転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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怒りの日

 

 

 レヴェリアは冷静さを失わぬよう、深呼吸をした。

 

 オラリオが群雄割拠の時代とは聞いていた。

 己を手に入れようと考える派閥はいると予想していた。

 オラリオの派閥であろうとも、自分やファミリアの評判は知っている筈だと思っていた。

 いきなり抗争もありえるとして、団員達に警戒を促していた。

 

 

 だが、最悪は予想の斜め上を行くことを改めて思い知らされた。

 

 

 もっとも早く異変に気がついたのはフレイヤだ。

 彼女がギルド長のロイマンと話していた時、100を軽く超えている恩恵が櫛の歯が欠けるかのように減り始めた。

 

 すぐさま手続きをしていたレヴェリアに伝え、そのまま抱えられて本拠とするべく購入した歓楽街の真ん中にある屋敷へ向かい――目の当たりにした。

 屋敷や荷物は焼け落ち、倒れ伏す数多の眷族達を。

 既に死者よりも生きている者を数えたほうが早い程、恩恵の数は減っていた。

 フレイヤ・ファミリアがオラリオに到着してから、僅か2時間後の出来事であった。

 

 

 騒動を聞きつけて、早くも大勢の神々や冒険者達が集まってきている最中、襲撃者の1人が高らかに告げた。

 

「オラリオへようこそ! フレイヤ・ファミリアの諸君! 『英雄の都』の洗礼、よく味わってくれたまえ!」

 

 その団長らしきヒューマンの男の宣言をきっかけに、襲撃者達が口々に好き勝手にまくし立てる。

 

 その言葉とこの状況に、フレイヤはゆらりと前へ進んでいく。

 そして、心の奥底から込み上げる激情のままに銀色の双眸を煌めかせた時――レヴェリアが彼女の手を掴んだ。

 

 振り返ったフレイヤは息を呑んだ。

 レヴェリアの表情が能面のようになって、一切の感情が浮かんでいなかった為だ。

 そして、彼女から紡がれた言葉に驚愕する。

 

「フレイヤ、その程度で済ませてはならない」

 

 底冷えのする声でもって伝えられたそれは、襲撃者達の耳にも聞こえた。

 そして、笑いを誘った。 

 

 都市外でレベル4に至った者が複数いることは驚嘆だが、オラリオには()()()4()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ダンジョンがあり、抗争も頻発しているオラリオの冒険者と比べれば、都市外の冒険者は超えてきた死線の数も少ない。

 それは至極真っ当な認識であり、レヴェリアの噂も聞いてはいたものの自分達には敵わないと判断していた。

 

 襲撃側の派閥は団長であるヒューマンの男を含めてレベル6が4名、レベル5が6名、レベル4以下まで含めれば100名に届く。

 レベル4を1人倒すにはもったいないほどの圧倒的な戦力だ。

 

 しかしながら、彼等彼女等は驚愕することになる。

 噂に違わぬ、レヴェリアの代名詞たる治癒魔法を目の当たりにして。

 

 一瞬で黄金色の魔法円と同色のドームが展開された。 

 詠唱速度と並行詠唱の練度が己の生死に直結する環境にいた彼女にとって、その歌を詠うことなどもはや呼吸と同義であった。

 瀕死の重傷でありながらも、かろうじて生き残っていた者達が一瞬で全快し、次々と立ち上がるが――あまりにもその数は少ない。

 レベル3であるディース姉妹とミアは生きていたが、彼女達以外のレベル3やレベル4の眷族達は全滅だ。

 生き残ったのは彼女達を含めて30人に届くかどうか。

 幸いであったのは治療師や薬師といった後方支援要員が、この場には誰一人としていなかったことだ。

 まさしくこういう事態を想定し、念の為にオラリオ入りを1日遅らせてあった。

 だが、主戦力となる団員が激減したことは大きな痛手に変わりない。

 

 全快して真っ先にディース姉妹が吼えた。

 

「四肢をへし折って内臓をぐちゃぐちゃにかき回してあげる!」

「頭をかち割って脳みそを食べさせてあげるわ!」

 

 ブチ切れた姉妹は残虐性を露わにした。

 彼女達と同じように生き残った団員達の誰もが怒りと悔しさに身を震わせる。

 だが、それだけであった。

 戦力差は圧倒的であり、何をやっても覆せそうにないことは誰の目にも明らかだ。

 

 しかし、レヴェリアは全くそのように思っていなかった。

 彼女は玲瓏な声でもって告げる。

 

