転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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価値

 フレイヤは大きく頬を膨らませ、上目遣いでレヴェリアを睨む。

 だが、睨まれた側はにこりと微笑んでみせるだけだ。

 彼女の後ろには春姫がおり、不安げな表情をしていた。

 しばらく見つめ合ったレヴェリアとフレイヤであったが、やがてフレイヤが大きく溜息を吐く。

 

 フレイヤの見たところ、春姫の魂は儚さと陰りがあるものの、内には強いものを秘めている。

 何かのきっかけで強く輝くタイプであり、フレイヤが迎え入れない理由がない。

 

 どうして彼女がご機嫌斜めであるかというと、落札金額にある。

 

「300億はちょっとあれじゃない?」

「イシュタルに言ってくれ」

「さっき言ってきたわ。そうしたら、レヴェリアに言ってくれって言われたんだけど?」

「退いてはならない戦いだった」

 

 いけしゃあしゃあと宣ったレヴェリアに対して、フレイヤは手を伸ばしてデコピンを見舞う。

 いつもやられる側の彼女だが、偶にはこういう時もある。

 レヴェリアも甘んじて受け入れ、フレイヤのデコピンを大人しく食らった。

 

「道中、春姫の身の上話を聞いたのだが……彼女を狙っていた小人族の小役人に一杯食わされたらしい」

 

 レヴェリアの言葉に、フレイヤの視線が春姫へ向かう。

 彼女の【美】に酔いそうになる春姫であったが、無意識的にレヴェリアの服の裾を掴んで耐える。

 そして、か細い声で途切れ途切れではあるものの、こうなった経緯を簡単に話す。

 そこに嘘はなかった。

 

「うちに入団するってことでいいの?」

 

 フレイヤの問いかけに対して、春姫は小さく頷いてみせる。

 そこに迷いはなかったが、フレイヤは尋ねる。

 

「理由は?」

「その、レヴェリア様にお返しをしたいので……」

 

 娼婦になる可能性もあったことを、道中でイシュタル本神より春姫は聞かされている。

 

 お前ならば一晩100万でも買う男はごまんといる、とイシュタルは太鼓判を押した。

 

 彼女としては皮肉でも何でもなく純粋な称賛であるのだが、春姫からすれば娼婦になってお金を稼ぐなど想像もできなかった。

 

 そこでレヴェリアが口を挟む。

 

「性格的に戦闘向きではないから、満たす煤者達(アンドフリームニル)で働いてもらおうと思う。何かしらの魔法が発現したら、そちらを軸にして程々に鍛えていきたい」

「カサンドラみたいな感じになるわけね」

「そういう感じだ。入団させても良いだろうか?」

「良いわよ。魂的にも良い感じだし」

「では頼む」

「任せて」

 

 そう答え、フレイヤは大きく頷いてみせた。

 早速恩恵を刻むこととなり、レヴェリアが退室したところでフレイヤは春姫を手招きした。

 小首を傾げて近づいてきた春姫に対して、フレイヤは満面の笑みを浮かべて――その狐耳に手を伸ばして触れた。

 

「コンッ!?」

「モッフモフ! モッフモフだわ!」

 

 たわけ女神が本性を現した。

 初めて見たときから、魂だけでなくその狐耳と尻尾がとても気になっていたのである。

 ちなみにレヴェリアが狐人(ルナール)などの獣人に化けた際、いつもフレイヤはモフモフしていた。

 

「春姫、ちょっとモフらせて?」

「す、少しだけですよ……?」

 

 既にモフっているにも関わらず、いけしゃあしゃあと宣うフレイヤであったが、春姫は断れなかった。

 それから30分くらい狐耳と尻尾を堪能したフレイヤは、ようやく春姫に恩恵を刻んだのだが――とんでもねぇ魔法が発現した。

 

 

 

 

 

 

「初めまして、サンジョウノ・春姫と申します。よろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げる春姫に対して、アスフィ達もまた挨拶を返す。

 春姫はヘルンやダフネ、カサンドラのように満たす煤者達(アンドフリームニル)所属であるが、一応はレヴェリアの弟子という形となる。

 見るからに荒事には向いていなさそうな彼女がどうして弟子となるのか、その事情についてもアスフィ達はレヴェリアから教えられていた。

 

 春姫に発現した魔法【ウチデノコヅチ】がその理由だ。

 その魔法の効果は階位昇華(レベルブースト)

 術者本人には掛けられない、対象は1人かつ効果時間中は獲得経験値半減、再使用にはインターバルが必要という制限はあるものの、破格の魔法であった。

 

