転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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イメージは木っ端微塵

「ねぇ、レヴェリア。あの子達の名前を確認したり、『予知夢』を信じるって決めたのはどうして?」

 

 ダフネとカサンドラと別れてから、おもむろにフレイヤが問いかけた。

 

「前世にあった神話で、アポロンと関わっているのがダフネとカサンドラだ」

「詳しく」

 

 フレイヤに促されて、レヴェリアは概要を話す。

 そっくりそのまま同じというわけではないが、似通っている部分が多い。

 そして、レヴェリアが重要視したのはカサンドラの予言だが、フレイヤはやんわりと懸念を示す。

 

「そういうのって信じすぎると良くないんじゃない?」

「良いことも悪いことも予言にこじつけるようになるかもしれないからか?」

 

 レヴェリアの問いかけに、フレイヤは頷いてみせる。

 そんな彼女に対して、レヴェリアはニヤリと笑って告げる。

 

「重要なのは現時点で討伐できる水準にあるかどうか、それが分かるところだ」

「そういう事ね」

 

 黒竜に挑めば全滅するという予知夢をカサンドラが視た、となればまだ討伐できる水準に達していないと判断できる。

 カサンドラがいくら訴えたところで妄言とされるのは目に見えているが、レヴェリアが訴えればそうではない。

 敵を過小評価して挑むより、過大評価して挑んだほうが遥かにマシであった。

 後者ならば笑い話にできるが、前者ならば間違いなく目も当てられない悲惨な結果となる。

 良くて相打ち、悪ければ黒竜にダメージを与えることもできず討伐隊の全滅だ。

 慎重過ぎるくらいでちょうど良かった。

 

「幸いにも、カサンドラは乗り気だった。彼女がダフネの説得を頑張ってくれることを祈るしかない」

 

 そう告げるレヴェリアに、フレイヤはウンウンと頷いてみせた。

 彼女もまたカサンドラの予言には興味があったが為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダフネちゃぁーん……入ろうよぉ……」

 

 ダフネの服の裾を引っ張りながら、カサンドラは情けない声で言った。

 フレイヤとレヴェリアとの一件から既に1ヶ月が経過しているが、彼女はずっとこの調子だ。

 

「アンタ、チョロすぎでしょ……」

「そ、そんな事ないよ」

 

 カサンドラは否定するも目が泳いでいる。

 レヴェリアから面と向かって、カサンドラの予言ならば信じると言われたことが大きく影響しているのは明らかだ。

 アポロンからの接触はあの日以来一切なく、本当に諦めたようであった。 

 

「まあ、選択肢がないわけじゃないけど……」

 

 ダフネも調べられる範囲でフレイヤ・ファミリアについて調べていた。

 オラリオワーストワンだの超武闘派派閥だのと物騒な情報がゴロゴロ出てきたが、後方支援専門――満たす煤者達(アンドフリームニル)と呼ばれている部署があるらしかった。

 入団時に希望すれば満たす煤者達(アンドフリームニル)に回してくれる可能性はある。

 

「じゃ、じゃあ……!」

「面接を受けて、後方支援に回してくれそうなら入団する。ダメなら断る……それでいい?」

 

 カサンドラがモンスターをしばき倒したり、団員達と殺し合いに等しい鍛錬をしている姿がダフネにはどうしてもイメージできなかった。

 それはカサンドラ本人も分かっていた為、彼女はダフネの提案に大きく頷いてみせた。

 

「まあでも、あっさり入団できるとは思えないけどね。要求する能力とか高いだろうし」

「入団テストとかあるのかな……?」

「調べた限りでは確認できなかったけど、あってもおかしくはないよ」

「が、がんばる……!」

 

 ダフネの言葉に、カサンドラは顔を強張らせながらも決意した。

 しかし、彼女達の予想は外れることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でウチとカサンドラが【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】に弟子入りして、しかも馴染んでいるんだろう……?」

 

 ダフネの何気ない呟きは思いの外、談話室に響いた。

 休日の為に出かけている者も多く、いつもなら姦しいこの部屋が静かであったことが原因だ。

 

