IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
そして気付けば、もう50話ですか。早いもんですねぇ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ! なんなのあの男女はぁぁぁぁぁぁ!」
「ひぃっ!」
「あ~、静寐は束さんの奇行見るのって初めてだもんね~」
「奇行とか言ってやるな。間違っては無いけど」
「そ、そうなんだ……」
ガチレズロランにどう対処するか作戦会議を開くために寮の部屋に戻ってみれば、ベッドの上で頭を抱えながらブリッジをキメる束を目撃したんだから、静寐が怯えるのも無理はない。
「おーい束、一旦こっちの世界に戻って来ーい」
「あっ、れっきゅんおかえり~」
「す、すぐ戻ったね……」
「まあ何と言いますか……静寐さんも早く慣れてくださいな」
「う、うん……」
そうしてぞろぞろといつもの面子が部屋に入り、各々椅子に座って束の方を向く。
「というわけで、またもや1組に専用機持ちが編入してきたわけなんだけど」
「まさか、箒にガチ恋するガチレズだったとはなぁ」
「マジ?」
「うわぁ……」
別クラスで事情を知らない鈴と乱、そして簪がドン引き。別学年の刀奈さんとグリフィンも、どんな顔をしたらいいのか分からず困った表情しか出来ない。
「それで、一夏と箒は?」
「幸い箒がロランを避けているから、寝取られる心配は無い」
「せ、先輩、寝取られって……」
「間違っていないだろう? 一夏の奴も『俺の女に手を出すな!』ぐらい言えればいいんだが」
「それは……一夏には似合わないセリフですね……」
シャルの苦笑に、他の面子も同調して苦笑いをする。千冬さん、俺も一夏にそれは無茶な要求だと思いますよ。
「ねぇれっきゅん、あの男女を」
「ヤダ」
「うわっ、即答!?」
「清香にも聞かれたけど、あの宝塚を抱き込みたいとは思えねぇ」
「タカラヅカ? 清香さん、タカラヅカとは何ですの?」
「えっ!? えっと……『ベルばら』のオスカル?」
「ああ、なるほど。確かにそのような雰囲気でしたわね」
「つ、通じるんだ……」
セシリアだけでなく、他の海外勢も清香の説明で納得したようだ。恐るべし日本漫画。
「え~、でもそうなると、どうやって箒ちゃんから引き離そうかぁ」
「う~ん……」
全員が腕を組んで考え込むが、そうそういい方法なんて思いつくわけが――
「あ、あの」
すっと手を挙げたのは、まさかの静寐だった。
「まず前提条件なんだけど……怜二君って、催眠術が使えるんだよね?」
「お、おう」
「使えるね~。しずりんにあ~んなことしたやつが」
「やめぃ!」
「あ、あう……///」
「静寐、顔真っ赤になってる~。私も、あんな時期があったなぁ……」
「ちょっと清香さん? どうしてそんな過去を懐かしむような顔になるんですか?」
蘭ちゃん、そっとしておいてやってくれ。そして束、お前は後でお仕置きな。
「そ、それでなんだけど……別に怜二君じゃなくても、別の女の子に惚れさせるんじゃ、ダメなのかなって」
「……」
「「「「それだぁ!!」」」」
「ひぅ!?」
「そうよ! 箒と一夏にさえくっ付かなきゃ、別に怜二がテイクアウトする必要なんてないじゃない!」
「これは、盲点でしたね……」
「ええ、まったくよ」
「しずりんすご~い」
「えっ、ええ?」
鈴達だけでなく生徒会の面々にも称賛される静寐。俺が言うのもなんだが、そんな衝撃が走るような案だったか? 代案を出せなかった俺が言うのもなんだけど。
「けどそれって言い方が悪いけど、誰かを生贄にしようってことだよね」
「うむ。しかし現状、怜二を犠牲にするかの二択でしかないからな。私は鷹月の案に賛成だ」
「私も賛成です。お兄様が嫌がるような女性を近付けるべきではないかと」
「おぉっ、くーちゃんが意見するなんて珍しいね」
しかしそうなると、誰をロランの生贄に捧げるかって話なんだが……今までのやつとは別で罪悪感が。
「それに、怜二の催眠術があるとはいえ、ロランの理想と離れ過ぎた相手を選ぶのも問題だな」
「そうですねぇ。同じレ……同性でも問題ない生徒さんにしても、ロランさんの好みとかけ離れていた場合、最悪怜二君の催眠が解けちゃう可能性もありますから」
「マヤが言うことももっともね。ねぇダーリン、そのロランって子、ホウキのどこが好きだって言ってたの?」
教師陣があれこれ懸念点を出したが、確かにその通りだな。それで、あいつはなんて言ってたっけ?
