転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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派閥体験初日

「よしっ……!」

 

 レフィーヤは大きな門――の横にある通用門前にて、気合を入れた。

 フレイヤ・ファミリアへの派閥体験(インターン)希望申請書をレオンに提出したところ、1週間程で審査に合格したことを彼より伝えられた。

 ホームへの泊まり込みもレヴェリアが許可した為、今日からフレイヤ・ファミリアのホームにお世話になる。

 なお、レヴェリアは『学区』に寝泊まりしているのではなく、ホームから通っているということが明かされた。

 レベル10としての身体能力を活かせば一瞬で来れるらしく、『学区』がメレン到着時にわざわざ馬車を使ってきたのは生徒達に自身の乗船を明確に示す為のデモンストレーションであったらしい。

 

 フレイヤ・ファミリアに派閥体験(インターン)希望を出したことをアリサ達に伝えたところ、その反応は三者三様であった。

 アリサが一番驚いていたが、同時に納得もしていた。

 もしかしたら黒竜に魔砲をぶっ放すことになるかもね、と冗談めかして言ってきた程だ。

 3人は昨日、ちょっとした会を開いてくれて、いつものようにドタバタしたものの激励してくれた。

 

 友人達の顔や言葉を思い出しながら、いざ行かん、フレイヤ・ファミリアへとレフィーヤが通用門に備え付けてある呼び鈴ボタンを押そうとした時――通用門が開いた。

 まさかの事態に固まるレフィーヤであったが、出てきた人物に更に驚くことになる。

 濡羽色髪に赤緋色の瞳が特徴的なエルフ――フィルヴィス・シャリアだ。

 

「レフィーヤ・ウィリディス……だな?」

「は、はいっ!」

「私はフィルヴィス・シャリアだ。レヴェリア様とフレイヤ様のところへ案内するから、ついてきてくれ」

 

 今日この日の為、フレイヤ・ファミリア所属の団員についてしっかり予習してきたレフィーヤはフィルヴィスのことも勿論知っている。

 昨年レベル6にランクアップした歴戦の冒険者、【純白の戦乙女(ロスヴァイセ)】の二つ名を神々よりつけられている――ということよりも、レフィーヤが気になったことがある。

 

「あのぅ、もしかして私が来るのをずっと待っていてくれましたか?」

 

 おずおずと問いかけたレフィーヤに対して、フィルヴィスは視線を逸らしながら小さく頷いてみせる。

 何となく気恥ずかしい、そんな感じがありありと伝わってきた。

 偶々手近なところにいたフィルヴィスに、レヴェリアがレフィーヤの出迎えを頼んだ。

 エルフらしい生真面目さを発揮した彼女は、遅れることがあってはならないとあらかじめ門の周辺で待機していた――という経緯である。

 

 しかしながら、レフィーヤからすればその気遣いは嬉しいものだ。

 

「ありがとうございます! フィルヴィスさん!」

「いや、構わない……」

 

 満面の笑みでレフィーヤが感謝を伝えれば、フィルヴィスは羞恥心がより高まったのか、頬をうっすらと赤くして、視線を逸らしたままそう返す。

 それから少しの間を置いてクールダウンをした後、フィルヴィスはレフィーヤへ視線を向け、短く告げる。

 

「その、色々とあると思うが……よろしく、レフィーヤ」

「はいっ!」

 

 元気良く笑顔で返事をしながら、何だか上手くやっていけそうだ、とレフィーヤは思った。

 

 

 

 

 

 

「あのぅ、フィルヴィスさん……」

「いつものことだ」

 

 目の前に広がっている光景に対して、おずおずと声を掛けてくるレフィーヤに対してフィルヴィスは澄まし顔でそう返した。

 執務室にやってきて、レヴェリアとフレイヤに挨拶したところまでは良かったのだが――フレイヤが何もしないわけがなかった。

 いつものようにたわけたことを言った彼女に対して、レヴェリアはいつものようにデコピンを食らわしたのである。

 

「そこのたわけはともかくとして」

「ともかくとしないで」

 

 おでこを擦りながら涙目のフレイヤは抗議するが、レヴェリアは気に留めるわけもなく、話を続けていく。

 あまりにも自由奔放過ぎるフレイヤと、それを良しとしているレヴェリアにレフィーヤは困惑やら驚きやらと色んな感情がごちゃまぜになりながらも、どうにか説明を聞いた。

 

 

 

 2人との挨拶と派閥体験(インターン)の説明が終わった後、執務室を出てすぐにレフィーヤはフィルヴィスに尋ねた。

 

