IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
朝飯を食って登校しようとしたら、寮内の照明が全て落ちた。だけでなく、なぜか窓の防御シャッターまで降りてきたという。いや、そもそも防御シャッターって。
そんな突然のことに周りが慌てていると、プライベート・チャネルで千冬さんから呼び出しがかかった。校舎内の地下区画まで来い、途中防火用の隔壁が降りてたら破壊してもいいと。わ、ワイルド~……。
「状況を説明する」
そして今(鈴が隔壁を2,3枚破壊して)地下特別区画にあるオペレーションルームにたどり着くと、束を含めた面々が全員揃ったというな。ロラン? 呼ぶわけねーだろ。
「それにしても、一時的とはいえ学園のシステムを落とすなんて、すごいことするよね~☆」
「まったくだ。おかげで警備網にも穴が空いた。おそらく、アンネイムドはすでに学園内に侵入しているだろう」
「はい。先ほどセンサーに引っ掛かりました」
真耶さんがコンソールで操作しているんだが、ここだけ別電源なんだろうか? と、今では旧時代化している通常のディスプレイに地下区画の簡易マップが表示される。中央に固まってる青い光点が俺達で、3方向に散ってる赤い光点が敵さんってところか。
つくづく、襲撃のことを知っててよかったと思う。これ知らなかったらパニック必死だったよな。
「敵のバランスが悪いですわね。1か所だけ1人ですわ」
「これは……真耶」
「は、はい。……やはり、IS反応があります」
「やはりか」
真耶さんからの返答に、千冬さんだけでなく束以外が難しい顔になる。
この地下区画の通路は狭い。そうなると、遭遇したら正面からの撃ち合いになるわけで、IS持ちが多いこちらの利が活かせない。
「ねーねー、何皆悩んでるの?」
「何って……」
「だってISに乗ってるってことは、そいつ女なんだよ」
「何を分かり切った……そうか!」
束にイライラしていた千冬さんが、突然こっちを見て……え?
「怜二! あのIS操縦者を催眠で堕としてこい!」
「ファッ!?」
いや、もしかしてとは思ってたけど、マジで言いやがったよこの人!?
「なるほど、それは妙案ね」
「怜二の催眠術の力は僕達も知ってるし」
「「「「うんうん!」」」」
「お、お前ら……」
鈴とシャルの言に、専用機持ち全員が頷きやがった。で、俺はIS持ちを担当することになってしまったという。どうしてこうなった……。
「れ、怜二君、ガンバ」
「おう……」
静寐だけだよ、ここで苦笑いしてくれるのは。いやでも、その内染まっていくんだろうなぁ……清香みたいに。
――――――
―――
その後、集団で行動している2つの光点の内、セシリア・鈴・乱・グリフィンのAチームがオペレーション方向に進行している集団を、シャル・ラウラ・清香・刀奈のBチームがISコアの保管庫を目指している集団をそれぞれ迎撃することとなった。簪は防衛戦力としてここに残るそうだ。正直、千冬さんと真耶さんがいるのに落とされるとは思えないが。
「それでは怜二さん、行ってきますわ」
「それじゃあ、また後で」
それぞれのチームが出撃する中、俺は待機したままだ。千冬さん曰く『狭いとはいえ、ISの全力移動に生身が追い付けるわけが無いからな。出来る限り逃げられないところまで追い込んでからお前をぶつけたい』とのこと。
「そうは言っても、すっげー手持無沙汰」
「吾妻君、そこのケーブルこっちまで引っ張って来て」
「えっ、あ、ああ」
前言撤回、簪に指示されてオペレーションルーム内をあっちこっち動き回って忙しい。
簪が真耶さんから又聞きしたらしいんだが、この部屋は学園建設時から非常事態用として設計されていて、当時こそ最新鋭だったものの今じゃ旧式もいいところなんだと。しかも非常用かつ機密区画だから、おいそれとハードの更新も出来ないと。
「それで、いっそのこと私達でやっちゃおうと」
「そういうことだ。頑張ってくれ」
「俺が手伝うのはいいんですけど、千冬さんは?」
「なんだ、お前はか弱い女性に力仕事をさせるつもりか?」
か弱い……あっはい、か弱いですね。だからどこから取り出したか分からん出席簿を亜音速で素振りしないでっ!
