転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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染まった者

 

「……相変わらず、やばいっすねぇ」

 

 合宿の大休止中に行われているレヴェリアとアスフィ達の模擬戦を遠目に見ながら、ラウル・ノールドは呑気に呟いた。

 フィンに憧れ、ロキ・ファミリアに入団した彼は【超凡夫(ハイ・ノービス)】という二つ名を神々よりつけられている。

 スキルも魔法も一切なし、熟練度の伸びは【魔力】以外全部均等に伸びていくという、珍しいステイタスをしているのがその二つ名をつけられた理由であった。

 そんな彼であるが、先月レベル5に至っている。

 ゼウスやヘラ、フレイヤと比べれば幾分穏やかなロキ・ファミリアであるが、他派閥からすれば恐ろしく濃密だ。

 フィン達やノアール達に連れ回された結果、この位階に辿り着いていた。

 

「あの子も、すっかり染まっちゃったわね……」

 

 そう告げるのは彼と同じくレベル5のアナキティ・オータム。

 ラウルとほぼ同期であるが、レベル5に至ったのは彼女の方が少し早かった。

 2人の目にはレフィーヤがレヴェリアの斬撃を食らって、長剣を持った利き腕が吹っ飛んでいくのが見えた。

 彼女は顔を若干顰めたものの、動じることなく戦闘行動を継続している。

 もうすっかりフレイヤ・ファミリアに染まってしまった証だ。

 

 2人の脳裏には1年程前、レヴェリアに連れられて彼女が挨拶に来た時のことが蘇ってくる。

 

 レフィーヤ・ウィリディスです!

 フレイヤ・ファミリアで派閥体験(インターン)をさせてもらっています!

 よろしくお願いします!

 

 鯱張りつつも、元気良く挨拶をしてくれた。

 

 待望の後輩系エルフ美少女やんけ!

 しかも妹属性も含んでいる逸材――これはさすレヴェやな!

 

 そんなレフィーヤを見て、ロキが意味の分からないことを言ってぐっと親指を立てていた。

 それだけに飽き足らず、レフィーヤを自派閥に勧誘するという命知らずなことをしていた。

 なお、同席していたリヴェリアによってロキがしばき倒されたのは言うまでもない。

 

「前回の合宿は魔導士だったっすよね。いつの間にか魔法剣士に……」

「本人の希望と周りが勧めたんじゃない? レヴェリア様に憧れてますって言ってたし」

「前々から思ってたっすけど、レヴェリア様だけじゃなくて弟子になる人も全員ヤバイっすよね」

 

 ラウルの言葉にアナキティもまた大きく頷いて、ヤバイ事例を挙げる。 

 

「リリルカとかさ、本人は二つ名に負けているとかよく言っているけど……」

「何も負けてないっすよね……」

 

 現在レベル4に至っているリリルカはレベル1の時にレヴェリア達との修行などがあったものの、単独で派閥を1つ潰している。

 そんなぶっ飛んだ経歴の持ち主は滅多にいない。

 神会にて【槍の戦乙女(フィアナ)】とゼウスが提案し、満場一致で決まったのも無理はないだろう。

 ロキによればゼウスが事前にフレイヤと相談して、その二つ名になるよう神々に根回ししていたらしい。

 

 そうこうしている間にも戦況は動いていく。

 いつものようにレヴェリアの優勢だが、アスフィ達は崩れない。

 柔軟に陣形を組み替えて、レヴェリアを苛烈に攻め立てている。

 

「連携、相変わらず上手いっすね」

「あの戦乙女軍団はフレイヤ・ファミリアの中で一番厄介なのよね」

 

 レヴェリアという『頂天』との戦いが定期的にあることで、四派閥はどこも個人の実力に加えて、連携を重視している。

 四派閥でもっとも連携が巧みであるのはロキ・ファミリアであり、逆に下手であるのはフレイヤ・ファミリアだ。

 無論、四派閥内での比較であって、それ以外の派閥と比べればフレイヤ・ファミリアも連携は巧みである。

 ともあれ、連携力はロキ・ファミリアの強みの一つであるが、フレイヤ・ファミリアであってもアスフィ達――レヴェリアの弟子達は例外だ。

 ディース姉妹やガリバー兄弟も連携はずば抜けているが、彼女等彼等とはまた趣が異なっていた。 

 

 それからも彼女達の戦いを見ながら、ラウルとアナキティはしばらく雑談に興じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 湖の冷たい水を心地良く感じながらレフィーヤは思いっきり伸びをして、身体を解す。

 水着などは持っていない為、彼女も含めて全員が全裸であるが今更気にするような間柄ではなかった。

 

 ダンジョン50階層での数カ月に及ぶ合宿を終え、各派閥や個人参加者達は三々五々帰途についた。

 18階層を素通りして帰還を優先する冒険者が多いが、アスフィ達は小休止をとって水浴びをしていた。

 レフィーヤの合宿参加は今回が二度目だが、魔法剣士へ転向してからは初めてだ。

 得られたものは多く、満足のいくものだった。

 

「……むむむ」

 

