転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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方針決定

「現状では不可能だ」

 

 ギルド内にある会議室にて、黒竜討伐に向けた初回協議。

 今回の協議はギルド長ロイマンと【英傑】、【女帝】、レヴェリア、フィンの四派閥の団長が出席していた。

 その席上にて、レヴェリアはきっぱりと告げた。

 

「その根拠は?」

「三大冒険者依頼という形で一括りにされているが、その強さは同じではない。リヴァイアサンの時はベヒーモスの時よりも戦力が充実していた。だが、優勢には程遠かった」

 

 問いかけるロイマンに対して、レヴェリアは答える。

 【英傑】、【女帝】、フィンは各々が頷いた。

 フィンの一撃――今や吟遊詩人によって物語化されて、『真勇の一撃』と称されて広まっている――がなければ、リヴァイアサンが何かしらを仕掛けてきて、甚大な被害を被った可能性が高かった。

 

 レヴェリアに対して、ロイマンは問いかける。

 優勢に進められなかった最大の要因、それを彼は魔法封じにあると判断していた為に。

 

「黒竜も魔法を封じてくる可能性はあるのか?」

「その可能性は否定できんだろう」

「だが、それでも未知に挑むのが冒険者だ! 全世界が三大冒険者依頼完遂まであと一歩だと確信している!」

 

 食い気味のロイマンに対して、レヴェリアは肩を竦めてみせる。

 

「討伐しないと言っているわけではない。現時点では戦力が足りないと言っているんだ」

「レベル9が大量にいるのにか!? 神時代史上、もっとも戦力が充実していると神ウラノスが仰られていたぞ!」

 

 それは紛れもない事実であった。

 神時代史上、もっとも強い眷族達が集っているのが今のオラリオだ。

 ゼウス・ヘラに続くフレイヤ・ロキといった後進も育ちつつあり、戦力はかつてない程に分厚いのは間違いなく、巷では四大派閥として称えられることも多い。

 そして、最強にして最優の眷族という称号をいつの間にか得ていたレヴェリアの規格外っぷりは、各派閥から詳細な報告を受けているロイマンをはじめとしたギルド幹部達ですら信じられない程だ。

 

 だが、戦力というものは絶対的なものではなく相対的なものである。

 人類の中では突出しているかもしれないが、黒竜からすればどんぐりの背比べ――その可能性は否定できなかった。

 根拠としては、ベヒーモスとリヴァイアサンを比較すると、後者のほうが総合的にはスペックが上だった。

 最後の1体である黒竜は最低でもリヴァイアサンよりは強いどころか、竜の名を冠していることから桁違いの強さであっても何らおかしくはなかった。

 

「以前、レポートで提出しているだろう。フローメル兄妹の故郷を滅ぼしたブレス、アレが本気ではなかった場合、英雄旅団とやらはあっけなく全滅するぞ」

 

 リヴァイアサン討伐後より、市井の人々は討伐隊のことを英雄旅団と讃えることが多い。

 神々の間でも、黒竜討伐は既定路線となっている。

 現有戦力ならば、当時と比較して黒竜が強くなっていたとしても問題なく討伐できるだろうという予想だ。

 

 だが、そういった予想が楽観的なものであるとレヴェリアは断言していた。

 これは彼女だけではなく【英傑】、【女帝】、フィンの3名も同じだった。

 

 無論、ロイマンとてレヴェリアが持ってきたレポートは読んでいるし、これまでギルドに蓄積されてきた竜の谷や黒竜による被害に関する報告書は読み込んでいる。

 神時代が始まって以来、黒竜への偵察はゼウスやヘラをはじめとした多くの派閥で何回も実施されたが――その全てが黒竜の姿を拝むことなく失敗に終わっている。

 奥地まで進んだ者達は例外なく未帰還であり、途中で余力をもって引き返した者達だけが生還していた。

 黒竜が今現在、どういう状態であるのかを目撃した者は誰もいなかったが、黒竜による被害に関しては少ないながら情報が幾つかあった。

 フローメル兄妹の故郷以外にも、黒竜のブレスによって滅んだ国や都市は過去にもあった為に。

 

 これまでに判明している限られた情報を分析・予想すると、黒竜討伐は現状戦力でも分の悪い賭けであることは、嫌でも理解せざるを得なかった。

 ロイマンはカネに汚いが有能であり、オラリオと救界(マキア)への思いは人一倍強い。

 だからこそ、分の悪い賭けだと分かった上でなお、一刻も早い討伐を求める理由があった。

 

 毅然とした態度で、彼は告げる。

 