「まったく……」
「先輩!」
「どうした真耶」
「AチームとBチームがそれぞれ接敵、交戦状態に入りました!」
「来たか」
大型ディスプレイには、赤い光点と青い光点が通路上で止まっているのが見える。いや、赤い光点が移動してる?
「精鋭部隊であろうと、ISには勝てん。遅滞戦闘をしつつあいつらを撒くつもりだろう」
「お姉ちゃん達を撒けるんでしょうか……?」
「まず無理だろうな。だが接敵してしまった以上、連中に勝ち目はない。ならば確率が低くとも逃げに徹するしかあるまい」
腕を組みながらディスプレイを凝視する千冬さん。そこへさらに真耶さんからの報告が。
「敵IS、Cポイントを通過。予定迎撃地点到達まであと4分」
「怜二、頼んだぞ」
「とうとう出番ですか……」
嫌だなぁ。だってさっき千冬さんが言ってばっかじゃん。『精鋭部隊であろうと、ISには勝てん』って。
「心配するな。お前には亡国機業のエージェントを退けた実績がある」
「うっ……! 確かに実例はありますけど……」
それ持ち出すのはズルいじゃん。あっはい。行きますから、行きますから指をポキポキ鳴らさない! ついでに俺のマイサンに手を伸ばそうとしない!
――――――
―――
で、オペレーションルームを出て、真耶の誘導で指定ポイントまで移動した。そこまではいいんだよ。問題なのは――
――ガガガガガガッ!
「こちらアルファー2、エンゲージ!」
「くそっ! 待ち伏せだと!」
いやいやいや! 待って待って! 聞いてない! なんか銀色のモリゾーみたいな集団とやり合うなんて聞いてないから!
『こちらAチーム! 申し訳ありません、敵集団をロストしました!』
『Bチーム、同じく敵集団を逃がしちゃいました!』
「お前らぁぁぁぁ!」
『えっ、怜二さん? ま、まさか……』
「お前らが逃がした連中、全部こっちに来とるわボケェェェェ!!」
『『ご、ごめんなさぁぁぁぁい!!』』
幸い俺も専用機持ってたからいいものの、紫電の展開がもう少し遅れてたら俺ハチの巣だったぞ!?
……さて、とりあえず状況を整理しよう。敵はモリゾー君、もといアンネイムドとかいうアメリカ軍の精鋭部隊。数は……ISのセンサーが正しければ20人ほど? 今はISのシールドで敵の攻撃は全部防げてるからいいけど、これで敵ISが来たらヤバいなぁ。
「真耶さん、敵ISは?」
『接敵まで、あと1分ほどかと』
通信越しでも、真耶さんが眉間に皺を寄せてそうなのがよく分かる。こいつらガン無視してもいいけど、もし対IS用装備とか持ってたら……よしっ、申し訳ないけどさっさと潰そう!
「というわけで、これでも食らえ!」
――ドドドドドドッ!
「み、ミサイルだとっ!?」
「回避っ! 回避ぃ!」
――ドゴォォォォォォンッ!
束から紫電を渡されて初めて使ったマイクロミサイル――マルチロックオン・システムとやらで、12発全て独立稼動が可能――は、連中の前後でそれぞれ自動的に爆発。爆風をモロに食らった20人は、全員ピクピクと痙攣しながら倒れ込んでいた。
「ふー……、なんとか殺さずに制圧できたな」
『怜二、大丈夫か!?』
「ああ、千冬さん。なんとかなりましたよ」
『そうか……よくやった。Aチーム及びBチーム、怜二が倒した敵を回収しろ』
『了解ですわ』
『了解』
すこーし怒気を含んだ命令に、セシリアとシャルの声が引き攣っていたのは気のせいじゃないだろう。やれやれ、これで一件落着……あれ?