 三派閥(ゼウス・ヘラ・ロキ)には、この魔法について早晩伝達されることになる。

 黒竜討伐やダンジョン攻略に有用である為だ。

 春姫本人が出向かずとも、レヴェリアと彼女の魔法を扱えるレフィーヤによって運用されれば問題はなかった。

 それはさておき、新たな妹弟子を歓迎せねばと誰もが手ぐすね引いて待っていた。

 レヴェリアが見慣れぬ狐娘を連れて出先から帰ってきたことから、だいたい予想がついていた。

 新たな妹弟子が来ると彼女達は察するや否や、オラリオ巡りの計画立案と相成ったのである。

 

「春姫、早速行くよー!」

「あ、ティオナ! ズルいですー! まずは私が選んだところからって決めたじゃないですかー!」

「えっ? えっ?」

 

 左右の手をそれぞれティオナ、ヘイズに握られて春姫は困り顔。

 そこへ更にアイズが後ろへ回り込み、春姫包囲網が敷かれた。

 

「今からオラリオ巡りに行くよー!」

「ドチャクソ親睦を深めましょうねー!」

「とりあえずオラリオ名物のジャガ丸くんを食べようよ。すぐそこに屋台があるから」

 

 にこにこ笑顔のティオナとヘイズ、そんな2人の好きにはさせないと決意を秘めた顔で誘うアイズ。

 やる気満々の3人に対して、他の面々は肩を竦めたり生暖かい目で見たり、苦笑したりしていた。

 

「あの……何か、聞いていた感じと違う気が……」

 

 おずおずと春姫は告げる。

 レヴェリアの逸話と共に、フレイヤ・ファミリアの噂もちらほら聞こえてきていた。

 オラリオワーストワンの超武闘派派閥、団員同士で殺し合いを常日頃から行っている云々――といった具合だ。

 思っていたのと何だか違う、と春姫は感じていた。

 

「やっていることはオラリオワーストワンかもねー」

「強くなる為には必要なことだから」

「ですねー。でもでも、アットホームで明るい派閥ですよー!」

 

 真面目な顔をして告げるティオナとアイズ。

 愛想の良い笑顔で肯定しつつ、良い面を伝えるヘイズ。

 

 アットホームで明るい派閥――

 

 何故かその文言に、そこはかとない不安を覚えてしまう春姫であった。

 

 

 

 

 そんなこんなで春姫がアスフィ達に連れられてオラリオ巡りへ繰り出し、親睦を深めている頃、レヴェリアはフレイヤに対してドヤ顔をしていた。

 

「300億を払ってでも手に入れる価値はあった。違うか? うん?」

「くっ……殴りたい、この笑顔」

 

 ドヤドヤドヤーン――擬音をつけるならそんな感じのものがぴったりな、かつてないドヤ顔のレヴェリアに、フレイヤは歯噛みした。

 言うまでもなく、春姫の魔法のことである。

 もしもイシュタルが春姫を落札して、気まぐれに恩恵を刻んで【ウチデノコヅチ】が発現したらさぁ大変。

 四派閥――特にフレイヤを標的として、恩を押し売りしてくるに違いなかった。

 

 フレイヤはイシュタルを嫌っているわけでもなく、またイシュタルもフレイヤを嫌っているわけではない。

 むしろ仲が良いと言っても過言ではないが、それとこれとは話が別であった。

 

 

 

 それはさておき、とりあえずフレイヤはレヴェリアを殴ることにした。

 殴りたいと思ったので仕方がなかった。

 無論、蝿の止まるような速さの拳であり、本気のグーパンではない。

 フレイヤが遊びだろうが本気だろうが余裕でレヴェリアは彼女の拳を避けられるが、甘んじて受け入れる。

 レヴェリアの頬に拳を当てたフレイヤは、そのままグリグリと拳でもって押す。

 しばらくそんなことをした後、彼女は拳を離して尋ねる。

 

「で、レヴェリア。春姫に魔法が発現したら、そっちを軸に程々に鍛えるって言ってたけど……変わらない感じ?」

「欲を言えば、ガツガツ教えてビシバシ鍛えてバリバリ前線に出てもらいたい」

「素直でよろしい」

 

 ストレートに自分の願望を発露したレヴェリアに対して、フレイヤは鷹揚に頷いてみせる。

 【ウチデノコヅチ】を行使できる者が2人と3人では戦術の幅が段違いだ。

 また春姫の魔法スロットが2つ空いていることから、経験を積んでいけば【ウチデノコヅチ】のような稀少魔法が発現する可能性もある。

 しかし、レヴェリアは春姫に無理強いするつもりは毛頭なかった。

 

「方針に変わりはない。無論、それとて彼女の意思を最大限に尊重する」

 

 そう断言するレヴェリアに対して、フレイヤは満足気に頷くのだった。

 

 




アズレンでダンまちコラボがくるとは予想外だった。
ヘスティアとリューさんだけじゃなくて、もっとこう……いっぱい出して(懇願
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