転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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酒呑み雑談

「実は、悩みがあるの……」

 

 フレイヤによるいつものレヴェリアとの惚気話が終わったとロキが思ったら、そんな事を言われた。

 とりあえずロキはソーマ謹製の神酒を豪快にグラスに注いで、思いっきり呷った。

 

 ここはフレイヤ・ファミリアのホーム、フレイヤの神室。

 今回のサシ飲みは、ロキがフレイヤとのコインの裏表当てゲームで勝利したことにより、ロキが指定したこの場所が会場となっていた。

 

 献上品として男神やら商人やらが持ってくる為、フレイヤのところには色んな酒が勝手に集まってくる。

 ロキが飲んでいるソーマ謹製の神酒もその一つだ。

 しかし、彼女は大酒飲みというわけでもない為、その大半が専用の倉庫にしまい込まれていた。

 故に今回、ロキは死蔵された酒達を救い出しに来た。

 ツマミも多種多様かつ美味いのでまさに言う事なしである。

 

「で、悩みってなんや?」

 

 たぶんレヴェリアちゃん関連やろうなぁ、とロキが予想しているとフレイヤは意を決して告げる。

 

「戦っている私ってどう?」

 

 ロキは思わず間の抜けた顔を披露した。

 そんな質問が飛んでくるとはさすがの彼女も予想外だった。

 天界時代も含めて、フレイヤとは腐れ縁であるが彼女が自分の手で戦っている姿など見たことがない。

 まだうちが剣を振るう方が様になっているやないか、と内心で自画自賛しつつロキは尋ねる。

 

「何がどうしてそうなったんや?」

「いやほら、私ってどうしても非戦闘員で守られる側じゃない? 神だからとかそういうの抜きで」

「そりゃまあそうやろうなぁ……」

「そこよ!」

 

 肯定したロキに対して、フレイヤはずびしっと人差し指を突きつける。

 

「うちがレヴェリアちゃんじゃなくてよかったなぁ……レヴェリアちゃんならこの時点で溜息を吐きながら、簀巻きにしてたで」

「実は前から亀甲縛りを提案しているんだけど、ダメって言われているわ」

「そりゃそうやろうなぁ……」

「2人の時は嬉々としてやるくせに……まったくもう、レヴェリアったら」

「おっ、せやな」

 

 フレイヤの惚気にいい加減に返事をしながら、ロキは内心で首を傾げる。

 

 うちは緊縛プレイ(ソレ)、されたこともしたこともないんやけど?

 

 大抵の場合、ロキがレヴェリアの胸や太腿に飛びついてあとは流れで、という感じだ。

 これはうちが悪いのか、いやいやあの身体を前にして飛びつかねば無作法というもの、うちは悪くない、レヴェリアちゃんがドスケベなのが悪い、とロキ流ドスケベ悪理論を脳内展開して責任転嫁を刹那の間に完了。

 

 今度、縛ったろ――ロキは心のメモ帳に書き加えながら、脱線している話を元に戻すべく告げる。

 

「んで、何で戦うっちゅう話になんのや?」

「ギャップ萌え」

 

 ロキの問いに対して、フレイヤは一言でもって答えた。

 そして、それだけで事足りる。

 ギャップ萌え――それは神々だけでなく人類にとっても刺さる、万能的特攻だ。

 

「いやでも、レヴェリアちゃんの性癖にジブンもブッ刺さっとるやろ。見た目清楚な彼女が裏……っちゅうかまあ、天界時代やけど超絶ビッチとかそれ以外にも色々と属性モリモリやんけ」

「それはそうだけど、やっぱり積極的に新しい扉は開いていきたいっていうか……」

「ほーん……」

「そもそもレヴェリアが乙女になるのは、長身銀髪ポニテ碧眼爆乳爆尻イケメンクール王子様系スパダリ歳上美女であることはあなたも知っていると思うけど……」

「知らんわ、なにそれ怖……」

 

 突然お出しされた属性モリモリ性癖に、ロキは恐れ慄いた。

 即座に脳内に描けてしまう程に具体的であるが為、余計に性質が悪い。

 しかし、それはそれとして面白い情報である為、今度レヴェリアをからかってやろうと心に決めた。

 そんな彼女の反応を無視して、フレイヤは言葉を続ける。

 

「だからまず、その第一歩として戦っている私を見せようかなって。非戦闘員だと思ったら、実はバリバリ戦えますって良くなくない?」

「安直やなぁ……ちゅーか、もしもそれでジブンが持っている剣がうっかり身体にぶっ刺さって送還とかなったら、笑いすぎてうちも送還される自信があるわ。オラリオ中の神々がそうなるかもしれん」

「ダメ?」

「ダメやな。笑撃の下界滅亡エンド一直線や」

「となると、やはりこのプランしかないわね」

 

 ロキの駄目出しに対して、フレイヤはそう告げた。

 彼女の狙いが何となく予想できていたロキであるが、一応尋ねる。

 

