転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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人の執念

「ふふ、実に良い気持ちだな……」

 

 イシュタルは満面の笑みを浮かべながら、隣に座っているレヴェリアに身体を預ける。

 レヴェリアは常と変わらぬ澄まし顔であるものの、若干やつれているように見えなくもなかった。 

 オークション会場はまるで劇場のようであり、2人は高いところから見下ろせるVIP専用のボックス席に案内された。

 そして、ゆったりとしたソファに揃って腰を下ろし、オークションの始まりを待っていた。

 

 

 オークションが開かれるこの都市に着いたのは、2人がオラリオを出て数時間後。

 馬車ならばそれなりの日数が掛かるのだが、イシュタルがそれを嫌ったのでレヴェリアが抱えて移動することとなった。

 その際、お姫様抱っこをしようとしたレヴェリアだが、意外にもイシュタルはそれを断り、背負われることを望んだ。

 何故だろうか、と疑問に思ったレヴェリアだったが、その答えはすぐに出た。

 

 私の身体はどうだ?

 胸、大きいだろう? 

 たっぷりと気持ち良くしてやるからな――

 

 そんなことを耳元で囁きながら、身体全体をぐいぐい押し当てたり、擦り付けてきた。

 やがて長耳を咥えたり甘噛みしたり吐息を吹きかけたり、あるいは頬を舐めたり口づけしたり、さらにはベッドの上以外では言えないような淫語まで囁いてきた。

 興奮を極限まで高めて、互いに貪り合う――その為のイシュタルによる仕込み。

 だが、やられるレヴェリアにとっては堪らない。

 普段は生やしていないが、イシュタルによる淫語攻撃はレヴェリアの女としての部分にも言及してくる為、下着はすっかり濡れてしまった。

 目的地到着までの数時間はレヴェリアにとって非常に辛いものとなったが我慢した分、欲望を解放した時は至上の快楽となった。

 

 おもむろにイシュタルはレヴェリアの膝へ手を伸ばし、すりすりと擦る。

 そのアピールにレヴェリアはジト目で名を呼ぶ。

 

「イシュタル……」

「安心しろ、ここではしない。互いに声が大きいからな」

 

 そう言ってくつくつと笑うイシュタルに、レヴェリアは視線を逸らした。

 オークションが終わっても、そのままオラリオへ帰るという選択肢がないことは確定していた。

 

「ほら、始まるみたいだぞ。お前にとってはこちらも楽しみなのだろう?」

 

 壇上に競売人が立ち、オークションの開始が告げられる。

 奴隷オークションに参加するからその護衛――というのが依頼内容だが、イシュタルとしては奴隷オークション自体はどうでも良い。

 だが、レヴェリアにとってはそうではない。

 良い奴隷がいたならば購入するだろう、とイシュタルも予想していた。

 

 その事で彼女はフレイヤから頼まれていることがあった。

 今回レヴェリアへの指名依頼を出すにあたって、イシュタルは事前にフレイヤへ話を通している。

 

 私だってアイツと都市外へ行きたい――

 

 そのように本音をぶつけたら、フレイヤはきょとんとした顔になった後、仕方がないわねぇ、とニコニコ笑顔で承諾したという経緯だ。

 そしてその際、レヴェリアが無駄遣いしないよう頼まれていた。

 

 レヴェリアのことだから、女奴隷を買い占めかねないわ――

 

 困り顔のフレイヤを思い出しながら、イシュタルはレヴェリアに告げる。

 

「レヴェリア、お前の滾った欲望は全て搾り尽くす。奴隷なんぞに目は向けさせん」

 

 レヴェリアの獣欲を私が鎮めてしまえば、奴隷に興味を示さないだろう――

 

 美の女神らしい考えに基づくものだ。

 

「待て、イシュタル。ここではしないと言っただろう?」

「言ったな。だから、私は咥える。お前は口を閉じて声を出さない。完璧な理論だ」

「その理論、隙間風が吹いているぞ」

「どうでもいいからさっさと生やせ。咥えさせろ」

 

 そんなことをやっているうちに、最初の奴隷が出てきた。

 2人揃って壇上に視線を向け、レヴェリアはスンとした顔となり、イシュタルはひとまず矛を収めた。

 奴隷は筋骨隆々の男であった。

 競売人による簡単な来歴紹介の後、競りが始まった。

 競売人が値を吊り上げていき、落札したい参加者達が次々と番号札を掲げていく。

 やがて落札されると、次の奴隷が出てきたが――またもや男。

 それからも出てくる奴隷は男ばかりだった。

 

 長耳が垂れ下がり、しょんぼりとした顔になっているレヴェリアに対して、イシュタルはけらけら笑う。

 

「思ってたのと違う……ちゃんと女奴隷もいるんだよな?」

「男限定とは聞いていないからいるだろう」

 

 イシュタルが言った直後、新しい奴隷が壇上に出てきたが――それはレヴェリア待望の女奴隷だった。

 悪くはない顔立ちだが、体つきはよろしくない。 

 だが、レヴェリアの長耳はピンと立ち、目は輝きを取り戻す。

 意気揚々と入札に参加するべく、自分の番号札を探したがどこにも無かった。

 

「探し物はこれか?」

 

 イシュタルは片手に持った番号札を指さしながら、ニヤニヤとした笑みを浮かべて言った。

 男奴隷ばかりでレヴェリアが意気消沈している間に、ソファの後ろに自分の分とレヴェリアのものを隠しておいたのだ。

 

「……イシュタル」

 

 恨めしそうな目でレヴェリアはイシュタルを見つめた。

 今までにない彼女の表情と態度に、イシュタルは興奮してしまう。

 

「番号札を返して欲しければ……這いつくばって足を舐めろ。そうすれば考えてやらんこともない」

「くっ……」

 

