捏造と改変マシマシ。
「イシュタル様、私はガチなロリコンなのか……?」
「状況からはそうとしか思えんな」
深刻な表情でレヴェリアは問いかけた。
すると、イシュタルはニヤニヤと笑いながらそう答えた。
ここ最近、レヴェリアはガチなロリコン――すなわち、ガチロリとして神々の間で評判が愉快なことになっていた。
アスフィ、アイズと既に手遅れ状態であったのだが、さらにダメ押しすることが起きた為に。
イシュタルもフレイヤ・ファミリアの動きは小耳に挟んでいる。
ヘルンという灰色髪の幼女、ヘイズ・ベルベットという薄紅色髪の幼女――その2人が新たに加わっていた。
幼すぎるが為に恩恵は与えられていないだろうが、将来的な入団は確実と神々から予想されていた。
とはいえ、2人の加入は実のところ、レヴェリアの積極的勧誘によるものではない。
ヘルンはフレイヤの気紛れにレヴェリアが付き合い、貧民街を訪れた時だった。
道端に倒れていた彼女をレヴェリアが治癒魔法で癒やしたところまでは良かったのだが、そこからの展開が予想外だった。
フレイヤを見た彼女は開口一番に言ったのだ。
あなたになりたい、と。
それを聞いた瞬間、フレイヤがレヴェリアに対して告げた。
何も聞いちゃ駄目。耳を手で塞いで頂戴。
あと遠くまで離れて、後ろを向いて。主神兼伴侶命令――
そこまで言われた為、レヴェリアは渋々従った。
故に彼女はどういう会話が2人の間でされたのか分からない。
そして会話が終わった後、フレイヤから幼女がヘルンという名であることが伝えられた。
ヘルンはフレイヤの数ある名の一つであったような気がしたレヴェリアは、フレイヤを問い詰めた。
しかし、フレイヤは偶然の一致だと答えた。
どうにも怪しい感じがしたが、それ以上の追求をレヴェリアはしなかった。
フレイヤは派閥にとって不利益を及ぼすようなことはしない為だ。
何かしらの考えがあるのだろう、とレヴェリアは思いつつ、フレイヤが変なことをしたらいつものように簀巻きにして吊るせばいいと考えた。
一方、ヘイズは辺境都市の貧民街にて、犯罪系派閥の団員に攫われそうなところを、レヴェリアによって助け出された。
その都市にレヴェリアが立ち寄ったのはロイマンからの指名依頼を済ませ、オラリオに帰る前に休息を取る為だった。
騒ぎが起きているな、と気づいた彼女は調査に乗り出し、犯罪系派閥のアジトに乗り込んで叩き潰した。
レヴェリアは犯罪系派閥の面々を誰も殺しておらず、それどころか身体的には怪我一つない。
しかし、その心は完全にへし折られた。
痛めつけて癒やされて痛めつけられた為に。
もっとも、レヴェリアからすればいつものことであり、特別なことではない。
だが、直接助けられたヘイズからすれば、それは
押っ取り刀でやってきた衛兵達に後を引き継ぎ、レヴェリアは立ち去ろうとしたが、ヘイズが飛び出して服の裾を掴んで放そうとしなかった。
レヴェリアが何を言ってもついていくの一点張り。
これも何かの縁だろうと思うことにしたレヴェリアは、ヘイズをホームに連れ帰ったというのが顛末だった。
なお、ヘイズもヘルン程ではないがフレイヤに初めて会った時、心を奪われた様子であった。
それが2人がフレイヤ・ファミリアへやってきた経緯であったが、レヴェリアの評判は愉快なことになっていた。
ニヤニヤとした笑みを浮かべているイシュタルを見て、レヴェリアは頬を膨らませてジト目で見つめた。
その顔を見たイシュタルは悩ましげに溜息を吐く。
「そんなに可愛い顔をするな。食べたくなるだろう」
そう言いつつも食べる気満々のイシュタルであり、レヴェリアは食べられる気満々だった。
「そういえば、そろそろだろう? メーテリアの出産は」
情事の後、イシュタルは問いかけた。
ゼウスとヘラ、その眷族の間に産まれる子として、神々の間ではちょっとした話題になっていた。
「ああ。もう少ししたら、私もヘラ・ファミリアのホームに泊まり込む。不測の事態に備えてな」
レヴェリアはそう答えたものの、腕利きの医者と助産師達を揃えたとアルフィアが胸を張っていたので、自身の出番はないと考えていた。
「その子供がゼウスとヘラ、どっちに属するか……賭けが流行っていてな。何か聞いていないか?」
「子供に任せるそうだ。場合によっては、二派閥に属さないという可能性もあるぞ」
「ほほう。ならば、私が誘惑してうちに引きずり込んだら面白そうだな」
にやり、と笑みを浮かべるイシュタル。
それがどれほど困難であるか、よく理解している上での発言だ。
その言葉に対して、レヴェリアはきっぱりと告げる。
「すまない、イシュタル様。それならば私が勧誘させてもらう」
「幼女を拐かすだけに留まらず、赤子にまで手を出すつもりか?」
イシュタルの言い方に、ムーっと頬を膨らませるレヴェリア。
くつくつとその様を見て、イシュタルは笑う。
「安心しろ、ちゃんと分かっているからな」
レヴェリアの頬を舌で舐めて、その耳元で甘く囁くイシュタル。
そして彼女は、再びレヴェリアを貪り始めるのだった。
「おい、レヴェリア。その胸をどうにかしろ。教育に悪い」
「さすがに理不尽過ぎるぞ、アルフィア」
厳しい表情でもって指摘したアルフィアに対して、レヴェリアは言い返した。
彼女の腕には、メーテリアの子が穏やかな表情で眠っていた。
アルフィアも既に抱っこしており、彼女からレヴェリアへ順番が回ってきていた。
イシュタルとの逢瀬から1週間後、レヴェリアはメーテリアの出産に備える為、ヘラ・ファミリアのホームに泊まり込んでいた。
それから3日後、メーテリアに陣痛が始まった。
自身の出番はない、とレヴェリアが予想していた通り、何事もなくメーテリアの出産は無事に終わった。
産まれたのは元気な男の子であり、レヴェリアが念の為に治癒魔法を掛けたこともあって母子共に健康そのものだ。
「うちの人、帰ってこれるかしら……?」
穏やかな表情で、そのやり取りを見ていたメーテリアが呟いた。
彼女の旦那は現在、自身のファミリアへ報告に行っており、この場にはいない。
既に1時間程経過しているのだが、中々帰ってこなかった。
ファミリア総出で酒を飲まされていそうな予感がヒシヒシとしていた。
子供が産まれてから2人きりで言葉を交わして名前も決めて、彼が赤ちゃんを抱っこしていたのは幸いだ。
「メーテリア、この子の名は?」
アルフィアの問いかけに、メーテリアは微笑んで答える。
「ベルよ。ベル・クラネル」
察しの良いアルフィアは、それはもしや自分の魔法に由来しているのでは、という考えが頭を過った。
「姉さんの考えている通りよ」
メーテリアにそう言われて、アルフィアは気恥ずかしくなってそっぽを向いた。
姉妹の微笑ましいやり取りに、心を和ませながらレヴェリアはベルをメーテリアへ渡す。
ベルを受け取ったメーテリアは、早くも手慣れた様子で抱きかかえる。
穏やかな表情で、子を見つめるメーテリアは母の顔であった。