転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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あちこちへの影響

 

 

「予想通りだ」

 

 フィン・ディムナはほくそ笑んだ。

 

「ああ、予想通りだ」

「【静寂】はいるかと思ったが……いないようだな」

 

 リヴェリアが同意し、ガレスは意外そうに呟いた。

 ここは37階層、玉座の間。 

 ウダイオスが間もなく出現する時期だが、待機している冒険者は3人以外に誰もいなかった。

 

 その理由は昨日、ベヒーモス討伐に成功した討伐隊がオラリオに凱旋した為だ。

 誰も彼もがこの大偉業に喜びを爆発させ、オラリオは昨日からお祭り騒ぎとなっている。

 昨夜はギルド主催の祝勝会が盛大に開かれたが、ロキ・ファミリアの三首領は少しだけ顔を出した後、ダンジョンへ潜った。

 

 ウダイオスを討伐する為に。

 

 ベヒーモス討伐戦の時、もっとも近くで3人はレヴェリアの勇姿を見た。

 だからこそ、あの背中に追いつき追い越さんと各々が心に誓った。

 

 何より、リヴァイアサン討伐戦にはサポーターではなく戦力として参加する為、休んでいる暇はどこにもなかった。

 ロキは渋い顔であったが、それでも納得して送り出した。

 勢いに乗っているからこそ、止めたら駄目だと彼女の勘が囁いた為に。

 

「昔、レヴェリアはウダイオスを単独で討伐したらしいね」

「私1人でやってもいいぞ?」

「高慢ちきなエルフめ、俺に譲れ」

「……それなら間を取って僕に譲ってくれない?」

「「駄目に決まっているだろう!」」

 

 3人が軽口を叩いていると、やがてダンジョンが鳴動し始めた。

 ウダイオス出現の予兆だ。

 フィン達はそれぞれの得物を握りしめ、意識を切り替えるのだった。

 

 

 

 

 

 アルフィアは1人で37階層にあるモンスターが一定の数まで無限に産み落とされる大型空間――闘技場(コロシアム)と呼ばれている場所にいた。

 オラリオに戻ってきた彼女は休息を取った後、祝勝会には出ることなくここに篭っていた。

 この場所は第一級冒険者であっても、その圧倒的な数から嬲り殺しにされかねないからこそ、試練となりえる。

 

 ベヒーモス討伐時、レヴェリアには間近で魅せつけられた。

 あの背中に追いつき、追い抜くとあの場で誓ったのだ。

 リヴァイアサン討伐戦に間に合わせる為にも、休んでいる暇などなかった。

 

「そろそろウダイオスが出る頃合いか……」

 

 魔法でモンスターを一掃しながら、アルフィアはウダイオスに挑むことを決めた。

 今ならば出待ちしている冒険者はいない筈だ、と彼女は予想した為に。

 

 しかし、玉座の間に赴けば既に戦闘が始まっていた。

 ロキ・ファミリアの三首領がウダイオスと激闘を繰り広げていたのだ。

 

 彼女は盛大に舌打ちをして、闘技場(コロシアム)へ引き返した。

 

 

 

 

 

 

 その頃、オッタルは滝壺から現れたアンフィス・バエナを睨みつけていた。

 ベヒーモス討伐時、レヴェリアの全力を見て――己の非力さ、惰弱さにかつてない程の殺意と憎悪を覚えた。

 あの背中に追いつき、追い抜くとあの場で誓った。

 どれほどの高みか、まったく見当もつかない。

 魔導士だけではなく戦士としても、彼女はそれほどの高みにある。

 

 ウダイオスではなくアンフィス・バエナを選んだのは、ロキ・ファミリアの三首領とアルフィアがウダイオスを取り合っているかもしれない、と思ったからだ。

 また、リヴァイアサンとの戦いに備えて、水上での戦闘経験を少しでも積む為でもあった。

 咆哮を上げるアンフィス・バエナに対して、オッタルは浮島伝いに攻撃を仕掛けるべく駆け出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロキ・ファミリアの三首領、アルフィア、オッタルに多大な影響を与えたレヴェリアは、フレイヤの胸に顔を埋めていた。

 そんな彼女に対して、フレイヤは穏やかな笑みを浮かべて時折頭や背中を撫でていた。

 