「その国が滅ぼされたことにより、竜の谷から漏れ出る竜共の抑えがなくなった。連中は縄張りを広げ、被害が拡大している」

「具体的には?」

「この数年間、分かっているだけで20以上の街や村が襲われ、放棄せざるを得なくなった」

 

 レヴェリアの問いかけにそう答えたロイマンは、一拍の間をおいてさらに告げる。

 

「調査によると推定レベル5以上の竜も大量に出てきている。多数の強個体が谷から出てくるのは、これまでになかった動きだ」

「国が健在であったとしても、そんな竜の大群に襲われたらどうにもならんだろうな」

 

 【英傑】が呟くように言うと、ロイマンは大きく頷いた。

 

「黒竜が動かずとも、竜共が縄張りを広げていけば国が幾つも滅ぶことになる。その前に、元凶である黒竜を討伐せねばならん」

 

 ロイマンの主張も一理あった。

 時間を経るごとに犠牲が加速度的に増え続けることが確定している以上、到底看過できない。

 

「それならローテーションを組んで、各派閥から竜退治の討伐隊を派遣すればいいんじゃないかな?」

 

 現実的な妥協案を提示したフィンであるが、そういった提案が出されることはロイマンも当然予想していた。

 だからこそ、彼は尋ねる。

 

「どうして黒竜を討伐しないのか、臆病風に吹かれたか……そういった批判が民衆から必ず出てくる。闇派閥もここぞとばかりに便乗して煽るだろうし、各国も不審に思うだろう。それはお前の野望にとってマイナスではないか?」

「必要に応じて引くことも勇気さ。臆病者の誹りを受けたとしても、戦力を温存しつつより強化すべきだと思う」

 

 フィンの譲らない態度に、ロイマンは軽く溜息を吐いた。

 そこへ【女帝】が切り出す。

 

「そもそも私達が全滅か、それに近い損害を受けたら……もう立て直せないと思うわ」

 

 痛いところを突いてきた彼女に、ロイマンは苦々しい顔となる。

 黒竜との戦いでは、勝てそうにないから途中で撤退するというのは不可能に近いと予想されていた。

 ブレスの並外れた射程距離と威力から、逃げ出したところで後ろから撃たれて終わるからだ。

 分散して四方八方へばらばらに逃げれば、ブレスから逃れられる確率は上がる反面、生息している竜達の餌食になる確率が激増する。

 

 食うか、食われるか。

 

 その2つしかないとされており、これに関してはロイマンも同意見だ。

 また、【女帝】が言ったように、レベル9を多数揃えても黒竜には通用しないとなったら最悪の未来が待ち受けている。

 神々はどうか分からないが、人類は絶望を叩きつけられ、心が折れてしまう者や自暴自棄になる者も多いだろう。

 そこへ闇派閥が付け入ることで、暗黒期という呼称がピッタリな時代が到来することは想像に容易かった。

 

「……神ウラノスの予想では、黒竜を封じている結界が弱まっている可能性があるとのことだ」

 

 これまで伏せていた情報をロイマンは開示し、さらに己の予想を続けて述べる。

 

「多数の竜達、それも強個体が谷から出てきているのは、封印が弱まることによって黒竜からの威圧感(プレッシャー)が増したことで怯えて逃げ出してきたのではないか……そのようにも考えられる」

 

 そこで彼は言葉を切り、4人を見回して告げる。

 

「今日明日にも結界が解けるというわけではないだろうが、時間的猶予がないことは間違いない。それを踏まえた上で、お前達の意見は変わらないか?」

 

 ロイマンの問いかけに、レヴェリア達は誰もが躊躇なく頷いた。

 四派閥の団長達が出した答えに暫しの間、彼は瞑目する。

 

 フィンの案を実行することで、竜による被害は減少するだろうが――それでもゼロにすることはできない。

 ロイマンにとって、それが何よりも悔しい。

 三大冒険者依頼完遂まであと一歩だからこそ、その思いをより一層強く感じる。

 

 だが、彼は有能であるからこそ――そういった思いを心の奥底に隠して、非情な決断ができる男だ。

 

「フィンの案を実行に移したい。各派閥で協議して、竜退治の派遣部隊の編成を決めてくれ。早急にだ」

 

 ロイマンの言葉に、レヴェリア達が頷いた。

 漏れ出る竜を退治しつつ戦力温存・強化――その方針が決定したのだが、会議はこれだけでは終わらなかった。

 

「私からの提案なのだが、竜退治の討伐隊を派遣する前に我々がどの程度の強さか、広く知らしめるのはどうだろうか?」

 

