転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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信じられない話

 

「うぉおおおお!」

 

 3ヶ月程前にレベル6となったザルドが斬り掛かってきたが、レヴェリアは軽く撫でて吹き飛ばす。

 熟練度をこれまで以上に馬鹿げた数値にまで伸ばした彼女も、先月にレベル6へランクアップしていた。

 

 

 彼女がゼウスとヘラの眷族達に挑まれるようになってから5年。

 この年月で、両派閥ではザルドのようにランクアップをした者は多い。

 

 レヴェリアを超えんとして、あるいは追いつかれまいと彼女と戦いつつ、ダンジョンに篭もり、団員同士で戦ってきたのが要因だ。

 

 なお、この5年間でフレイヤ・ファミリアは団員を大きく増やし、レヴェリア以外にもランクアップした者が多くいた。

 突出しているのは、当時レベル3であったディース姉妹とミアだ。

 彼女達はこの5年でレベルを2つ上げて、レベル5に至っている。

 ちなみに、嘆願書が出されていた【満たす煤者達(アンドフリームニル)】の増員は大苦戦したものの、どうにか必要人数を確保することに成功し、合わせて待遇改善もなされていた。

 また、レヴェリアによる治療師や薬師の育成は研修という形で不定期に実施されており、彼女達の知識習得・技量向上を図っていた。

 

 

 

 

 治癒魔法により全快したザルドに用事があると伝えて別れ、レヴェリアは歩みを進める。

 彼女が向かう先はヘファイストス・ファミリアだ。

 

 事前にアポイントメントを取ってあった為、彼女はヘファイストスとスムーズに面会を果たす。

 そして、レヴェリアは持ってきた長剣を彼女へ渡した。

 

 それを受け取ったヘファイストスは長剣を鞘から抜き放つ。

 そして、じっくりと観察した後に口を開いた。

 

「付与されている属性は『不壊』、『魔法吸収と放出』。刀身の出来栄えも……そこそこ良い」

 

 そう感想を伝えて、ヘファイストスは軽く溜息を吐いた。

 もう3年程の付き合いとなるが、今でも当時の驚きは彼女の中で鮮明に残っている。

 作成した武具を買い取ってほしい、と()()レヴェリアが持ち込んできた上に、その武具が自派閥の中堅鍛冶師達と遜色がない出来栄えであったのだから、その衝撃は凄まじかった。

 

 あの時から3年、彼女の鍛冶師としての技量はさらに上がっていた。

 

 世界最高峰の治療師で鍛冶師――もうここまでで情報量が多すぎるのだが、さらに稀代の魔道具作成者(アイテムメーカー)でもあった。

 神時代のバグみたいな存在として、神々の間で認識されていた。

 

「1億8000万ヴァリスね」

「売った」

 

 ヘファイストスの提示価格に対して、レヴェリアは即答した。

 

 

 

 

 

 

 

 レヴェリアがヘファイストス・ファミリアを出ると、ちょうど昼時だった。

 彼女は昼食を取るべく、とあるラーメン屋へ向かう。

 

 神々の大半が地球における現代日本のネット民みたいなノリであったことや、彼等彼女等の影響で日本にあるようなものが存在していることも知っていた。

 だが、ラーメン屋まであるとは思いもしなかった。

 しかも日本と同じように様々なスタイル・系統のラーメンがあるのだから、余計に驚きは大きい。

 

 今回、彼女が選んだラーメン屋は低価格大ボリュームがウリのところだ。

 まさか異世界でコレが食えるなんて、と歓喜した彼女は今やすっかり常連となっていた。

 このラーメン屋で食事後の口臭をケアする為だけに、徹夜して口臭ケア専用タブレットを彼女は開発した程だ。

 

 入り組んだ通りの一角にあるそのラーメン屋の店内は狭く、カウンター席しかない。

 さすがに券売機はない為、出入り口に置かれた注文書に客が記入して、代金と共にカウンターに置く形だ。

 

 その店主は厳つい顔つきのヒューマンであり、客達もいかにも荒くれ者といった風体の男しかいない。

 会話などなく、ただひたすらに彼らが麺を啜る音が店内に響いている。

 殺伐とした空気が漂っていた。

 

 レヴェリアは慣れた様子で注文書に記入し、唯一空いている席へ座った。

 そして、注文書と代金をカウンターの上に置く。

 数分後、店主から声を掛けられる。

 

「大豚ダブルの方、ニンニクはどうされますか?」

「全マシで」

 

 即答したレヴェリアであるが、店主は心得たとばかりに頷いた。

 彼女は初回より麺マシ3つの全マシと大ライスを注文し、15分程でスープまで飲み干して完食していた為だ。

 以来、来る度に彼女は同じものを頼んでおり、今回もまたそうであった。

 

 やがて、レヴェリアの前にソレは置かれた。

 天を衝かんばかりに盛られた大量のモヤシ、その麓には大きなチャーシューが8枚と背脂とニンニクがたっぷりと乗っている。

 もはや器はどんぶりではなく、小型のすり鉢だ。

 そして、その横にはご飯がたっぷりと盛られたどんぶりが置かれた。

 

 空腹も相まって、レヴェリアのテンションは最高潮に達した。

 

「いただきます」

 

 そして、彼女は飢えた獣の如く貪り始めた。

 だが、体に染み付いた礼儀作法はこんな時でも発揮されてしまうが為、食べるのが速いにもかかわらず所作はとても美しいものであった。

 

 

 

 

 いつものように15分程で完食したレヴェリアは大満足で店を出た。

 彼女が機嫌良く歩いていると、何やらヘルメスが慌てた様子で駆け寄ってきた。

 