「『凛々しくも華麗に咲く気高き華……君に出会えたのは正に運命!』……確かこんなこと言ってなかったっけか」
「言ってましたわね」
「ず、ずいぶん芝居がかった言い方するんだね……」
「グリ姉、100人目の恋人に立候補してみる?」
「絶対無理」
シャルのキラーパスを、グリフィンがノーキャッチで蹴り飛ばす。いや、そんな真顔で否定せんでも。
とりあえずまとめると、『凛々しくて』『気高い』女子生徒を探せってことなんだよな? そんなやついたかなぁ……。あっ
「いたじゃん」
「え?」
「いや、凛々しくて気高い女子生徒」
正直俺としては、箒よりもこっちの方が条件に合いそうだと思うんだが。束と一緒に、一夏と箒のやりとりを知ってるせいかも。
「それで、その女子生徒って?」
「それはな……」
俺がロランへの宛がい候補(仮)の名前を上げると、同じクラスである面々は『ああ、なるほど』という顔になった。
「本音、そんなに?」
「うん。確かにそれなら、間違いなく食いつくと思うよ~」
「ええ、これはアリですわね」
「確かに、私もそう思います」
「2学期からの蘭がそう言うなら、外見はピッタリってことね」
「ではこの件は、怜二君にお任せするということで」
虚さんが締めくくったところで、今回の作戦会議は終了――
「あっ、それとなんだけどね~」
「ん?」
「アメリカの……アンネイムドだっけ? 今週末襲撃してくるって」
「「「「それを先に言え!!」」」」
ロラン対策よりそっちの方が重要じゃねぇかあぁん!?
「それに便乗してスコールが来るんだろう? しかし私はお兄と離れるつもりは無いからな」
「ああ~! マドカずるい! 私もにぃにとペッタリする~!」
「あ、あの……お兄様……///」
「なんだこれ」
「もうわけわかめっスよ……」
マドカ、ラウラ(覚醒解除)、クロエと次々俺にしがみ付く光景に、ダリルとフォルテが呆れた顔を向けてくる。うあ~、別に重くは無いんだが、まだ残暑だし微妙に暑苦しい。
「ところで叔母さん、スコールが学園に侵入した場合、どう対処する気なんだ? アンネイムドの連中は捕縛したら裏でアメリカ政府と交渉して、引き渡すつもりだってのは前にも聞いたが」
「俺は何にも考えてないな。束は?」
「束さんもどうでもいいかな~。ちーちゃんは?」
「亡国機業はテロリスト扱いだからな。捕縛したところで引き渡し先もないし、IS委員会に引き渡して終わりだろう」
「だよなぁ……」
ダリルとしては、身内を見殺しにするみたいでいい気分じゃないんだろう。どうしたもんか……俺が手籠めにする? それもなぁ……。
「あら、ここで一緒に住んじゃダメなの?」
「へ?」
「お、お母さん!?」
突然声を上げたのは、ここまで一切発言せずオータムの首元と腹を撫ぜていた蓮さんだった。……オータム、完全に飼い猫化してるな。
「そのスコールさん? はオータムちゃんのお仲間なのよね? なら、一緒に過ごさせてあげたらいいんじゃないかしら?」
「えっと、それはつまり……」
「蓮さんがスコールをオータムみたいに躾けると?」
「躾けるだなんて、お世話するだけよ。最近、どうしたら喜んでくれるか分かるようになってきたの。ね? オータムちゃん」
「にゃぁぁん❤」
蓮さんとオータムのやり取りに、その場にいた全員の背筋に寒気が。お、俺はヤバい人妻を寝取ってしまったんじゃないだろうか……?
