転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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恩恵

 

 レヴェリアは『グランドスラム』はコスト面に多大な問題があることから別の方法を模索しつつ、自身の鍛錬及び団員の育成により力を入れることとなった。

 またヘイズとヘルンも恩恵を得て正式に団員となり、これによって年齢を理由に恩恵を刻まれていないのはアイズだけとなった。

 もう我慢できない、と彼女は年齢制限を回避すべく一計を案じた。

 

「レヴェリア、実は私……18歳なの」

 

 むっふー、と胸を張ってドヤ顔で告げるアイズに、レヴェリアは心が和んだ。

 フレイヤもまた微笑みながら、推移を見守る。

 2人は彼女の年齢が18歳などではなく、今年で6歳となることは承知している。

 アイズはアスフィの6歳下、ヘルンとは2歳下であった。

  

「本当に18歳か?」

 

 意地悪くレヴェリアが尋ねると、アイズは首を大きく縦に振った。

 そんな彼女に、おいでおいでとレヴェリアが手招きすると小走りで駆け寄った。

 慣れた手つきでアイズを抱き上げ、自身の膝の上に座らせる。

 そして、そのまま抱きしめて頭を撫でる攻撃を繰り出す。

 ついつい気持ち良くなってしまうアイズだが、彼女は頑張って耐えた。

 

「誤魔化されない。だって、私は18歳だから」

「14歳とかじゃ駄目なのか?」

 

 レヴェリアからの予想外の問いかけに、アイズは困った。

 

「う、うん、18歳だから……大人、だよ?」

 

 どうにか答えた彼女に、レヴェリアは苦笑してフレイヤに尋ねた。

 

「フレイヤ、どうする?」

「ちょっと幼いけど、良いと思うわ」

 

 フレイヤの答えに、アイズは目を輝かせる。

 まだ幼いから、とこれまでレヴェリアと歩調を合わせてきたフレイヤが、ここにきてまさかの賛成に転じたのだ。

 

「その理由は?」

「黒竜討伐にアイズを参加させるなら、そろそろ鍛え始めた方がいいと思うの」

 

 レヴェリアの問いかけに、フレイヤはそう答えた。

 以前より、アイズについては2人の間で共通した予想があった。

 

 黒竜に対する並々ならぬ憎悪から、特攻スキルが発現する可能性だ。

 もしもそういったスキルが発現すれば黒竜への切り札になりえるが、本人のレベルが低ければ防御を突破できないかもしれない。

 アイズ本人のやる気は十分であることから、いつ恩恵を授けるかというところが焦点だった。

 

 レヴェリアはアイズの瞳をまっすぐに見つめ、尋ねる。

 

「アイズ、私の言うことは守れるか?」

「守る!」

 

 アイズは視線を逸らすことなく、はっきりと告げた。

 レヴェリアは頷きながら、にこりと微笑んで尋ねる。

 

「それで、本当は何歳なんだ?」

「……6歳」

 

 バツが悪そうにアイズは、視線を逸らして答えた。

 その反応で十分である為、それ以上の言及をレヴェリアはすることなく再びアイズの頭を軽く撫でる。

 

「フレイヤ、後は任せた」

「ええ、バッチリ刻んどくわ」

 

 レヴェリアの言葉に、フレイヤは大きく頷いてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

「……おぉ」

 

 つい先程恩恵を得て、正式に団員となったアイズは感嘆の声を上げた。

 彼女の手にあるのは、過去にレヴェリアが打ったミスリル製の短剣であった。

 作っただけで満足して、売ることもなく倉庫に放り込まれていたものだ。 

 

「アイズの体格的に、これでも少し大きいが……背中に背負うようにすれば問題がないだろう」

「レヴェリア、いいの?」

 

 おずおずとアイズが問いかけると、レヴェリアは頷いてみせる。

 次に防具となったのだが、現状のアイズは小人族よりも小柄だ。

 

