転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

153 / 156
結末

 

 見知った者はいないな――

 

 居並ぶ面々を見て、レヴェリアは心の中で呟いた。

 貴賓室にて彼女は他の客達から挨拶をされていたが、面識がある者は誰もいなかった。

 ここにいる連中とは親しくならない方が良い、という予感がしている為、レヴェリアは当たり障りのない対応をしていく。

 その途中、グラッドから勧められた葡萄酒を飲みつつ、一通りの挨拶が済んだところで彼が告げた。

 

「ところでレヴェリア様、私も多情な方でしてね。ここにいる美姫達はそんな私の求愛に真摯に応えてくれた者達です」

 

 ドレスを纏って客達に給仕をしている女性達をグラッドはそう紹介した。

 愛想笑いをしているものの、まるで人形のような印象をレヴェリアは受けていた。

 輝夜は僅かに眉を顰めてみせ、クロエとルノアは荷物持ちという体である為、素知らぬ顔をしている。

 ヘルンは無表情を貫き、シルは――

 

「へぇー、レヴェリアさんと一緒なんですねー」

 

 にこにこ笑顔で無邪気に告げた。

 シルが小悪魔的性格をしていることはレヴェリア達には周知の事実であるが、今ここで小悪魔は大悪魔へ進化した。

 事情を知っているヘルンはバッと勢いよくシルへ顔を向け、マジマジと見つめた。

 しかし、それは彼女だけではなく、輝夜とクロエ、ルノアも同じ反応であった。

 

 そんな彼女達に対してウィンクした後、シルはレヴェリアの反応を待つ。

 対するレヴェリアはジト目で彼女を見つめれば、微笑んで頷いた。

 それを見て、レヴェリアは軽く溜息を吐く。

 違うと分かって言っているだろ、と確信したが、第三者から見れば女を囲っているのは同じである。

 故に、そこに関しては何も言わない――というか、言えない。

 

 

 仕方がない。だって、色んな子とエロいことがしたいんだもの。

 

 

 そう内心で呟いたレヴェリアは、おもむろに口を開く。

 

「多情なのは仕方がない。私もそうだからな」

「ですな!」

 

 グラッドは満面の笑みを浮かべて、嬉しそうに相槌を打った。

 その笑みにレヴェリアは心の中でげんなりとしつつも、今この場にはクレーズ夫妻から聞いていた特徴に合致している少女はいない。

 

「彼女達で全員か?」

「ふっふっふ、良くぞ聞いてくれました! 実はつい最近、私の求愛に応えてくれた者がいるのです!」

 

 レヴェリアからの問いかけに機嫌良くグラッドは答え、手近なところにいた従業員に呼ぶように伝えた。

 しばしの間を置いて、奥の部屋から彼女は現れた。

 純白のドレスを身に纏った彼女はグラッドの傍にやってきて、震える声で名乗った。

 

「初めまして……アンナと申します」

 

 レヴェリアが何気なく輝夜へ視線を送れば、彼女は小さく頷いてみせる。

 名前、外見的特徴――それら全てがクレーズ夫妻が言っていたアンナの特徴に合致するという肯定だ。

 客達が口々にアンナを口説き落としたグラッドを褒め称える中、レヴェリアは当初の作戦通りに行動する。

 

「おい、貴様は何をやっている?」

 

 レヴェリアの険しい表情と咎める口調に、グラッドだけでなく客達、アンナや他の女性達、用心棒や従業員達までも息を呑んだ。

 

「それはどういうことですか……?」

 

 グラッドが困惑した顔で尋ねれば、レヴェリアは決定的な言葉を告げた。

 

「アンナは私の女だ」

 

 瞬間、貴賓室の空気が凍りついた。

 まさかそんなバカな、と誰もが思う中でレヴェリアは告げる。

 

「アンナは素直で優しい子でな。私との関係がバレると騒ぎになると考えて、両親も含めて誰にも伝えなかった」

 

 その話を聞いて、アンナは気がついた。

 コレはレヴェリアによる作り話であることは明白。

 しかし、そ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)にしておくことで自分を助けてくれるのだ、と。

 

 アンナはレヴェリアと面識はない。

 歩いているところを遠目に見たくらいで、噂通り美しい人だな、と思った程度である。

 

「そ、そうですか……そ、その彼女がここに来た理由に関してですが……」

 