 レヴェリアは悔しげな表情となる。

 レベル10としての身体能力を活かせばイシュタルから番号札を奪うことなど容易だが、これはそういうものではない。

 サドっ気全開イシュタルとマゾっ気を刺激されまくっているレヴェリアの性なる戦いである。

 

「だが、私は負けないっ……!」

「くっ、小癪な……!」

 

 そう宣ったレヴェリアは受けに徹するのではなく、積極果敢な攻勢に出た。

 イシュタルを抱き寄せて、そのまま自分の胸に彼女の顔を埋めさせる。

 レヴェリアの胸に抱かれたイシュタルだが、彼女は即座に反撃に出る。

 手を伸ばし、レヴェリアの尻肉を鷲掴みにして、揉みしだく。

 そんな感じで2人が乳繰り合っている間にも、オークションはどんどん進んでいく。

 

「なぁ、イシュタル……あの奴隷は……」

「駄目だ。歓楽街にいるだろ、ああいうタイプ」

「でも……」

「でももだってもない。駄目だ」

 

 途中、壇上の女奴隷をレヴェリアが欲しがっても、イシュタルは切って捨てた。

 そうこうしているうちに、競売人が声をより一層張り上げた。

 

「最後に目玉商品をご紹介します! 極東出身、狐人(ルナール)の少女……サンジョウノ・春姫です!」

 

 ピタリとイシュタルとレヴェリアの動きが同時に止まった。

 極東出身であるというだけでも珍しいが、それに加えて狐人(ルナール)ときた。

 2人揃って壇上に視線を向け、そこに佇む少女を見た。

 金色の長髪、同じ毛並みの狐耳と尻尾を持つ少女は暗い表情をして顔を俯かせているが、それがより儚さを引き立たてせている。

 会場の客達がざわつく中、レヴェリアとイシュタルは互いに顔を見合わせた。

 口火を切ったのはイシュタルだった。

 

「……レヴェリア、ここは私に譲れ。あの子との逢瀬はお前だけ永年無料にしてやるから」

 

 稀少種族かつ極東出身という珍しさ、おまけにその佇まいから醸し出される気品、そして可憐な容姿――べらぼうに値を吊り上げても、客は途切れないとイシュタルは考えた。

 一方のレヴェリアは言うまでもない。

 いい子がいれば購入しようと考えていたが、尽くイシュタルに阻止されてきた。

 最後の最後に出てきたあの子を買わねば絶対後悔するという予感があった。

 故に、レヴェリアの答えは決まっていた。

 

「そのお願いは聞けないな」

 

 彼女が告げた時、競売人が値を吊り上げる為に取って置きの情報を披露する。

 

「彼女は生娘です! さぁさぁ、皆様! 1000万からスタートです!」

 

 開始の合図と共に客達は一斉に番号札を上げて、競売人が500万刻みで値を吊り上げていくが――上がる番号札は一向に減らない。

 

「ならば敵だな。私を舐めるなよ、『頂天』」

 

 口角を釣り上げ、猛禽のような笑みを浮かべたイシュタルに対して、レヴェリアもまた不敵な笑みを浮かべてみせる。

 そして、レヴェリアは挑発的に問いかける。

 

「征くぞ、イシュタル。金貨の貯蔵は十分か?」

「私の財力を見くびるなよ」

 

 瞬間、2人は揃って番号札を掲げた。

 

 

 

 

 

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

 サンジョウノ・春姫は居ても立っても居られず、そう声を掛けてしまった。

 彼女の視線の先には、ソファにぐったりと横たわるイシュタルの姿があった。

 

「私は歓楽街を牛耳っているイシュタル・ファミリアの主神だぞ? いくらレヴェリアが『頂天』だからといっても一個人だ。なんで私よりもカネがあるんだ……まあ、稼ぎが多いのは良いことだ。これくらいのカネをポンと出せるならば、私も安心して一緒に過ごせるというもの……」

 

 ぶつぶつと呟いているイシュタル。

 春姫の声は聞こえていないようだった。

 

「では、レヴェリア様……こちらの金額を受け取りに後日、ホームにお伺い致しますので……」

「ああ、そうしてくれ。ただ、イシュタルがあの状態なので出発には日数が掛かると思うが……構わないか?」

「勿論ですとも。都市を出る際にお声掛け頂ければ構いません」

 

 その横では、オークションの主催である商会の支配人とレヴェリアが春姫の受け渡し及び支払いに関しての手続きを進めていた。

 イシュタルから視線をレヴェリアへ向けてそのやり取りを眺めても、春姫は現実感が無かった。

 

 レヴェリアの様々な逸話は極東にも届いており、まさしく今を生きる英雄と言っても過言ではない。

 色ボケであるということも当然聞いてはいたが、まさかこうなるとは想像すらできなかった。

 

 春姫は自身の落札金額に改めて身震いしてしまう。

 自分の種族が珍しいものであることや先祖代々極東における高貴な家系であることくらいは知っているが、それでも信じられない値段だ。

 もしも父が聞いたならば卒倒するだろう、と彼女は確信する。

 

 落札金額300億ヴァリス――

 

 競り合うのがイシュタルとレヴェリアだけとなったあたりから、値上げ幅が億単位となる至上稀に見るとんでもねぇ事態になった。

 会場の客達がどよめき、競売人を含めて主催側はニッコニコ。

 奴隷の購入に支払うような金額ではないが、イシュタルもレヴェリアも互いに諦めなかった結果である。

 自分は何をすることになるんだろうか、と不安に思う反面、噂が本当ならば酷いことはされないんじゃないか、と少しの期待を抱く春姫であった。

 





レヴェリアとイシュタルのドスケベ話、書きたいが本編優先していきたい。
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