「跪き、自ら命を断て。それが諸君らにとって最善の逃げ道だ」

 

 誰もがその言葉の意味をすぐには理解できなかった。

 敵は質・量共に圧倒的であり、いくら彼女の治癒魔法があろうともここからの挽回など不可能だ。

 

 襲撃者達だけでなく、見物をしている神々や冒険者達の多くが嘲り笑う。

 ディース姉妹はそれでは優しすぎると別の意味で怒りはじめたが、2人以外の――ミアも含めた団員達は顔を伏せる。

 

 フレイヤ・ファミリアの団員ならばレヴェリアの強さは嫌というほどに知っている。

 だが、今回ばかりは相手が悪すぎると。

 

 しかし、フレイヤはその言葉を信じた。

 彼女がそう言ったのだから、やり遂げるに決まっている――

 そういう信頼があったからだ。

 

 

 ひとしきり笑ったところで団長であるヒューマンの男が口を開く。

 

「そんな事をするわけがないだろう。寝言は寝てから言ってくれ」

 

 彼の返事を聞いたレヴェリアは高らかに宣言する。

 

「では、これより選別を始める。洗礼などという生温いものでは済まさないから、安心すると良い」

 

 言い終えた瞬間、まるで風に吹かれたかのように彼女は消え失せて――惨劇が幕を開けた。

 

 

 

 

 誰もがその光景に目を疑っていた。

 戦闘開始から数分も経たないうちに四肢のどこかを切り飛ばされ、地面に転がって苦痛に喘ぐ者達で溢れかえっている。

 襲撃側のレベル4以下の者達は既に壊滅しており、攻撃から逃れられた僅かな者達は回復薬を使って瀕死となった仲間達の命を繋ごうとしていた。

 

 所詮はレベル4だ、と高を括っていた団長や幹部達も予想を遥かに超える強さを目の当たりにして、すぐさま動いた。

 その時点で圧倒できなければおかしいのだが、そうはならなかった。

 そこから1時間程が経過した今もなお、彼等彼女等は油断も慢心も無く全力で戦闘を続けているが――レヴェリアは全く崩れない。

 

 

 

 左右からの連撃をレヴェリアは巧みな剣捌きでもって僅かな隙間を作り出し、すり抜けた。

 そこへ横合いから一撃が加えられるがそれを軽く逸らし、零距離でもって【ボルカニックノヴァ】を撃ち放つ。

 

 黄金色の炎弾を敵は体勢をあえて崩すことで回避した。

 その間にも四方八方から敵が迫るが、レヴェリアは全方位に無数の炎弾を同時に発射した。

 

「【破墜(ディレンダ)】」

 

 ばら撒かれた炎弾が瞬時に全て炸裂し、防御あるいは回避を襲撃者達に強要させる。

 敵に息つく間を与えることなく、果敢に彼女は攻め立てた。

 

 悪態や驚愕の混じった言葉を漏らしながらも、襲撃者達は的確に対応していく。

 だが、焦りを隠せなかった。

 

 レベル4とは思えない程にレヴェリアが強すぎる、と襲撃側の誰もが感じていた。

 それは力や速さなど単純なスペックが予想よりも高いというだけではない。

 『技と駆け引き』の巧みさとこういった戦闘――複数の格上を同時に相手取るという理不尽過ぎるもの――に慣れているようにしか思えなかった。

 

 しかし、それだけではないことに彼等彼女等は気づいていた。

 驚くべきことに、飛躍的ともいえる速度で今この瞬間にもレヴェリアは成長している。

 それこそ1秒ごとに『技と駆け引き』を洗練させており、実際に目の当たりにしていても信じ難い――否、信じたくなかった。

 

 また、彼女の攻撃魔法には詠唱がない。

 黄金色の炎弾を同時に数十発単位でばら撒ける上、連射できる。

 一発の威力は長文詠唱魔法よりは劣るとはいえ、無視できるものではない。

 

 厄介極まりないのが致命傷が致命傷とならないことだ。

 適度に痛めつけて降伏に追い込むのは不可能だと判断した為、とっくに生死を問わない攻撃に切り替えている。

 レベル差と人数差、経験の差などもあって攻撃を捌ききれなかったり、判断ミスなどでレヴェリアは多くの傷を負っていた。

 掠り傷どころか四肢を貫かれたり切断されたり、腹をぶち抜かれることも既に何回かあったのだが――彼女は取り乱さない。

 そういった傷には慣れていると言わんばかりに、悲鳴を上げるどころか眉一つ動かさない。

 普通の冒険者ならば戦闘不能となるか、そこまでいかなくとも動きや判断力が鈍るようなダメージが意味をなさず、挙句の果てに治癒魔法によって一瞬で全快されてしまう。 

 

