アルテミスとその眷族達は目の前の光景に驚愕していた。
「これが【
思わず呟いたアルテミス。
「オーッホッホッホ! さすがだわ、レヴェリア!」
その横で高笑いをしているアフロディーテと、そんな彼女を美しいと称えている眷族達がいた。
2週間前、アフロディーテに会うために
以前からその活躍をアフロディーテも聞き及んでおり、3ヶ月程前にはリヴェリア様の従者を治療したとエルフ達の間で大きな話題になっていた。
アフロディーテは興味本位で会ってみたところ、レヴェリアの口から彼女に対する熱い思いが語られた。
無論、その言葉には嘘偽りがまったくない。
そこまで求められたアフロディーテはそりゃもう調子に乗った。
眷族達も見たことがないくらいの空前絶後レベルで。
とはいえ、彼女にも美の女神としてプライドがある。
簡単に思いに応えては名が廃る、ここは一つ『試練』を与えようと考えた。
天界時代からよく絡みに行っているアルテミスが率いるファミリアが近くの街に滞在していたこともあり、アフロディーテは彼女に手頃なモンスターがいないかと尋ねに行ったところ――エルソスの遺跡に封印されているアンタレスの討伐となったのだ。
精霊達ですら封印することしかできなかった漆黒の蠍型魔獣、アンタレス。
さすがの【
だが、そんな2柱の予想をレヴェリアは軽く超えていった。
彼女はアンタレスを一刀両断してみせたのだ。
「アフロディーテ様、試練は終わったぞ」
「試練になっていないような気がするけど、約束は約束よ! たっぷりと愛してあげるわ!」
誇ることもなく、当然の結果だと言わんばかりの澄まし顔と態度でもってレヴェリアは告げた。
すると、ドヤ顔で腕を組んで答えるアフロディーテ。
その会話を聞いたアルテミスは肩を竦めてみせる。
アフロディーテから話を持ちかけられた時、何を考えているんだと断ろうと思った。
しかし、【
故に、アンタレスの討伐を提案したのだが――こんなにも呆気なく終わってしまうとは予想外だった。
「アルテミス、あなたも『恋』を知りなさい。でないと、喪女神一直線よ!」
唐突にアフロディーテがそんなことを言い始めた。
矢で射ると送還されてしまうかもしれない、とアルテミスは考えて、手加減がしっかりとできる拳でもって彼女に制裁を加えることにした。
レヴェリアの膝の上にすっぽりと収まって、アフロディーテは甘えていた。
アンタレスを討伐し、
初めて肌を重ねた時から、アフロディーテはレヴェリアにべったりであった。
傍目には恋人同士にしか見えないほどに。
おもむろにアフロディーテが口を開く。
「ねぇ、イシュタルに言われなかった? 自分が最初に出会っていればとか何とか」
「言われたな」
「私もそう思うわ。私があなたと最初に出会いたかった。どうしてフレイヤと出会ったのよ」
ムスッとした不満げな表情のアフロディーテをレヴェリアは優しく抱きしめた。
アフロディーテもまた抱きしめ返しながら言葉を続ける。
「まあいいわ。アンタの私に対する思いもたっぷりと聞かせてもらっているし……」
そこまで言って、彼女はあることに気がつく。
フレイヤは
言葉遊びみたいなものであるが、アフロディーテからすればとても重要なことだ。
とはいえ自信が無かったので、彼女は上目遣い気味に小声で尋ねる。
「
「……確かに空いているな」
「この女神の中の女神にして究極至高の美神であるアフロディーテが、あなたの彼女になってあげるわ!」
答えを聞いた瞬間、アフロディーテは高らかに宣言し、さらに言葉を続ける。
「この私を、気安くアフロディーテと呼び捨てにする許可を与えるわ! さぁ、感涙に咽びなさい!」
そう言って高笑いを始めた彼女に対して、ここぞとばかりにレヴェリアが囁く。
「アフロディーテ、私は遠距離恋愛ができないタイプなんだ」
「……仕方がないわね」
まったくもう、と言わんばかりに溜息混じりにアフロディーテは肩を竦めてみせる。
「ま、私もそろそろオラリオに行ってやってもいいかなって思っていたところだし……アンタがそこまで言うのなら行ってあげるわ」
「あなたは優しいな」
アフロディーテの言葉に、レヴェリアはにこやかな笑みを浮かべながら答えた。
するとアフロディーテは顔を背けてしまう。
