「ふっふっふ……」
姿見に映る自分を見て、ヘイズは怪しい笑みを浮かべていた。
夕食はメレンのレストランで食べる為、レヴェリア一行はビーチから別荘へ戻ってきていた。
水着のまま食べに行くわけにもいかない為だ。
軽くシャワーを浴びた後、それぞれの割り当てられた部屋へ着替えに戻ったのだが、ここにきてヘイズは秘密兵器を投入していた。
「皆に内緒でこっそりと買っておいたんですよねー」
今、彼女が着ているのは桜色の浴衣であった。
ヘイズはしっかり覚えていた。
以前、レヴェリアが一緒に夏祭りに行きたいランキングなど複数のランキングにおいて、ヘイズに一票を投じてくれたことを。
今回夏祭りはないがフレイヤからのアドバイスもあり、ヘイズは密かに浴衣を調達していた。
また浴衣を着るにあたり、髪型も三つ編み団子に変えており、いつもとは違う印象を周囲に与えることになるだろう。
これでばっちぐー。
今夜のお相手は私に決まりですねー。
むっふー、と大きな胸を張って、そんなことを思っていると集合時間近くになったので、部屋を出てエントランスホールに向かうと――
「なん、だと……!」
ヘイズは目を疑った。
全員が揃いも揃って浴衣を着ていた。
とりあえず彼女は事情を聞くべく、手近なところにいた碧を基調とした浴衣を着ているレフィーヤに尋ねた。
「レフィーヤ、その格好は……?」
「フレイヤ様にアドバイスをもらいました。浴衣姿ならレヴェリア様にクリティカルヒットだって……たぶん、皆さん同じです」
「おーけーおーけー、全て理解しましたー」
そうですよねー、聞かないわけがないですよねー、とヘイズは納得する。
とはいえ、色合いも柄も千差万別。
先の水着では遅れを取ったが、今や巻き返しの時だ。
ヘイズは気合を入れて、周囲の様子を窺う。
「うー、窮屈……」
「動きにくいったらありゃしないが……あいつが喜ぶならいいか」
「アマゾネス好みの格好じゃないわね。だからこそ、レヴェリアに刺さるわ」
アマゾネス3人組も柄や色合いは違えど、ちゃんとした浴衣を着ていた。
彼女達から少し離れたところに浴衣姿のヘルンを見つけた。
早速ヘイズは絡みにいく。
「ヘルン、あなたも浴衣なんですかー?」
「何か文句があるの? この格好がオススメとフレイヤ様が仰られていたのよ」
「そうですかそうですかー。で、自分で選んだんですかー?」
問いかけに対して、ヘルンは頷いてみせる。
水着はレヴェリアと選んだが、浴衣に関してはヘルンが自ら選び抜いたものだ。
その落ち着いた色合いと柄は紛れもなく、彼女自身のセンスによるものであった。
ヘイズが納得したその時だった。
「待たせたな」
その声に皆が視線を向ければ、そこにはレヴェリアがいた。
黒を基調とした牡丹柄の浴衣を彼女は着ており、またその髪型をポニーテールにしていた。
浴衣姿である為、露出は激しくないのだが妖艶な色香がたっぷりと漂っていた。
年上のお姉さん? いや、これは人妻……違う、未亡人だ!