 これならばゼウスやヘラの眷族、あるいは深層の階層主を相手にしたほうが楽ではないか、という思いが例外なく襲撃者達には芽生えていた。

 ゼウスもヘラも階層主も理不尽な治癒魔法を使ってこないし、戦闘中に恐るべき速さで成長することもないからだ。

 しかし、先に仕掛けた挙げ句に相手の団員を多数殺傷している以上、引くに引けなかった。

 

 格下しかいないからすぐに終わる――襲撃前は誰もがそう思っていたが、もはやそんな余裕はどこにもなかった。 

  

 

 

 

 

 

 

 一方、見物している神々は予想外の事態に大興奮していた。

 未知こそが何よりの楽しみである彼等彼女等にとって、このような予測不可能の未知は大歓迎だ。

 

「レヴェリアちゃんマジパネェ」

「レヴェリアちゃんが動く度に爆乳が揺れてですね……不謹慎ですけど」

「言わせね―よ!」

 

 神々が好き放題に言っている中、多くの冒険者達は戦慄していた。

 

 今まさにレヴェリアが攻撃を捌ききれず、その肉体を四方から槍や剣でもって貫かれたが、すぐさま黄金色のドームが展開された。

 同時に敵を離れさせるべく、数多の炎弾がばら撒かれている間に全快した。

 

 治癒魔法以外にも、この炎弾――ボルカニックノヴァ――も厄介極まりない。

 詠唱なしで、結構な威力がある上に連射が効く。

 まとめて撃ったり炸裂させることで制圧力もあるという便利過ぎる魔法だ。

 

 今のところはその2つしか魔法を使っていないが、おそらく発現しているであろう3つ目の魔法もとんでもない代物ではないかと思わずにはいられない。

 

 そのようなことを考えている冒険者達とは裏腹に神々は大いに盛り上がっていた。

 容姿も相まって、戦っているレヴェリアの姿はまさしく戦乙女であったが為に。

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘開始から2時間あまりが経過した。

 レヴェリアの闘志は些かの衰えもなく体力・精神力共に万全であり、この2時間でその『技と駆け引き』を更に洗練させている。

 対して襲撃側は精神・肉体共に消耗が激しく、動きに隙が生じることもしばしばだ。

 

 消耗の大きな原因は彼女をどれだけ傷つけようとも即座に治癒されてしまい、一からやり直しとなることにあった。

 また彼女には体力的な消耗がみられず、疲労しているようにも見えないことから、治癒魔法にそういったものの回復効果もあることが嫌でも分かってしまった。

 

 詠唱を阻止できさえすれば良いのだが、何を犠牲にしてでもそれを企図した攻撃だけは防御あるいは回避されていた。

 自らの弱点をレヴェリアもまたよく理解している為だ。

 

 魔法を封じるカースウェポンがあれば戦況は大きく変わるどころか、とっくに勝負がついていた可能性すらある。

 しかし、カースウェポンは高額であることに加え、たかがレベル4にそこまで対策する必要はないという常識的な判断によって襲撃側は用意していなかった。

 レヴェリアからすれば用意していないことの方が不思議だったが、嬉しい誤算だ。

 

 己の治癒魔法を活かし、敵に消耗を強要し続け、弱ったところを叩く。

 彼女にとってはセオリー通りの戦法であった。

 

 

「もう諦めるのか?」

 

 能面のような表情ではなく、澄まし顔でもってレヴェリアが問いかけた。

 彼女は切り札――【不倶戴天(トモニテンヲイタダカズ)】、【淫欲願望(ルクスリア)】、【グリモワール・オブ・メモリーズ】――を必要ならば使うつもりであった。

 

 衆人環視の中でこれらを使うと確実に厄介事を招く為、できれば使いたくはないが敗北するよりは遥かにマシだ。

 しかし、敵の戦意が明らかに落ちていることから必要はないと判断した。

 

 

 レヴェリアの問いに対して、襲撃者達は誰もが悪態をついた。

 それらを意に介さずに彼女は宣言する。

 

「安心しろ、殺しはしない」 

 

 その言葉と共に展開される黄金の魔法円と同色のドーム。

 もはや見慣れたそれが包み込んだのは――襲撃者達であった。

 