 レヴェリアの提案に、ロイマンは思考を巡らせる。

 彼やギルド幹部達は詳細な報告は受けているものの所詮は無味乾燥な書類上のものだ。

 討伐隊の面々が全力で戦っているところを、当然ながら見たことがない。

 そして、神々や民衆だけでなく大多数の冒険者達もそれは同じであった。

 見たいか見たくないかを問われれば、見てみたいというのがロイマン個人の本音であるし、誰に聞いてもそう答えるだろうという確信が彼にはあった。

 

 また、『広く知らしめる』――その言葉に含まれた対象には、神々や民衆や冒険者達だけでなく、闇派閥も含まれていると彼は正確に見抜いた。 

 今は地下に潜って大人しくしている闇派閥だが、隙あらば暴れようと手ぐすねを引いて待っているというのは共通した認識だ。

 そんな連中に対して、四派閥の強さを見せつけることで締め付けておく――それがレヴェリアの狙いだろう。

 

「良い案だ。具体的には、どういうことを考えている?」

「私対ゼウス・ヘラ・フレイヤ・ロキの全戦力、当日の飛び入り参加も可という条件での戦争遊戯だ。これならば鍛錬にもなるからな」

「……ん?」

 

 自分の耳がおかしくなったかな、とロイマンは思った。

 

 確かに、レヴェリアの噂は聞いたことがある。

 同格以下には絶対の強さを誇り、今や【英傑】と【女帝】すらも彼女には及ばない、と。

 

 だが、いくら神時代は量より質とされていても、多数の同格に取り囲まれたらひとたまりもない。

 最強にして最優の眷族と彼女が称されていようとも、同格による数の暴力には勝てないと考えるのは普通だ。

 だからこそ、同格に対する絶対の強さ云々という話に関しても、大多数の市井の人々や冒険者達、神々も【英傑】や【女帝】と1対1、あるいは1対2で戦う場合だと考えていた。

 とはいえ、格上や同格を含めた多数の敵にレヴェリアが勝利した事例はある。

 フレイヤ・ファミリアがオラリオに進出した当時、たった1人でレヴェリアは1つのファミリアを打倒したことだ。

 しかし、あの時とは敵となる相手の質も数も違いすぎる。 

 さすがに聞き間違いだろう、とロイマンは思ったからこそ、レヴェリアに尋ねた。

 

「私の聞き間違いか? お前対四派閥と聞こえたんだが?」

「聞き間違いではないぞ。それくらいしないと釣り合いが取れん。飛び入り参加も無制限にさせればいい」

 

 断言したレヴェリアに対して、ロイマンは【英傑】達へ視線を向けると――誰もが獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「……本気か?」

「本気だ。嘘だったらお前にいつも提供している胃薬を1年分、無料でプレゼントしてもいい」

 

 レヴェリア謹製胃薬、それはかつてロイマンが自分で依頼を出して作ってもらったものであり、その効き目は抜群だ。

 値段が市販品より幾分高いことが難点であるが、それを加味してもなお彼は定期的に発注していた。

 

 ロイマンは思考を巡らせる。

 【英傑】達の反応からして、レヴェリアが一方的に負けるような勝負になるということはない。

 ならばこそ、興行として全力で盛り上げて利益を貪るのみ。

 

「その案も実行しよう。各主神達に話を通しておいてくれ。神会次第だが、まず通るだろうな」

 

 面白いことを何よりも優先する神々が食いつかない筈がなかった。

 

 





 推定レベル5以上の竜達による人類に対するナワバリバトル




 全然関係ない妄想。
 もしも、この時間軸のレヴェリアがヘルメスがどっかから発掘してきたアーティファクトとか何かしらの異変で、原作時間軸のオラリオに飛ばされるという様々な妄想。

 拗らせすぎたたわけ女神少女と化したフレイヤに、レヴェリアが菩薩のような笑みを浮かべてその口にロールケーキをぶち込んだり、簀巻きにして吊るしたりする。
 その過程でオッタル達が毎回フルボッコにされる。
 イシュタルがそれを見て腹から笑い転げて、心からスッキリしてレヴェリアを勧誘して何やかんやで別世界での事情を聞いて本作と同じ関係に落ち着く。
 レヴェリアという最強のカードが手元にあるので、闇派閥との繋がりなんていうリスクを犯す必要はなくなったイシュタルがあっさりクノッソスの存在をレヴェリアに暴露。

 ある日突然、何の前触れもなくレベル9の化け物がオリハルコンの扉を純粋な膂力でぶち破って乗り込んできた時のエニュオと闇派閥の皆さんの気持ちは……
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