 

 戦々恐々としながら、面接を受けに来た2人だったが、拍子抜けするほどにあっさりとフレイヤは入団を認めた。

 勿論、2人の希望を――満たす煤者達(アンドフリームニル)への配属――受け入れた上で。

 だが、満たす煤者達(アンドフリームニル)だからといってレヴェリアが鍛えないというわけではなかった。

 ダフネもカサンドラも仰天したが、レヴェリアが連れてきたクロエが彼女達の緊張や不安を良くも悪くも吹き飛ばした。

 

 楽して稼いで悠々自適なぐうたら生活ニャ――そんな事をレヴェリアの前で堂々と宣って、それをレヴェリアは何も咎めなかったのである。

 ダフネとカサンドラの想像していたレヴェリアの弟子というイメージが、木っ端微塵に砕け散ったのは言うまでもない。

 

 そんなこんなで2人はレヴェリアの弟子となった。

 入団当初こそフレイヤ・ファミリアの日常に驚いていたが、今ではフレイヤがエントランスホールで簀巻きにされて吊るされているくらいでは、また何かやらかしたんだな程度にしか思わなくなっていた。

 フレイヤ・ファミリアは外部から恐れられているが、入ってみれば意外とそうでもなかった。

 フレイヤが関わらなければ団員達は基本的にマトモであり、人当たりが良かったり気さくな者も多い。

 

 ダフネの言葉を聞いて、アスフィが問いかける。

 

「実感が沸かない感じですか?」

「そんな感じ。正直、冒険者としての才能があるとは思わなかったし」

 

 恩恵を刻んだ時、ダフネもカサンドラもアポロンに追いかけ回された経験が反映されたのか、スキルや魔法が発現した。

 ダフネは防護魔法、カサンドラは治癒魔法と解毒・解呪魔法という中々にレアなものだ。

 2人共、嬉しいような嬉しくないような微妙な思いを抱いたのは言うまでもなかった。

 

「あと想像していたものとはかなり違うし」

 

 ダフネはクロエを見ながら告げた。

 彼女が言わんとしていることは、アスフィにもよく理解できた。

 

「ニャフ……新作のイカサマトランプがようやくできたニャ。これでレヴェリア様に勝てるニャ……!」

 

 スゴイ不敬なことを言っているが、こういうことで怒りそうなエルフ3人組は生暖かい視線を送るだけだ。

 クロエが毎回負けているのを知っていたが故に。 

 

 私にポーカーで勝ったら10億くれてやる。負けたら……分かっているな?

 

 ここ最近、そんなアホみたいな勝負をクロエはレヴェリアから持ちかけられていた。

 勝負をする場所もカードもクロエに任せる、という破格の条件に彼女は見事に釣られ――ボロ負けしてきた。

 どんなイカサマを仕組んでも、ことごとく見破られた挙げ句に負けたのでぐぅの音も出なかった。

 連戦連敗、カモられている事にクロエは気づいていたが、10億はあまりにも魅力的過ぎた。

 負けても要求されることがそこまでキツイものではなかったのも大きい。

 

「ミャーの耳や尻尾を触られまくるのも、これで終わりニャ!」

 

 クロエの耳とか尻尾とか触らせてくれ、と勝利する度にすげぇいい笑顔で要求してくるレヴェリアである。

 尻尾の付け根付近をトントンされて気持ち良くなって、ちょっとエッチな気分になることもあるが許容範囲であった。

 

「……ま、まあ、そうですね」

 

 目を逸らすアスフィに、ダフネはくすりと笑った。

 

「そういえばダフネ、カサンドラは?」

 

 大抵一緒にいるが今日は珍しく姿が見えない為、フィルヴィスが問いかけた。

 

「オーダーメイドで枕を作ってもらう為に朝から寝具専門店に行ったよ。面白そうだからってヒリュテ姉妹がくっついていった」

 

 問いかけにダフネは肩を竦めて答えるのだった。

 

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