「防具は手直しが必要になってくるな。胸当てと肘・膝当て、ちょっとした兜もつけておこう。手直しついでに、色を染めたりもできるが……どうする?」

「オススメとかある?」

「黒だな。返り血や自分の血が目立たない」

「じゃあ、それにする」

「ちなみに、防具は目立たなくても髪とか顔とかに血がついたら目立つからな。特に髪は落とすのが大変だ」

「レヴェリアはどうしているの?」

「ダンジョン内の水場でなるべく洗うようにしているが、いつもあるわけじゃない。そういう時は魔法でどうにかしている」

 

 レヴェリアの三番目の魔法、それはアイズも知っていた。

 そんな魔法があるんだ、と驚いたのは記憶に新しい。

 

「ところでアイズ、これから強くなるためにどういうことをやるか、大雑把に伝えたい。いいか?」

 

 問いかけに、アイズは頷いてみせる。

 いよいよだ、と彼女は興奮と期待に胸を膨らませたが――レヴェリアの口から出てきた言葉は、本当に大雑把なものだった。

 

「まず、熟練度を限界まで持って行く。上限を超えて成長しそうなら、とにかく伸ばす」

「うん」

「次にランクアップをする為、格上のモンスターか団員、もしくは私と戦い続ける。以上」

「頑張る」

 

 胸を張ってアイズは答えた。 

 そんな彼女の頭を軽く撫でて、レヴェリアは告げる。

 

「防具の手直しが終わったら、食料等を用意してギルドへ冒険者登録に行くぞ。それが終わったら、ダンジョンに行くからな」

「うん!」

 

 レヴェリアの言葉に、アイズは大きく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、レヴェリア様。まだ子供なのに、もう冒険者にするつもりなの?」

 

 ギルド受付嬢の狼人、ローズは恭しい挨拶の後、保護者であるレヴェリアに遠慮なく問いかけた。

 ローズもアイズのことはレヴェリアの愉快な噂とセットで知っていたが、実際に会ったのは今日が初めてだ。

 

 その言葉を聞いて、これでもかと頬を膨らませるアイズ。

 子供扱いされることが頭にくるお年頃だ。

 そんな彼女の頭を軽く撫でて宥めつつ、レヴェリアは告げる。

 

「理由を聞きたいか?」

 

 その言葉に、厄介事の気配を感じ取ったローズは首を横に振った。

 ギルドに就職して4年。

 それなりに世間の荒波に揉まれつつある彼女は、世の中には知らない方が良いことがあることを悟っていた。 

 故に、彼女は言葉を変える。

 

「どういう事情があるかは問わないけど……本当に大丈夫なの?」

「安心してくれ。アスフィ達と同じく、私が指導するからな」 

 

 アスフィは入団から3年が経過し、12歳となっていたが既にレベル3に至っている。

 それも冒険者専業ではなく魔道具等の勉強や実験、開発に手を出しながらだ。

 ヘルメス・ファミリア経由で最近、彼女が開発した魔道具が売り出されているが、早くも人気となっていることをローズも聞き及んでいた。

 

 そして、アスフィのランクアップ理由が非常識過ぎることも把握していた。

 いくらレヴェリアによる治療支援があるとはいえ、格上のモンスターの群れと戦わせるなど正気の沙汰ではない。

 四派閥に限定するならばこういう方法は珍しいことではないが、冒険者全体では少数派だ。

 ヘイズとヘルンもレヴェリアが指導していると聞いていたが、まだ基礎固めの段階らしく、アスフィのようにぶっ飛んだ話は聞かなかった。

 

「『頂天』の称号が泣くわよ?」

「本当にそう思う。そもそも、あのクソトカゲが頑丈過ぎるのが悪い」

 

 信じられない言葉がレヴェリアの口から飛び出してきて、ローズは目を丸くする。

 彼女も、レヴェリアが巨大な最硬精製金属(オリハルコン)の塊をぶん投げて、黒竜の鱗を叩き割ったことは知っている。

 『頂天』の凄さというのは勿論あるが、そんな馬鹿げた量の最硬精製金属(オリハルコン)を調達・加工したところに感心してしまった。

 

「レヴェリア、大丈夫。私も一緒に戦うから」

 

 ふんす、と胸を張っているアイズに、ローズは溜息を吐く。

 何で幼女に、天下の【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】様が慰められているんだろう、と。

 