 レフィーヤが唸った。

 フレイヤ・ファミリアに来てからというもの発育が良くなったのだが――長年、その環境にいたアスフィ達はスゴイ。

 一番小柄なメルーナも本人曰く、入団当時よりも若干背は伸びて胸も大きくなったらしい。

 派閥体験(インターン)も含めて1年以上が経過し、レフィーヤはすっかり姉弟子達のノリに染まっていた。

 

「ヘルンとアイシャは相変わらずデカいですねー」

 

 いつの間にやら横に来ていたヘイズがのほほんと告げた。

 レフィーヤは水面に浮かぶ彼女の大きな胸へ視線を向けてしまう。

 

「……いや、ヘイズさんもおっきいですよね?」

「ギリギリ爆乳ではないんですよ。アスフィやフィルヴィスと同じくらいです」

 

 そう言いながら自らの胸を下から持ち上げてみせるヘイズ。

 つられてレフィーヤも自分のものを持ち上げてみるが、一回り小さい。

 

「大丈夫ですよ。これから大きくなりますから」

 

 にこにこ笑顔でそう言って、ヘイズは言葉を続ける。

 

「にしても魔法剣士、結構いい感じじゃないですかー」

「いやいや全然ですよ」

 

 ヘイズの言葉に、レフィーヤはそう答える。

 レヴェリア様が魔法剣士だから、自分もやってみたい――そういう思いは昔から心にあった。

 しかしながら、要求されるものが多いことから思うだけに留めていた。

 きっかけとなったのは、アイズからの何気ない一言だ。

 

 レフィーヤも魔法剣士にならない――?

 

 その言葉にヘルンやヘイズをはじめとした魔法剣士組が勧めてきた。

 そして、決め手となったのはアスフィの言葉だ。

 

 試してみて、いけそうだったら続けてみては?

 

 レヴェリアの薫陶をもっとも長く受けているからこそ、興味があったらやってみることの重要性をアスフィはよく理解していた。

 彼女達に後押しされて、レフィーヤはレヴェリアに尋ねてみたところ――ノリノリで協力してくれた。

 アスフィ達も全力でサポートしてくれたおかげで3ヶ月前から始めたにも関わらず、最低限の技や駆け引きはどうにか習得できた。

 合宿でも魔法剣士としての立ち回りを試してみて、予想通りボコボコにされた。

 だが、血と汗を流すことでしか得られないその戦訓こそ、レフィーヤが欲しかったものだ。

 

「レフィーヤ、お前は筋が良いと思う」

 

 2人の会話を聞いて、フィルヴィスがやってきた。

 

「そ、そうですか? 今、ヘイズさんにも似たようなことを言われたんですけど……」

「魔法剣士となって日が浅いのに、あれだけ動けていれば上出来だ」

 

 微笑みながらフィルヴィスが肯定すれば、はにかんだ笑みをレフィーヤが浮かべる。

 その横でヘイズはむーっと頬を膨らませた。

 

「ヘルン! フィルヴィスにレフィーヤを取られましたー!」

 

 離れたところで静かにくつろいでいたヘルンのもとへ、ヘイズは叫びながら突っ込んでいった。

 水中での行動を補助するようなスキルも発展アビリティもないが、高レベル故の圧倒的な身体能力に物を言わせてぐんぐん進んでいく。

 砲弾のような速さと勢いで向かったヘイズだったが、ヘルンは涼しい顔で迎撃。

 手刀でもって水中へ沈めたものの、すぐにヘイズは水面から顔を出した。

 

「酷いじゃないですかー」

「少しは静かにしなさい。あの2人が仲が良いのは前からでしょう?」

「私にも構ってほしいですーもっと仲良くしたいですー」

「私に言わないで」

 

 そんなやり取りを見て、レフィーヤとフィルヴィスは顔を見合わせる。

 

「もっとヘイズさんと親睦を深めてみます」

「ああ、そうしてくれ」

 

 2人がそんなやり取りをしていた時、離れたところではティオネとアイシャが揃って虚空をぼんやりと眺めていた。

 ティオナは元気にアイズと一緒に湖の端から端まで水泳対決をしており、どっちが早くゴールしたかの判定の為にアスフィが審判役をやらされていた。

 

「……早くレヴェリアにぎゅっと抱きしめられて、押し倒されたいわ」

「激しく貪られたいねぇ」

 

 合宿後はとても昂るのだが、お預け状態だ。

 しかも今回、レヴェリアはイシュタルからギルドを通した指名依頼がきているとのことで、合宿が終わるとすぐに地上へ向けて戻っていった。

 内容は本神の口から直接伝えるとのことらしく、短期間で終わらない可能性が高かった。

 その為、地上に戻ってもしばらくお預けとなる可能性は高く、2人揃って暗澹とした気持ちだ。

 

「何の依頼かしら?」

「分からないね」

 

 そう答えてアイシャは肩を竦めてみせる。

 イシュタルがわざわざ指名依頼を出してきたのは只事ではないが、想像がつかなかった。

 

「負けたー!」

「勝ったー!」

 

