坂柳錯乱   作:カミアラエル

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受難の平田

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そして、再試験が始まった。山内春樹は針のむしろの上に座っているかのように落ち着きがない。彼の周りには、彼の行動によって引き起こされたクラスの緊張が漂っている。彼の目は不安でいっぱいで、口元は緊張で引きつっている。

 

「おい、山内。お前、本当に大丈夫か?」後ろの席の生徒、池寛治が心配そうに尋ねる。

 

山内は強がってみせるが、その声には震えが隠せない。「大丈夫だって。俺は…俺は…」

 

しかし、彼の言葉は途中で途切れ、彼は自分の机に突っ伏す。再試験が始まると、彼の足は震え、クラスメイトの顔色を伺うことすらままならない。彼の頭の中は、批判票一位の確実な状況と、その結果としての退学が渦巻いている。

 

出来るだけの手は打った、あちこちで関係を匂わせてAクラスのコネと引き換えに票を貰う約束を取り付けた。だけどあいつら約束守るのか?ただ信じて待つしかない。坂柳との関係も、そうだ。坂柳はあの後、どこからか暴露を聞きつけて、会うなり彼に釘を刺してきた。

 

時間が進むにつれ、山内の発狂は加熱する。彼は突然立ち上がり、クラスメイトに向かって怒鳴り始める。

 

「なんで俺がこんな目に!俺は悪くない!あいつらが悪いんだ!」

 

彼の言葉は怨嗟と自己弁護で満ちており、クラスメイトたちはますます彼を避けるようになる。山内は孤立し、彼の心は絶望で満たされていく。

 

「俺は坂柳に騙されたんだ!俺は被害者なんだよぉ!」山内の声が教室に響き渡る。彼の目には涙が溢れ、絶望と怒りが入り混じった表情を浮かべている。

 

クラスメイトたちは彼の言葉に動揺し、何人かは同情の眼差しを送るが、多くは冷ややかな視線を向ける。山内の行動が原因で起こった問題を、彼らはよく知っている。彼の自業自得とも言える状況に、同情の余地は少ない。

 

教室の後ろの方から、一人の生徒が静かに立ち上がる。「山内くん、貴方が何をしたか、私たちは全部知ってる。貴方が今言ったこと、それが本当に貴方が思ってることなら、貴方は本当に最低よ」堀北の声。

 

山内は言葉を失い、その場に崩れ落ちる。彼の心の中には、後悔と自己嫌悪が渦巻いていた。しかし、もはや取り返しのつかないことを彼は理解していた。彼の高校生活は、ここで終わりを告げようとしていた。しかし、そこで終わる山内ではない。

 

「大体!なんで今回だけ再試験なんかするんだよ!学校もおかしいだろ……こんなのあんまりだろ!」彼は立ち上がり、教室中に怒りをぶちまける。

 

教室は一瞬の静寂に包まれた後、ざわめきが広がる。生徒たちの中には、山内の言葉に同意する者もいれば、彼の言い分を全く受け入れない者もいる。しかし、誰もが山内の状況に対する絶望を感じ取ることができた。

 

「山内、落ち着けよ。」とある生徒が後ろから声をかけるが、山内は聞く耳を持たない。「俺は騙されたんだ!俺は被害者なんだよ!この再試験も、きっと理事長の耳に入ったせいだ……糞っ!俺を苦しめるためだけに嫌がらせかよっ!んぐぁぁぁ!」

 

その時、教室の扉が開き、担任の先生が入ってくる。先生は山内の様子を見て、深いため息をついた。「山内、ここで騒いでも何も解決しない。自分の行動を振り返ってみろ。」

 

山内は先生の言葉に反発しようとするが、言葉が出てこない。彼は自分の席に戻り、うなだれる。彼の心の中には、悔恨と孤独が満ちていた。

 

山内の言葉に続いて、平田洋介が静かに立ち上がり、冷静な声で話し始める。

 