 顔色を真っ青にしつつ、震える声でグラッドは自己弁護をしようとしたが、レヴェリアは首を左右に振った。

 それを見て客達や従業員達は音もなく、グラッドから距離を置いた。

 自分達は何の関係もありません、というアピールだ。

 

「アンナを連れ去った連中に話を聞いた後、交易所で聞き込みをしてきた。私が今日ここに来たのは、彼女を取り戻す為だ」

 

 全てがバレている、とグラッドは瞬時に悟ったが、その時だった。

 レヴェリアがよ(・)ろ(・)め(・)い(・)て(・)、顔(・)を(・)俯(・)か(・)せ(・)た(・)。

 それを見た瞬間、彼は己の勝利を確信した。

 

 先程、葡萄酒をレヴェリア達に飲ませていたが、そのうちレヴェリアに飲ませたものだけは媚薬入りだ。

 グラッドが手ずからレヴェリアのグラスに注いだものであり、別のボトルと間違えたなどということはない。

 しかし、中々効果が出なかった。

 レベルが高いと効くのが遅いかもしれない、と考えて、彼はヤキモキしていた。

 レヴェリアとアンナがそんな関係であったとは知らず、効果が出なかったならば身の破滅は間違いなかった。

 かつてない危機的状況をひっくり返したことで、グラッドの精神は非常に高揚していた。

 

「貴様、何をした!」

 

 問いかけたのは輝夜は何かを盛られた、と判断していた。

 これは予定外――というか、想定していなかった。

 レヴェリアに通用する毒となると、ベヒーモスの毒でも持ってこないといけないレベルだ。

 睨みつける輝夜に対して、余裕を取り戻したグラッドは好色な笑みを浮かべて答える。

 

「レヴェリア様にはアルテナに特注した媚薬を飲んでもらったのですよ。レヴェリア様も、そろそろ女ばかりではなく、男を知るべきかと思いましてね。処女を私が貰ってやろうかと思った次第です」

 

 その言葉を聞いた瞬間、輝夜は表情は変えずに内心で安堵しつつ、レヴェリアの意図を察した。

 クロエ、ルノアも同様であったが、ヘルンは意図を理解した上で、階層主も逃げ出しそうな憤怒の形相をグラッドへ向けた。

 ヘルンからすれば、レヴェリアを穢されたに等しい。

 この世の地獄を今すぐに味合わせてやりたいところだったが、ぐっと我慢した。

 一方、シル(フレイヤ)は心配そうな顔をしつつも、何も言わなかった。

 口を開けば、シルらしくない言葉が濁流の如く飛び出しそうだったからだ。

 ヘルンの形相にグラッドは怯えるものの、余裕の態度を崩さない。

 

「さぁ、レヴェリア様。あなたの女をたっぷりと慰めて差し上げますから、あそこの女達を無力化してください。私のモノはデカくて長いですから、きっとご満足頂けますよ」

 

 彼の目論見では、快楽に堕ちたレヴェリアが男欲しさに言う事を聞いてくれる――というものだ。

 『いや、そうはならんだろ』と神々が聞けば声を揃えてツッコミをしてくれるに違いない、酷く雑で不確実なものだった。

 四派閥の面々も、その程度でレヴェリアがどうこうできるならば『頂天』に居続けるわけがない、と断言するだろう。

 『エルドラド・リゾート』のオーナーに成りすまし、バレることなくこれまでうまくやってきたという成功体験が彼の目を曇らせていた。

 慢心、油断――そんな単語が今の彼にはピッタリであった。

 

「……グラッド、ここはギルドもガネーシャ・ファミリアも手出しができない場所……いわゆる、治外法権だったな?」

「ええ、そうです。ですので、何も問題ありません」

 

 顔を俯かせたままのレヴェリアからの問いかけに、グラッドは肯定した。

 その瞬間、彼女は動いた。

 輝夜達を除けば目にも止まらぬ速さで、グラッドの頬をいい感じに手加減してぶん殴った。

 

「ひでぶっ!?」

 

 変な声を上げて、グラッドは吹っ飛んで派手な音を立てて、近くにあったテーブルに突っ込んだ。

 しかし、そこでレヴェリアは間髪入れずに治癒魔法を唱えて、彼を癒した。

 まさかの行動に輝夜達も驚く中、立ち上がった彼に対してレヴェリアは涼しい顔でもって告げる。

 

