転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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グロ描写あり。


初めての実戦

 

「【ボルカニックノヴァ】」

 

 黄金色の炎弾が猛速で飛んでいき、ミノタウロスに着弾した瞬間、爆発が巻き起こる。

 土煙が収まった後には小さなクレーターが残っており、ミノタウロスの姿は影も形もない。

 

 フレイヤとレヴェリアはアルテナを目指して森の中にある街道を歩いていたところ、左右から飛び出てきたモンスター達。

 ちょうどいい、とレヴェリアはスキルと魔法を試していた。

 

 【ボルカニックノヴァ】は名を唱えただけで発動するという、速攻魔法という分類に恥じぬ発動の速さと連射力により使い勝手が良い。

 

 また、炸裂鍵【破墜(ディレンダ)】による制圧力は中々のものがある。

 

 【リーヴスラシル】についてはわざと攻撃を受けて、軽い傷を負った際に使用した結果――黄金色のドームが展開され、一瞬で傷跡すら残さずに治ってしまった。

 

 記載された効果がそのまま発揮できるならば、世界最高峰の治療師となれることは確定的だ。

 しかし、レヴェリアは別の結論を出していた。

 

 詠唱さえできれば死ぬことはなく、成長促進と思われるスキルが自身にはある。

 だからこそ、毎回死にかければ物凄い速さで強くなれる――というものだ。

 そもそも、こんな治癒魔法があることが世に知られれば、あちらこちらからちょっかいを掛けられることは想像に容易い。

 降りかかる火の粉を跳ね除ける為にも強くなることは急務である、とレヴェリアは確信した。

 

 そして、【グリモワール・オブ・メモリーズ】に関しては大きな発見があった。

 記載された文言から先天系魔法もこの魔法で使えるのではないかとレヴェリアが思い、試したところ――問題なく発動できた。

 また、この魔法を使わずに先天系魔法を行使した場合と比べて、安定感が遥かに増しているというおまけつきだ。

 かつて里で読んだ書物にあった精霊が使っていたという魔法も、この魔法を使えば発動できそうな予感があり、彼女としては嬉しい限りだ。

 しかし、精霊の魔法は威力がヤバそうである為、実験まではしていなかった。

 

  

 ミノタウロスを消し飛ばしたところで、爆発音に誘われたのか反対側から出てきたコボルトの群れと戦い始めるレヴェリア。

 そんな彼女の勇姿にフレイヤの心がときめかせていた時、森の中から聞こえてきたある音に気がついた。

 良からぬものを感じた為、さり気なく周囲に彼女は視線を巡らせる。

 

 この街道は森を横断するように通っており、左右は木々が道の間近にまで生い茂っていることから見通しが悪い。

 奇襲するにはうってつけの環境でミノタウロスやコボルトも森から出てきた。

 

 先程、戦闘音に紛れて聞こえたのは枝を踏む音。

 その音は左方向の森の中から聞こえてきた。

 戦闘真っ只中のレヴェリアはまだそれに気づいていない。 

 

 フレイヤは戦の女神ではあるものの、自らが戦士というわけではない。

 しかし、魂を視ることはできた。

 草木に紛れて明らかにヒトと思われる魂が左右に7人ずつ、また1柱の神を彼女の眼が捉えた。

 

 フレイヤが【魅了】すれば戦闘をする必要もないが、それではレヴェリアの成長に繋がらない。

 神以外は彼女に任せよう――フレイヤはそのように判断した。

 

 やがてモンスターの殲滅が終わったレヴェリアを、手招きしてフレイヤは呼んだ。

 何をするつもりだと警戒しつつも近寄った彼女に対して、フレイヤは長耳に口を寄せて囁く。

 

「左右に7人ずつ、ついでに神が1柱いるわ。モンスターをけしかけた連中かもしれない」

 

 それを聞いたレヴェリアは即座に尋ねる。

 

「好きにやってもいいか?」

「ふふ、構わないわ」

 

 レヴェリアは何気なく指先を左右に向け、同時に足元に展開される黄金色の魔法円。

 

「【ボルカニックノヴァ】」

 

 瞬間、放たれたのは炎弾。

 その数、左右にそれぞれ7発ずつの合計14発。

 

 まさかの事態に潜んでいた連中が大きく動いた。

 木々を根こそぎ吹き飛ばすつもりだと彼らは予想したが――レヴェリアは更に上であった。

 

