IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
ヴィシュヌのハーレム入りを拒否した翌日から、1年1組の教室に変な奴が現れるようになった。
「……(じーっ)」
「吾妻君、また来てるんだけど……」
「知りません」
「えっ、でも……」
「知らないったら知らない!」
そこは空気読んで谷本さん! 1年3組の褐色おっぱいが、いつぞやの乱みたいに教室のドアから覗き込むようにこっちを見て来ても、俺には関係ないんだから!
「いや、思い切り怜二君絡みだと思うんだけど……」
「黙らっしゃい!」
「なんでオネエ風!?」
「怜二さんも、ストーカー2回目はきつかったようですわね」
「す、ストーカーって……」
「にぃに、ヴィシュヌに狙われてる?」
「狙われてるねー……」
うわぁぁぁん! なんでこうなるんだよぉ!? 今回は一夏狙いじゃないっていうし、適当な距離感でいいと思ってたのにぃぃ!
「おいギャラクシー、そこで何をしている」
「あのぉ、そろそろHRが始まるんですけどぉ」
「織斑先生に山田先生、お気になさらず。吾妻さんに声をかけるタイミングを計っているだけなので」
「い・い・か・ら、自分の教室に帰れー!」
怒鳴られて渋々撤退していったヴィシュヌに大きな溜め息を吐いて、千冬さんと真耶さんが教室にIN。やめて、俺を睨まないで。
「吾妻、HRが終わったら生徒指導室まで付いてこい」
「ちょっとぉぉ!?」
「怜二、一体何したんだ?」
「いや一夏、今の状況でそれを聞くのか?」
「えっ、何がだよ箒」
「はぁ……」
一夏てめぇ、どんだけすっ呆けなんだよ! 箒ももっと言ってやれ!
チラッと他の連中の方を見るが
「……(ふるふる)」
「……(ごめん怜二)」
「……(私にはどうしようもないかも)」
「……(諦めてれっきゅん~)」
セシリア、シャル、静寐、本音の順に、副音声付きで首を横に振られた。うぼぁ……!
――――――
―――
で、宣告通り本当に生徒指導室まで連行されたわけなんだが。
「先生」
「千冬と呼べ」
「いや、学校で名前呼びはダメでしょ」
「他に誰もいないんだ、千冬と呼べ」
「山田先生も」
「千冬」
「真耶です」
もうやだこの人達。最近色々ネジが外れすぎじゃあーりません? しかも
「どうして束までいるかね~……」
「ちぇる~ん♪」
「おいバカやめろ」
こっちはこっちでマズイところに喧嘩売ろうとするしー! っていうかさっさと本題に入れっての!
「まずは確認なんだが……怜二、ギャラクシーをハーレムに入れるつもりはあるのか?」
「いきなり直球っすね。今のところは無いです」
「あれ、そうなんですか?」
真耶さんが意外そうな顔してるが、今回はマジで考えてない。
「今回は一夏狙いじゃないって明言してるし、無理に取り込む必要もないでしょ」
「きよぴーとしずりんは?」
「2人はお前が嗾けたんだろいい加減にしろ」
まあ、俺の好みが全く入ってないと言えば嘘になるけど。ってそれはいいんだよ。
そもそもこのハーレムだって、当初は一夏の近づく女を遠ざけるのが目的だったはずだ。……臨海学校のナタルさん辺りから、手段と目的がごっちゃになりつつあるが。
それにさぁ……
「わざわざタイ政府の紐付きであるヴィシュヌを取り込む理由、ある?」
「ああ……」
「そうですよねぇ……」
「あっ、やっぱりそこが気になってたんだ」
俺のガチ本音に、3人とも納得顔。それで? 束もいるってことは、その辺も調べたってことなんだよな?
「もちのろん! あの褐色おっぱいちゃんのことを色々調べたんだけど、なかなかに面白いことになってたよ」
「面白いって……」
「束の言う面白いは、大抵一波乱あるんだがな……まあ、その辺りの情報を聞くために、こうやってお前にも引っ張ってきたわけだ」
「俺だけ?」
「他の小娘達がわざわざ知る必要もないだろう」
「俺ならいいのかよ……まあいい、それで?」
「はいはい、それじゃあ説明していくね♪」
そう言って束が(相変わらず胸元から)折りたたまれた紙を取り出して、俺に差し出した。開くと、ヴィシュヌが生まれてからの経歴がずらっと書いてあるようだ。
「ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、タイ中部の生まれ。家族構成は母親のみ。父親とは彼女が物心つく前に死別……ってことになってる」
「なってる?」
おいおい、この紙にはそんな風には書いて……もしかして
「れっきゅんの想像通りだよ。おっぱいちゃんの父親はまだ生きてるんだよ。その辺はあとで説明するね」
初っ端から重てぇ話題をぶっこんどいて、束はさらっと次の説明に入る。
「小学生の時に量産型ISに試乗したことがきっかけで、タイのIS特別訓練校に転入。その後タイの代表候補生となり、政府高官の指示でIS学園に編入。ここら辺は、ちーちゃん達も知ってる内容だね」
「ああ」
「はい、編入時の履歴書で確認しています」
「つまり、その訓練校に入ってからずっとIS漬けってことか」
「あ、IS漬けって……漬物じゃないんですよ怜二君」
いや真耶さんこそ、どうしたらそんなボケに? まあいいや、それより気になってることがある。
「ヴィシュヌはなんで、学園に来たんだ?」
「はい? それはタイ政府から……」