――ドゴォォンッ!
「うぉ!?」
突然の破砕音に驚いていると、いつの間にか目の前にデカい影が……いや、これってもしかして……
「さすがはIS学園と言ったところか。だが――」
「オラッ! 催眠! 」
「あ……」
前口上なんて聞く気はねぇ! ふぅ、この世界に転生して、初めて『催眠種付おじさん』っぽいセリフ吐いたかも。
……色々言いたいことはあると思うよ? 『まともに戦ってねぇじゃん』とか『やっぱ催眠雑過ぎね?』とか。けど、こっちは命懸けなんだから! 普通に束達のおっぱい揉んだりイチャラブするだけの人生にさせてくれよっ!
「……現実逃避終了。それで、お前の名前は?」
「……」
あれ? 名前を聞いても答えない。ホントに催眠かかってる?
「……名前は無い。もはや忘れた」
「マジかい」
"答えない"んじゃなくて、"答えられない"のかよ。だから『アンネイムド』……徹底しすぎじゃね?
その後も色々聞き出してみたものの、束から聞いた以上の情報は出て来なかった。
「昔強奪された『アラクネ』のISコアが学園にあると情報を得て、それを回収するために派遣されたと」
「ああ……」
「本当にそれしか知らないとなると、これ以上催眠状態にしておくのは無駄かな。【今後は織斑千冬の命令に従うこと】、いいな?」
「はい……」
「怜二」
ジャストタイミングで千冬さんがやって来た。それじゃあ、催眠解除!
――パチンッ
「……はっ! 貴様っ!」
「ブリュンヒルデ!? この「暴れるな、馬鹿者」なぁ!?」
意識が戻った操縦者が襲い掛かろうとするが、千冬さんの一言で動きを止める。よしよし、催眠もきちんとかかってるな。
「ふむ、さすが怜二だな。よしお前、まずはそのISから降りろ」
「何を……! ど、どうして!?」
指示通りにISから降りる自分に動揺を隠せないようだ。
「ところで怜二、こいつから情報は聞き出したんだろう?」
「それが、自分の名前すら知らないって」
「正しくアンネイムド、か。よし、お前は今から"カレン"だ」
「な、何を言って……」
「だから、お前の名前だ。名無しのお前に、私が特別に名付けてやろう。喜べ」
「ふざけてるのか!?」
「ふざけてなどいない。まったく……少しは可愛げを見せてみろ」
「ニャンニャンっ❤」
「……」
「……」
この時、確かに場は凍り付いた。
目の前には、両手をグーにして猫のポーズを取るアンネイムドのIS操縦者、もといカレン。……あっ、千冬さんの命令に従って可愛げを見せた結果ですか……。
「うわぁぁぁぁぁ!! 撤回! 撤回する! 今すぐそれをやめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
それから少しして、ようやっと集合したセシリア達は、半狂乱の千冬さんを見て鳩が豆鉄砲を食ったような顔になっていた。
『ちーちゃんの慌てる姿、GETだぜぇ!』
束ー、俺は別に止めないけど、後で千冬さんにバレても自己責任だからなー。
<今日の一夏&箒>
「のわぁ!?」
「ひぃ!?」
「やっぱり未成年のお尻はいいねぇ❤ おっと、自己紹介がまだだったね。私は篝火ヒカルノ、倉持技研第2研究所の所長だよ」
「所長!?」
「この変態がか!? ダメだ一夏、帰ろう! ここは色々危険すぎる!」
「変態とはご挨拶だなぁ。よいしょ」
「あぁぁぁんっ!❤」
「ほほ、箒ぃぃ!?」
次回、スコール潜入。
どう足掻いても、蓮さんのオモチャ確定なんですがね。