転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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20巻で色々と設定が開示されたけど、設定を反映できないことがあります。
今後も新刊が出る度にそうなりますが、ご了承ください。


この手に限る

「レヴェリア様、どうやって探しますか?」

「片っ端から私が魔法で爆破していく。出入り口があれば、それで分かるだろう」

 

 傍らに立つアスフィからの問いかけに、レヴェリアは涼しい顔をして答えた。

 

 アスフィ達と合流後、アストレア・ファミリアの面々と共に早速調査開始となったのだが、ちまちまやっていては何年掛かるか分からないことに変わりはない。

 故にレヴェリアは脳筋的であるが、効率的な解決方法を提示した。

 

「アリーゼ、そちらから提案はあるか?」

「ないわ! レヴェリア様、ドカンとやっちゃって!」

 

 目を輝かせるアリーゼ。

 彼女として、鏡越しにしか見たことがないレヴェリアの攻撃魔法が見られる為、ワクワクな気分だ。

 そして、それは彼女に限った話でもなく、他の団員達もまた同じであった。

 なお、リューとセルティは顔に出さないように頑張っているが、うまく抑えきれていなかった。

 そうやって期待されるとレヴェリアもやる気になってしまう。

 そこへ釘を刺すかのようにジト目でアスフィが告げた。

 

「……レヴェリア様、くれぐれもやりすぎないように。やりすぎたら……埋まりますから。冗談抜きで」

「分かっているとも。危ないから、お前達は離れて見ていてくれ」

 

 レヴェリアはそう答えて、かなり手加減した【ボルカニックノヴァ】を壁に向かって撃ち始めた。

 ダンジョンによる修復がすぐに開始されるが、出入り口の有無さえ確認できれば修復されても構わなかった。

 

 

 

 

 

 ドカンドカンと途切れることのない爆発音。

 壁一面が次々に爆発していくその光景は不思議な爽快感があった。

 離れて見ていてくれ、と言われたアスフィ達とアストレア・ファミリアの面々だが、ただ見ているだけでは手持ち無沙汰だ。

 それ故に始まったのは――情報交換・共有という名のお喋りであった。

 話題の的になるのは現在、トリガーハッピーの如く【ボルカニックノヴァ】を乱射して、壁一面を爆破しているレヴェリアだ。

 

 といっても、アリーゼを筆頭に、アストレア・ファミリアの面々は彼女を称える言葉を聞きたいのではない。

 そんな言葉は巷に溢れ散らかしていて、面白くも何ともない。

 彼女達が聞きたいのは表に出てこない、ホームにおけるレヴェリアとフレイヤの仁義なき戦いやレヴェリアに関する面白話である。

 リューとセルティも畏れ多いと思いつつも、実のところ密かな楽しみであった。

 

「そういえばこの前、フレイヤがジャガ丸くんを作った」

 

 アイズがまず切り出した。

 ジャガ丸くんに関しては大変コダワリがある彼女は、フレイヤから味見を頼まれた。

 彼女の料理の腕前がどういうものかを把握していたアイズは、警戒しながらも一口食べて――普通に美味しかった。

 レシピ通りに作ったことが、それだけで分かってしまった。

 

「美味しかったって言うと、フレイヤは喜んだ」

 

 ここまでなら良い話であるが、それで終わるわけがないことをアリーゼ達は知っている。

 

「レヴェリアの好みの味は知っているから、それで作ってみるって……たぶんレシピから外れたんだと思う」

 

 だいたいオチが分かったが、アリーゼ達が言葉を発することはない。

 フレイヤとレヴェリアの定番ネタであるからこそ、外れがない。

 アスフィ達は、思い当たる節しかないので遠い目になる。

 

 しかし、ここでアイズは問いかける。

 この面子でもっとも幼い彼女であるが、話を面白くしようという努力がそこにはあった。

 

「どういう味になったと思う?」

「野草に塩をまぶしたような味!」

 

 元気良く手を上げて、真っ先に告げたのはアリーゼ。

 以前、アストレア・ファミリアは遠征失敗時、そういったひっどいスープで飢えを凌いだことがあった。

 