 レヴェリアが開始早々に大半を斬り伏せたレベル4以下の者達も含め、全員が一瞬にして全快した。

 回復薬でどうにか命を繋いだ者達は不思議な顔で、互いに顔を見合わせてしまう。

 理解のできない行動に誰もが唖然とする中で、レヴェリアは宣言する。

 

「まだ選別は始まったばかりだ。ここは戦いの野(フォールクヴァング)。逃げることも降伏することも、()()()()()()()()()()。私と戦い続けろ」

 

 獰猛な笑みを浮かべた彼女が敵の団長に襲いかかり――再び戦端が開かれた。

 

 

 

 

 

 この光景を目の当たりにした冒険者達は誰もが戦慄していた。

 レヴェリアの噂を聞いた時には敵を癒やすなどと愚かしいだの、甘いだのと評価した者はオラリオにも大勢いた。

 

 一見、それは慈悲深い行動だ。誰も殺していないのだから。

 

 だが、その本当の意味をようやく理解した。

 強制的に癒やされて戦いを強要され続ける――これならば、いっそ殺してくれた方がよっぽど楽だと冒険者達には思えた。

 なお、当時のレヴェリアは癒やした後、更に戦うことなどはしていなかったのだが、彼等彼女等はそこまでは知らなかった。

 一方、神々はレヴェリアがドSであったことから、違う意味で盛り上がっていた。

 

 敵には絶望を与え、見物している者達には良くも悪くも話題を提供しつつ、彼女の選別は夕方まで続いた。

 しかし、それは途中から戦いとは到底言えるものではなかった。

 四方八方へ逃げようとする敵を彼女が追いかけ、行動不能にするという鬼ごっこに成り果てていたが為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フレイヤは無言でレヴェリアを抱きしめていた。

 レヴェリアも何も言わず、彼女を抱きしめ返す。

 

 ここはヘルメスが手配した宿の一室だ。

 選別が終わった直後、タイミング良く現れた彼が宿を含めた必要なものを全てを手配していると告げた。

 

 襲撃を受けたと分かった時点で即座に動いた、と述べた彼は胡散臭いところもあるが、今回はその好意に甘えることにした。

 宿に来るまでの間、フレイヤは仮面を被って女神として振る舞ったものの、割り当てられた部屋に入った瞬間にその仮面が剥がれ落ちた。

 彼女達を一緒の部屋にしたのは、彼が関係性を知っていたからこそだが――それは正解だった。

 

 やがて、フレイヤは涙を流し始めた。

 時折小さく嗚咽を漏らす彼女の背中を、レヴェリアは優しく擦る。

 

 フレイヤは今日まで眷族を失ったことがなかった。

 女神として彼女を尊崇し、寵愛を求めていた眷族達も愛おしい存在に変わりはない。

 天に還っただけと分かってはいても、それでもフレイヤには寂寥感と喪失感があった。

 彼女の心が落ち着くまで、レヴェリアはずっと寄り添い続けた。

 

 

 

 

 30分程が経った頃、フレイヤはゆっくりと体を離す。

 涙の跡が残る目元や頬を手で擦ろうとするが、レヴェリアが近くにあったタオルを取って彼女の顔を拭う。

 

「……ありがと」

「気にするな」

 

 フレイヤの言葉にレヴェリアはそう答え、彼女の頭を数回軽く撫でてやる。

 はにかんだ笑みを浮かべたフレイヤ、レヴェリアもまた微笑む。

 こいつには笑顔が一番だな、と彼女は思いながら、これからの目標を宣言する。

 

「しばらく強さを探求させてもらう。今回はどうにかなったとはいえ、次も大丈夫とは限らない」

「うん……でも、レヴェリア。死なないで」

 

 娘としての気持ちを吐露したフレイヤをレヴェリアは優しく抱きしめ、その耳元で囁くように答える。

 

「寿命以外では死なないとも。何が何でも帰ってくることを約束する」

「うん……約束よ」

「勿論だ。こんな時に何だが……ステイタス更新を頼む」

 

 彼女の言葉にフレイヤは頷いて、ステイタス更新に取り掛かり――ランクアップができることを伝えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼウス、感想は?」

「レヴェリアちゃん、マジでヤバいのぅ」

 

 ヘルメスの問いかけに、ゼウスは大神らしい威厳のある面持ちでもって答えた。

 

 昼間のフレイヤ・ファミリアに対する襲撃はゼウスとヘラ、そしてヘルメスにとっても寝耳に水の出来事だ。

 

