IS ~インフィニット・催眠種付けおじさん~ 作:シシカバブP
第67話 それは断じてデートではない
「ねぇれっきゅん、明日デートしよう!」
ウチの紫兎がトンデモナイことを言い出したのは、修学旅行から戻って半月、2学期の期末テストが返却され『赤点&補習回避』が確定した日の晩だった。ちなみに我が家(我が家……?)のメンバーで一番心配だった清香も何とか赤点を回避して、今は緊張の糸が切れて自分のベッドで倒れ伏してる。
「デートってお前、まだ冬休みまで数日あるんだが?」
「でも、早く行った方がいいと思うんだよね~」
「お前が行きたいんじゃなくて?」
「うん、れっきゅん……というよりは、ちーちゃんやセッシーに得があるデートだね☆」
「は?」
「わたくし、ですの?」
千冬さんもセシリアも首を傾げてるんだが。
「デートと言うより、旅行かな? ちょっとイギリスまで行こう」
「は? イギリス?」
「おい束、何を企んでる?」
「ちーちゃんってばぁ、企むだなんて人聞き悪いな~」
「(そうは言っても、ねぇ)」
「(束さんなら、何か企んででもおかしくないのが……)」
「(や、やっぱりそうなのかなぁ……?)」
「……とのことらしいぞ、束」
「束の信用度なら妥当だな」
「ひどい!」
そんな『どうして!?』みたいな顔すんな。んで、さっそく元の顔に戻るのな。
「それで? なんでイギリスに行く必要があるんだよ」
「それはねぇ……」
どっかから取り出したスイッチをポチッと押すと、いつぞやのディスプレイがまた壁から出てきた。今度はなんだよ……
と、映し出されたのは……宇宙空間、か? しかもそこになんか、逆さまになったでっかい剣のようなものが。
「対IS用高エネルギー収束砲術兵器『エクスカリバー』、イギリスが開発した代物だよ』
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
え、衛星兵器!? そんなもんまであんのか!?
みんな食い入るようにディスプレイを見つめている。セシリアも自国の兵器を知らなかったのか、驚いたように見入っていた。
「これを撃墜しちゃおう!」
「おい待て」
「ん?」
「首傾げんな。イギリスにトンデモ兵器があるのは分かった。それをどうして撃墜するって話になるんだよ」
束お前、一人でイギリス相手に戦争をおっぱじめるつもりか? ……勝てそうなのだけど。
「撃墜する理由? この兵器が亡国機業の制御下にあるから、連中への嫌がらせ」
「「「「「「はぁ!?」」」」」」
さっきとは別の意味で声が上がった。
「どどど、どうして我が英国の開発した兵器の制御が、亡国機業に!?」
「さぁ? 束さんもさっぱり」
「束、お前これをどこで?」
「んー? この前の修学旅行で、いっくんにちょっかい掛けようとしてた連中いたでしょ? そいつらの素性を探ってたら偶然見つけてね。なんか京都を砲撃しようとしてたから強制シャットダウンしてやった☆」
「「おいぃぃぃぃぃぃ!?」」
おまっ、それって先月の話だろ! それ今まで伝えずに放置してたのかよ!? ほら見ろ千冬さんの顔! 青筋立ってるから!
「また使われても困るし、いっそ壊しちゃった方がいいと思うんだよね。これがちーちゃんが得する理由♪」
「たぁぁぁぁばぁぁぁぁねぇぇぇぇ……!」
「あ、あれ? れ、れっきゅ~ん……」
「……(腕をクロスして×印)」
「どうしてもっと早く言わなかったぁぁぁぁぁ!」
――ガシッ、ゴリゴリゴリッ!
「あぶぶぶぶぶぶっ!」
「片手でアイアンクローって、臨海学校でもあったよね~」
「あれ、それよりも威力が上がってる。さっきから骨が軋む音してるし」
「そ、そうなの?」
簪はよく観察してるな。食らってる束もあの時と比べて、あんま余裕がないようだし。
「ぷはぁ! ちーちゃん、束さんのプリティフェイスを粉砕してどうする気なのさぁ」
「うるさい。それで、わざわざ撃墜する必要はあるのか? お前がもう一度ハッキングして、機能停止状態にすればいいだけだろう」
「まぁねぇ、これがただの衛星兵器だっていうならそうするんだけど……」
そこで言葉を切って画面が変わる。
「もう一つの理由は、この動力源になってるISを回収するため、かな」
さっきまで衛星兵器が映っていた画面には、コード類によってよく分からん装置に固定された、少女の姿があった。
「おい束、これは……」
「イギリスも頭おかしいよね~、生体融合型ISを"搭載"するとか」
「つまり、この女の子が……」
驚きで目を見開く刀奈さんの問いに、束があっさりと答える。
「そう。彼女の体内にはISコアが埋め込まれていて、それを動力にしてあれは動いてるんだよ。エクスカリバー、なかなかエグい聖剣だよねぇ?」
「……」
「そうそう、こいつの素性なんだけど、これがまた面白いことが分かったんだよね~」
「……なんだ?」
情報過多でフリーズしてる面々(俺も含む)を代表して、こういうのに慣れっこな千冬さんが先を促す。