「さすがにそれはない。ヘドロを煮詰めた味」

「奇跡的に【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】の好みの味になっていた、だろ?」

 

 輝夜、ライラと続いて次々とアストレア・ファミリアの面々が答えを出していくが、アイズはふるふると首を横に振った。

 

「『ヴェノムスカイ・センチピード・ドラゴン』の体液みたいな味だったって」

「ヴェ……? なんですって?」

 

 思わず問い返したアリーゼに対して、アイズは答える。

 

「67階層に出てくる推定レベル7の大きな百足みたいな見た目のドラゴンらしい。斬った時に体液がうっかり口に入っちゃったことがあるらしくて、言葉に出来ないほど苦いみたい」

「レヴェリア様ったらうっかりさんね!」

「うっかりさんで済ますな。他に言うべきことがあるだろう」

 

 アリーゼの言葉に、輝夜がジト目でツッコミを入れた。

 

「というか、どうやったらそんな味を作れるんだ? 普通の食材だよな?」

 

 ライラの問いかけは、何回も繰り返されてきたものだ。

 定番ネタであると分かっていても聞かずにはいられない。

 

「うん、普通の食材。で、あとはいつもの通り」

 

 いつもの通りで済ますアイズ。

 レヴェリアがフレイヤをお仕置きして終わり――という意味だ。

 

「僭越ながら、次は私が」

 

 そう前置きして、切り出したのはアウラ・モーリエルだ。

 レヴェリアに心酔している彼女だが、それはそれこれはこれである。

 

「実はレヴェリア様からこの間、納豆を賜りました」

 

 瞬間、輝夜を除く一同に緊張が走った。

 彼女は話のオチが分かった為、肩を竦めるが口を挟むことはない。

 

「参考までに、どのように食べるのかお聞きしたのですが……」

 

 そこでアウラは言葉を切り、体を震わせながらゆっくりと告げる。

 

「納豆、生卵を白米に掛け、さらにネギを載せて、醤油を掛けて混ぜて食べるのが美味しいらしいです……!」

 

 極東の料理を提供するレストランや食材を扱う店は年々増加傾向にあるとはいえ、馴染みのない者達からすれば恐ろしい所業だ。

 納豆の匂いと見た目が駄目で、食べようとすら思わないというのが実情である。

 そこに生卵や醤油を掛けて、ネギと一緒に混ぜるとなれば見た目や匂い、味は想像を絶していた。

 こればかりは、それなりに長い付き合いとなりつつあるアスフィですら慣れなかった。

 

 一方で輝夜からすれば、美味しい食べ方としか思えない上、そもそもレヴェリアがそういうものも好むことを知っていた。

 誰にも言っていないが、実のところ彼女はレヴェリアに誘われて2人で極東料理を食べに行くことが偶にあった。

 ランクアップ耐久戦が始まったことで無くなったが、輝夜は日頃からお世話になっているお礼かつ仲良くなっておいた方が色々と楽ができるという理由でもって、日持ちのする差し入れを偶にしていた。

 無論、レヴェリアに直接渡したりアスフィ達を経由すると風評的な意味で面倒なことになりかねない為、購入店にフレイヤ・ファミリアへ配達してもらっていたが。

 

「アウラ、その納豆はどうしたの?」

「……レヴェリア様に承諾を得た上でフィルヴィスと協力して、半分ずつ食べました」

 

 アイズの疑問に、アウラは少しの間を置いて答えた。

 自然と皆の視線がフィルヴィスへ向く。

 

「……こ、高貴な御方からの賜り物だから……その、頑張った」

 

 フィルヴィスは顔を背けながら、そう答えた。

 おぉ、と感嘆の声が上がる。

 

「大したもんだねぇ」

「まったくですねー。レヴェリア様からの賜り物とはいえ、納豆はかなりの覚悟がいりますよ……!」

 

 アイシャとヘイズの称賛の言葉に、アウラとフィルヴィスは誇らしげに胸を張った。

 だが、そこでヘルンが分かっていないとばかりに告げる。 

 