「ここは治外法権だからこそ、私が何をしても問題がない……という事だな」

「ば、バカなっ! 媚薬が効かないだとっ!?」

「そこらの連中が作った媚薬が私に効くわけがないだろう」

 

 やれやれ、と肩を竦めてみせるレヴェリアに対して、グラッドはハッと気がついた。

 

「ならば先程のあれは……?」

「カマをかけただけだ。お前が手ずから注いできたから何か盛っているかもしれない、と思ってな」

 

 そこでレヴェリアは言葉を切り、グラッドの美姫達の1人――エルフの少女に目を向ける。

 己の地位を最大限に活かし、証拠を得る為だ。

 

「同胞よ。そなたはこの男の求愛に応えたのか、それとも無理矢理連れてこられたのか。どうか私に教えてほしい」

「私も他の子達も無理矢理連れて来られました! 助けてください、レヴェリア様!」

 

 問いかけに対して、エルフの少女は即座に答えた。

 その答えに頷いてみせ、グラッドに対してレヴェリアは宣告する。

 

「年貢の納め時だな、グラッド」

「もはや、これまで……! おい、ロロ! ファウスト! 倒せとは言わん! 時間を少しでも稼げ!」

 

 グラッドが命じて、2人の男が進み出てきた。

 片方は猫人の男性、もう一方はヒューマンの男性だ。

 しかし、彼等以外にも反応した者達がいた。 

 

「ミャー達を呼んだニャ?」

「いや、ただの同姓ってだけでしょ」

 

 クロエとルノアがそんなやり取りをした直後、グラッドが叫んだ。

 

「このロロとファウストはあの【黒猫】と【黒拳】だ! フレイヤ・ファミリアにも同名の二つ名を持つ者達もいるが……こっちの2人は裏社会で依頼達成率100%を誇る手練だ!」

 

 その内容に、クロエとルノアは互いに顔を見合わせて――ニタリと笑みを浮かべ、揃って頷いた。

 使用料金を取らないと駄目だ、という考えで2人は言葉を交わさずとも一致したのだ。

 輝夜は事情を知らない為に首を傾げるが、一方でレヴェリアは何とも言えない微妙な顔となった。

 ヘルンは屠殺場に向かう子牛を見るかのような視線を自称【黒猫】と【黒拳】に向け、シルはくすくすと笑っている。

 

「あー、すまない……大変言いにくいんだが、【黒猫】と【黒拳】を名乗っている男達は偽物だぞ」

「……は?」

 

 レヴェリアの言葉に、グラッドは間の抜けた顔を披露した。

 対するロロとファウストは、まさか、とある事に気がついて驚愕のあまり目を大きく見開いた。

 

「うちのクロエとルノアがその【黒猫】と【黒拳】だ。シャルザード・ワルサ戦争の時、アラム王子を狙ってきたので、倒して勧誘した」

 

 そう言われて、グラッドはロロとファウストに疑いの視線を向ける。

 グラッドはレヴェリアの言葉を疑わなかった。

 彼女だけでこの場にいる用心棒達全員を簡単に倒せる強さがある為、嘘をつく理由がそもそもなかった。

 

 ロロとファウストはヤバいと思いつつも、無言を貫いて戦闘態勢に移った。

 もはや戦うしか道はなかった。

 たとえ相手が本物の【黒猫】と【黒拳】であり、フレイヤ・ファミリアに入団して以後、着実にランクアップを重ねてきた圧倒的格上であってもだ。

 

「どうして今までバレなかったんだ……? 二つ名もそのままなのに……」

「詳しい事情まで言う必要はないからな。二つ名に関してはフレイヤに頼んで、そのままにしてもらった。カッコいいし」

 

 呟くようなグラッドの問いかけに、レヴェリアは涼しい顔で答えた。

 そして、2人を呼ぶ。

 

「【黒猫】、【黒拳】。仕事の時間だ」

 

 呼ばれた2人はそれぞれサングラスを取り、ズボンのポケットにしまった。

 

「私達の名を騙るなんて、いい度胸ね。お礼にたっぷりと……体に分からせてあげるわ」

「大丈夫よ、殺しはしないから。ただちょっと、全身の骨をボッキボキに折るだけだから」

 