 討伐隊がオラリオに帰ってきてから1週間。

 この間、レヴェリアは非常に忙しかった。

 ギルドによってベヒーモス討伐戦の詳細が迅速に公表されただけでなく、彼女がレベル9へランクアップしたことが理由だ。

 今回の一戦で、レヴェリアは上位・下位ともにかつてない程の膨大な経験値を獲得した。

 それこそ、これまでと同じくらいに熟練度を馬鹿げた数値まで伸ばした上でランクアップを可能とする程に。

 結果として、レベル8からレベル9へのランクアップに要した期間が約3ヶ月という、決して抜かれることがない大記録を打ち立てた。

 なお期間が短いことに対して、神々も冒険者も市民も疑問を抱かなかった。

 ベヒーモスの真正面で1人で注意を引きつけながら回復と攻撃を、ベヒーモスが倒れるその時までやり続けたことがランクアップの要因とギルドが合わせて公表した為に。

 また、レヴェリアが同格以下に対しては絶対の強さを誇っていることは有名である為、今回のランクアップにより【英傑】と【女帝】すらも彼女に太刀打ちができなくなったと大きな話題を呼んだ。

 

 こういった理由によって誰もが彼女の話を聞きたがり、あちこちの宴会に招待された。

 これも付き合いだ、とレヴェリアは可能な限り応じて、毎回似たような話を繰り返すことになった。

 ようやくお呼ばれがなくなったことで、彼女は存分にフレイヤに甘えていた。

 

 なお、この1週間でロキ・ファミリアの三首領によってウダイオスが討伐され、アンフィス・バエナもオッタルによって討伐されている。

 ロキ・ファミリアの面々は分からないが、オッタルはランクアップができるようになっていた。

 だが、熟練度をもっと伸ばしたいという彼の希望もあって保留にしている。

 

 レヴェリアの勇姿を間近で見たオッタル程ではないにせよ、ベヒーモス討伐にサポーターとして参加した眷族達は良い影響を受けている。

 レヴェリアに対する悪感情は相変わらずだが、より強さを渇望するようになった。

 

 頑張っている皆の魂が美しく輝いているわ、とフレイヤも大満足だ。

 しかし、息抜きも大事であるからこそ彼女は提案した。

 

「ね、レヴェリア。皆で旅行に行きましょう」

「いいぞ。ただし、アルフィアの依頼もあるから、それが終わってからな」

 

 ロキ・ファミリアの三首領に後塵を拝したアルフィアは、フレイヤ・ファミリアに乗り込んできてレヴェリアに依頼をしていた。

 その内容は、バロール討伐時の治療支援及び他の冒険者がバロールに手を出さないように抑えることだ。

 

 推定レベル7のバロールをレベル5が単独で倒すのは不可能に近いのだが、それがアルフィアとなると話が違ってくる。

 彼女はレベル差がある相手でも、それをひっくり返すポテンシャルがあった。

 

 フレイヤもこの件は聞いていた為、勿論だと頷いてみせた。

 更にレヴェリアが言葉を続ける。

 

「ドロップアイテムをどう使うかも考えたいからな」

「苦労して掘り出したって言ってたもんね」

 

 フレイヤの言葉に、レヴェリアは頷いてみせた。

 

 ベヒーモス討伐によって、その巨体は膨大な灰となって砂漠を覆い尽くした。

 ドロップアイテムを探すのは無理だ、と早々に諦めた【英傑】と【女帝】に対して、レヴェリアが主張したのだ。

 

 絶対にどっかにあるはずだから、掘り起こすべし――

 

 ベヒーモスのドロップアイテムともなれば、リヴァイアサンや黒竜との戦いにも使えるに違いない――そういう考えに基づくものであり、その旨を説明して承諾を得た。

 そして、討伐隊総出で砂漠を掘り返し、ドロップアイテムの角や骨などを発見したのだが――その中にとんでもない代物が一つだけあった。

 フレイヤは改めて、それについて尋ねる。

 

「ドロップアイテムの心臓が生きていたって言ってたけど……マジなの?」

「マジだった。心臓しかないのに、ドクンドクン動いていたぞ」

「キモいわね」

「キモかったし、触るだけでもヤバそうだったから焼却処分した」

 

 レヴェリアはそう答えながら、身体を起こす。

 そして、今度はフレイヤの顔を自身の胸に埋めさせた。

 弾力がある豊満な胸の感触と匂い、温かさに彼女は頬を緩ませる。

 そんな彼女を穏やかな表情で見つめつつ、レヴェリアは何気なく尋ねる。

 

「にしても最近、我儘な小娘っぽくないな。少しは成長したか?」

「だって、レヴェリアったらハチャメチャに忙しそうだったし……我儘を言わなかった私って偉いでしょ?」

 