 その時、ティオナとアイズの声が響く。

 水泳対決は順当にティオナよりもレベルが高いアイズが勝ったのだが、周囲に聞こえたのは2人の声だけではない。

 猫を踏んづけたような叫び声が若干遅れて響き渡る。

 何だ何だ、と誰もが視線を向けて、その原因を理解した。

 

「よし、奢り決定」

「順当にアイズ様に賭けておけばよかったのに……」

「無理だよ、リリ。クロエは堅実な勝ち方じゃ満足できないタイプだから」

「ふへへ……せっかくだから、この前オープンしたレストランとか……どうでしょう?」

 

 水面に力なく浮かぶクロエ。

 その周囲ではルノアがガッツポーズし、リリルカとダフネは呆れ顔、ワクワクした表情のカサンドラ。

 アイズとティオネの水泳対決で賭けをしていた彼女達は、クロエ以外全員がアイズの勝利に賭けていた。

 そんな騒動など知らぬとばかりに、メルーナはレフィーヤを見ながら難しい顔をしていた。

 

「メルーナ、どうかしましたか?」

 

 隣にいるアウラが尋ねれば、メルーナは告げる。

 

「レフィーヤは1年程度であれだけ発育が良くなった。その理由について考えているが、答えが出ない」

「年齢的に考えて、成長期だからでしょう」

 

 アウラも発育的な意味でレフィーヤに追い抜かれた側だが、フレイヤからの助言がきっかけとなり、今はもう気にしていない。

 

「……だが、小さいとこう……な?」

 

 言葉を濁しながらメルーナは己の胸の谷間を指さす。

 彼女が何を言いたいか、アウラの頭には2つの事が浮かんできた。

 エッチな方か、抱きしめられた時に固くて痛いと思わせてしまう方か、その2つだ。

 どちらとも取れるメルーナの言い回しに、アウラは無難に答える。

 

「問題ないでしょう。レヴェリア様は気にされません」

「それはそうなのだが……大は小を兼ねるとも言うし、やっぱり大きい方が……」

 

 言い募るメルーナに対して、アウラはフレイヤから受けた助言をそのまま伝えることにする。

 

「好きな人に揉んでもらうと大きくなる、とフレイヤ様は仰られていました」

「……ふむ。なるほど、さすがはフレイヤ様だ」

 

 下界で一番レヴェリアのことに詳しい専門家であるフレイヤが言うならば間違いはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、レヴェリアはイシュタルに依頼内容を確認すべく、イシュタル・ファミリアのホームを訪れていた。

 だが、イシュタルがすんなり本題に入るわけもなく、まずはベッドの上で一戦交えることとなった。

 合宿でお預けを食らっていたのはイシュタルも同じ。

 合宿直前に指名依頼を出すことで、終了後に自分のところへレヴェリアを来させて誰よりも早く抱く――そういう狙いもあったが、その為だけに依頼を出したわけでもなかった。

 

「レヴェリア、今回の依頼についてだが……」

 

 イシュタルはそう言いながら、レヴェリアの身体に自らの手足を絡め、首筋に舌を這わせる。

 言っていることとやっていることが一致していないが、イシュタルは気にしない。

 無論、レヴェリアとてやられっぱなしではなく、イシュタルの身体を愛撫しながら尋ねる。

 

「何をすればいい?」

「私の護衛をしてほしい」

 

 イシュタルの答えを聞いて、レヴェリアの顔つきが変わった。

 イシュタル・ファミリアにはフリュネを筆頭に実力者が揃っており、四派閥に次ぐ勢力を誇っていると言っても過言ではない。

 そういった面々がいるにも関わらず、わざわざレヴェリアに護衛を依頼するというのは――厄介な予感しかない。

 

 竜の谷を見たいから連れて行け、ダンジョンの80階層に行ってみたいだのと無茶振りが飛んできそうだ、とレヴェリアは身構える。

 しかし、イシュタルの依頼内容は意外なものだった。

 

「懇意にしている商会が今度、奴隷オークションを開催する。都市外でやるから、その護衛だ」

 

 オラリオ内での人身売買などはギルドによって禁止されているが、外でやるのならば問題がない。

 また、奴隷オークションや奴隷市場で購入した奴隷をオラリオへ持ち込むことは禁止されていない。

 とはいえ、大っぴらに奴隷として連れてくるのではなく、そうとは分からないよう従業員や家政婦といった適当な肩書を与えられるのだが。

 

「……大乱闘でも起きるのか?」

 

 レヴェリアはイシュタルに問いかけた。

 奴隷オークションに商会の敵対組織が乗り込んできて、ドッタンバッタン大騒ぎになる情報を掴んだから自分に護衛を依頼するのでは、と予想した。

 レヴェリアからの問いかけに対して、イシュタルは己の思いを直球で伝える。

 

「安心しろ。私がお前を連れているところを見せびらかしたいだけだ」

 

 彼女らしい理由を聞いて、レヴェリアは苦笑してしまう。

 そんな彼女に対して、イシュタルは問いかける。

 

「受けるか?」

「受けよう。ただし、せっかく都市外へ行くのだから……早めに出発しないか?」

 

 レヴェリアからの提案とそこに込められた意味に、イシュタルは妖艶な笑みを浮かべてみせる。

 彼女の答えは勿論決まっていた。

 

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