 クロエはズボンの裾に隠していた短剣を取り出し、鞘から引き抜く。

 ルノアはジャケットの裏側にある胸ポケットからグローブを取り出し、拳につけた。

 そして、2人は駆け出す。

 ロロとファウストはあまりの速さに2人の姿を見失い――何もできぬまま床に倒れ伏した。

 どちらも出血していないことから、クロエとルノアが細心の注意を払って攻撃したことが窺える。

 

「軽く撫でただけなのに……」

「柄で殴っただけなのに……」

 

 ルノアとクロエは不満げな顔となった。

 仮にも、自分達を騙るならばこのくらいの攻撃は避けて反撃してくるだろう、という読みがあったが、見事に外れた形だ。

 初撃に対応できたことで大したことないな、と偽物達に思わせてから圧倒的攻勢を仕掛けることで、『分からせる』つもりであった。

 

「こうなったら……!」

 

 ロロとファウストがあっさり敗れたことで、グラッドはアンナを人質にしようと走り出す。

 間近にまで迫って手を伸ばしてくる彼に対して、アンナは恐怖に身が竦んでしまうが――グラッドの手が届くことはなかった。

 レヴェリアが2人の間に割って入り、その背にアンナを庇いつつグラッドの足を払って転ばせたのだ。

 その背中に、アンナは安心感を覚えた。

 

 ああ、もう大丈夫だ――

 

 彼女がそう思った時、グラッドは叫んだ。

 

「俺は娯楽都市(サントリオ・ベガ)の人間だ! 俺に手を出すと娯楽都市(サントリオ・ベガ)の顔役達が黙っちゃいないぞ!」

「娯楽都市(サントリオ・ベガ)の顔役宛に、ここに来る前にお前の所業について記した手紙を送ってある。もうそろそろ返信が来てもおかしくはないが……」

 

 レヴェリアがそう答えた直後、貴賓室とホールを繋ぐ扉が開いた。

 そこにいたのは書類鞄を持ったリディスだった。

 あちこち泥で汚れており、カジノに来る格好ではない。

 しかし、彼女はカジノエリアを自由に通行できるゴールドカードを持っていた。

 息抜きと情報収集を兼ねて、オラリオの繁華街でも遊んできた為だ。

 とはいえ、それでも普通ならば入店を断られる装いである。

 しかし、彼女が娯楽都市(サントリオ・ベガ)の顔役――テリーから預かってきたモノを提示したことで、支配人の顔色が変わった。

 レヴェリア宛と『エルドラド・リゾート』の支配人宛、その2通の書状がリディスが運んできたものだった。

 

「レヴェリア様、アンタ宛に届け物ー。差出人は娯楽都市(サントリオ・ベガ)の顔役テリー・セルバンティスだよー」

「ご苦労、リディス。最高のタイミングだ」

「おかげで私はクタクタだよー。そっちのホームに行ったら、カジノに行っているってアスフィから言われるし……こりゃ特別料金に特別料金を重ねて、更にそこに特別料金を加算させてもらうしかないなー」

 

 書類鞄をレヴェリアに渡しながら、『カネ寄越せ』とストレートに要求してくるリディスに対して、レヴェリアはにこやかな笑みを浮かべた。

 

「貴賓室とホールの出入り口のところに、大型台車に積まれたトランクがあっただろう?」

「あったね。ものすっごい過積載で突いたら崩れそうなヤツ」

「2、3個持っていっていいぞ。それで数億はあるだろうからな」

 

 レヴェリアの言葉を聞いて、リディスはニンマリと笑う。

 

「だから、レヴェリア様って好きなんだよなー。今度、一晩付き合ってあげてもいいよー」

「それは楽しみだ」

 

 そして、リディスは手をひらひらさせて貴賓室から出ていった。

 彼女を見送り、レヴェリアは書類鞄から書状を取り出し、それに目を通す。

 そこにはグラッドが監査役に賄賂を送って黙らせていたこと、グラッド本人ではない可能性が高いことなどがつらつらと記されており、グラッドを即時解任することや後日改めて代表者が報告に伺う旨が書かれていた。

 テリーを含む、全顔役の署名と押印付きだ。

 

「グラッド、お前は解任された。もはやオーナーではない」

「そんなバカなっ!?」

 

 レヴェリアが書状をグラッドの目の前に出せば、彼はこれでもかと目を見開いて読み進めー―床に両膝をついて項垂れた。

 抵抗は愚か、逃げる意思すらもはや彼にはなかった。

 