「フィルヴィスさん、御二人は本当にいつもあんな感じなんですか……?」

「いつもあんな感じだ。そのうちお前も慣れるぞ」

 

 レフィーヤからの問いに答えたフィルヴィスは更に言葉を続ける。 

 

「これからホームを回って案内がてらあちこちに挨拶をしていく。変な輩もいるが、問題はない」

 

 変な輩とはどんな輩なのか、レフィーヤは気になったがさすがに口には出せなかった。

 しかしながら彼女は意外と早く変な輩に遭遇することになった。

 

 

 

「大いなる魔力を持ちし、白き同胞よ。汝が来訪を歓迎しよう。汝は仮初なれど我等の館に居着くならば共に戦の宴に赴かん」

「えぇ……」

 

 レフィーヤは困惑しながら声を漏らしてしまった。

 フレイヤ・ファミリアのダークエルフの男性といえば、ヘグニである。

 レベル8の戦士として、恐るべき実力を持っている彼は――フィルヴィスとレフィーヤにばったりと出会ってしまった。

 レフィーヤが挨拶をすればクールな表情を浮かべた彼はそんなことを宣った。

 ちょっとよく分からなかった為、レフィーヤからフィルヴィスへ視線が向けられると、こうなることを予想していた彼女は肩を竦めて翻訳する。

 

「つまり、ようこそうちのホームへ。派閥体験(インターン)だけど、うちにいるなら一緒に原野で戦いませんか……という意味だ」

「ええっと、ダークエルフの方言……ですか?」

「レヴェリア様曰く、特定の年代でのみ使われる特殊な言い回しらしい」

「レヴェリア様はやはり博識ですね。そういうものまで知っていらっしゃるとは……」

 

 さすがレヴェリア様だ、と感銘を受けているレフィーヤに対して、ヘグニは胸を張って告げる。

 

「黒き王女、我が言霊を愚弄することなし」

 

 今回の言い回しはレフィーヤにも言わんとしていることが分かった。

 特定の年代でのみ使われる特殊な言い回しということは、話者が少ないことは想像に難くない。

 つまり、ヘグニはその言葉遣いのせいで侮辱された事があるが、レヴェリアはそういうことはしなかった、とレフィーヤは理解した。

 苦労された過去があるんですね、と彼女が思っていると、ヘディンが歩いてきた。

 思わぬ人物の登場にレフィーヤは仰天していると、彼はヘグニに告げた。

 

「ヘグニ、無理して喋るな。変な誤解を与えてはかなわん」

「うぅ……ヘディン……」

 

 さっきほどまでとは打って変わって、何やら気弱な雰囲気を漂わせ始めたヘグニ。

 まさかと思ったレフィーヤは、じーっと彼を見つめると――

 

「うぅ……そ、そんなに見ないでぇ……無理無理無理」

 

 その反応でレフィーヤは全てを察した。

 ヘグニの様子にフィルヴィスは首を左右に振って、ヘディンは軽くため息を吐いた。

 

「挨拶もできましたので、その……」

「感謝!」

 

 レフィーヤが助け舟を出せば、短く礼を言いながらヘグニは足早にその場から去っていった。

 彼を見送った後、レフィーヤが改めてヘディンに挨拶を行えば彼は軽く会釈してみせる。

 

「レヴェリア様が勧誘されたのも頷ける。良い魔力(モノ)を持っているな」

「あ、ありがとうございます!」

「よく励め」

 

 お礼を言って頭を下げるレフィーヤに対して、ヘディンは短く告げて歩いていった。

 その後もフィルヴィスの案内でホームを回って、出会った団員達に挨拶をしていくレフィーヤ。

 ディース姉妹にお茶目なイタズラをされたり、フローメル兄妹の仲が良いやり取りを目撃したりと色々とあった。

 そして、最後に談話室にてアスフィ達に挨拶したのだが――

 

 

「レフィーヤ、私がお姉ちゃんだよ」

「えぇ……?」

 

 各自の挨拶と自己紹介が終わったところで、アイズはそう宣った。

 最近大きくなりつつある胸を張ってみせる彼女に、レフィーヤは困惑した。

 

「レフィーヤ様、アイズ様のコレはいつものことですので気にしないでください」

「リリ、大丈夫。私はあなたの姉でもあるから」

「違いますから。というか、13歳にもなってまだソレを続けるんですか……」

「途中でやめるのも変かなって。フレイヤも最後まで貫き通せば、それは決して間違いなんかじゃないって言ってた」

 