ヘルメスがいたら、そう叫んだに違いない。
視線を独り占めにしているレヴェリアは、一同を見回してその装いを見て、柔らかく微笑んだ。
そんな姿を見て、ぽつりとレフィーヤが呟く。
「……よしよししてもらって、ぎゅーってされたい……」
「レフィーヤ、不敬ですよ。その気持ちはとてもわかりますが……フィルヴィス?」
レフィーヤに対してアウラがたしなめるが、そこでフィルヴィスの様子に気がついた。
彼女はレヴェリアをじっと見つめて、微動だにしていない。
こういう時はコレが一番だ、と言わんばかりにメルーナがフィルヴィスの片方の足を蹴った。
蹴られたフィルヴィスはビクリと身体を震わせて、下手人であるメルーナを睨みつける。
しかし、メルーナが気にするわけもなく、不埒な思考を暴いてやろうと問いかけた。
「フィルヴィス、何を考えていた? 素直に言え」
「……膝枕を、その……」
その一言で問いかけたメルーナだけでなく、アウラとレフィーヤも自分がやってもらっている光景を思い描いてみた。
ドロッドロに甘やかしてもらえそうだった。
人を駄目にするクッションならぬ人を駄目にする膝枕だ。
それはさておき、とにもかくにも夕食である。
「そろそろ行こう」
レヴェリアの一声により、いざ出発となった。
メレンはオラリオと世界を繋ぐ貿易の要である為、人の往来が激しい。
夕食時ということもあって、街中は結構な賑わいだ。
そのような中、レヴェリアを先頭に、ずらずらと列を作って歩けばメレンの住民達は勿論、一時滞在者達――商人や水夫、旅人など――からも注目の的となる。
「……予想していましたが、やはり注目されますね」
「まったく、レヴェリア様の浴衣姿がいくら至高の領域で、押し倒すも良し押し倒されるも良しの爛れた日常を永遠に送りたいと心の中で願っていても、ジロジロと見てくるなんて不敬ですねー」
アスフィの言葉に、ヘイズが流れるように言葉を紡いだ。
通行人達の心の中を予想しているという体であるが、本人の願望にしか聞こえない。
コイツが一番不敬では、とエルフ4人組から疑惑の目を向けられるが、ヘイズが意に介すわけもなく。
「レヴェリア様ー、ぶちゅーしてもいいですかー?」
遂に直接的な言葉を投げかけた
ヘイズの尻を蹴り上げたのである。
短い悲鳴を上げて跳び上がった彼女はヘルンを睨みつける。
「私のお尻を蹴るなんていい度胸ですねー?」
「自業自得よ」
そのやり取りは視線を向けていた通行人達にも見えていた。
漏れ聞こえた単語や名前から、下手なちょっかいを出すのはやめておこうと決心する。
レヴェリアとその弟子達に睨まれたら、ヤバいことになるのは自明の理であった。
レヴェリアが予約をしたレストランは3階建てで、海が一望できる立地が売りだ。
最上階にはバルコニー付きの大部屋があり、パーティー会場として利用されている。
今回、夕食の場となったのはその大部屋だ。
部屋にレヴェリア達が到着してから10分もしないうちに、多種多様な海鮮料理を載せた大皿がたくさん運び込まれてきた。
自分の食べたいものを小皿に盛り付けて、適当な席についたところでレヴェリアが乾杯の音頭を取り、いよいよ夕食の開始となった。
話に花を咲かせながら料理に舌鼓を打ち、エールや葡萄酒を味わう。
レヴェリアが選んだ店なだけあり、料理はどれもこれも絶品だ。
ひとしきり料理を食べた後、レヴェリアは壁に掛かった時計で時刻を確認して告げた。
「そろそろ面白いものが見られる。全員、バルコニーへ出てくれ」
その言葉に従い、ずらずらと皆でバルコニーへ。
大部屋に設置されているだけあり、バルコニーは大人数でも十分な広さがあった。
「レヴェリア、何が見られるの?」
「オラリオではあまり知られていないものだ」
アイズの問いかけに、レヴェリアはそう返しつつ懐中時計を取り出して、再度時刻を確認。
「そろそろだぞ」
そう告げた時、月明かりに照らされた海上から聞き慣れぬ音が聞こえた。
やがて、その音が聞こえなくなった時――腹に響く音と共に夜空に大輪の花が咲いて、地上を明るく照らし出す。