 

 

 

 

 

 その後、支配人と共に貴賓室へ入ってきたガネーシャ・ファミリアにより、連行される前にグラッドの正体が暴かれた。

 恩恵があった為、開錠薬(ステイタス・シーフ)により本当の名が判明したのだ。

 彼はグラッド・ザルヴォーネではなく、以前アストレアが更生と改心を期待して、見逃したテッドであった。

 アストレア・ファミリアの面々が一発ずつ死なない程度に手加減して彼をぶん殴るという事が起きたが、些末なことであった。

 囚われていた女達の処遇も含め、諸々の後始末が終わったのは真夜中過ぎであったが、レヴェリアは輝夜を帰さなかった。

 

 

 

 

 

 

「私をこんなところに連れ込んで何をするつもりだ?」

 

 輝夜は連れ込んだ犯人であるレヴェリアに問いかけた。

 ここはカジノエリア内にある宿泊施設(ホテル)、そのスイートルームだ。

 贅を尽くした、という表現がピッタリな内装と調度品の数々であったが、それらには目もくれず輝夜はレヴェリアを睨む。

 勿論、彼女は本気で怒っているわけではないし、拒むのならばそもそも部屋までついてきていない。

 喜びを隠している輝夜に対して、レヴェリアはにこりと微笑む。

 

「テッドが盛った媚薬が今になって効いてきたようでな」

「薬のせいにするのか?」

 

 挑発的に言い返しながら、輝夜はズイッとレヴェリアに近づいた。

 彼女の方がレヴェリアよりも背丈が低い為、見上げる形となる。

 下からレヴェリアの顔をじっくりと見つめながら、輝夜は改めて思う。

 

 本当にコイツは顔が良い。それを本人も分かっているから余計にタチが悪い――

 

 『壁ドンされて、顎クイッとやられたら堕ちる。間違いない』 

 

 以前、そんなことを神々が言っていたのを輝夜は聞いたことがあった。

 何を言っているのかよく分からないが、何となく意味は分かる。

 2人きりの時、実際にやられたことが何度もあるので、その効果は彼女も認めるしかなかった。

 

 挑発的な輝夜に対して、彼女の瞳をじっくり見つめながら、レヴェリアは自らの片手を彼女の頬へ持っていき、優しく触れてゆっくり撫で始める。

 輝夜は拒まず、されるがままだ。

 しばらくそうしたところでレヴェリアは手を離し、口を開く。

 

「薬のせいだから仕方がない……そういう理由付けが必要かと思ってな」

「今更だろう。これまで素面のお前がどんな変態行為を求めてきたか、事細かに語ってやろうか?」

「語れるのか?」

 

 そう返されると輝夜は困る。

 語れるわけがない。あまりにも恥ずかしすぎる。

 

「くっ……このたわけめ……」

 

 悪態をついて、答えを誤魔化して彼女は仕切り直しの為に咳払いを一つ。

 

「で、わざわざそんな理由(もの)を持ち出してきて……私にどうして欲しいんだ?」

「自分で言うのも何だが……今回の一件、私は頑張ったよな?」

 

 問いかけに対して、レヴェリアは確認を求めるように言った。

 それは確かにそうだ、と輝夜も納得し、レヴェリアが何を求めているのかを察した。

 要するに輝夜からの個人的なご褒美の要求だった。

 この状況かつドレス姿ということ、さらにこれまでの変態行為の数々を考慮して、輝夜はレヴェリアが欲しいものを正確に予想することができた。

 

「分かった。褒美をやる」

 

 輝夜の言葉にレヴェリアは目を輝かせた。

 そんな彼女の様子に呆れつつも、求められることに喜びを感じてしまう。

 

 私も大概だな――

 

 自分自身に呆れつつ、輝夜は右手を大きく上に上げて、その腋を露出させた。

 汗ばんで蒸れた腋を、彼女は左手の人差し指と中指で拡げてみせる。

 汗と体臭の入り混じった独特な臭いが微かに香った。

 恥ずかしさのあまり、レヴェリアを睨みながら輝夜は言う。

 

「コレが欲しいんだろ。この変態め……」

 

 腋見せのポーズを取った輝夜に対して、レヴェリアはにっこり微笑んだ。

 そして、彼女は行動でもって答えるのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。