転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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とある恋話

 

「頑張っているな、フリュネ」

 

 微笑みを浮かべながら、フリュネの頭をレヴェリアは優しく撫でる。

 背中の半ばあたりまで伸ばした彼女の黒髪は黒曜石の如くに美しい。 

 

 かつてイシュタルが拾った時、フリュネは同年代のアマゾネスと比べて非力で痩せぎす、小柄であった。

 しかし、栄養状態が改善されたことですっかりと同年代と比べて頭一つ分背丈は高くなり、その体つきは男の欲望を大いに刺激する肉感的なものとなっている。

 またレヴェリアのように強く、美しく、賢くありたい――そう願って、ダンジョンに篭もるなどして日々精進を重ねてきたフリュネは先日、レベル3にランクアップをしていた。

 

「レヴェリア様……」

 

 フリュネは愛おしげに名を呼び、その端正な顔を情欲に染めていた。

 彼女の頬に口づけしながら、レヴェリアは耳元で囁く。

 

「半年ぶりだから、私のことを忘れてしまっているかもしれん……だから、たっぷりとお前の身体に刻みつけてやるからな」

 

 妖艶に笑うレヴェリアに対して、フリュネは悩ましげな声を漏らして、その身を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、イシュタル・ファミリアのホームを出たレヴェリアは、のんびりとホームへ向かって歩いていた。

 

「もう2週間か……早いものだな」

 

 歩きながら、彼女はしみじみと呟く。

 2週間前、オラリオにフレイヤとロキの両派閥が戻ってきた時は市民達が歓声をもって出迎えてくれた。

 また、世界各国に対してのアピールもヘルメスがうまくやっており、当初の目的は達成されたといえるだろう。

 

「しかし、フリュネも半年会っていなかっただけで……」

 

 数時間前まで続いていた彼女との行為を思い出して、レヴェリアは頬が緩む。

 王道のアマゾネスもやはり最高だな、と彼女は改めて実感していた。

 

「いずれはテルスキュラに乗り込んで、ハーレムを築かねばならない……」

 

 第三者が聞けば、何を言っているんだコイツと疑問の眼差し、あるいはコレがベヒーモス討伐の立役者で黒の王女なのかと呆れられるようなことを口にするが、彼女は大真面目だ。

 邪なことを考えながら歩いていると、やがてホームが見えてきた。

 

 唐突に彼女は立ち止まった。

 ホーム前に見知った2人が腕を組んで仁王立ちしていたからだ。

 

「前にもこんなことがあったな……」

 

 そう呟いた彼女がゆっくりと近づいていくと――立っていたうちの1人、アルフィアが動いた。

 彼女は弾丸のように飛んできたが、レヴェリアは難なく抱きとめる。

 

「遅い! どこをほっつき歩いていた!」

「そう言われてもな……早朝から出待ちは珍しいじゃないか」

 

 

 アルフィアを抱きしめながら、その髪を撫でつつレヴェリアは説明を求めるべくフレイヤへ視線を向けた。

 すると、彼女はにこにことした笑みを浮かべながら口を開く。

 

「実はね、メーテリアに彼氏ができたみたいなのよ」 

 

 その言葉でレヴェリアは全てを理解した。

 メーテリアに男ができた、アルフィアにとっては天地がひっくり返ったような出来事だろう。

 

 妹が欲しくば私を倒してからにしろ――

 

 真顔でそんなことを言っている光景がレヴェリアには簡単に想像できた。

 

「ともかく、中に入ろう。詳しく聞かせてくれ……ところで、食事は済ませたか?」

 

 レヴェリアの言葉に、アルフィアは首を左右に振ってみせる。

 彼女も早朝からホームを抜け出した為、食事を取っていなかった。

 

「一緒に食べるか?」

 

 さらなるレヴェリアの問いかけに、アルフィアは小さく頷いた。

 

 

 

 

 3人で朝食を取り、食後のティータイムとなったところでレヴェリアは切り出した。

 

「アルフィア……そろそろ聞かせてくれないか?」

 

 問いかけに、アルフィアはぽつりぽつりと話し出す。

 普段とはかけ離れたその姿は、彼女がどれだけ衝撃を受けたかを物語っている。

 

 最近、メーテリアの様子が何か変だと思ったアルフィアが、からかい混じりに尋ねたところ――否定しなかった。

 それどころか頬を赤く染めてそっぽを向いたという。

 

 話の最中、レヴェリアはちらりと横目でフレイヤを見れば――気色悪い笑みを浮かべていた。

 そういやコイツ、他人の恋話が大好物だったなとレヴェリアは肩を竦めてみせる。

 

「ふふん! そういうことならこの私に任せなさい!」

 

 胸を張ったフレイヤを無視して、アルフィアはさらに話を進める。

 

「メーテリアを連日尾行して、ようやくその相手を掴んだ」

「あれ? 無視? ひどくない?」

 

