転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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動向

 

「マジか!?」

 

 カーリーは、思わず身を乗り出して問いかけた。

 対するイシュタルは大きく頷いてみせ、さらに言葉を紡ぐ。

 

「マジだ。以前、気になったから本人協力の下、ミアハとディアンケヒトに調査を頼んでな。2柱のお墨付きだ」

 

 その答えを聞いた瞬間、カーリーはガッツポーズを決めて雄叫びを上げた。

 何事だと彼女の傍に侍っているアマゾネス達がどよめく。

 

 すぐさまカーリーがテルスキュラの言葉でもってアマゾネス達に伝えれば、その意味を理解した彼女達が生唾を飲み込む音があちこちから聞こえた。

 

「【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】との間に子ができれば、最強の戦士が生まれるぞ!」

「ちなみに、アイツは将来的にテルスキュラに乗り込んでハーレムを作ろうとか考えているぞ。本人から聞いたから間違いないだろう」

「マジか!?」

「マジだ。テルスキュラの言語を少ない資料を頼りにしながら、独学で勉強しているとも聞いたな」

「渡りに船とはまさにこのこと! 戦争遊戯がますます楽しみじゃなぁ!」

 

 興奮気味なカーリーに対して、イシュタルは冷めていた。

 戦争遊戯が決まってからというもの、カーリー以外にもフレイヤに次いでレヴェリアとの関係が深いイシュタルから情報を得ようとやってくる神々は都市の内外を問わず多い。

 眷族達の力を見せつけてやる、と血気盛んな者は都市外に派閥を構えている主神にありがちだ。

 

 オラリオとそれ以外では平均的なレベルが違うということは、誰もが知っている。

 だが、オラリオにおける上澄みの実力がどの程度のものか、間近で見た都市外の神々は極めて少ない。

 そして、(主神)として子供(眷族)達の強さを信じたいという意識が働く。

 レベル9のレヴェリアは恐ろしく強いだろうが、己の眷族達が全力を尽くせば逆転の可能性が僅かながらもある――と思ってしまう。

 ましてや、今回は多数の派閥が味方であり、これで負けるわけがないと考えるのも道理だ。

 

 カーリーもそう考えている節がある、とイシュタルは感じていた。

 現時点でカーリー・ファミリアはレベル5が数名おり、カーリー曰く将来有望なカリフ姉妹とやらもいるらしい。

 都市外派閥に限れば、その戦力はバルドル・ファミリアから個人参加のレベル6――レオン・ヴァーデンベルクに次ぐと考えても良いだろう。

 だが、戦局を左右するどころか、レヴェリアに僅かな消耗を強いるくらいしかできないだろうとイシュタルは予想していた。

 

 今回の楽しみはレヴェリアがどんなことを仕出かすか。

 イシュタルにとっては、その一点だ。

 圧倒的多数の同格を敵に回してもフレイヤが勝利を確信しているレヴェリアの切り札、それを見たかった。

 

 戦争遊戯決定後、イシュタルはレヴェリアと会っていないが、彼女の動向は大よそ把握している。

 最初の1週間こそ愛妾に会いに行ったり、海洋国(ディザーラ)の王女を案内したりと大きな動きは無かった。

 だが、3週間程前から彼女はダンジョンに潜ったきり、戻ってきていない。

 久しくなかったレヴェリア単独でのダンジョン篭もり。

 どれほどに力をつけてくるのか、楽しみで仕方がない。 

 

「ま、精々頑張るといい」

 

 興奮しているカーリーに対して、そう答えたイシュタルは煙管を燻らせる。

 煙管は精緻な細工と数多の黄金で彩られたものであり、絶品の一品だ。

 これ以外にも、彼女が身につけている装飾品はどれもこれも素晴らしいものばかり。

 レヴェリアは魔道具作成者(アイテムメーカー)でもあると聞いていたカーリーは、もしやと思い尋ねる。

 

「ところでお主、その煙管とか装飾品とか……どこで手に入れたんじゃ?」

「レヴェリアの手作りに決まっているだろう。私がヤツから貰ったもの以外を、身につけると思っているのか?」

 

 何をバカなことを言っているんだ、と言いたげな顔のイシュタルに、カーリーは軽く溜息を吐いた。

 その間にもイシュタルは聞いてもいないことをペラペラと喋っていくが、全て惚気だった。

 