「よ、よし、それなら侵入者は全員捕縛する方針としよう」
「そ、そうですね」
千冬さんと真耶さんすら壊れた人形のように首をカクカクと振る姿に、誰もツッコミを入れられない。二人が言うように、基本方針はそれでいいからな。
「幸い束が言った襲撃日は、一夏が倉持技研に行っていて留守だからな。余計な面倒が無くていい」
「一夏さん、学園におられないんですの?」
「ああ。倉持技研の連中、定期的に送られてくる運用データだけではどうにもならなくなったようでな。研究所の設備で一夏と白式を直接確認したいそうだ」
「どうやったところで、何も分からないと思うけどね」
「だろうな」
「おいぃ?」
千冬さん、思ってても束に同意しないで。いくら連中が、簪の専用機ほっぽり投げてさえ何の成果も得られなかった愚か者集団だったとしても。(辛辣
――――――
―――
そんなこんなで金曜日。千冬さんが言っていた通り、一夏は公欠で郊外にある倉持技研第2研究所へ出向くことになったと、朝の食堂で本人から話を聞いていた。
「地図データをもらったけど、市街地から外れも外れなんだよなぁ」
「(見せられた端末を見ながら)ホント外れだな。まあ研究所なんて広い敷地が必要だろうし、土地の安い外れになるのは仕方ないんじゃないか?」
「ああ、そうか」
俺の感想に一夏が納得している中、少し離れたところでは今日も箒がロランに絡まれていた。
「倉持技研というところに行くんだって? ならば私も――」
「ええいしつこい! 私と一夏は専用機のデータ収集のために行くんだ! どうしてそこでお前が付いてくることになる!」
「何を言うんだい。恋人を一人にして授業を受けるなんて、私はそんな薄情者じゃ――」
「だから、私はお前の恋人じゃなぁぁぁぁい!!」
「相変わらずだな」
「そうなんだよなぁ……」
「一夏、お前が止めに入らなくていいのか?」
「最初は俺も仲裁というか、ロランに文句を言おうとしたんだがな……向こうが俺のことを完全に無視するもんだから……」
「ああ、『そこに一夏はいない』って頭が処理してるのか。そこまで篠ノ之に盲目だと逆にすげぇな」
「怜二お前、他人事だと思いやがって……」
恨みがましい目でこっちを見てくるところ悪いんだがね、お前が箒しか目に入らないイチャラブファイヤーじゃないせいで、こっちも色々苦労してるんだよ。
そこから少し待つと、どうやら箒はロランとの舌戦を諦めたようだ。伸ばされる手を払うと、一夏の腕を引いて食堂をズンズンと擬音が聞こえそうなほど大股で出て行った。
「最近、この展開ばかりだよねぇ」
「そうですわね。ロランさんもいい加減、諦めるということを学べばよろしいのに」
「あれだけ箒に袖にされてるのに、よく毎日続くもんよねぇ」
テーブル席同士の仕切りからシャル、セシリア、鈴がピョコッと頭を出して来る。そういえば、お前らそこに座ってたな。
視線をズラせば、別のテーブル席に座っていたハーレムの面々もこっちを見ていた。きっと俺達が知らないところで、束も覗き見してるんだろう。で、そこから千冬さん達にも情報共有されると。
「さてと。これで一夏と箒は学園外に出るわけで、今回の襲撃には関わらないってことだな」
「そうなるね。正直、非正規の軍人相手は、一夏や箒には荷が重いと思うよ」
「そうよねぇ。あたし達代表候補生は、その辺も踏まえて訓練とか受けてるけど」
「一夏さんと箒さんはそのような経験はございませんから。最悪、何の策も無く突撃する未来が……」
そこで『う~ん』と頭を押さえる候補生の3人。いや、うん……一夏スマン、否定できそうもねぇ。
「ところで、その何たらって特殊部隊」
「アンネイムドね」
「そうそう、そいつ等が攻めて来るのっていつ頃だっけ?」
「鈴さん、そういうことはきちんと覚えておいてくださいませ。束さんから展開された、襲撃予想時間は――」
一夏と箒が倉持技研第2研究所へ向かうため、学園を出たのが午前7時半。そして海上モノレールで本土側に渡り、電車やバスを乗り継いでいた頃。
午前8時27分。学園内の全ての電力が停止した。