IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~   作:シシカバブP

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第56話 だが断る

 タイの代表候補生、ヴィシュヌの爆弾発言があったものの、授業は粛々と進んでいた。というよりは、予鈴が鳴って真耶さんと千冬さんが教室に入ってきてところで有耶無耶になったからだ。誰だって、千冬さんの出席簿アタックを食らうのは一夏だけでいいと思ってるはずだし。

 

 とはいえ、このまま放置して変なところで炎上しても困るからと、昼休みの学食でヴィシュヌと話をすることにした。俺とヴィシュヌが座るテーブルの周りには清香達だけでなく、他の生徒達も興味津々で視線を向けてくる。まあ、窓ガラスが割れるぐらいの騒動だったからな。どっかから話も漏れるか。

 

「端的に聞くぞ。どうして俺のハーレムに入りたいなんて思ったんだ?」

「説明します。とその前に、いくつか前提の話をさせてください」

「ああ、分かった」

 

 俺の直球な問いに、ヴィシュヌはタイの料理なんだろうか、米の上に鶏肉が乗ったものを口にしながら話し始めた。

 

「事の発端は約半年前。女性しか搭乗出来ないはずのISが、男性に反応したことから始まります」

「一夏のことだな。俺もニュースを見たよ」

 

 そうか、あれから半年経つのか。

 

「さらに間を置かず、2人目の男性操縦者が見つかりました。そう、貴方です」

「何の因果かって今でも思うがな。で、俺と一夏はまとめてIS学園へ強制入学することになった」

「国際IS委員会も揉めたと聞いています。日本に男性操縦者を独占されるぐらいなら、IS学園に入れてデータを共有するべきだという声が多かったそうですよ」

「そういう事情もあったのか。というか、ヴィシュヌはなんでそんなこと知ってるんだ?」

「今回の編入に際、貴方と織斑さんには教えていい情報としてタイ政府から教えられました」

 

 う~ん、俺達が学園に入ったのは国際的なパワーバランスの結果ってことか。マッドなサイエンティストから逃れられたから、結果オーライではあったけど。

 

「入学当初、各国の視線は織斑さんに向けられていました。初の男性操縦者であり、モンド・グロッソ優勝者(ブリュンヒルデ)、織斑千冬の弟というネームバリューがありましたから」

「だろうな」

 

 その辺は承知している。というか、今でも各国の視線とやらは一夏一択じゃねえのか? 少なくとも何の後ろ盾もない俺よりは、断然一夏だろう。

 

「また、織斑さんはIS開発者である篠ノ之博士の妹、篠ノ之箒さんと仲が良いことも知られています。となれば、各国が自国の人間を織斑さんの……その、愛人にしようと考えるのも自然なことでした」

「あ~……」

 

 そういう考えもあったか。つまりこれまで代表候補生を送ってきたブラジルや台湾、それとオランダは、一夏と一緒に束との接点も欲してたわけか。確かにそれが出来れば一石二鳥だろう。事前に束にバレてなきゃ。

 

「ん? でもそれなら、どうしてヴィシュヌは一夏でなく俺のところに来たんだ?」

 

 当然タイ政府もそのつもりで、ヴィシュヌを送り込んできたんだろう? そこからなんでハーレム入りになる?

 

「タイ政府も、当初は織斑さんに私を近づけさせようと画策していたそうです。ですが……」

 

 そこで言葉を切ると、ヴィシュヌがチラッと乱の方を見た。

 

「織斑さん狙いで送り込まれたはずの代表候補生達が、なぜか別の男性操縦者と一緒にいるというではないですか。それでタイ政府は再度、情報の洗い直しをしました」

「それで?」

「その結果、吾妻怜二さん、貴方の周囲で説明ができない事象が発生していることが分かったのです」

「説明できない事象? なんだそりゃ」

 

 タイ政府、俺のことUMAかなんかだと思ってね?

 

「初めは7月、臨海学校の2日目に篠ノ之博士が突如現れたことです」

「あったなぁ。って、それは妹にISを渡すためだろ? なら俺じゃなくて一夏案件だろ」

「いいえ。その後博士はハーレムの一員である相川清香さんにも専用機を渡しています」

 

 そこぉ? 清香も『私が原因なのぉ!?』って顔してるし。

 

「次は夏休みの直前ですね。アメリカのISテストパイロットが突如除隊して、IS学園の教師になっていました」

「それは、職業選択の自由ってやつじゃねえのか?」

「軍のISテストパイロットということは、軍機にも触れる機会があるということです。まず除隊というのが簡単ではありませんし、さらにIS学園の教師になるまでの間が短すぎます。何らかの力が働いたというのが妥当でしょう」

 

 す、鋭い……! 確かに束と千冬さんの力が働いた結果です。本当にありがとうございました。

 

「2学期に入ってからも、ブラジルのグリフィン・レッドラム先輩がハーレム入りした途端、彼女が世話をしていた孤児院に多額の寄付が入ったり、乱がハーレム入りしてそれなりに時間が経っていますが、台湾政府から特に何も言われていないそうです」

「お、おう……」

 

 やべぇ、タイ政府優秀すぎる! 日本の議員と官僚は、連中の爪の垢を煎じて飲み干せ。あと倉持技研も。

 

「以上の状況証拠から、タイ政府は織斑さんよりも貴方に接触した方が国益に適うと判断しました」

「で、俺の仲間になりたいと」

「ハーレムに入りたいのです」

 

 ……敢えてハーレムって単語を避けたっていうのに、この褐色おっぱいはぁ!(誉め言葉)

 しかし、ここまで分析されてたとはなぁ……。仕方ない、こうなったら返答は――

 

 

「だが断る」

 

 

「……え?」

 

 ヴィシュヌが目を見開いて驚いてるが、当然のことだろ。

 

 

 この吾妻怜二が最も好きな事のひとつは、自分ならいけると思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ!

