転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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サプライズ

 アリサ・ラーガストは目の前の光景に唖然としていた。

 野外調査という名目でオラリオの冒険者達による竜の間引きをレオン率いる教師達と戦技学科の生徒達は見学に行っていた。

 そこから無事に帰ってきたと思ったら――何故かレヴェリアとフレイヤも同行していたのだ。

 フレイヤはさておき、オラリオ寄港時以外でレヴェリアが乗船してきたというのは『学区』にとってはサプライズ。

 だが、そこからすぐにレオンに引っ張られる形で模擬戦が始まった。

 『学区』内の演習場では2人の戦いに耐えられない為、現在『学区』が寄港している港町からかなり離れた荒地が戦場に選ばれた。

 どうやら事情を聞くに、彼がどうしても戦いたいからという理由でレヴェリアはオラリオに一旦帰った後、わざわざ来てもらったらしかった。

 

 生徒達からすればレヴェリアとレオンの戦いを見たくないわけがなく、すぐさま神々や教師達に直訴した結果――希望者全員で観戦と相成った。

 しかしながら、高レベル同士の戦いは目で追えるものではない為、レヴェリアがレオンに提案し、それぞれボディカメラをつけることとなった。

 こうなることを予期していたレヴェリアは、オラリオから予備としていた大型ディスプレイなどの機材を持ってきていたので、それぞれの視点からの観戦が可能であった。

 その結果、レヴェリアとレオンがどのように動いているか分かりやすくなり――誰もが2人の戦闘に圧倒された。

 

 何よりもアリサにとって、重要なことはレオンの表情だ。

 彼のファンクラブ会長である彼女にとって、それは見たことがないものだった。

 

「レオン先生、すっごく楽しそう……」

 

 レヴェリアの視点から見えるレオンは悪童のように、楽しそうに笑っていた。

 彼の魔法は極めて短い時間で完成しており、最大強化を得ている。

 強化効果がどういうものかアリサも知っているのだが、戦闘相手がレヴェリアであると本当にレオンが強化を得ているのか、怪しくなってしまう。

 生徒達も教師達も固唾を飲んで戦闘の行方を見守っているのだが、それにも増して喧しい輩がいた。

 

「ねぇねぇねぇ、イズン! 見て見て!」

「見てる見てる! こういうのもアオハルね!」

 

 混ぜるな危険――そんな言葉が生徒達どころか教師達の脳裏にも過っていた。

 

 フレイヤはレヴェリアの戦いっぷりにきゃーきゃーと大変五月蝿くしつつ、イズンに絡んでいた。

 私の伴侶(オーズ)を見て、と言わんばかりに。

 もしもアルフィアがここにいれば即座にゴスペル・パンチをぶちかました上で、ロールケーキを口に突っ込むだろう。

 だが、あいにくと静寂を好む彼女はおらず、止められそうな『学区』の神々も微笑ましく見守っているだけだった。

 

 レヴェリアがオラリオに帰り、すぐに『学区』へ行くとなった時。

 レヴェリア成分の重大な不足をきたしていたフレイヤは、私も行くと言ってレヴェリアの足に縋り付いた。

 レヴェリアは止めたものの、フレイヤが聞き入れるわけがない。

 恥も外聞もなく「ヤダヤダヤダ! 私も行く!」と駄々を捏ねまくって、いつものようにレヴェリアが折れた形である。

 なお、何故かフレイヤは『学区』の生徒用制服――サイズもピッタリ――を着ていたりする。

 フレイヤの隣でご機嫌なアオハル女神の仕業であった。

 バーダインがいたら滅茶苦茶騒いでいたわね、とアリサは旧友に思いを馳せながら、模擬戦の行方を見守る。

 さすがに夜までには終わるだろう、と彼女も含めて全員が考えていた。

 だが、観戦している面々の予想を裏切って模擬戦は夜になっても終わらなかった。

 

 さすがに止めた方がいいのでは、と生徒や教師から声が上がったものの、バルドルが良しとした。

 黒竜偵察時、何があったかは彼もレオンから報告を受けている。

 だからこそ、止めるよりも思う存分にやった方が後々に良いと判断したのだ。

 結果として、模擬戦が終わったのは三日後の昼過ぎであった。

 

 

 

 

 

 レヴェリアは物凄く嫌そうな顔をしていた。

 せっかく『学区』に来たのだから、講義をお願いします、とバルドルに頼まれた。

 オラリオ寄港時にやっている第一講堂を使った特別講義ではなく、日常的にやっている普通の講義だ。

 レヴェリアとしてもそのつもりであった為、快諾した。

 無論、オラリオに戻らないとさすがにマズイ為、1週間限定夜間開講である

 その初日、最初の講義。

 夕日が差し込む講堂は超満員であったが、その最前列の更に前には机と椅子が置かれており、そこには制服を着て満面の笑みを浮かべたフレイヤがいた。

 

 これはイズンの入れ知恵であり、生徒として出席しちゃおう大作戦だ。

 フレイヤが乗らないわけがなかった。

 

 レヴェリアとてフレイヤが借りてきた猫のように大人しいわけがない、と考えていた。

 だが、さすがに講義に堂々と出てくる――それもどっかから机と椅子まで持ってきて――とは思いもしなかった。

 とはいえ、このまま何もしないわけにはいかない。

 時間は有限であるし、生徒達もどういう講義になるのか、誰もがワクワクしている。

 レヴェリアはクソデカい溜息を吐いて、言葉を紡ぐ。

 