「言うてみ」

「ヘルンに変神してもらって、適当に戦ってもらおうプラン」

「たぶんやけど、レヴェリアちゃんも含めて大勢の冒険者に正体がバレるで。戦闘時のヘルンちゃんの癖とかあるやろうし。そこから芋づる式にジブンとヘルンちゃんの関係もバレるやろうな」

「むむむ……」

「何が『むむむ』や。そもそもジブンだって分かって言うとるやろ?」

 

 呆れながら問いかけたロキに対して、フレイヤはあっさり頷いてみせる。

 

「戦うっていうのはやっぱり飛躍し過ぎたかなって思ってはいたのよ。そういう才能は私にはなさそうだし……」

「せやろなぁ……ジブンがイシュタルみたいに戦っている姿はどう頑張っても想像できん」

「まあ、いずれ変神魔法の種明かしをする時は私に変神したヘルンに、誰かしらと戦ってもらったりしようかなって思っているわ」

 

 さすがのレヴェリアでも見た瞬間だけは吃驚すると思うし、とフレイヤは付け足した。

 それに関してはロキも同意見だ。

 動きの癖などから変神したヘルンであることを見抜くのに数十秒――あるいはもっと短い時間であるだろうが、一発ぶちかますだけならばアリである。

 

「で、何かない? 新しい扉が開けそうなやつ」

「あるかい、ボケ……っていつもなら切り捨てるところやけど」

 

 ロキはそう言いながら、新しい酒瓶の封を開けてグラスに並々と注ぐ。

 それを一気に飲み干して、不敵な笑みを浮かべてみせる。 

 

「酒の代金や。一つ案が浮かんだ」

「聞かせて」

 

 せがむフレイヤに対して、ロキは鷹揚に頷いて――告げる。

 

「マッサージや。それもASMR付きの。ジブンのことや、レヴェリアちゃんにやってもらうばかりで、やってあげたことはないやろうし」

「ところがどっこい、やったことはあるわ」

「マジで?」

「マジね。レヴェリア、ビクンビクンしていてとても可愛かった」

 

 腕を組んで、情景を思い出しながらウンウンと頷くフレイヤ。

 ロキもまた同じく頷いてみせる。

 彼女がやった時もフレイヤが言ったような事になった為だ。

 そこでロキは当の本人であるレヴェリアを見ていないことに気がついた。

 

「そういやレヴェリアちゃんは?」

「ギルドへ行っているわ。アミッドが持ってきた依頼を受けて38階層に行っていたのよ。その報告に」

「38階層っていうと『水雷の丘』やな。何かあったん?」

「冒険者の亡骸に寄生するタイプのモンスターが出たんですって。で、レヴェリアが手の空いている子達を連れて行って、サクッと解決してきたのよ」

「ほーん。ちぃと前に報告にあった、変わった強化種の群れも関係あったん?」

 

 ロキの問いかけにフレイヤは頷いてみせる。

 

 それは四派閥をはじめとした面々がレヴェリアと臨時合宿をすべく、50階層に向かっていた時だ。

 40階層にて、見慣れぬ異形の強化種――奇怪な形に身体が隆起しているトロールの群れを発見し、即座に殲滅。

 ダンジョンならそういう事(イレギュラー)もあるか、と判断され、ギルド及び各派閥の主神に報告はされたものの、詳細な調査はされなかった。

 だが、その後、とある中堅派閥のパーティから38階層にて冒険者の死体が動いて、襲いかかってきたという報告がなされた。

 死体が動いた、という事態を重くみたギルドはアミッドに調査を依頼。

 依頼を受けた彼女は38階層という深層であること、広範囲を捜索する必要があることから自派閥だけでは対処不可能と判断し、レヴェリアのところに話を持ってきた――という次第であった。

 フレイヤ・ファミリアに属していないものの、アミッドもまたレヴェリアの弟子である。

 故に、他の派閥に依頼するよりも話が早かった。

 

「犯人は38階層と37階層の間……屋根裏部屋にいたキノコですって」

「ほーん……厄介やなぁ。ギルドから発見次第即殲滅するよう通達が出そうやな」

 

 そう答えながらロキはぐびぐび、と酒を呑んでツマミを食べる。

 そんな彼女を眺めながら、フレイヤはふと思う。

 

「……ねぇ、ロキ。今から私がいっぱい飲んで、酔っ払ったままレヴェリアを迎えたら……」

「水をぶっかけられるか、簀巻きか、あるいはイチャラブのどれかやな。イチャラブは確率的に低いとみた」

 

 そう答えたところで、ロキはにんまりと笑ってみせる。

 

「まあ、うちとしては泥酔したフレイヤがレヴェリアちゃんに抱きついたところで、気持ち悪くなってゲロ吐いてぶっかけたら超おもろいんやけどなぁ」

「美の女神はゲロなんて吐かないわ」

「ほっほーん。ホンマかー?」

「本当よ。でもでも、さすがに今回はやめておくわ」

 

 そう言ってフレイヤはグラスに注いだ葡萄酒を少しだけ呑んだ。

 つい先程まで呑んでいた量と比べて明らかに少なく、酔わないようにセーブし始めたのが窺える。

 それを見たロキはさらにフレイヤをからかい始めるのだった。

 

 

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