「いやいやいや。孤児院を人質に取られてたグリフィンや、鈴を追ってきた乱ならともかく、現状ヴィシュヌが俺や一夏に取り入る理由がないじゃないですか。正確には、いくら代表候補生とは言え、こんなことに従う理由が」
一応例外として、一夏でなく箒に目を奪われてた奴もいたがな。
「そう言われてみれば……」
「確かに妙だな。そもそも母親が反対しなかったのか? いや、もしかしたらその地域には未だ男尊女卑な風潮が残ってる可能性も……」
俺の疑問に、真耶さんも千冬さんも首を傾げた。その疑問に答えたのは、やっぱり束だった。
「母親はおっぱいちゃんの日本行きに賛成だったっぽいよ。というか、母親に後押しされて日本行きを決めたみたいだね」
「マジで? 見ず知らずの男に嫁げって言ってるようなもんなのに?」
「なんか、とある政府高官に説明されたみたい。『織斑一夏と吾妻怜二の女になれば、彼女の今後は安泰だ』みたいな」
「……束、まさかとは思うが、その政府高官というのは……」
「ちーちゃん正解! おっぱいちゃんにIS学園行きを指示した男だよ☆」
「そう繋がるのか……」
千冬さんと一緒に、俺も頭を抱えそうだ。つまりギャラクシー親子は、その政府高官の思惑で動かされてるってことかい。
「まあその高官からしたら、もしいっくんかれっきゅんとのパイプが作れたら、それだけで政府内で発言力が増すんだろうし、積極的にもなるよね」
「出世の駒として、ヴィシュヌを送り込んだってことか……」
「なんですかそれ! 許せません……!」
「そんなまーやんが、もっと怒る情報があるんだよね~」
ま、まだあんのかよ……
「後回しにしてた、れっきゅんの疑問にお答えしよう!」
「俺の疑問?」
なんかあったか? あ~っと……
『れっきゅんの想像通りだよ。おっぱいちゃんの父親はまだ生きてるんだよ。その辺はあとで説明するね』
おいおいおいおい待て待て待て待て……!
「束……まさかその政府高官って……!」
「ピンポ~ン! この男、実はおっぱいちゃんの血縁上の父親なのでした~!」
「そう来るか……」
「あ……え……」
その内容に、千冬さんは本気で頭を抱え、真耶さんは束の言ったことが理解できないとばかりに固まっていた。
つまり……実の父親が出世のために、娘を強制的に異国の男の愛人にさせようとしてるってことか。
「なんだそれ……」
それ以外に言葉が思いつかん。なんというか……ただただ胸糞悪ぃ……。
ドラマでよくある展開だし、現実にもある話だっていうのは知ってたけどさぁ……いざ自分が関係者になったら、なぁ?
ここまでの話を聞いて、俺が思ったことはただ一つ。
「聞かなきゃよかった……」
これ知って、今後どんな顔してヴィシュヌと会えばいいんだよ……つーか清香達にも感づかれないようにしろってか? マジで聞かなきゃよかった……。
「れっきゅんのハーレムに入れちゃえばいいよ?」
「どうしたらそういう結論になる!?」
――――――
―――
――another side――
タイ王国の首都バンコクには、首相府や内務省を始めとした中央省庁が集まっている。その中央省庁の一つであるIS省――10年前、ISの登場に伴い新設された――の一室で、男が部下からの報告を受けていた。
「やはりレイジ・アヅマと篠ノ之博士の間に、決定的な繋がりは見つからないか」
「はっ、申し訳ありません。情報部の方でも手は尽くしているようですが……」
「仕方あるまい。これまで各国が
執務室の椅子に座りながら、ヴィシュヌにIS学園行きの指示を出した政府高官――IS省事務次官は葉巻を一吸いすると、トントンと端を指で叩いた。
「それで、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーについては?」
「そちらについても提示報告を受けております。『吾妻怜二と接触を持つため行動中』と」
「ふむ……しかしあまり時間ばかりかけても仕方あるまい」
男としては、さっさと怜二がヴィシュヌの純潔を散らすなりしてくれればと考えていた。そうなれば自国の代表候補生を傷ものにしたと訴え、責任論を振りかざすことが出来るし、彼と繋がっていると思われる篠ノ之博士にも譲歩を迫れるだろう、と。
怜二が予想した通り、彼は実の娘を出世の駒としか考えていなかった。そのために彼女の母親――かつて妻だった女にも、ヴィシュヌのIS学園行きを後押しするように強要したのだ。『もし断れば代表候補生の地位と権利を剥奪、二度と娘は日の下を歩けないだろう』と脅迫紛いのセリフも添えて。
「確かIS学園では、
「はい。再来週に開催すると聞いております」
「ギャラクシーに指示を出せ。『運動会開催中、タイミングを見計らってレイジ・アヅマを連れ出し、"既成事実"を作れ』と」
あちらから手を出さないのであれば、こちらから動けばいい。一度既成事実を作ってしまえば、もう怜二に逃げ場はない。女尊男卑の風潮も相まって、襲った側と襲われた側は簡単に逆転する。
「それはまた……従うでしょうか?」
「従うさ」
部下の懸念を、男はあっさり否定した。
「あの娘のことは、私が一番よく知っている」
(そのために、IS特別訓練校の頃から丹精込めて"従順な駒に仕立て上げた"のだからな……しっかり任務を全うしてくれたまえ、我が娘よ……!)
――another side end――
※ヴィシュヌの父親は完全オリジナルです。
勢い余って、シャルパパ以上の邪悪な存在になりました。
嘘みたいだろ、これで次回運動会やるんだぜ……?