転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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ふわふわもふもふ外交

 

「何だか面白そうだからヨシ!」

 

 ホームに帰ってきたレヴェリアはカールをアスフィ達に預けた後、ウラノスの考えや異端児(ゼノス)について真っ先にフレイヤへ伝えた。

 そして、返ってきた言葉はレヴェリアが予想した通りのものだった。

 しかし、レヴェリアが高尚な理由でこんな七面倒臭いことを引き受けたとはフレイヤは思っていない。

 故に彼女は単刀直入に問いかける。

 

「で、レヴェリア。だいたい予想はつくけど一応聞いておくわ。何が狙い?」

「人外娘との触れ合い」

 

 フレイヤが予想していた通りの答えであった。

 レヴェリアが多種多様な人外娘も大好きであることは当然彼女も知っている。

 やる気満々のレヴェリアに対して、彼女の頬をツンツンと突きながらフレイヤが尋ねる。

 

異端児(ゼノス)のことを誰に伝えるか、決めてあるの?」

「まずアスフィ達だ」

 

 喋るモンスターの存在を伝えていたことや、カールとの交流などで比較的受け入れやすいとレヴェリアは予想している。

 

「他には?」

「リヴェリアだな。それからロキ、ガレス、フィンの順番だ」

 

 かつて発見された喋るモンスターの存在を、ロキと三首領はゼウスとヘラより教えられている。

 それに加えて先のセタス沖海戦にて、アスフィによってお披露目された飛翔靴(タラリア)

 この魔道具がリヴェリアに与えた衝撃は大きく、実際に体験した際は大はしゃぎであった。

 それ以後、顔を合わせる度に面白いことや未知なことがあったら教えてくれ、とレヴェリアは言われていた。

 その為、レヴェリアはまず最初に彼女に伝えようと決めたのだ。 

 

「伝える人物は他にも考えているが、ひとまずこのくらいだ。他のところには当初の予定通り、調教したモンスターと伝えておく」

 

 なるほど、と頷いてみせるフレイヤに対して、レヴェリアは更に言葉を続ける。

 

「話は変わるのだが、カーバンクルには名があるらしくてな。カールというらしい」

「どこ情報?」

「終わり際、ウラノスが言ってきたのだから間違いがないだろう」

 

 カーバンクルの名前をどうするか、それによって議論が巻き起こることは想像に難くない。

 既に名があるのならば、そっちの方が揉めなくて済むので大助かりだ。

 

「早速、アスフィ達に伝えにいこうと思うが、お前はどうする?」

「勿論、ついていくわ」

 

 そんなわけで2人は早速アスフィ達に伝えるべく、談話室へ向かったのだが――カーバンクルの名前をどうするか、喧々諤々の議論が巻き起こっていた。

 弟子達全員参加で小洒落たものからネタとしか思えないものまで様々な名前の案が出され、大変騒がしい。

 

 しかし、当の本人――カールはテーブルの上に置かれた大きなバスケットの中で丸まっていた。

 バスケットにはふかふかのクッションが敷かれており、とても気持ち良さそうだ。

 その時、レヴェリアとフレイヤがやってきたことに気がついて、アスフィ達の視線が一斉に2人へ向く。

 

「レヴェリア様、フレイヤ様……どういう名前がいいと思いますか?」

 

 若干疲れた顔をしているアスフィの問いかけに対して、レヴェリアが告げた。

 

「実はその子には既に名前があってな。カールというらしい。神ウラノスのお墨付きだ」

 

 レヴェリアの言葉に、正解と示すかのようにカールが起き上がって一声鳴いてみせた。

 

「名前があるってことは、実は飼い主がいたってことかい?」

 

 アイシャのもっともな指摘に対して、ヘイズをはじめとした面々が険しい顔となる。

 うちの子だから誰にも渡さない――そんな断固とした決意を抱いているようだ。

 