「【破墜(ディレンダ)】」

 

 殺到する炎弾は木々に当たる寸前で炸裂した。

 左右それぞれ7発ずつの炎弾の炸裂により、爆風と爆圧が周囲に広がり木々を広範囲で薙ぎ倒していく。

 

 速攻魔法は1発あたりの威力自体は低く、精神力の消費量も然程ではないが、数を撃てば精神力の消費量は無視できないものとなる。

 しかし、レヴェリアは涼しい顔でフレイヤを背後に置きながら左右の警戒をしていた。

 

「フレイヤ、君の眷族はヤバいねぇ!」

 

 その声と共に眷族に抱えられて現れたのは先の尖った帽子を被った子供のように見える男神だ。

 彼は眷族から下りて、フレイヤとレヴェリアの前に立つとピエロのような衣類の埃を軽く払ってみせる。

 

 その間にも前後左右に男神の眷族達が現れた。

 装備が先程の一撃で多少汚れてはいるものの、戦闘に支障はなさそうだ。

 

 レヴェリアは警戒を強めながら、背後にいるフレイヤに尋ねる。

 

「フレイヤ、あの神は知り合いか?」

「いえ、知らないわ」

「おいおい酷いよ! フレイヤ! 僕と君の仲じゃないか!」

「……そうなのかしら?」

「あれあれー? 僕、君の神殿に呼ばれて君と寝た覚えがあるんだけどー? ラシャプだよ!」

 

 名乗られてフレイヤは暫し考え――そういえば、と思い出す。

 

「いたかもしれないわ。また私に愛されたいの?」

「それも魅力的だけどさ、もっと別の用事があるんだ」

 

 そう前置きしてラシャプは無邪気に笑ってみせる。

 まさか金策の為に街道で網を張っていたら、フレイヤが引っかかるとは思わなかったのが正直なところだ。

 

「僕さ、眷族達と共に傭兵みたいなことやっているんだよね。で、今は依頼がなくてお金と女の子に困っていてね」

「ラシャプ様、早くやっちまいましょうよ」

「ローブの上からでも分かるダークエルフのデカい胸……」

「女神様が美しすぎる……」

 

 下卑た笑みを浮かべる眷族達にやれやれと溜息を吐いてみせるラシャプ。

 

「こっちはレベル2が3人、レベル1が11人で……そっちはたぶんレベル1でしょ? 僕達が網を張っていたところに通りかかった君達は運が悪いね」

 

 ともかく、とラシャプは言葉を続ける。

 

「無駄な抵抗はやめてくれない? そうすれば命だけは助けてあげるよ。フレイヤは死なないけど、そっちのダークエルフの子は死にたくないでしょ?」

 

 ラシャプに問われてレヴェリアは深く息を吐いた。

 信じられる要素が欠片もなかったが為、交戦一択だ。

 

 レヴェリアがフレイヤに視線を向けると、彼女は微笑みを浮かべて頷いた。

 それを確認するや否や、レヴェリアは動いた。

 

「【ボルカニックノヴァ】」

 

 魔法円が展開され、彼女より撃ち出されたのは20の炎弾。

 炸裂を警戒して敵は大きく避けたが、そんなのは関係がない。

 

「【破墜(ディレンダ)】」

 

 炎弾の連鎖爆発は大きな爆風と爆圧を引き起こし、彼らを吹き飛ばさんとする。

 しかし、前の敵を追い払ったとしても左右と後ろにも敵はいる。

 

 故にレヴェリアはそちらにも【ボルカニックノヴァ】を多重に放ち、炸裂させて距離を開けた。

 

「へー、それが答え? 君も痛い目に遭わせてあげるよ!」

 

 眷族に抱えられて回避したラシャプの煽りにレヴェリアは告げる。

 

「大人しく首を差し出せ。そうすれば苦痛なく殺してやる」

「アハハ! できるものならやってみな! やっちゃえ!」

 

 ラシャプは笑いながら、眷族達に指示を下す。

 

 相手はレベル1がたった一人。

 こちらはレベル2が3名、レベル1が11名で戦闘経験も豊富だ。

 

 何がどうあっても負けることはない。

 フレイヤが【魅了】を使う兆候が見られたならば、ラシャプもまた神の力(アルカナム)には該当しない、自分の力を使ってフレイヤの眷族を即座に病魔に侵すだけだ。

 