何だ何だとメレンの街中が騒がしくなるが、お構いなしに次々と夜空に色取り取りの花が咲き誇っていく。
夜空に咲く花々に目を奪われるアスフィ達に対して、レヴェリアが説明する。
「極東では一般的な花火というものでな。最近、オラリオに進出した花火職人達によるものだ。海上での打ち上げの為、ニョルズ・ファミリアに依頼をして船を出してもらっている」
「春姫、アンタは見たことあるかい?」
説明を聞いて、アイシャが春姫に尋ねると彼女は頷いてみせる。
「けれど、ここまで盛大なものは見たことがないです。本当に綺麗……」
「レヴェリア様、ミャー達の為にこんなサプライズをしてくれたニャ?」
春姫の言葉を受け、クロエが尋ねればレヴェリアは柔和な笑みを浮かべて頷いてみせる。
今回、レヴェリアが職人達に依頼した花火玉は大小合わせて2万発であり、花火大会を開催できる規模であった。
数ヶ月前レヴェリアから注文を聞いた時、かつてない超大口注文に花火職人達は嬉しさとタイトなスケジュールに悲鳴を上げたが、どうにかこうにか間に合った。
彼等は昼夜兼行のデスマーチを無事に終えたのだ。
なお、この花火は『メレンにおける新しい観光資源の創出』という体でもって、レヴェリアはギルドの許可も取ってあった。
実際、風物詩にしようとレヴェリアは目論んでいたので嘘ではなかった。
「慰安旅行だからな。お前達の頑張りを労いたい。じっくり鑑賞してくれ」
そう答えたレヴェリアに対して、アイシャがここぞとばかりに告げる。
「それじゃあレヴェリア。とりあえず私の横に来てくれ」
「アイシャ、ちょっとアンタどさくさに紛れて何を言っているのよ? レヴェリアは私の隣に決まっているじゃない」
「いやいや、ここは間を取って私の隣で……」
即座にティオネが反論し、ティオナが漁夫の利を狙いに行く。
それをきっかけに、喧々諤々の論争が始まるがレヴェリアは慣れたものだ。
「案ずるな。花火はすぐ終わったりはしないからな」
全て打ち上げるのに2時間は掛かると聞いていたので、レヴェリアはその間、弟子達を1人ずつ順番に労うつもりであった。
「アスフィ、ちょっとこっちに来てくれ」
そう言ってレヴェリアはバルコニーの端へ寄って、手招きしてみせた。
「まったくもう……」
アスフィは喜びを隠しつつ、呆れた風を装って向かうのだった。
花火も終わり、興奮のままにレヴェリア達は別荘に戻った。
そして、今度はレヴェリアがあらかじめ購入していた家庭用花火セットを庭でやることになった。
各々、手持ち花火を選んで点火棒で火をつけて楽しむ中、レヴェリアは前世の動画で見て、やりたいと思って自作したものを持ってきた。
「……レヴェリア様、何ですかそれは?」
頬を引き攣らせながら問いかけたアスフィ。
彼女の前にはロケット花火を専用の台座で無数にくくりつけた――傍目には蜂の巣のように見える代物を抱えたレヴェリアが立っていた。
あまりにも厳つすぎるその物体に、ティオナが「おぉー!」と声を上げる。
「自作した多連装ロケット花火だ」
「それ、どうするんですか?」
「勿論、やるに決まっている。ヘイズ」
「はーい」
レヴェリアが呼びかければ、点火棒を持ったヘイズが素早く近寄って導火線に火をつけた。
その躊躇のなさから事前にヘイズは知っていたように思えるが、そんなことはない。
彼女にとって、レヴェリアのやりたいことは全てにおいて優先されるだけである。
やがて火が回り、多連装ロケット花火が火を吹いた。
甲高い音と共に連続して物凄い勢いで発射されていくロケット花火。
彼女が抱えてぶっ放している為、反動もスゴイのだが、その圧倒的な体幹でもって完璧に抑え込んでいた。
私もやりたーい、とティオナやアイズが目を輝かせている中、テンションが上がりまくったレヴェリアが雄叫びを上げるのを見て、ヘイズは満面の笑み。
「レヴェリア様が楽しそうで良かったですー」
「いやいやいや、少しは躊躇してくださいよ」
「どうして躊躇する必要があるんですか? わけわからーん!」