「レヴェリア様! 大変だ!」

「どうかしたのか?」

「うわっ! クッサ!?」

 

 濃厚なニンニク臭に、ヘルメスはたまらず鼻を両手で押さえた。

 口臭タブレットを食べていなかったとレヴェリアは思い出し、懐から瓶詰めされているそれを取り出した。

 

 数粒、口の中に放り込んで噛み砕けば爽やかな香りが口内を満たしていく。

 

「すまない。あそこの入り組んだところにあるラーメン屋で、昼食を済ませたばかりでな」

「あ、いい香りになった……もしかして、あのカロリー暴力ラーメンを?」

「常連だ」

「ギャップが凄い……だが、そこがいい!」

「で、用件は何だ?」

 

 話が脱線しそうになったところをレヴェリアが戻すと、彼は真剣な表情で告げた。

 

「王女リヴェリアが里を発った、どうか祝福してやってほしいという御触れが、全世界のエルフに向けてラーファル王から出された。都市外に出ていたオレの眷族が、ついさっき持ってきた情報だ」 

 

 彼の言葉にレヴェリアは思わず笑ってしまう。

 

「その情報はいくら何でもガセだろう。()()白の王女が王森から出たって? 天地がひっくり返ってもありえん。純粋培養されたエルフがどれだけ頭ガチガチで視野が狭くて排他的か……」

「それがどうやら、ガセじゃないみたいなんだ」

 

 ヘルメスの否定に、レヴェリアは訝しむ。

 

「本当か? というか、そもそも何で私にその話を持ってきた?」

「レヴェリア様が世界で一番有名なダークエルフだからさ。ダークエルフがエルフを恨んでいるっていうことくらいはオレも知っているぜ」

「私がそういう思想ではないことは知っているだろう?」

「知っているとも。だから、同胞達が暴走しないように呼びかけて欲しい。広めるのはオレ達がやるからさ」

 

 レヴェリアは肩を竦めてみせる。

 ヘルメスがどこまで自身に関する情報を掴んでいるかは分からないが、断る理由がなかった。

 

「ひとまずフレイヤと相談させてもらう。結論が出たら、そちらのホームへ伝えに行こう」

「ああ、勿論だ。ただ、できれば今日中には教えてくれよ」

 

 レヴェリアの答えに対して、ヘルメスはそう返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ということらしいんだが……」

「いいんじゃないかしら」

 

 本拠に戻ったレヴェリアは真っ先にフレイヤの神室へ赴き、事情を説明したところ彼女はあっさりと承諾した。

 フレイヤとしても彼がどこまでレヴェリアのことを掴んでいるかは分からないが、今回の提案は断る理由がなかった。

 しかし、フレイヤには疑問があった。

 以前レヴェリアからエルフの王女について、あれこれと聞いていた為に。

 

「どういう経緯で王女が里を出たのか、そこが気になるわね」

「同意見だ。そもそも、私みたいなやり方でない限りは周りが阻止するからな」

「前に聞いたけど、あなたのやり方は王女じゃなくてスパイなのよ」

「逆に言えば、そのくらいしないと出られないんだ。ともかく、ヘルメスには伝えておく」

 

 レヴェリアの言葉にフレイヤは頷きながら、ぽんぽんと自身の膝を叩いた。

 ソファに座っている彼女がそのような仕草をする理由は一つしかない。

 

 遠慮なくレヴェリアは彼女の膝を枕にして、横になった。

 しばらく休んでから、ヘルメス・ファミリアのホームへ行こうと考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】は知っているかい?」

 

 次の宿場町に向かう途上、フィンは紆余曲折の末に仲間となったリヴェリアとアイナに尋ねた。

 アイナは控えめに、リヴェリアは大きく頷いてみせる。

 そこへロキが口を挟む。 

 

「評判を聞く限りだと、あの色ボケの眷族になっていることがマジで信じられへん。あまつさえ、色ボケの伴侶(オーズ)とか何がどうしてそうなったんや? おもろいけど」

 

 フレイヤのことをよく知っているからこそ、彼女にとっては不思議で仕方がない。

 噂を聞いてから理由をアレコレと予想をしているものの、しっくりくるものが見つからなかった。

 

「神フレイヤが色ボケ?」

「ロキは天界の時、同郷だったらしくてね。腐れ縁があるとかでよく知っているらしいんだ」

 

 リヴェリアの問いかけにフィンが答える。

 ロキは大きく頷いて、口を開く。

 

「色々と理由はあるんやけど、結果だけ見れば男も女も囲った超凄いハーレムを築いとったで。淫蕩とか淫乱が服着て……いや、服を着てないこともあったか。ともかくそういう言葉がお似合いの奴や」

「そんな話はまったく聞いたことがないんだけど……」

 

 フィンはそう言いながらリヴェリアとアイナへ視線を送る。

 聞いたことがあるか、という問いかけだ。

 

「私も聞いたことがないな。眷族達から尊崇を受けているが、団長である【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】からはかなり粗雑な扱いを受けているとは聞くぞ」

「私もそう聞いたことがあります。何でも、その事で団員達から命を狙われているとか……」

 

 2人の話はロキとフィンも聞いたことがあるものだ。

 唸りながらロキは腕を組んで天を仰ぐが、答えは出なかった。

 

 

 

 なお、このやり取りから数日後、リヴェリアの旅立ちを歓迎する旨の声明がレヴェリアより出されたことをロキ・ファミリアの面々は知る。

 黒き同胞の偉大なる先達の歓迎に、リヴェリアは感激するのだった。

 

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