「先生が前回で言っていたように、学校の決定には必ず理由がある。今回の再試験も、何かしらの意図がある。だが、ここで暴れても、状況は何も変わらない。」

 

彼は周囲のクラスメイトに目を向け、続ける。

 

「皆、落ち着いて。ここで感情的になっても、解決にはつながらない。今は冷静に状況を受け止め、一つ一つ対処していくことが大切だ。」

 

平田の言葉には、彼の過去の経験が反映されている。中学時代にいじめの連鎖を断ち切るために暴力を使ったことでクラスを崩壊させた過去があるため、彼は力ではなく、冷静な対話と理解によって問題を解決することの重要性を理解している。だが、この状況では明らかな逆効果だ。

 

生徒たちの中には、平田の態度に疑問を投げかける者もいる。一人の生徒が声を荒げる。

 

「は?平田ぁ?どういうつもりだよ。まだ諦めてなかったのか?」

 

別の生徒が続ける。「どう考えたって山内が退学で決まりだろ!」

 

このような声が教室内に響く中、平田は静かに目を閉じ、深呼吸をする。彼はゆっくりと目を開け、冷静に答える。

 

「確かに、今の状況は山内くんにとって厳しい。でも、最後まで諦めるべきじゃない。俺たちはクラスメイトだ。助け合うべきだろう。」

 

事ここに至っては平田の言葉でも、流石に教室内の雰囲気は変えられない。彼の異常なほどに団結を訴える姿勢に、Cクラス全体で平田を不審に思う空気が流れ始める。

 

平田の冷静な態度に戸惑いを隠せない。感情的になっていた平田を見た彼らは、八方美人の仮面を脱ぎ捨てた平田の本音を聞いている。もう皆は、以前のようには平田の言葉を鵜呑みにできない。一部の生徒は、平田が何かを隠しているのではないかと疑い始める。

 

「平田くん……どうしてそこまで山内くんを庇うの?」ある生徒が尋ねる。

 

平田は深く息を吸い、静かに答える。「ただ、この状況を冷静に考える必要があると思っただけだ。本当に理事長が、私怨だけで今回の再試験を決めたんだろうか?思い返せば、今回の試験がそもそも変だ……成績基準じゃなく、単純な人気投票で必ず誰かが退学する……おかしいと思わないか。きっと、何か抜け道がある筈なんだ」

 

しかし、生徒たちの中には、平田の私情が彼の現在の態度に影響を与えているのではないかと考える者が出始める。クラス全体のためという彼の信条に疑念が生じ、今の苦しい言い分に大きな影響を与えたのではないかと。

 

「平田くん、もしかして、山内くんが好きなんじゃ……」

 

誰かがボソッと呟いた言葉は、静かな教室によく響いた。平田の山内への擁護とも取れる言動に、クラスメイトたちの間には囁きが広がり始める。

 

「おい、平田って……」

 

「でも、平田って軽井沢と付き合ってるだろ?」

 

「いやいや、あれは表向きの話で、本当は山内がタイプなんだって。」

 

「え……?ち、違うッッッ!」

 

この呟きはあっという間にクラス中に広がり、ついには平田本人の耳にも入る。彼は困惑し、自分の行動がどう誤解されたのかを理解したが、すでに状況は手遅れだった。

 

「平田くん、その、私は偏見で物を言うわけではないわ。貴方はこのクラスで影響力のある人物よ。個人的な感情で皆を振り回さないで欲しいの」

 

ついには堀北からも不名誉な諫言を貰った平田。

 

「ねえ……ってことはさ、綾小路くんに批判票入れるって話にも裏で噛んでたんじゃ……?」

 

「知ってて黙認してたってこと……?」

 

「違う!!!そんなわけないだろう!!!僕は綾小路くんを絶対に裏切ったりなんかしない!!!」

 

 (どっちかっていうと、僕は───────っ!綾小路くんが好きなんだぁっ!」

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