「そこらの事情も含めて色々と説明しよう」

 

 そう切り出して、レヴェリアはウラノスから聞いたことを説明し始めた。

 その横でフレイヤはカールを撫でたりつんつんと突いたりし始める。

 カールは甘えた鳴き声を出しながら、フレイヤの手のひらに頬ずりしたり指先を舐めたり甘噛みしたりしていた。

 そんな女神とカーバンクルの触れ合いを横目に見ながら、説明を聞き終えたアスフィ達は――大して驚かなかった。

 

「……もうちょっと驚いてくれてもいいんだぞ?」

 

 あまりの反応の無さに思わずレヴェリアが問いかけてしまった。

 そんな彼女の問いに答えたのはリリルカだ。

 

「特大の厄ネタではありますけど……異端児(ゼノス)をダンジョンから連れてきても、レヴェリア様がモンスターに何かやったんだろうって思われるだけな気がします」

 

 リリルカの言葉に、これまた一同はウンウンと頷く。

 頷いている面子にはフレイヤも含まれているのは言うまでもない。

 その時、アウラが尋ねる。

 

「レヴェリア様、モンスターとの交戦の際、相手が喋ってきた場合はどうされますか?」

「喋っていようがいまいが、襲ってきたならば通常のモンスターとして対応して構わない。理知があったとしても、善良であるかはまた別の話だ」

「善良な振りをして近づいてきて、不意打ちをしてくる場合もありえる……ということですか?」

 

 続いたフィルヴィスからの問いかけに対して、レヴェリアは頷いてみせる。

 そこから異端児(ゼノス)に関連した質問が弟子達から続々と投げかけられるが、レヴェリアは淀みなく答えていく。

 

 カールはフレイヤに抱っこされながら、問答を聞いていた。

 もしも仲間達に害が及びそうならば異議を唱えるつもりであったが、そういう気配はなさそうである為、彼女としては一安心だ。

 

異端児(ゼノス)がいようとも、黒竜の討伐とダンジョンの攻略が優先目標だ。そこに変わりはない」

 

 質問が出尽くしたところで、レヴェリアははっきりと告げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「レヴェリア、物は相談なんだが……」

「やらんぞ」

 

 そう切り出したリヴェリアに対して、レヴェリアはカールを抱きかかえながらきっぱりと断った。

 

 ここはロキ・ファミリアのホーム、黄昏の館にあるリヴェリアの私室だ。

 レヴェリアがこの部屋に来るのは初めてではなく、彼女自ら購入した椅子やマグカップなどを置く程度には来ており、様々なことを話し込んでいた。

 遂に白黒王女のカップル成立か、とロキがニヤニヤ笑いながらからかってきたこともあるが、白黒王女にはっ倒されたのは言うまでもない。

 

 ところで、黄昏の館は()()()敷地面積に建てられている。

 フレイヤ・ファミリアのホームと同じくらいの広さでありながら、上にも大きく伸びている為、館というよりは城という印象を受ける。

 フレイヤ(色ボケ)には負けたくない、というロキの方針にフィン達が賛同し、ダンジョンに篭もりまくって金を稼いできた結果である。

 そう言いつつも、フレイヤとレヴェリアからはホーム建設の際、間取りなどでアドバイスを貰っていた。

 それはそれ、これはこれの精神であった。

 

 閑話休題。

 

「倒してでも奪い取る……!」

「やれるもんならやってみろ」

 

 カールを巡って白黒王女の一騎打ちが始まろうとしたその時、当の本人がキュウキュウと鳴いた。

 私を巡って争うのはやめて、的な意味合いだと白黒王女は察する。

 渋々といった表情でレヴェリアがカールを手渡せば、リヴェリアは目を輝かせながら受け取った。

 そして、彼女は胸に抱きしめながらレヴェリアへ尋ねる。

 

「それで、異端児(ゼノス)だったか? この子もそうだと言っていたが……」

 