「べ、別にアンタの為じゃないわ! 偶々、そう偶々よ!」
「そうやって私に気を遣わせないところ、そこがあなたの魅力の一つだと思う」
さらなるレヴェリアの言葉を受け、アフロディーテは顔を背けたまま叫ぶ。
今、彼女の顔は照れているあまりに真っ赤になっていた。
「ああもう! 何でアンタの言葉には嘘が一つもないのよ!? ちょっとくらい嘘をつきなさいよ!」
「嘘をつくも何も、本気で思っているからに決まっているだろう」
レヴェリアの言葉、それはアフロディーテにとってトドメの一撃となった。
赤い顔のままのアフロディーテは、顔を背けるのをやめてまっすぐレヴェリアを見つめる。
そして、無言のまま彼女はレヴェリアの唇に己のものを重ね、そのまま強引に舌をねじ込みながら押し倒した。
アフロディーテはこの後、何だかんだと言いながら出発を先延ばしにした。
しかし、レヴェリアはそんな彼女の我儘に仕方がないな、と苦笑しながらも付き合い、決して急かしたりはしなかった。
結局、
そこからレヴェリアの要望で
アフロディーテには海辺が似合う、と確信したレヴェリアが己の欲望を優先した結果だ。
そして、白い砂浜、青い海をバックに照りつける太陽の下で佇む際どい水着姿のアフロディーテを見て、レヴェリアは大満足であった。
アフロディーテも誰よりもレヴェリアが喜んで興奮してくれた為、満更でもなかった。
「ま、レヴェリアが言うから本当に仕方がなく、この私がきてやったわけよ」
改めて自分がオラリオにやってきた理由を説明し、溜息を吐いてみせるアフロディーテ。
そんな彼女に対して、事情を知っているフレイヤとイシュタルは生暖かい視線を送る。
オラリオ某所にあるカフェの個室席、そこに彼女達は集まって駄弁っていた。
アフロディーテ・ファミリアをオラリオに連れて来ること、それがレヴェリアの本来の目的だった。
彼女はギルド長のロイマンから、そのように依頼されていた。
この依頼が出された原因はアフロディーテ本神にある。
彼女は美の女神の中で一番気軽に【魅了】を使っており、これまであちこちに迷惑を掛けてきた。
過去にヘラがブチ切れて最終警告を出したくらいにはやり過ぎることもあった程だ。
また、アフロディーテの眷族にはレベル2がそれなりにいる為、都市外のファミリアとしては地味に強い。
その為、各国からはオラリオで引き取ってくれと前々から言われていたのだ。
ロイマンがレヴェリアを選定したのは、彼女ならば面倒くさい神格をしているアフロディーテでも、うまく丸め込んでくれるだろうという考えによるものだ。
レヴェリアのそちらの意味での武勇伝も彼は当然把握していた。
そういった背景を当の本神は分かっているのかいないのか、微妙なところである。
ともあれ、レヴェリアと共にオラリオへやってきたアフロディーテ・ファミリアは歓楽街の一角にホームを構えた。
そして、ホストクラブとキャバクラを始めていた。
「ていうかさ、改めて思うんだけど……フレイヤ、アンタって変わり過ぎじゃない?」
以前より、アフロディーテもフレイヤが変わったという噂は聞いていた。
天界時代のフレイヤとは違うと一番実感できたのは2週間程前、レヴェリアと3柱で初めて肌を重ねた時だ。
一晩で終わるわけがなく、休憩を挟みつつも7日7晩交わりは続いた。
全てを終えた時にレヴェリアは悟りを開いた顔となり、3柱の女神達はたっぷりと楽しめて、大満足であった。
ちなみにこの後、どう考えてもこの交わりが原因としか思えないスキル『
このスキルは思いの丈に応じて、全アビリティ能力に高い補正が掛かるという破格の効果だ。
「この前、ヤッた時の休憩時間にレヴェリアが私をぎゅっと抱きしめて愛を囁いてくれたけど……あなた、ほっぺたをお餅みたいに膨らませていたわね? ヤキモチと焼き餅を掛けていたのかしら?」
「その後、レヴェリアがお前を抱きしめて頭を撫でたら一瞬で機嫌を直したよな?」
ニヤニヤと笑みを浮かべて、からかい始めるアフロディーテとイシュタル。
みるみるうちに、フレイヤの頬が餅のように膨らんだ。
「本当、昔のアンタとは違うわね。そのお餅ほっぺはレヴェリアに食べて貰いなさい」
アフロディーテはそう言いながらも良い変化だと思う。
今のフレイヤは昔と違って活き活きとしているからだ。