 その効力は罹った直後ならば動きを止めることができるが、僅かな期間で回復してしまう程度のもの。

 しかし、効力が弱いことはラシャプしか知らず傍目には呪われたように見える。

 病魔を解除する代わりに見逃せという要求を通せば、フレイヤは従う筈だと彼は予想した。

 

 そのように考えていたラシャプはダークエルフがどこまで粘るのかとワクワクしながら見ていたのだが――

 

「は? どういうこと?」

 

 レベル1では相手になっていない。

 力でも速さでも負けているようだが――これは基本アビリティの熟練度の差によっては起こりうる展開だ。

 

 しかし、所詮は1人。

 どう考えても負ける要素はないはずであるのに、何故か敵の動きが良くなっているように見える。

 

 ラシャプは思わずフレイヤへ視線を向けると――彼女は魔女の如く恐ろしい笑みを浮かべていた。

 その笑みを見た彼は背筋に氷を突っ込まれたかのように震え上がり、必死の形相で叫んだ。

 

「デラウ! バル! サワレ! さっさと仕留めろ! 他の連中も全力でやれ!」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべて見物していたレベル2の眷族達に命令し、更に他の眷族達にも檄を飛ばすラシャプ。

 しかし、いくら取り囲んでいるとはいえレヴェリアに一度に攻撃できる人数などたかが知れていた。

 

 卓越した連携能力でも持っていれば話は別だろうが、彼らにそこまでのものはない。

 だが、レベル差による優位はある。

 

 レヴェリアには少しずつ小さな傷が増えていき――やがて脇腹に深々と剣が刺さった。 

 その痛みに集中力が切れたのか動きに乱れが生じ、その隙を彼らは逃さない。

 

 みるみるうちにレヴェリアの肉体は傷ついていく。

 それこそ滅多刺しと言っても過言ではない程に。

 苦痛のあまりに彼女は叫び声を上げるが、容赦をする者は誰もいなかった。

 

 ラシャプはそれを見て喝采を叫ぶ。

 彼の眷族達はもったいないなぁと口々に言いながらも、レヴェリアに突き刺していた己の得物を引き抜いていく。

 もはや立つことさえできない彼女は、ただ苦痛に喘ぐだけだ。

 

「あ、念の為に四肢を斬り落としといて」

 

 ラシャプはすかさずにそう告げれば、すぐにそれは実行される。

 レヴェリアの絶叫を聞きながらも、フレイヤは笑みを崩さない。

 

「あれあれ? フレイヤ? そんな笑みを浮かべてさぁ……可愛い眷族が滅多刺しにされて、両手両足を斬り落とされちゃったんだよ?」

「ええ、そうね」

 

 まるで他人事のように答えるフレイヤにラシャプはムカッとして、斬り落とした両手足をフレイヤの前へ投げさせた。

 しかし、彼女が取り乱すことは一切ない。

 

「フレイヤ、君って随分と薄情なんだね。眷族が天に還っちゃうよ?」

「まさか、もう勝ったつもりでいるの?」

 

 フレイヤの問いかけにラシャプは目を丸くして、思わずレヴェリアへ視線を向けた。

 彼の眷族達もまたつられるように彼女へ視線を向ける。

 

「レヴェリア、あなたがいなくなったら……私、好き放題やっちゃうわよ?」

 

 瞬間、レヴェリアが倒れている地面に黄金色の魔法円が展開された。

 そして、ラシャプの眷族達は恩恵によって強化された五感があったからこそ、掠れるような声で紡がれる詠唱を聞き取る。

 喉や肺をやられなかったのは彼女にとって幸運であった。

 

「【嘆きの夜、悲痛の夜、苦痛の夜、呪いの夜、あらゆる死に至る夜を超え、迎えるは黄金の夜明け】」

「【癒やし、清め、祓い給え。黄金の恩寵よ――我が名はアールヴ】」

「【リーヴスラシル】」

 

 黄金色のドームが展開され、その中を黄金色の粒子が乱舞する。

 失われたレヴェリアの両手足に粒子が集まり、手や足を形作っていく。

 また同時にその身に負った傷が癒やされていく。

 

 やがて全ての傷が癒え、手足も元通りになったレヴェリアは当たり前のように立ち上がった。

 靴は斬り落とされた足に履いたままである為、素足であるが特に問題はない。

 