 リヴェリアの視線はレヴェリアが自身を訪ねてきた時からカールに釘付けであったものの、話はしっかりと聞いていた。

 

「ああ、そうだ。理知を備えるモンスターとのことで、人類と遜色のない存在だとウラノスは言っていた。カールは喋れないが、喋れる者もそれなりにいるらしい」

「ふむ……」

 

 レヴェリアの説明を聞きつつ、リヴェリアはカールを撫でくりまわす。

 ふわふわでもふもふの感触が大変素晴らしく、いつまでも撫でていられそうな気がしていた。

 撫でられているカールは甘えた鳴き声を出して、されるがままだ。

 

「お前が望んでいた未知だぞ?」

「厄介な、という形容詞がつくがな」

 

 ニヤニヤと笑いながら言ってきたレヴェリア。

 対するリヴェリアは肩を竦めてみせるが、撫でる手は止まらない。

 

異端児(ゼノス)がいようが、我々のやることに変わりはない。黒竜討伐とダンジョンの攻略が先だ」

 

 続けられたリヴェリアの言葉に、レヴェリアは頷いてみせる。

 厄介なネタではあるが、現状大量に――数百数千といった単位で――いるわけでもない。

 また冒険者には見つからぬよう細心の注意を払っていることも容易に分かる。

 そうでなければ四派閥の面々がもっと早い段階で見つけている為だ。

 

「懸念としては、物珍しい存在だとして異端児(ゼノス)を捕まえて売り飛ばすような派閥がいるかもしれないことだが……」

「可能性は極めて低いだろう。そういうことができそうなルートは粗方潰したからな」

 

 リヴェリアの懸念に対して、レヴェリアはそう答えた。

 バベルを経由せずに地上もしくは都市外へ出るルートは人造迷宮(クノッソス)を経由するしかない。

 だが、そういった抜け道は一部を除いて物理的に塞がれており、また人造迷宮(クノッソス)内はギルドから依頼されたガネーシャ・ファミリアにより警備されている。

 それに加えて、ギルドから使用許可を与えられた四派閥に属する冒険者達が補給拠点兼近道(ショートカット)として使っていた。

 たとえ異端児(ゼノス)を捕まえたところで、人目につかず地上や都市外へ運び出す為のルートが無ければどうしようもなかった。

 リヴェリアは更に問いかける。

 

「ウラノスの目指すところは?」

「共存だそうだ」

 

 レヴェリアから答えを聞いて、リヴェリアは柳眉を顰める。

 

「また難しいことを……」

「本神も言っていた。持て余している、とな」

「だろうな。短期間でどうこうできる話ではない。ところで、この件をロキやフィン、ガレスには?」

「まずはお前に話してからだと思ってな」

 

 レヴェリアからの返事に、リヴェリアは満足げに頷いてみせる。

 面白いことや未知なことがあったら教えてくれと日頃から言い続けた甲斐があった、と思いながら提案する。

 

「ではまず、ロキに伝えに行くぞ。それからガレス、フィンだ」

「……カールを返してくれないか?」

 

 そう言って椅子から立ち上がったリヴェリアに対して、レヴェリアはジト目となって告げる。

 だが、その問いかけに対してリヴェリアは不満げな表情となった。

 

「いいじゃないか、お前はこの子と一緒に住むのだから……」

「……仕方がないな」

 

 レヴェリアはそう答え、リヴェリアの行動を容認した。

 

 

 

 

 

 

「かわええなぁ! かわええなぁ!」

 

 頬ずりをするロキに対して、カールは甘えた鳴き声を出す。

 こうなることは予想がついていたので、レヴェリアもリヴェリアも驚きはない。

 カールを猫可愛がりしながら、ロキは告げる。

 

異端児(ゼノス)がいても、うちらのやることに変わりはあらへんけど……フィンがちょお心配やな」

 