「本人が望んでいても、止めるのが大人じゃない?」

「私はもう大人だから」

 

 問いに答えたのは、アイズだった。

 ローズが肩を竦めたところで、レヴェリアが告げる。

 

「これまで止めてきたが、()()()によってそうも言ってられなくなった。だからこそ、死なせない為に、今から鍛えることにしたんだ」

 

 諸事情という単語に、ローズは察した。

 黒竜関連だ、と。

 

「ま、誰だろうが登録はできるわ。手続きをするから、用紙に記入して頂戴」

 

 そう伝えながら、ローズは登録用紙を取り出した。

 

 

 

 

 

 

 アイズは恐る恐る後ろにいるレヴェリアへ視線を向けるが、彼女は微笑んでいるだけで何も言わない。

 ここはダンジョン5階層。

 恩恵を得て、冒険者登録を済ませたばかりの初心者がいる階層ではないが、レヴェリアは何も言ってこない。

 ルートの指示と戦闘のアドバイス、ダンジョンでの豆知識などを話してくれるし、アイズからの質問にも答えるのだが――引き返そうとか帰るとか、そういうことは一切言わなかった。

 

 さすがはレヴェリアだ、私の願いをよく分かっている――最初こそ、そう思っていたアイズだが、ここまで何も言われないと段々と不安になってきていた。

 彼女には傷一つなく、体力は万全で疲労もない。

 レヴェリアが戦闘が終わる度に治癒魔法を使ってくれるからであり、またここまで全てのモンスターを一撃で倒してきた為だ。

 

 アイズには恩恵を刻んだ時、2()()()()()()と1つの魔法が発現した。

 そのスキルの一つが『復讐姫(アヴェンジャー)』だ。

 任意に発動ができるこのスキルの効果は、憎悪の丈に応じて怪物種に対する攻撃力の高域強化、竜種に対しては攻撃力の超域強化であった。

 かねてより予想されていた、特攻スキルと言っても過言ではない。

 

 『復讐姫(アヴェンジャー)』と魔法について、フレイヤはレヴェリアだけに伝えている。

 その為、アイズの圧倒的な攻撃力がこのスキルによるものだとレヴェリアも承知していた。

 なお、もう1つのスキルはアイズにだけ伝えている。

 その方が彼女は伸びるというフレイヤの判断だ。

 

「……レヴェリア、いいの?」

 

 おずおずと問いかけたアイズに、レヴェリアは首を傾げてみせる。

 その反応を見て、遂にアイズは率直に尋ねた。

 

「もう5階層だけど……このまま進んでいい?」

「いいぞ。お前の行けるところまで行ってみろ。これ以上は無理となったら、そこにしばらく篭もるからな」

 

 レヴェリアの答えに、アイズは察した。

 強くなれるが、色々なものを失う――アスフィ達から聞いていた、ダンジョン篭もりであった。

 その時、アイズは今更ながらにあることに気がつく。 

 

「そういえば、レヴェリア」

「何だ?」

「ヘルンってフレイヤのお世話係を希望しているのに、どうしてレヴェリアから戦い方を教えてもらっているの?」

 

 ヘイズは戦闘要員希望であり、なおかつ恩恵を刻んだ時に治癒魔法が発現したことから、それを強みとして活かすべく、レヴェリアは己の経験に基づいて指導している。

 しかし、ヘルンは侍従希望であり、所属は満たす煤者達(アンドフリームニル)であった。

 満たす煤者達(アンドフリームニル)は基本的に後方支援要員であり、戦闘能力がある者は稀だ。

 なお、最近食べすぎてお太り気味になったアーニャが、ダイエット目的で槍を学び始めたら、意外と才能があったことが判明するという珍事があった。

 

「ある程度の戦闘力はほしいわね、とフレイヤに言われたらしい」

「何で?」

「分からんが、あのたわけがろくでもないことを考えていることだけは分かる」

 

 レヴェリアの答えに、アイズもまた頷いてみせる。

 幼いながらに、フレイヤが自由奔放であることはよく知っていた。

 

 そんなことを話しながら、2人はダンジョンを進んでいくのだった。

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