「その言い方はずるいだろう……」

「いいじゃないの、本当のことだし。で、勝ったつもりの連中をどうするの?」

 

 フレイヤの問いかけにレヴェリアは不敵な笑みを浮かべて答える。

 

「魂に教育してやるさ」

 

 玲瓏な声でもって告げられた無慈悲なる宣言と同時にレヴェリアが動いた。

 手近にいたラシャプの眷族に斬りかかり、それを相手が受けた瞬間にレヴェリアは空いている手の指を一つ向けた。

 

「【ボルカニックノヴァ】」

 

 腹部に向けて零距離でもって放たれた炎弾。

 瞬きする間もなく着弾し、爆発を引き起こす。

 その威力に耐えきれなかった為に千切れた上半身が空を舞い、臓物と鮮血を撒き散らす。

 それが降りかかるのを気にすることもなく、髪と貌を血で染め上げながらレヴェリアは疾駆する。

 

 ステイタス更新をしたわけではない為、基本アビリティの熟練度が跳ね上がったというわけではなくスキルとスキル効果による一時的なブーストだ。

 敵が動揺から立ち直る前にレヴェリアは次々とレベル1の眷族へ襲いかかり、あっという間に全員を倒し終えた。

 残る敵はレベル2が3人だ。

 

 レベル差があることや『技と駆け引き』も相手が上であったからこそレヴェリアが負けるのは必然であり、つい先程の焼き直しとなる。

 そうなるのが道理であるが彼女に恐れはない。

 

 詠唱さえできればどうとでもなるからこそ、彼女は詠唱に必要な部分以外の防御を捨てた。

 守るべき箇所が少なくなれば防御のしやすさが変わる。

 

 そして、ここでレヴェリアの成長促進系スキルによる効果が明確に現れてきた。

 経験の差こそ如何ともし難いが、『技と駆け引き』は刃を交えるごとに巧みになっていく。

 

 常人ならば膨大な時間を掛けて鍛錬し、身につけていくものを刹那の時間に実戦の中で身につけていく。

 そのありえない成長速度に加えて、一撃で殺さなければ先程の治癒魔法でもって全快される。

 故に彼らは切り札を切ることを決意した。

 

 1人がレヴェリアを引き付け、もう1人は背後から急襲したが――これを避けられる。

 しかし、彼女が回避した先で待ち構えていた3人目は切り札である魔剣を使った。

 

 小さな短剣にしか見えない魔剣を彼が振り下ろした瞬間、その刀身から勢いよく炎が吹き出す。

 瞬く間にレヴェリアを包み込み、その姿が覆い隠される。

 

 魔剣が火炎属性であったのは彼らにとって幸運だ。

 あれならば詠唱はできず、うまくいけば喉や肺を焼いて声を奪うことができる。

 

 炎が収まったならば、ゆっくりと仕留めれば良いとそう考えていたのだが――レヴェリアは彼らの楽観的な考えを破壊した。

 

 彼らは目を疑った。

 炎の中から悠然とレヴェリアは歩いて出てきた。

 ところどころに火傷があるものの、戦闘に支障があるようにはまったく見えない。

 

 フレイヤは笑みを深めた。

 

 被虐嗜好(マゾヒスト)のスキルによる効果だ。

 【耐久】に高補正が掛かることや防御系や自己治癒力向上の効果がある発展アビリティの戦闘時における一時発現、そして攻撃を受ければ受ける程、防御力に補正が掛かるスキル。

 

 あれだけの攻撃を受け続けたのだから、彼女に掛かっている防御力補正は生半可なものではない。

 そして、加虐嗜好(サディスト)のスキル効果により、ここまで積み重ねた攻撃回数は攻撃力及び攻撃速度の上昇へと繋がっている。

 

 もはや勝敗は明らかだ。

 最初に四肢を斬り落とした時、首も落としておけばレヴェリアを殺すことができたが手遅れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の1人となったラシャプの眷族が今、レヴェリアによって首を飛ばされた。

 それを見たラシャプが地面にへたり込んだところへ、フレイヤは悠々と歩み寄る。

 

「ラシャプ、これで送還されなければ……今後の処遇を考えてあげる」

 

 フレイヤはそう告げて、ラシャプの股間に強烈な蹴りを入れた。

 しかし、彼は顔を真っ青にしながら滝のように冷や汗を出して蹲っただけだ。

 

「耐えたのね……」

 