 

 

 ……というのは冗談として、そもそも俺がグリフィンや乱を抱き込んだのは、束との取引である『一夏に悪い虫が近づかないようにする』ためなんだから。ヴィシュヌが一夏に近づく気がないなら、取り込む必要もない。とはいえ、

 

「別にお前を拒絶した理由もないからな。お友達からってことで」

 

 そう言うと、俺は話を聞きながら食べ切っていたカレー皿の乗ったトレーを持って、そそくさと退散したのだった。しっかし、ヴィシュヌがそこまでタイ政府の意向に従う理由ってなんだろうな。

 

 

――――――

―――

 

 

――ヴィシュヌside――

 

 こ、断られた……。出国の際、政府高官から『君のような美少女に言い寄られて、断る男などいないだろう』と言われて、それなりに自信はあったのですが……。

 

「はっ! 惚けてはいられない!」

 

 急いで食堂を出て人気のない場所に移動して携帯端末を取り出すと、タイ政府との窓口役になっている方に事の経緯を送信。返事はすぐ通話という形で返ってきました。

 

『ギャギャ、ギャラクシーさん! こ、断られたって本当なんですか!?』

 

 あちらも相当困惑しているのか、どもりながらと確認をしてきました。そんな彼女に申し訳ないのですが……

 

「事実です」

『そんな……あっ』

「どうしました?」

『通信を代わった。ギャラクシー君、事の経緯をもう一度説明してくれ』

 

 通話を代わったのは、私に『断る男などいないだろう』と言っていた政府高官でした。その重々しい声に怯みそうになりましたが、私は先ほどの経緯をもう一度説明しました。すると通話先から、大きな溜め息とともに

 

『事情は分かった。だが、作戦に変更はない』

「このまま、吾妻さんに近づけと?」

『ああ。幸いあちらから『お友達から』と言われたのだろう? であれば、まだチャンスはある。徐々に距離を縮めて懐に潜り込め』

 

 確かに、まだチャンスはあると思います。ですが――

 

「質問をしてもよろしいでしょうか」

『許可する』

「どうしてそこまでして、吾妻さんに接触する国益とはなんですか?」

 

 彼には政府から説明された通り話しましたが、個人的にどのような国益があるのか理解できません。ましてや、一度はNoと言われたわけですし……。

 

『……ギャラクシー君、周囲に人はいるか?』

「いいえ」

『ふぅ……情報部の分析から、レイジ・アヅマは篠ノ之博士と繋がっている可能性がある』

「まさか!?」

 

 篠ノ之博士と繋がっている? 篠ノ之箒さんとお付き合いしている、織斑さんではなく?

 けれどその情報部の分析とやらが事実なら、確かに吾妻さんを優先するのも分かる。しかも各国が織斑さんを狙っている現状、我が国がこのレースで優位に立てる可能性が高いのだから。

 

「教えていただき、ありがとうございました。引き続き、吾妻さんと接触を続けます」

『頼んだぞ』

 

 通話が切れ、私は大きく息を吐いて気合を入れると、次の接触の機会を探るべく教室へ戻ったのだった。

 

 ……昼休みが終わって、乱に『アンタ、自分が食べた食器ぐらい自分で片付けなさいよ!』と怒られた。そういえば食べかけのカオマンガイ、そのままにして出てきてしまいました……。

 

――ヴィシュヌside end――

 

 

――――――

―――

 

 

――束side――

 

「ってことらしいけど、どうするちーちゃん?」

『そのセリフ、そっくりそのまま返してやる。私としては、しばらくは放置でいいと思うがな』

「束さんも賛成かなー」

 

 むふふー、死角に隠れたと思ったんだろうけど、そこは束さんの監視ポイントなのだよ、褐色おっぱいちゃん♪

 それにしてもタイ政府、他の国のお馬鹿さんよりはお利口かな? で、通話したらちーちゃんも束さんと同じ考えみたいだね。

 

『ギャラクシーがハーレム入りしようがしまいが、私は一向に構わん』

「束さんも、あの褐色おっぱいちゃんがいっくん達に近づかないなら、別にどうこうしようとは思わないよ」

『……本音は?』

「私とまーやんに続く、第3のおっぱいキャラが出てきてもいいかもね~☆」

『はぁ……』

 

 何さちーちゃん、溜め息は幸せが逃げるよ?

 あっ、いいこと思いついちゃった♪

 

「そういえばちーちゃん、そっちじゃ運動会するんでしょ?」

『そうだが……何をする気だ?』

「面白いこと~」

 

 今さっき思いついたことを話したら、『その程度なら構わんだろう。むしろ面白いからよし』とちーちゃんからGOサインも出たよ。やったね♪

 

『そろそろ午後の授業だ。切るぞ』

「はいは~い。それじゃあこっちも作業に戻るよ」

『ああ』

 

 さ~て、あの褐色おっぱいちゃんも、れっきゅんのハーレムに引き込んでやるぜい☆

 

 

「オペレーション『赤い悪魔((*M*)ニゲラレンゾォ)』、発動しちゃうよ~♪』

 

 

――束side end――




ヴィシュヌが政府の指示に従っている理由は、後々出てくる予定です。
(まだ考えてないともいう)
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