転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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短め。


真相を探る

 合宿や竜の間引き等を除けば、毎日日の出から日没までランクアップ耐久戦として、戦い続けるレヴェリア。

 日没後にはアスフィ達の指導をしていることもあり、余暇時間は皆無に等しい。

 なお、ランクアップ耐久戦が始まってから、レヴェリアは毎晩ステイタス更新を行っている。

 その時にフレイヤとは色々と話をして一緒にお風呂に入り、ベッドへというパターンも多い。

 だが、そうはならなかった日もそれなりにある。

 もしかして私の知らないところでストレスを溜め込んでいるんじゃないか、と思ったフレイヤは、真相を探らねばならない、と決意した。

 

 彼女が決意してから数日が経った、ある日のこと。

 ステイタス更新を終えてからフレイヤと一緒に過ごすことなく、レヴェリアが自室へ戻った。

 程よく時間が経つのを待ち、フレイヤは動いた。

 そろりそろりと音を立てず、抜き足差し足忍び足でもってホームの廊下を歩く彼女の姿は大変怪しい。

 

 そんなところに運が悪く、あるいは運が良く通りかかったのはアイシャである。

 先程までアスフィ達と一緒にお風呂に入っていた為、湯上がりホカホカ状態だ。

 

 レヴェリアによるダンジョンでの指導は真夜中過ぎまで行われ、ホームに帰ってきてすぐに皆で浴場に行く。

 そして湯船に浸かりながら色々なことを話して、親睦を深めるというのが指導を受けている面々の日課だ。

 

「フレイヤ様、何をしているんだ?」

 

 またろくでもないことを思いついて、やろうとしているんだろう――そのようにアイシャは考えた。

 フレイヤが変な動きをしている時は、大抵やらかす前触れである為だ。

 

「今からレヴェリアの部屋に行くの」

 

 その言葉を聞いて、アイシャは察した。

 夜這いだ、と。

 だが、今はタイミングがよろしくないことも知っていた。

 

「もう30分くらい遅らせてくれないかい?」

「あっ……ふーん、そういうことね」

 

 アイシャの問いかけに、全てを理解と言わんばかりの表情でもって頷いたフレイヤ。

 そして、彼女は確信をもって問いかける。

 

「遂に、あなた以外の子にも手を出したのね?」

「いや、まだ出していないと思う。というか、ヤることヤッていたら30分じゃ終わらないのは、アンタが一番よく知っているだろう?」

 

 それもそうだ、とフレイヤは頷く。

 同時に、じゃあ何をしているんだろうという好奇心がむくむくと湧き上がる。

 

「もしかして……私に内緒ですごくすごい面白いことをやっているの!?」

「アイズの言い方が伝染(うつ)っているよ。本当にアンタ、愉快な女神だねぇ……」

「私、自分を偽ることはやめたの。ありのままに振る舞うって大事なのよ」

「それは確かに大事だけど、度々やらかしてレヴェリアに簀巻きにされて吊るされるのは……」

「いいじゃない、それも含めて楽しいもん。あと、そこまでやらないとオチがつかない気がするし」

 

 そんなことを宣うフレイヤに、アイシャは肩を竦めつつも告げる。

 

「面白いかどうかは別として、ご褒美であるのは間違いないね」

「アイシャはご褒美を貰ったことがあるの?」

「あるよ。1人ずつ順番だし……確か、今日はフィルヴィスの番だったと思う」

 

 なるほど、とフレイヤは頷く。

 何をしているのか、彼女の期待は高まる一方だった。

 

 

 

 

 

 アイシャとの邂逅により、ヒントを得たフレイヤは遂にレヴェリアの自室に辿り着く。

 彼女は細心の注意を払って音がしないよう、少しだけ扉を開ける。

 

 そこでフレイヤが目撃したもの、それは――

 

「フィルヴィス、お前は本当によく頑張っているな。まだ入団して3ヶ月だというのに、大したものだ」

「そ、そんなことないです……私なんて、まだまだで……」

 

 濡羽色の髪を、櫛で梳かされながらレヴェリアに労われて、謙遜するフィルヴィスの姿であった。

 やがて労いの言葉から、フィルヴィスがどういったところを努力しているか、魅力や美点はどこかなど具体的な事柄を褒める形に変わっていく。

 

 レヴェリアに髪を梳かしてもらうことはよくあるし、フレイヤがレヴェリアの髪をそうすることもある。

 だが、レヴェリアから褒められながら髪を梳かしてもらったことはなかった。

 しかし、ここでズルいズルいと言いながら出ていくのは、さすがのフレイヤも自重した。

 

 そうこうしている間にも、レヴェリアがフィルヴィスに色々なことを言っているが、どれもこれも嘘が一切ないのがフレイヤには分かってしまう。

 

 一方、レヴェリアはフレイヤがこっそり覗き見していたことに気がついていた。

 自分との同衾を断って、自室に戻って何かやっているだろうから気になって見に来た――そんなところか、とレヴェリアは予想した。

 そこで彼女は気がつく。

 フレイヤには褒めながら髪を梳かしたことはなかったな、と。

 今度やろう、と思いながら、レヴェリアはフィルヴィスに言葉を掛けていく。

 

 やがてフィルヴィスは、顔を俯かせて頬どころか長耳や首まで真っ赤になりつつ、嬉しさのあまり口元に笑みを浮かべていた。

 

 あの感じだと、もうすぐ堕ちるわね――

 

 フィルヴィスの様子を観察していたフレイヤは確信しつつ、音を立てないよう扉を閉め、その場を後にした。 

 

 

 

 

 そして、またある日のこと。

 またもやレヴェリアが同衾の誘いを断ったので、抜き足差し足忍び足でもって彼女の自室に接近したフレイヤ。

 フィルヴィスの時から1週間程が経過しており、この間にフレイヤはレヴェリアから髪を梳かしてもらいながら、褒められるということをされていた。

 故に彼女はレヴェリアにバレている可能性が高いと思いつつも、ある仮説の検証の為に今回も覗き見しようとしていた。

 その仮説とは、フィルヴィスに言ったことと同じことを他の子にも言っている説である。

 

 音がしないよう気をつけながら、扉を少しだけ開けて中を覗き見る。

 今回、レヴェリアが髪を梳かしながら労い、褒めている相手はアウラだった。

 

 どういう結果になるか、ワクワクしていたフレイヤであったが――レヴェリアの口から紡ぎ出される言葉の数々、それはフィルヴィスの時とはまったく違うものだった。

 どういったところを努力しているか、魅力や美点など、テーマは同じだ。

 だが、語られる内容は全て異なっており、フレイヤの仮説は間違っていたことが証明された。

 なお、アウラの反応もフィルヴィスとは違っていた。

 彼女は恍惚とした表情で、レヴェリアの言葉を聞き入っていた。

 

 あの感じだと、もう堕ちているわね――フレイヤは確信を抱く。

 

 例外を除いて、一般的にエルフというのはガードが堅く、権威主義的であり潔癖かつ真面目――ともすれば頑固ともいえる程に――である。

 それ故に、懐に入れた相手に対してはダダ甘となる場合が多い。 

 

 その相手が黒の王女であり、功績を積み上げてきたレヴェリアとなると――元々あった尊崇に、情愛が混ざり合った状態だ、とフレイヤは予想する。

 仮説の検証も終わった為、彼女は音を立てることなく扉を閉めて、その場を後にした。

 ちなみに今回もフレイヤの覗き見が、レヴェリアにバレていたのは言うまでもなかった。

 

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