 そう呟きながらラシャプの顔を蹴り飛ばし、地面を転がったところで背中を踏みつける。

 普段のフレイヤならば絶対にこのようなことはやらないが、そんなことをやってしまうくらいに今の彼女はブチ切れていた。

 

 戦いによってレヴェリアが魂をこれでもかと輝かせてくれたが、だからといってラシャプ達がやったことを許せるわけがなかった。

 

 

 もはやラシャプに抗う手段はない。

 ただ伏して許しを乞うことしかできないのだ。

 

 眷族を病魔に侵して一矢報いるとか取引に使うとか、そういう考えは彼にはもうなかった。

 彼の持つ病魔の力は死なない限り永遠に続く呪い染みた代物ではなく、あくまで一時的なもの。

 罹った直後は動きを止められるだろうが、寝ていれば僅かな期間で回復してしまうものでしかない。

 

 そんな中途半端なことをすれば、フレイヤの報復がより苛烈になるので割に合わない。

 ラシャプとしては下界でまだ少ししか遊んでいないからこそ、ここで送還されるわけにはいかなかった。

 故に、彼は送還以外なら何をされても良いと思っていた。

 

「ラシャプ、まずあなたの全財産を渡しなさい。許すつもりはまったくないけど、とりあえず誠意を見せて」

「は、はい! 全部お渡ししますぅ!」

 

 痛みを堪えながらどうにか返事をしたラシャプであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後、フレイヤとレヴェリアは森を抜けた先にある宿場町の宿屋、その一室にいた。

 彼女達はラシャプがこの町の倉庫に隠してあった財産を根こそぎ頂き、下界の情勢からステイタスに関することなど様々な情報を得ている。

 用済みとなったラシャプを送還するかどうかでフレイヤは迷ったものの、森に連れて行って地面に頭だけ出して埋めた。

 

 ラシャプ関連のことが片付いて一息ついたところで、ステイタス更新となった。

 レヴェリアが得た経験値を慣れない手つきで慎重に反映させていき、現れた数値にフレイヤは固まった。

 目を何度か擦り、間違いではないかと確認するがどこにも間違いはない。

 

 

 レヴェリア・スヴァルタ・アールヴ

 

 レベル1

 

 力:I0→F312

 耐久:I0→D503

 器用:I0→E407

 敏捷:I0→F322

 魔力:I0→D513

 

 恩恵を刻んでから初めてのステイタス更新となるが、熟練度のトータル上昇量2000以上。

 たった1回の戦闘でここまで熟練度が上昇するだけでなくランクアップが可能となっている。

 

 ランクアップの条件は基本アビリティのどれか1つがDランク以上であることと、偉業の達成が必要だ。

 破格のスキルや魔法があるとはいえ恩恵を刻んだばかりの者がレベル2を含む14名の手練れの敵と真正面から戦って、勝利を得るというのは偉業と認められるに十分過ぎるだろう。

 

 また発展アビリティに関しても【幸運】と【魔導】が修得できるようになっており、どちらかを決めなくてはならない。

 

 ランクアップや発展アビリティは保留、レヴェリアにはまだ伝えない――

 

 そう判断したフレイヤは羊皮紙に手早く書き写してステイタスをロックする。

 彼女は頬を緩ませつつ、己の肉体が火照り始めてきたことを感じながら、後ろから抱きついて豊満な胸をこれでもかとレヴェリアの背中に押し付けた。

 

「ねぇ、レヴェリア。ご褒美、欲しくない?」

「いや、やめておく。この状況から察するにお前に搾り取られる未来しか見えない」

「いいじゃない。そういうことって大好きでしょ?」

「大好きだが……今のお前に手を出すのは違うと思う。答えを聞いてからにしたい」

 

 そう告げたレヴェリアに嘘偽りはない。

 欲望一直線だと言っているわりには律儀であるが、フレイヤとしても予想していた答えだ。

 

 きっとレヴェリアは何だかんだで答えを聞くまでは清らかなままでいてくれる――そういう確信があった。

 

 嬉しいな、とフレイヤは思いながらも悪戯はやめない。

 それはそれ、これはこれである。

 

「ええい! やめんか! 理性で抑えるのも大変なんだぞ!」

 

 怒れるレヴェリアはフレイヤをベッドへ放り投げた。

 きゃふん、という悲鳴を上げたが構いはしなかった。

 

 

 

 

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