 アルフィアは無視して話を続けるが、フレイヤは止まらない。

 あーだこーだと横で言いまくる彼女に対して、いよいよアルフィアはキレた。

 さすがの彼女もここで魔法をぶっ放すようなことはしないが、その口を塞ぐことに躊躇はない。

 ちょうどよく、紅茶のお供に用意されたロールケーキがテーブルの上にあった。

 まだ切り分けられていないそれを引っ掴んで、彼女はフレイヤの口にぶち込んだ。

 

 まさかそうくるとは思っていなかったフレイヤは目を白黒させながらも、その口いっぱいに突っ込まれたロールケーキを咀嚼し始める。

 そんな彼女の姿は、小動物が必死になって大きな餌を食べている様をレヴェリアに想起させた。

 

 可愛いな、こいつ――

 

 フレイヤの新たな魅力を発見したレヴェリアであったが、咳払いを一つしてアルフィアに尋ねる。

 

「相手は?」

「ゼウス・ファミリアのクラネルとかいう、赤目のサポーターだ」

「……ゼウスと一緒に神聖浴場を覗いたとかいう輩か?」

 

 問いかけに対して、アルフィアは頷いてみせる。

 その覗きは、フレイヤとロキの両派閥が漆黒のモンスター討伐に赴いている時に起きた事件だ。

 ゼウスはともかくとして、彼の名を良くも悪くもオラリオ中に広めることになった。

 レヴェリアは単刀直入に、アルフィアへ問いかける。

 

「お前はどうしたい?」

「メーテリアの姉が私であることは奴だって知っている筈。つまり、それ相応の覚悟があって手を出していると思う」

 

 アルフィアの答えに頷き、レヴェリアは続きを促す。

 

「まずは話をしようと思っている。その結果次第で次の対応を考えたい」

「冷静だな。お前のことだから、すぐに殴り込みに行くかと思ったのだが……」

「ふん、私だってもう13歳だぞ? いつまでも子供じゃない」

 

 胸を張ってみせるアルフィアに、レヴェリアは微笑ましく思いつつも、同意するだけに留める。

 

「妹の恋を認めないわけにはいかないものね」

 

 ロールケーキを食べ終えて、2人のやり取りを見ていたフレイヤ。

 からかうように告げた彼女に対して、アルフィアはにこやかに微笑んで——ドスの効いた声でもって告げる。

 

「黙らないと、その口に追加でロールケーキをぶち込むぞ」

「ロールケーキをそういう事に使うのっていけないと思うの」

 

 そう抗議するフレイヤであったが、彼女の肩をレヴェリアがちょんちょんと突いた。

 何だろうか、と彼女が視線を向けると――笑顔のレヴェリアが、その手にロールケーキを持っていた。

 

「フレイヤ、ロールケーキを食べてくれないか?」

「切り分けてくれるのよね?」

「すまない……」

 

 目を伏せるレヴェリアに対して、フレイヤは逃げ出した。

 しかし、回り込まれてしまった。

 追い詰めたフレイヤに対して、レヴェリアが不敵な笑みを浮かべて告げる。

 

「逃げ場などない……! ここがお前の終焉だ……!」

「くっ……この私がロールケーキにやられるなんて……!」

 

 唐突に始まった2人の茶番であるが、よくあることなのでアルフィアは慣れていた。

 彼女は残っていた最後のロールケーキを切り分けてから、口に入れる。

 

「美味いな……」

 

 感想を呟いたアルフィアの目の前では、目を輝かせたレヴェリアがフレイヤの口にロールケーキを突っ込んでいた。

 フレイヤが必死に食べる様を見て、レヴェリアは何やらほっこりとした顔をしている。

 それを見ながら、アルフィアは思う。

 

 やはり自分もロールケーキをああやって口に突っ込まれたほうがいいんだろうか、と。

 

 レヴェリアが望むなら、アルフィアとしてもやぶさかではない。

 そう考えていた時、レヴェリアが尋ねる。

 

「ところでアルフィア、奴は何歳だ?」

「私やメーテリアと同い年だ。とはいえ、年齢など関係ないだろう」

 

 アルフィアが答えた時、フレイヤは目を輝かせて物凄い速さでロールケーキを食べ終えた。

 そして、にんまりと笑みを浮かべて告げる。

 

「エルフでもないのに、すっごい年の差婚を考えている子とかいるものねー」

 

 瞬間、フレイヤの口にマカロンがぶち込まれた。

 下手人はアルフィア。

 彼女はレベル6としての身体能力をフルに活かして、テーブルの上にあったマカロンを引っ掴んで素晴らしい速さで叩き込んだのだ。

 フレイヤとしても、こういう結果になることは予想がついていたが、それでもアルフィアをからかうことを選んだ。

 

 アルフィアの反応がいちいち可愛くて仕方がない為に。

 

「このアホ女神め……!」

 

 むすっとした顔のアルフィアは、そう言いながらレヴェリアへすーっと近寄った。

 何をしてほしいかを察したレヴェリアは、彼女の頭へ手を伸ばして優しく撫でる。 

 マカロンを食べながら、フレイヤは2人の様子を見てグッと親指を上げるのだった。

 

 

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