 またあのたわけ女神か、とリリルカだけでなく他の面々も溜息を吐いたり、肩を竦めてしまう。

 若干天然なところがあるアイズに対して、フレイヤは色々と吹き込んで面白がっている為、その軌道修正は随時アスフィ達が行っていた。

 無論、レヴェリアも承知しておりフレイヤに対して随時お仕置きが実行されていた。

 

「ええっと、さすがに姉を名乗られるのはちょっと……で、ですが、先輩なら……」

 

 レフィーヤからの至極当然な言葉に対して、アイズはグッと親指を立ててみせる。

 どうやらそれでもいいらしく、かなりテキトーな感じであった。

 アイズが満足したところで、アスフィが口を開く。

 

「さて、レフィーヤさん……早速ですが、行きますよ」

 

 その何気ない言葉に、レフィーヤは息を呑む。

 フレイヤ・ファミリアといえば超武闘派派閥として有名だ。

 名だたる面々のサポートを受けながら、『学区』の特別(ダンジョン)実習では許可されていない階層へ連れて行かれても何らおかしくはない。

 

 レヴェリアがおらずともヘイズがいる。

 彼女の治癒魔法はレヴェリアよりやや劣るとはいえ、それでも破格のものだ。

 下層どころかいきなり深層でダンジョン篭もり、格上モンスターの大群に治癒魔法を掛けられながら血みどろになって戦い続ける――なんてことも有り得る。

 そういう可能性は予想していたが、いざそうなるとやはり怖さが出てきてしまう。

 そんな彼女の怯えを察したヘイズがじーっと見つめながら問いかける。

 

「もしかして、いきなり50階層まで連れて行ってそこで殺し合いとか思ってません?」

「ち、違うんですか?」

 

 恐る恐る問いかけたレフィーヤに対して、ヘイズはにっこりと笑う。

 

「違いますよー。今からオラリオ巡りです! まずは親睦を深めましょうー!」

 

 ぐっと親指を立ててみせるヘイズに、レフィーヤは呆気にとられてしまった。

 何だか予想していたよりもフレンドリーな感じだ。

 

「支払いは心配しなくていいわ。レヴェリア様より賜っているから」

 

 ヘルンからの言葉に、レフィーヤは更に衝撃を受ける。

 レヴェリアの奢りによるオラリオ巡り、それも名だたる戦乙女達と共に。

 それはレフィーヤによって、良い意味で予想外であった。

 

「レフィーヤ、『学区』のこと聞かせてよ!」

「ティオナ、もうちょっと礼儀正しくしなさい」

「いいじゃん! 妹分みたいなものだし!」

「アンタまでアイズに影響されたの……? 勘弁してよ」

 

 ヒリュテ姉妹のやり取りに、レフィーヤが目を丸くしているとアイシャが尋ねる。

 

「レフィーヤ、アンタの魔法はレヴェリアから聞いているよ。どこまで伸びるか楽しみだねぇ」

 

 アマゾネスらしい彼女に対して、レフィーヤはどう答えていいか分からず愛想笑いで誤魔化す。

 

「レフィーヤ、判断がつかないことはすぐに教えてくださいね」

「『学区』の生徒は戦闘能力が高いと聞いている。楽しみにしているぞ」

「ありがとうございます、アウラさん。えっと、メルーナさん、私自身は至らぬところばかりで……」

 

 アウラとメルーナに答えながら、レフィーヤは内心疑問に思う。

 断頭台のアウラなどと呼ばれている為、おっかないエルフを予想していたのだが、全然そんな気配がない。

 戦闘になると豹変するタイプなのかな、などとレフィーヤが思っているとクロエが胸を張って言う。

 

「レフィーヤ、ビシバシ鍛えてやるからニャ。覚悟しろニャ」

「いや、アンタ絶対やらないでしょ……」

 

 ルノアが即座にツッコミを入れたが、クロエは反論する。

 

「そんなことないニャ。とりあえずカードゲームのイカサマの方法を教えるニャ」

「レフィーヤ、コイツの言うことは聞かなくていいからね」

 

 クロエとルノアに対して、レフィーヤは愛想笑いで誤魔化す。

 そんな彼女に対してフィルヴィスが告げる。 

 

「レフィーヤ、もしもクロエが変なことを言ってきたら私に教えてくれ。対処する」

「あ、フィルヴィスまで酷いニャ! ミャーのことを何だと思っているニャ!」

「クロエ様ですからねぇ……」

 

 リリルカが肯定して頷いたところで、会話が一段落するまで待っていたアスフィが告げる。

 

「そろそろ行きますよ。レフィーヤさん、今日は存分に楽しんでください」

「はいっ!」

 

 アスフィの言葉に対してレフィーヤは満面の笑みを浮かべ、元気良く返事をするのだった。

 

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