 胸元から顔を上げて、ドヤ顔を披露するフレイヤに対してレヴェリアはオデコに口づける。

 

「小娘にしては上出来だ」

「ふふん、もっと褒めなさいよ」

 

 調子に乗り始めたフレイヤの頬をレヴェリアは両手で包みこんで、揉みしだく。

 愉快な顔になる彼女を見つめて、くすくすと笑う。

 対するフレイヤもすぐさま反撃を行い、互いに無言で頬を引っ張りあった。

 

 

 しばらくして変顔合戦が落ち着いた時、レヴェリアがおもむろに口を開く。

 

「ところでフレイヤ、リヴァイアサンや黒竜との戦いはなるべく先延ばしにしたい」

「その理由は?」

「ベヒーモス、リヴァイアサン、黒竜……纏めて三大冒険者依頼と括られているが、強さも同じくらいだと思うか? 特に黒竜」

「……思わないわね」

 

 改めて問いかけられるとフレイヤとしてもそう答えるしかない。

 黒竜が暴れていた当時の下界を彼女は見ていなかったが、竜という生物は強大かつ強靭であると相場が決まっている。

 

「あなたの予想は?」

「ダンジョンも含めた下界に存在するありとあらゆる種類のドラゴンが束になって黒竜と戦っても、黒竜が圧勝するくらいには強大だと思っている」

「ありえそうね」

「最悪、レベル8どころかレベル9が足切りラインになるかもしれん」

 

 そう告げるレヴェリアに対して、フレイヤは小耳に挟んだことを伝える。

 

「ゼウスとヘラは、今の戦力ならばいけるって思っているみたいよ」

「慢心と油断をしてはいけない。そういうのは敗北フラグだ」

「それもそうね。私の方からも働きかけてみるわ……次の話が持ち上がるのはしばらく先だと思うけど」

 

 フレイヤの言葉に、レヴェリアもまた頷いてみせる。

 

 今回のベヒーモス討伐戦、死者どころか負傷者すらゼロだ。

 これはレヴェリアの治癒魔法による功績が大きい。

 しかし、財政面に目を向ければゼウスもヘラも大打撃である。

 両派閥はベヒーモス討伐の準備期間中に団員総出で金策に奔走したが、それでも足りずにこれまで蓄えてきた財産をいくらか放出することになった。

 

 一番大きな支出は戦闘に参加する団員1人1人に対して、不壊属性付きの予備の武器を10本以上用意したことだ。

 不壊属性付きの武器の相場はおよそ1億ヴァリスである為、予備の武器だけでも1人あたり10億ヴァリス以上の金額が掛かっている。

 レヴェリアに依頼したものに関しては『貸し』が報酬になっているが、それを差っ引いても請求金額を合計すれば莫大なものとなった。

 

 まだ蓄えは十分にあり、使わなかった予備武器や回復薬等の物資を流用できるとはいえ、リヴァイアサン討伐も天文学的な金額が掛かることは確定している。

 ポセイドン・ファミリアとの協力によって行われるこの戦いは、リヴァイアサンを浅瀬に追い込んで魔剣や魔法で海を凍らせてフィールドを構築することが前提となっていた。

 陸に上げてしまうのが最善だが、ベヒーモス程ではないとはいえ十分に巨体といえるリヴァイアサンを――それも無抵抗ではなく盛大に暴れている状態で――陸に引っ張り上げる方法がそもそもなかった。

 故に次善の策として海を凍らせるということになったのだが、魔法はともかくとしても氷属性の魔剣がバカみたいな量、必要になると試算されていた。

 

 レヴェリアも当然、このことに関しては聞き及んでいる。

 自分のところにも魔剣の製作依頼がくるんだろうな、と確信していたからこそ、次は貸しだけで請け負わずに金銭も請求しようと考えていた。

 貸しだけで請け負った仕事は材料費でとんでもない赤字であり、正直もう二度とやりたくないというのが本音である。

 なお、彼女は貸しの使い道を一つ、既に決めていた。

 それは長年オラリオに貢献してきた3柱にしかできないことであり、また金銭では得られないものだ。

 

 そんなレヴェリアの考えはさておき、フレイヤにはやるべきことがあった。

 頑張ったレヴェリアに対するご褒美だ。

 

「ね、レヴェリア……今回のご褒美、欲しくない?」

「欲しい」

 

 即答したレヴェリアに対して、フレイヤはにこりと微笑んで――そのまま彼女を押し倒した。

 

 

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