「どうも戸籍を抹消されてるみたいでね。英国のあちこちをハッキングしてやっと出てきたんだよ」
「お前はまた……待て、戸籍が抹消? つまりこいつは、アンネイムドのような」
「あ、それは違うよ。特殊任務に就いてたとかじゃなくて、単に被検体だったみたい」
「被検体って……」
「ひどいですね……」
自分も振り回された過去があるからか、ヴィシュヌが心底嫌悪した顔をした。そして周りも頷くことでそれに同意していた。
「エクシア・カリバーン。けど、これも偽名だったよ。こいつの本名は……エクシア・
「……え?」
「セシリア?」
ブランケット姓が束の口から出た途端、セシリアの口から間の抜けたことが漏れた。
「これがセッシーが得する理由だね。君のところのメイドさん、確か名前は……そうそう、チェルシーだ。……チェルシー・
それを聞いて、話が繋がった。この少女は、セシリアのところのメイドさんの関係者ってことか。
「チェ、チェルシーに、そのような親族がいるなんて話は……」
「その辺は本人に聞けばいいんじゃないかな。で、だ。れっきゅん」
「分かった。ただ、まだ授業が」
「いや、その心配はしなくていい」
「千冬さん?」
「テロリストに制御権を握られた衛星兵器があるなんて問題だ。束、すぐに砲撃がされるわけではないんだな?」
「うん。ただ、あの聖剣モドキに直接乗り込まれて遠隔制御をカットされたら、その限りじゃないよ。とはいえ、宇宙空間にあるものだからね。人員を送り込むにしてもまだまだ時間的余裕はあると思うよ」
それを聞いて千冬さんは少し考え込む仕草をしたが、すぐに顔を上げた。
「明日学園上層部に報告する。おそらく私と専用機持ちに対応するよう要請が来るだろうから、公欠扱いでイギリスに飛ぶぞ」
「対応要請って、銀の福音の時みたいにですか?」
「銀の福音?」
「清香……貴様よほど裁判を受けたいらしいな……」
「えっ?……あ゛」
清香、お前ってやつは……臨海学校のあの日、千冬さんから釘刺されてただろ。
『ただし、これらは2カ国の最重要軍事機密だ。決して口外するな。情報漏洩した場合、諸君には裁判と最低2年の監視が付けられる』
「この部屋以外で口外したら、本当に裁判行きだからな。静寐にも教えてやれ」
「っていやいやいや! そんなサラッと話していいんですか!?」
「いいんじゃない? その銀の福音のパイロットである私もいるんだし♪」
「ええっ!? ナターシャ先生が絡んでるって、一体何がどうなってるの!?」
ああもう、軍事機密が駄々漏れだよ……。束がここにいる所為で、機密って何だろう状態だけど。
「というわけで、明日からイギリス旅行にけって~い! みんな、準備しておいてね~♪」
「専用機持ちってことは、また私とお母さんはお留守番かぁ……」
「仕方ないわよ、蘭もそんなに気落ちしないの」
「そうなると、今回は私も留守番ですね」
ちょっと可哀そうだが、今回も五反田母娘は留守番になるな。そんで静寐もか。こればっかりは仕方ない。宇宙空間に行くとなると、ISは必須になるからな。
「それでさ、れっきゅん」
「ん? まだ何かあるのか?」
専用機持ち(清香を除いて全員代表候補生っていう恐ろしい事実)があれこれ旅の準備を始める中、束が俺に耳打ちしてきた。
「(メイドさんの姉妹丼に興味はない?)」
「(おまっ、まさか……)」
「(うん、さっき話した理由はおまけ。本命はこっちなのだ~☆)」
……おかしいだろ。テロリストが持つ兵器を破壊することより、姉妹丼の方が優先度高いって……束に言っても無駄なのか?
「(セッシーの関係者なら、巻き込んでもれっきゅんの罪悪感少ないかな~って。あっ、ちなみに姉のチェルシーって子の顔写真がこれね)」
見せられたのは、さっきのエクシアって子と同じ赤髪をしたメイド服の女性の写真。見た目的に、俺達と同じか少し年上ってところか?
う~ん、まあ、確かに美人ではあるけど……
「(しかも、姉妹で『ご主人様』って言われながら、ご奉仕してもらえるんだよ?)」
「……」
「好きでしょ? そういうシチュも」
「……前に鈴と乱にやってもらったぐらい好き」
「あ(察し)」
察するなよ! むしろ罵倒された方がよかったわ! だって仕方ないじゃん! 鈴は当然として、乱も意外とエロいんだから!(現実逃避&責任転嫁
考えてもみろ? あの二人がお揃いのメイド服を着て『ご主人様❤』って耳元で囁きながら、マイサンに指を絡めて……これ以上はR18に引っ掛かるから無しで。
「と、とにかく、れっきゅんもみんなとのデートの準備しといてね☆」
デート……これは断じてデートじゃないだろ……
<今日の一夏>
「何故だ、一夏!」
「ごめん、箒……」
「謝るな! 謝るぐらいなら、どうして……」
「どうして赤点なんて取ったんだぁぁぁ!」
「俺だって、取りたくて取ったわけじゃ……」
「せっかく冬休みも一夏とイチャラブしようと思っていたのに、三が日以外は補習とかあんまりだぁぁあぁぁぁ!」