「そこの最前列の更に前に座っているたわけ女神……容赦はしないからな」

「ふふん。私を舐めないで……待って、今のナシ」

 

 そう言った後、こほんと一つ咳払い。

 

「私を舐めないでください、レヴェリア先生」

 

 わざわざ敬語に言い直して、生徒感をアピールするフレイヤにレヴェリアは再びデッカイ溜息を吐く。

 そういうのはベッドでのプレイだけにしてくれ、と心の中で思いつつ、講義を開始するのだった。

 

 

 

 

 そして深夜、全ての講義が無事に終わり、レヴェリアはようやく一息ついていた。

 イズンと呑みに行っている為、フレイヤはいない。

 さすがに疲れたな、と思いつつ、レオンから聞いていた生徒――レギ・ギギについて思考を巡らせる。

 レオンが伝えてきたということは、他の同胞達のように畏れ多すぎて無理なんて事態にはならないだろう、とレヴェリアは考える。

 

 直接話したことはないが、今日の3回目の講義で見かけた。

 小隊のメンバーであるニイナ達と一緒に後ろの席に座っていたのだが、レヴェリアへ熱の篭もった視線をこれでもかとぶつけてきていた。

 レヴェリア的には大歓迎であるが、本人の気質がフレイヤ・ファミリアに合うかとうかが問題だ。

 

「明日にでも面談して、派閥体験(インターン)の提案をしてみるかな」

 

 どういう子なんだろうか、とレヴェリアは楽しみであった。

 

 

 

 

 

 

 

「でね、レヴェリアがね……」

 

 にっこにこの笑顔でフレイヤはイズンにレヴェリアとの日々を語る。

 『学区』がオラリオに寄港する度に、2人は会って呑んでいるのだが、その話題はレヴェリアのこと。

 フレイヤの惚気をイズンが楽しく聞いている形であり、毎回こうであった。

 天界にいた頃よりもずっと素敵で可愛らしい笑顔を浮かべて、伴侶(レヴェリア)のことを語りまくるフレイヤにイズンとしても感慨深い。

 そのように思うのもまたいつもと同じであった。

 

 何より、イズンとしても未だに信じられないのがフレイヤの降臨地点にレヴェリアが偶然いたことだ。

 下界に降り立って目の前にいた人物が伴侶(オーズ)だった、などとは誰も予想できず、運命的な出会いだ。

 下界に出会いを求めるのは間違いじゃなかった、と会う度に宣うフレイヤを見て、イズンとしても嬉しい限りだ。

 

 気分良く相槌を打ちながらフレイヤの話を聞いていて、話題が直近のこと――黒竜偵察の話となった時、イズンはふと気になった。

 黒竜偵察終了後、レヴェリアのステイタス更新をしたのだろうか、と。

 随分とドタバタしていたようで、話を聞く限りではレヴェリアどころか他の眷族達のステイタス更新もフレイヤはやっていないように思える。

 

「ところでフレイヤ、ステイタス更新ってしたの?」

 

 楽しく語っていたフレイヤが面白いくらいにピタリと固まった。

 まるで彼女だけ時間停止攻撃でも食らったかの如く。

 もうその反応だけでイズンには答えが分かったが、あえて聞く。

 

「まさか……してない?」

「そそそそそそんなわけないじゃない! 私はフレイヤ! 完全無敵天下無双超ゴイスーな完璧で究極の女神様よ!」

「うんうん、やるべきことを忘れちゃうのもアオハルだけど……ちゃんとやろうね」

 

 ものすっごい慌てるフレイヤに対して、イズンは生暖かい視線を向けながら優しく告げた。

 だが、それだけで終わらずさらに尋ねる。

 

「というか、他の子達は何も言わなかったの?」

「……だって、レヴェリアが帰ってくるなり『学区』にそのまま行くっていうから……」

 

 フレイヤは視線を逸らしながら、おずおずと答えた。

 私も『学区』に行く、と駄々を捏ねまくるフレイヤに対して、呆れたり溜息を吐いたりフレイヤ様の望みならば、という感じでステイタス更新のことは誰も言わなかった――というのが真相だ。

 

「どう? レヴェリアちゃん」

 

 イズンの問いかけは簡潔なものであったが、それだけで十分理解できる。

 それに対してフレイヤは答える。

 

「たぶんだけど……ランクアップできると思う」

 

 魂を視ていたフレイヤだからこそ分かった。

 咆哮を間近で浴びた瞬間、弱々しくなったが、そこから反抗するかのように魂を強く輝かせた。

 これまで色んなレヴェリアを視てきたが、今回の輝きは格別のものであった。

 

「咆哮を受けた時、本人はどう思ったの?」

「物凄く怖くて逃げ出したくなる程だったけど、何で私がこんなクソトカゲに怖がらないといけないんだブッ殺してやるって思ったんですって」

 

 なるほど、とイズンは頷きながら告げる。

 

「ステイタス更新、しようね?」

「……オラリオに帰ってからちゃんとするわよ」

「今、やらない理由は?」

「実際にランクアップしたら……私が喜びのあまりに風紀が乱れることになるわ」

 

 具体的にどうしてそうなるかは言っていないフレイヤだが、イズンにとってはそれだけで十分過ぎた。

 

「逢瀬は清らかに。レッツアオハル☆」

「アオハルのちドロドロ?」

「ちっがーう!」

 

 そんな感じで2人は飲み明かすのだった。

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