何だか悔しいから、絶対に口に出すことはないが。
その時、イシュタルが何気なく口にする。
「もしもレヴェリアがフレイヤ以外の女神と出会っていたら……どうなるだろうな」
「私やアンタなら幸せなキスしてベッドインしてハーレム作って終わりでしょ。どっかの小娘みたいに、10年も別行動させたりしないし」
アフロディーテの発言に対して、フレイヤが彼女を睨みつける。
しかし、アフロディーテは全く意に介さない。
「私やお前ならそうだろう。だが、美の女神以外ではアイツと相性が悪くないか?」
イシュタルに言われて、アフロディーテのみならずフレイヤも気がついた。
そもそも天界基準の変態・淫乱についていける女神という条件で、大多数の女神が外れることに。
「あの子が主神に要求するものって、結構エグいものが多いからね。私はとても楽しいし、満足できているけど」
「体質変更した上で、そうしないとできないプレイを要求してくるから……やっぱり私じゃないと駄目ね!」
アフロディーテ、フレイヤの発言にはイシュタルとしても深く同意する。
そのことを踏まえて、3柱はあれこれとレヴェリアが求めるだろうものを挙げていく。
粗方出揃ったところで纏めてみると、要求基準がかなり高いことが判明した。
「ロキならいけるけど……身体的な意味で駄目だわ」
「あいつは胸が無いじゃない。感度は良さそうだけど」
「そう言ってやるな。お前だって、そこまで大きくはないだろう」
イシュタルの言葉に対して、アフロディーテは胸の下で腕を組んで持ち上げてみせる。
「アンタ達がデカ過ぎるだけで、私だって巨乳なの。私がアンタ達と同じくらいの爆乳になったら身体の黄金比が崩れるじゃない」
そう言いながら、アフロディーテは
アフロディーテの身体の黄金比をよく理解し、褒め称えてくれた。
それこそ頭からつま先まで彼女に褒められなかったところはなく、また求められなかったところもない。
それにフレイヤともイシュタルとも違う、オンリーワンの美しくて可愛らしい神格だと内面までべた褒めしてくれたのはレヴェリアが初めてかもしれなかった。
「アフロディーテ、顔がにやけて涎が垂れているわよ」
「何を思い出したんだか……」
ジト目で見つめるフレイヤとイシュタルであったが、アフロディーテは全く気にしなかった。
そんな彼女は放置して、イシュタルは尋ねる。
「ところでフレイヤ、レヴェリアからフリュネの件は聞いているか?」
「フリュネ? 聞いてないわね」
首を傾げるフレイヤに対し、イシュタルは告げる。
「私が拾ったアマゾネスの孤児なんだが、ボロボロだったんでな。ちょうどホームにやってきたレヴェリアに治療してもらった」
「ふぅん……それだけなの?」
「それ以来、レヴェリアがフリュネを気に入った」
「「詳しく」」
フレイヤだけでなく、現実に戻ってきたアフロディーテも声を揃えた。
食いついてくることは予想できていた為、イシュタルはフリュネについて説明していく。
フリュネは同年代のアマゾネスと比べてあまりにも小柄で痩せぎす、非力であった。
同じような孤児のアマゾネス達からは恒常的ないじめを受けており、ボロボロだったのも暴行を受けた直後だった為だという。
下界ではよくある悲劇の一つであった。
「で、レヴェリアはどうして気に入ったのよ?」
「フリュネがお礼として、レヴェリアに一生懸命尽くしたからだ。アイツ、そういうのも大好きだろう?」
アフロディーテとフレイヤは合点がいった。
それはもう、すごく簡単に想像ができてしまった。
「まあ、いいんじゃない? あの子も改宗までは頼まないだろうし」
「アイツもそこまではしないからな……今日、アイツはどこに?」
「ヘラのところの姉妹に連れ回されているわ」
イシュタルの問いにフレイヤはそう答えた。
「レヴェリア、あっちの店に行くぞ」
「姉さん、そっちよりもあっちのお店の方がいいわ」
「……よし、レヴェリア。お前、ちょっと分身しろ。できるだろ、お前なら」
左右の手をアルフィアとメーテリアに引っ張られて、理不尽な要求を突きつけられているレヴェリアであった。
アフロディーテの胸の大きさに関しては諸説あると思いますが、ここでは爆乳ではないものの巨乳ではあるという説を採用しております。