「わけわからーん、で済ませないでください」
そうこうしているうちに、ロケット花火が終わった。
「レヴェリア、私も!」
「私も!」
「今度、作るからな。約束だ」
レヴェリアの言葉に2人揃ってテンションを高めた。
それからしばらくの間、皆でワイワイと騒ぎながら楽しんだ。
花火が終わった後、アイシャの提案で別荘にある大浴場にて皆でお風呂に入り、誰がレヴェリアの背中を流すかで壮絶なジャンケン大会が開かれたり、その一方でレヴェリアが全員の背中を流して回ったりするなどした。
あとは寝るだけとなったのだが、それだけで終わるわけがなかった。
1人寂しく寝ることができない面々が大勢いた為である。
彼女達は各々、レヴェリアの部屋を目指し――廊下で鉢合わせした。
真っ先に口を開いたのはレフィーヤだ。
居並ぶ面々を見て、彼女の妄想回路はフル回転し、組んず解れつの桃色展開が脳内に描かれた。
夏の別荘・エロ景色である。
「あまりにも破廉恥です! 『夜の豊穣豊穣大作戦』なんて……! で、ですが、レヴェリア様がどうしてもと仰るのでしたら、その……私はっ……いいですけどっ!」
ナニ言ってんだこのスケベエルフ、という視線が彼女に向けられるが、本人は気づかない。
妄想が迸っていた為に。
とはいえ、この場で戦うという選択肢もない。
「うーん、これはそこのスケベレフィーヤの言う通り、レヴェリア様に全員まとめてお相手して頂くしかありませんねー」
ヘイズの言葉に、レフィーヤがようやく戻ってきた。
そして、抗議の声を上げる。
「ヘイズさん! 私はスケベじゃないです!」
「おっと失礼、ドスケベでしたねー」
「違いますー!」
「どうでもいいわ。それよりもヘイズ、あなたにしては良いアイディアね」
「私にしてはって酷くないですか? とりあえず、皆でヘルンを袋叩きにしません? 1人減らすくらいならいいかとー」
「そうくるなら全員まとめて叩きのめす。そして、私の全てを尽くしてあの御方へご奉仕を……」
そんな3人のやり取りに注目が集まっている時、アイズはこっそりと動こうとした。
だが、アウラ、フィルヴィス、メルーナが立ちはだかった。
「アイズ、そういうのは良くありませんよ」
「逃がすと思うか?」
「お前の行動などお見通しだ」
「問題ない。だって、私はレヴェリアの精霊だから……!」
全てを薙ぎ払ってレヴェリアの部屋へ行く――そんな覚悟を決めたアイズ。
今にもテンペストしそうな雰囲気を醸し出していたが、その程度でアウラ達が怯むわけがない。
「アイシャ、ティオネ、どうするー?」
「とりあえず共同戦線を組むってのはどうだい? ティオネは?」
「異議なし。ティオナは?」
「おーけー! で、どうやって突破する?」
「……真正面から行くしかないだろうね」
アイシャの提案にティオネとティオナは頷きあって、機会を窺う。
「で、クロエ。私達はどうする?」
「潰し合っているところをこっそり行くニャ」
「分かった。いつでも動けるようにしとく」
クロエの提案にルノアは承諾し、周囲を注意深く観察し始めた。
「春姫としては、ヘイズ様の提案に賛成なので……」
「私も同じく……」
春姫、カサンドラは互いに顔を見合わせて、頷きあってヘイズの傍へ。
一触即発の空気が漂う中、クロエと春姫がこの場にはいない人物の声を捉えた。
不思議に思って方向を探れば、レヴェリアの部屋に通じる扉からだった。
「……ちょっと待つニャ。春姫、聞こえたニャ?」
「はい。まさか……」
「その可能性しかねーニャ」
クロエと春姫のやり取りに、ヘイズ達も怪訝な顔をしてみせる。
そんな彼女達に対して、クロエは告げた。
「アスフィが抜け駆けしているニャ」
「はふぅ……」
アスフィは蕩けた顔で、レヴェリアの胸に顔を埋めていた。
今の彼女はぎゅっと抱きしめられて、頭を撫でられている状態だ。
どうして彼女が誰にも見つからず、部屋に入ったのか。
その答えは魔道具にあった。
『ハデス・ヘッド』にヒントを得てレヴェリアが開発した隠密特化型魔道具。