 両親をモンスターの襲撃によりフィンは亡くしている。

 彼ならば感情をうまく抑え込むだろうが、それでも心配なものは心配であった。

 

「よっしゃ、うちもついてくわ。まずはガレスで、最後にフィンに行くで!」

 

 そう言いながら、ロキはカールを胸に抱いた。

 レヴェリアやリヴェリアと違って、平たいものの――カールはそれで不満を呈するような輩ではなかった。

 しかし、リヴェリアは不満顔だ。

 

「ロキ、返してくれ」

「やだ! うちが連れてく! 主神命令や!」

 

 リヴェリアの要望に、ロキは断固拒否した。

 リヴェリアはがっくりと肩を落とし、レヴェリアは肩を竦めてみせた。

   

 

 

 それから3人でガレスのところに向かうも、彼に関しては心配していなかった。

 ガレスはレヴェリアから話を聞きながらカールをゴツい手で撫でて、尋ねてきた。

 

 異端児(ゼノス)に強いヤツはいるか? いるならば戦いたい――

 

 モンスターとしての元々のスペックに加え、魔石を食らうことで強化されるという人類では真似できないことができる。

 ならばこそ、四派閥の幹部に匹敵するような輩がいてもおかしくはないとガレスは考えた。

 今もなお熱き戦いを求め続ける彼らしい問いかけだ。

 

 喋れないカールは鳴き声と仕草で肯定してみせた。

 どの程度かは分からないものの、強いヤツがいることが分かったガレスは満足し、戦えるよう場を整えてくれとレヴェリアに要求する始末であった。

 

 

 

 

 

「色々と思うところはある。けれど、僕達がやることに変わりはない」

 

 フィンは執務机の上で丸まっているカールを優しく撫でながら、居並ぶ面々にはっきりと告げた。

 黒竜討伐、ダンジョンの攻略――それこそが最優先であり、異端児(ゼノス)との共存だの何だのはそれらが済んだ後だと彼もまた明言した。

 

「ところでレヴェリア、異端児(ゼノス)の存在を明かしたことでモンスターとの戦いに支障が出るかもしれないが……それへの対応は?」

「喋っていようがいまいが、襲ってきたら通常のモンスターとして対応するよう伝えてある。善良な振りをして、不意打ちをしてきた場合も含めてな」

 

 そう答えたレヴェリアは、この程度で躊躇するような鍛え方はしていないと付け足した。

 不敵な笑みを浮かべて自慢げだ。

 それを見てロキもフィンもリヴェリアもガレスもムカッときた。

 他の団員達に開示する段階ではないとはいえ、自分達にはできませんなどとは絶対に言えない。

 しかし、ここでフィンはピンと閃いた。

 

「団員達に慣れてもらう為、カールをしばらくうちで預かるというのはどうだろう?」

 

 彼の提案に、ロキとリヴェリアはハッとした。

 その手があったか、盲点だった、と。

 ガレスはどっちでもいいので我関せずだ。

 

 調教したモンスターという体裁でカールと触れ合ってもらうことで、後々明かすことになるだろう異端児(ゼノス)へのショックを和らげる――それがフィンの狙い。

 カールのふわふわでもふもふの心地良い感触をもっと味わっていたい、激務の合間に癒やしがほしい、という意図はない筈である。多分。

 レヴェリアとしても彼の狙いを察し、必要なことであるのは理解した。

 しかし、期間が問題であった為、彼女は眉を顰めて告げる。

 

「最長でも半日。今すぐではなく日程を決めた上でならば……」

「さすがはレヴェリアだ。それでは早速、日程を決めようじゃないか」

 

 無事に要求が通った為、笑みを浮かべてフィンは承諾した。

 なお、ここまで彼の手は休むことなくカールを撫で続けていた。

 カールとしては男にそうされてもあんまり嬉しくはないが、話の内容から異端児(ゼノス)の未来に関わることを察した為、なされるがままであった。

 

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