 地雷を踏んだカーリーであったが、面倒な性格をしているイシュタルがそこまで入れ込むということが分かったのは、収穫と言えなくもなかった。

 

 

 

 

 なお、この後カーリーはアフロディーテにもレヴェリアのことを聞きに行ったが、開幕からイシュタルの5倍くらい惚気られたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……リヴェリアとガレスも間に合ったか」

 

 2人がレベル8へランクアップしたことを、フレイヤから聞かされたレヴェリアは呟いた。

 ランクアップが公表されてから1週間経っていたが、この4週間、ずっとダンジョンに篭っていたので知らないのも無理はなかった。

 

「ゼウスやヘラの子達に依頼を出して、毎日朝から晩まで特訓に付き合ってもらったみたいよ」

「一番無難なやり方だな」

 

 続けられたフレイヤによる説明に、レヴェリアは同意した。

 レベル9やレベル8がゴロゴロいるからこそ、レベル7からのランクアップは格上に挑み続ける気概と折れない心があれば難しくはない。

 

 うちももっと戦力を集めておかないとな――

 

 そう考えながらレヴェリアは緑茶を啜り、お茶請けのぬれ煎餅を手に取って齧る。

 

「特訓とかする? 私がつきっきりでお世話をしてあげるから、ほら……2人だけの秘密の特訓的な……」

 

 そう問いかけながらフレイヤもぬれ煎餅に手を伸ばす。

 ぬれ煎餅はレヴェリアが以前より極東から取り寄せていたのだが、フレイヤやロキなど神々に広まり、独特の食感が癖になるとして今やオラリオでも生産が始まっていた。

 

「今朝、ダンジョンから戻ってきたばかりなんだが? ステイタス更新の結果を見て、私よりもお前の方が嬉しそうにニヤニヤ笑っていたじゃないか……」

「それはそうだけど、やっぱり直前までやっておかないと……慢心とか油断とか、そういうのって良くないと思うの」

 

 ジト目で問いかけたレヴェリアに、そう答えてフレイヤはぬれ煎餅を頬張った。

 そんな彼女を見ながら、レヴェリアは肩を竦める。

 

 派閥連合はかつてない程の人数が集まっており、まさしく世界を敵に回したと言っても過言ではない戦力だ。

 そして、今回の総指揮官にはフィンが大抜擢されていたが、頭脳明晰な彼であっても取りうる戦術は多くないとレヴェリアは予想していた。

 

 魔法封じをはじめとする様々なカースウェポンや各属性の魔剣、攻撃系魔道具をありったけ揃え、それを使いつつ大量の冒険者達をぶつけることで身動きを封じる。

 その隙に、フレイヤの花を別働隊が取りに行く――それがレヴェリアの想定した動きだ。

 

 これを裏付ける情報を、彼女は既に得ていた。

 別に頼んでいたわけでもないのだが、贔屓にしている商人や商会があれこれ教えてくれるのだ。

 しかし、そういったものが使えるのは派閥連合だけではない。

 

「そもそも治癒魔法を私自身に使うことを封じたところでな……回復薬などの自身への使用は制限されていない。魔剣とか魔道具とかも使えるからな」

「そういったところも禁止しても良かったかもしれないわ」

「ロキは喜んで受けそうだが、ゼウスとヘラは断るだろう。これ以上ハンデを貰うわけにはいかない、と言って」

 

 それもそうね、とフレイヤは頷きつつ、再度尋ねる。

 

「で、レヴェリア。秘密特訓は?」

「そもそも、何を特訓するんだ? お前がイシュタル様みたいに、戦士としても優れているとかならば、是非とも『技と駆け引き』を教わりたいが……」

 

 以前、イシュタルから気まぐれに『技と駆け引き』をレヴェリアは教えてもらったことがある。

 才能と膨大な戦闘経験に裏打ちされた神域の技術に、脱帽する思いであった。

 フレイヤもイシュタルと同じように戦いを司っているものの、彼女自身が優れた戦士であるというわけではない。

 しかしながらレヴェリアからの問いかけに対して、フレイヤは自信満々に胸を張ってみせる。

 

「あなたが剣とか振っているのを横で応援したりとか……あと疲れたら膝枕してあげるわ」

「……まったく、仕方がないな」

 

 肩を竦めながらも承諾するレヴェリアに対して、フレイヤは満面の笑みを浮かべるのだった。

 

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