それをアスフィがさらに改良・発展させた腕輪と
入浴後、可及的速やかに部屋に戻り、腕輪をつけて
レヴェリアが戻ってきたら、隠密を解除して窓を叩いて開けてもらう――というやり方であった。
アスフィ達が突撃してくることはレヴェリアも予期していたものの、このルートでやってくることはさすがに想定外だった。
昼間のことといい、花火を見ながらバルコニーで話したことといい、どうしてもレヴェリアと過ごしたかったが故のアスフィの行動だ。
他の面々が突撃してくることが分かっているにも関わらず、このように甘えてくるアスフィも中々珍しい。
だからこそ、レヴェリアはたっぷり甘やかしていた。
「失礼しまーす! アスフィーーー! ナニヤッているんですかぁーーー!」
ノックと同時に扉が開け放たれ、入ってきたヘイズが叫んだ。
「……別にヤッてないですけど」
「ヤッていなくてもアウトですー! っていうか、まだヤッてないだけでしょー!」
むーっと頬を膨らませるヘイズ。
その横からヘルン達も続々と部屋に入ってきて、2人の光景を目の当たりにし――レフィーヤが叫んだ。
「『夜の豊穣豊穣大作戦』なんてっ……破廉恥です! ですが、そのっ……レヴェリア様がどうしてもと仰るのなら……私はっ……いいですけどっ!」
「レフィーヤ、それはさっきも言ったぞ……」
さっきと似たようなことを言ったレフィーヤに対して、ツッコミを入れるフィルヴィス。
そして、どさくさ紛れにアイズが疾風の如く飛び出して、レヴェリアの背中に抱きついた。
長耳に口元を寄せて囁く。
「レヴェリア、私もぎゅっとして。それから……いつものこと、しよ?」
「私もー!」
アイズの反対側からはティオナがくっつきながら言った。
「レヴェリア、覚悟を決めて私達全員を相手にしてくれ。できるだろ? アンタなら」
そして、アイシャの言葉にレヴェリアはアスフィの頭を撫でながら、凛々しい表情となった。
彼女は複数人を敵に回した戦いはベッド上でも大得意だ。
「よろしい、かかってこい。相手になってやる……全力でな」
夜の戦闘が始まった――!
「とか何とか、アホなことになっているんですよ」
現在のレヴェリアの部屋で繰り広げられている事を予想して話し、リリルカはお菓子を摘んだ。
「まあ、そうなっているだろうね」
肯定しながらダフネもお菓子を摘む。
「2人や3人ならどうやるのか、何となく想像がつきますが……それ以上の人数ってどうやるんでしょうか?」
そう問いかけながらアミッドもお菓子を摘んだ。
「私もそう思った。あと1人あたりの時間が少なくなって、互いに満足できないんじゃないかな……」
「リリも同じく。少人数ごとにすればいいと思いますね」
アミッドの言葉に、リリルカとダフネも同意を示す。
別荘内にある談話室にて、お風呂上がりの3人はお茶会を開いていた。
互いにレヴェリアと深い関係にあることはお茶会が始まってしばらくしてから、カミングアウトしている。
彼女達ならば話しても変なことにはならないだろう、という信頼があった為だ。
「にしても、明日の朝までに終わるんですかね。無理じゃないですか?」
「レヴェリア様の事ですから、何とかされるでしょう。正気を疑う変態行為をしなければ、ですが」
「やっぱり、そういうことされているんだ。私もそうだよ」
それからも3人はのんびりと話をしており、ある程度のところで解散となったのだが――やはり気になってしまった。
3人はレヴェリアの部屋の前にいた。
声や音は聞こえず、静かなものだ。
まさかもう全員、倒したのかと3人は驚愕しつつ、代表してリリルカが扉をこっそりと開けてみれば――
「……えぇ」
予想外の光景に困惑し、思わず声をリリルカは漏らした。
横から覗いたダフネは目を丸くして、アミッドは首を傾げた。
ネグリジェを着たレヴェリアが優雅にソファに座って、寛いでいた。
換気のためか窓は全て開け放たれており、少し冷たい夜風が室内に入ってきていた。
室内には彼女以外には誰もいなかった。
「ん? どうかしたか?」
そこでリリルカ達に気がついたレヴェリアが声を掛けた。
