきたぞ。一夏と箒の仲を裂くって意味じゃ。
――――――
―――
その後は普通に授業が進み、昼休みもいつも通り……
「さあ箒! 私と一緒に――」
「しつこい! 私にその気はないと言っているだろう!」
「照れ隠しも、あまり度が過ぎると魅力が半減してしまうよ。ほら、私の手を取って」
「こんのぉ……! 一夏っ、今日は食堂以外で食べるぞ!」
「ちょちょっ、箒!?」
「ああっ! 私を放って、一体どこに行くんだい!?」
一夏の腕を引っ張ってズンズンと教室を出て行く箒。その後を追っていくローランディフィルネィ。――長いから『私のことはロランと呼んでくれたまえ』とか言ってたしロランでいいな。
「なんかまた、アクの強いのが来たな……」
「すごいね……」
「一夏さん、話に入り込む隙間もありませんでしたわね」
「ですねぇ、そのまま箒さんに連行されてっちゃいましたし」
しかもこれを、休み時間になるごとに繰り返してるっていうな。あれだけ袖にされても諦めないって相当だよ。
「しかしこれは由々しき問題ですわ。ロランさんが一夏さん狙いでないからと安心しておりましたが……」
「今回は箒がピンチか」
「いつもと逆パターンだね」
しかもこれ、本当にガチ恋らしいんだよな。
最初は『
今回の編入生、ロランツィーネ・ローランディフィルネィが、ガチのレズだったなんて……!
「99人の恋人、全員女性だったんだよね……」
「同性愛を否定する気はないが、これはちょっと……」
学内ではあまり表情を変えないラウラですら苦笑い。他の面々がどんな顔になっているかは想像にお任せしよう。
とにかく、今回も束の望む展開から反れないよう、色々手を出さないといけないようだ。
「怜二、あのロランとかいう奴が欲しいか?」
「……正直、いらない」
「だろうな」
なんというか、滅茶苦茶重いのだ。一挙手一投足芝居がかったあの動き、そして部外者が聞いててもしんどい歯の浮くようなセリフ。あれを四六時中とか、なんて罰ゲーム?
あれで99人も恋人(同性)がいるとか、俺には理解しえない世界があるようだ。
「不幸中の幸いなのは、箒が本気で嫌がってるところだな」
「そうですわ。後はロランさんが強硬手段に出なければ」
「そこは大丈夫だと信じたいなぁ」
何はともあれ、寮に戻ったら束と作戦会議を開くとしますか。
――――――
―――
――アンネイムドside――
――アメリカ合衆国、米軍特殊部隊『
米国防総省のデータベースにも存在しない極秘部隊の基地。そのブリーフィングルームで、20人近い軍人が女性士官――他の隊員と同じく名前を持たないため、隊内では『隊長』とだけ呼ばれている――を前に整列していた。
「今回の目的は、IS学園に保管されている『アラクネ』のISコアだ」
「アラクネ……確か、数年前テロリストに強奪された第2世代ISでしたか」
「そうだ。今回はその、強奪されたISコアの回収任務になる」
テロリストに強奪されたISが何故学園に? という疑問はあったが、何故その任務に自分達が選ばれたのかは納得していた。
本来なら、ISがテロリストに奪われた時点でIS委員会に報告しなければならない。しかしアメリカ政府はその事実を隠蔽した。
いや、他の国も同じようなものだろう。どの国だって『我が国はテロリストに最重要機密であるISを奪われました』なんて言いたくはない。国の面子が丸潰れになるからだ。
「故に、我々が秘密裏にISコアを回収する必要がある。元々は我が国の財産だ、ならば返してもらうのが筋だろう?」
隊長が口角を上げるのに合わせて、隊員達もニヤリと笑う。なんてことはない、ただ元の持ち主の下に返ってくるだけだ。その過程で、少々手荒なことになるかもしれないが。
「隊長、我々の目標はコアだけでありますか?」
「焦るなアルファ5。主目的はISコアだが、他にも目標はある」
隊長が空中投影ディスプレイを表示させると、機械の残骸のようなものが映った。
「無人機だそうだ。先日学園の行事中に襲撃してきたのを返り討ちにした残骸らしい」
「ISの無人化……合衆国でも断念した技術が?」
「ああ。残骸とはいえ、解析すれば糸口ぐらいは見つかるだろうというのが上層部の考えだ」
「では、『アラクネ』回収班と無人機の回収班を分けますか?」
「そのつもりだ。工作班が学園内を停電させた後、地下の機密区画に侵入。2班に分かれて内部を捜索、目標を回収して脱出する」
地下のマップが無いのが懸念点だがな、と隊長が珍しくため息を付いた。
マップが無いということは、文字通り地下を探索することになる。しかしその程度の条件、これまでもそうだったと隊員達は気にした様子もない。
「相手はあのIS学園だ、おそらく停電の復旧も迅速に行われるだろう。しかし我々をそうやすやすと捕らえることなど出来ない。だな?」
「「「「イエス、マム!」」」」
一糸乱れぬ敬礼に、隊長は満足気に敬礼を返したのだった。
――アンネイムドside end――
まさかのロラン登場。
あれ? オリ主いらないって言ってるけど、それじゃあ誰が身請けするの?
アンネイムド、準備運動開始。
原作でもぽっと出な連中だったので、本格参戦前にちょろっと掘り下げを。
次回、アンネイムドとスコール襲撃(予定)。