 どこかの派閥がちょっかいを掛けることは想定内であったが、まさか到着してから2時間程で仕掛けるのはさすがに想定外だ。

 ヘルメスより、このことを聞いたゼウスとヘラは救援の為に眷族達と共に現場へ赴いた。

 しかし、レヴェリアの予想を超えた奮戦を見て介入することなく、観戦するに留めたのだ。

 

 救界(マキア)に必要だとは考えていたが、ここまでの実力があるのは嬉しい誤算だ。

 とはいえ、ゼウスにとってそれと同じくらいに重要なことがあった。

 

「ヘルメス、お主も見たじゃろう。あのローブの上からでも分かる爆乳をっ……! ぶるんぶるんだったぞ!」

「勿論だ、ゼウス……! オレの見立てでは尻や太腿も女神クラスの筈だ……!」

 

 ここはゼウス・ファミリアのホーム、その神室である為にヘラはいない。

 故に色んなことを言いたい放題だ。

 

 偶にヘラが何故かタイミングが良い――ゼウスにとってはタイミングが悪い――ところで乱入してきたりもするが、幸いにも今は眷族達と共にフレイヤ・ファミリアを襲撃した派閥の本拠へ行っていた。

 

 今頃は主神を締め上げて、襲撃した理由を問い質しているだろう。 

 

「そんなレヴェリアちゃんがフレイヤの伴侶(オーズ)とはのぅ……」

 

 そう言いながら、ゼウスはウンウンと頷いてみせる。

 

 かつて、ヘラとヘルメスがフレイヤからの答えを持って帰ってきた時にも、そのことをゼウスは聞いていた。

 あの時はレヴェリアがどういう容姿であるか、情報を元に想像するしかなかった。

 だが、今回初めてその姿を目撃したことで、その破壊力を彼は思い知ったのだ。

 

「あんな超絶美女同士のカップルとかヤバすぎるじゃろぉおお! あまりのエロさに下界の法則が乱れかねん!」

 

 はしゃぎまくるゼウス。

 ヘルメスは帽子を目深に被って怪しげな笑い声を上げた。

 

 そしてスケベ心のままに彼らは猥談を繰り広げ――30分くらいしてようやく救界(マキア)へと話が戻ってきた。

 

「レヴェリアちゃんをいい具合に育てるべきじゃろう」

「それは賛成だ。といっても、干渉し過ぎるとマズイ」

「じゃろうな。やり過ぎたらフレイヤがブチ切れそうじゃ」

 

 超然としている女王様が見初めた伴侶(オーズ)である。

 ちょっかいは必要最小限に留めるべきだ、とゼウスとヘルメスの意見は一致した。

 面白味に欠けるが、フレイヤは取り扱いに注意が必要な神物だ。

 

「実は、うちやヘラの眷族達が彼女と戦いたがっていてのぅ……止めるのにも一苦労じゃ」

 

 オラリオにおいて、ダンジョン内どころか街中であろうとも冒険者同士の戦いは日常茶飯事。

 そこから派閥同士の全面抗争に発展することもよくある。

 

 三大冒険者依頼の達成、ダンジョンの攻略――救界(マキア)を成し遂げる為、オラリオは冒険者達の蠱毒と化していた。

 それこそ、()()()5()()()()()()()()()()()()派閥も多い

 そのような魔境であってもゼウスとヘラが抑止力となっている為、比較的治安は良い。

 闇派閥のように、市民を狙ったあるいは市民ごと無差別に攻撃を仕掛ける派閥が出てきていない為だ。

 もっとも、頂天たる二大派閥に挑戦する者達は後を絶たない。

 

 彼等彼女等にとって挑戦者は望むところであり、レヴェリアの登場も非常に喜ばしい。

 彼女ならば自分達を追いつくどころか追い越すのではないか、という期待。

 追い抜かれてたまるものか、という意地。

 

 ゼウスやヘラの眷族達は誰もが彼女の戦いを目の当たりにして、その相反する思いを抱いた。

 そして、彼女との戦いを渇望したのだ。

 

「次の神会が終わるまでは挑むことを禁じておく。ヘルメス、場を用意してくれ。儂とヘラでフレイヤに伝えたい」

「分かった。レヴェリアちゃんには伝えるのか?」

「伝えない方が面白くなりそうじゃ。儂の勘がそう囁いておる」

 

 ゼウスの言葉にヘルメスはにっこりと笑みを浮かべて、グッと親指を立てるのだった。

 

 


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