覗き見しようとした罪悪感よりも疑問が勝った。
ドアを完全に開けて、リリルカが代表して尋ねた。
「あの、レヴェリア様。他の方達は……?」
「満足してもらったから、それぞれの部屋に寝かせてきたぞ」
「……ヤッたの?」
レヴェリアの答えに対して、ダフネが短く問いかければ頷いてみせる。
そこにアミッドが疑問を呈する。
「入浴後から計算すれば最低でも数時間は経過していますが、それでも人数を考えれば……早すぎませんか?」
「私は長年フレイヤ、イシュタル、アフロディーテと褥を共にしていてな。寄り道をせずに全力でストレートにヤればあっという間だ」
アミッドの問いに対する答えにより、レヴェリアが言わんとしていることを3人は理解した。
天界でもトップクラスの美の女神3柱によりテクニックを仕込まれたり、また彼女達を喜ばせるべくテクニックを磨いてきたレヴェリア。
故に全力でその技量を発揮すれば、初見の相手でも簡単にとても気持ち良くさせることができる。
ましてや今回、身体の隅から隅までよく知っている相手だ。
1人あたりに対する時間は確かに少ないが、与えられる快感の密度はいつもとは比較にならなかった。
無論、耳元では絶えず愛を囁いており、アマゾネス3人組ですらもあっという間に陥落していた。
さらなる疑問が湧いてきたアミッドは尋ねる。
「普段、特定の変態行為がとても長時間に及ぶのは……」
「私の趣味だ。とても興奮するから……つい」
涼しい顔で答えたレヴェリアに対して、アミッドは溜息を吐く。
そういった行為は恥ずかしいが、その背徳的なシチュエーションや与えられる快楽が気持ち良いのもまた事実。
故に、彼女はそれ以上何も言わないことにした。
「ところで、せっかくだからちょっと話をしていかないか?」
「そうやってリリ達も食べるつもりですね?」
レヴェリアの提案に対して、そう返すリリルカ。
苦笑しつつ、レヴェリアは告げる。
「その場の流れでそうなったら、私はそうするが……のんびり話したいだけだ」
レヴェリアの言葉に、リリルカはダフネとアミッドに目配せすれば、それぞれ少し迷いつつも頷いてみせた。
そして、リリルカが毅然とした態度で告げる。
「分かりました。絶対にエロい展開にはしないので、安心して下さい」
スゴイフラグを立ててきたなぁ、とレヴェリアは思いつつ、彼女達に紅茶を淹れようと ソファから立ち上がった。
その後、本当にただ話をするだけで終わりそうになった。
レヴェリアならばあれこれ手を尽くして、エロいことしようとするだろう――そう考えていた3人からすれば、それはそれで何だかイヤだった。
その為、リリルカが不満を述べて、自らの手でフラグを回収する羽目になった。
レヴェリアが遠慮をする筈もなく、3人はアスフィ達がどういう事になったのか、身を以て味わうこととなった。
そんなこんなで夜は更けていき、リリルカ達もまたレヴェリアの手によってそれぞれの部屋のベッドに送られた。
そして、夜が明けたのだが――
「……ふふっ、可愛いなぁもう」
穏やかな微笑みを浮かべ、レヴェリアは呟いた。
大食堂に用意された全員分の朝食。
リリルカ達を送った後、時間も時間なのでそのまま起きていた彼女がこしらえたものであり、オーソドックスなメニューが並んでいる。
しかしながら、今に至るまで誰も起きてこない。
アスフィやヘイズ、ヘルン、アミッド、アウラ達エルフ4人組などといった時間にキッチリとしている面々ですらも、未だに夢の中であった。
「よし、部屋を回って順番に起こして行くかな」
そう言ったレヴェリアだが、フレイヤにやっているようなやり方ではない。
優しく耳元で囁きながら、額や頬に口付けをしていく――そんな甘ったるいやり方だ。
普通に起こせばいいのに、そうはせず自分の欲望に素直なのがレヴェリアであった。
結果、1人起こす度に抱きつかれるなど色々とした為、全員を起こし終わった頃には朝食はすっかり冷めていた。
そんなこんなで互いの絆をより深め、慰安旅行は幕を閉じたのだった。