「レヴェリア様から賜ったものならば、感涙に咽びながら全て食すのは当たり前では? たとえそれがどんなものであろうとも、美味しい以外の感想はありえない」

「ヘルン、フォローしているようでできていませんよ?」

 

 遠回しに納豆はヤバいと言っているようにしか聞こえないヘルンの言葉に、アスフィがツッコミを入れた。

 事実、そうとしか聞こえない為に生暖かい視線がヘルンに集中する。

 そんな視線を振り払うかのように、彼女は咳払いをして切り出す。

 

「次は私よ。先日、レヴェリア様に唐揚げを振る舞わせて頂いたわ」

 

 瞬間、空気が変わった。

 あの大騒動かとアスフィ達は思い出し、アストレア・ファミリアの面々は特大の面白い気配を感じた為に。

 

「私の唐揚げを前にして、レヴェリア様は満面の笑みを浮かべてくださったの。もう私はそれだけで至福のあまりに天に還ってしまうかと思ったのだけど、それだけでは終わらなかった」

 

 そう語るヘルンの表情は恍惚としていたが、いつものことだ。

 ところで、彼女がレヴェリアのことを口にする時、フレイヤが絡んでくる面白エピソードが飛び出すことがとても多い。

 今回もまたその例に漏れなかった。

 

「一口食べて、すごく美味しいと仰られて……次々と食べてくださったの。その時のレヴェリア様の表情ときたら……」

「はいはい、ヘルン。レヴェリア様が召し上がっている際の表情について、詳しく語りたい気持ちは大変理解できますけど……肝心なところを話してください」

 

 ヘイズの言葉に、ヘルンはムスッとした顔となるが、何も言わなかった。

 彼女の言う通り肝心な部分はこれからである為に。

 

「レヴェリア様が召し上がっている最中、フレイヤ様がいらっしゃられたの。私も食べたい、と仰られると、レヴェリア様は女神の如き笑みを浮かべて答えられたわ」

 

 そこでヘルンは言葉を切り、数秒前とは打って変わって深刻そうな表情でもって告げる。

 

「レモンでも食べていろ、このたわけ――と」

 

 レヴェリアは忘れていなかった。

 かつて、フレイヤによって唐揚げをレモン果汁に沈められたことを。

 このエピソードは、いつの間にかオラリオ中に広まっており、唐揚げにレモンを承諾なく掛けることは天の法典に反することではないか、と神々の間で真剣(面白おかしく)に議論された。

 アストレア・ファミリアの面々も既知であり、承諾なく揚げ物全般にレモンを掛けることは禁止という派閥内ルールが加わった程である。

 

「フレイヤ様は駄々をこね、レヴェリア様は憤怒されてフレイヤ様の口にレモンを突っ込む等と……フレイヤ・ファミリアにおける頂上決戦が勃発したわ。無力で無能な私は、何もできなかった……」

 

 苦渋に満ちた表情となるヘルン。

 そこで話をヘイズが引き継ぐ。

 あの時のことを思い出して、最後まで言えなさそうという気配を感じ取った為に。

 

「などとヘルンは言っていますけど、要するにどっちの味方もできなかったってだけですから。ちなみに、最終的にヘルンが追加で唐揚げを作ったことで解決しました」

 

 ヘイズによって話が締められた時、爆発音が消えた。

 同時にレヴェリアの声が響く。

 

「あったぞ! 扉だ!」

 

 すぐさまアスフィ達とアストレア・ファミリアの面々は雑談を切り上げて、そちらへ向かう。

 そして、そこで予想外の光景を彼女達は目にした。 

 

「……ほほう、これは……なるほど、素晴らしい……!」

 

 そう呟きながらレヴェリアが満面の笑みを浮かべて、扉の表面を撫でていた。

 何が何だかすぐには理解できない者達が大半であったが、アスフィは即座に気がつく。

 

「レヴェリア様、もしやその扉は……!」

「ああ、そうだ。最硬精製金属(オリハルコン)製だ。これは、かなり期待できるぞ……!」

 

 機嫌良くレヴェリアはそう答えた。 

 鼻歌でも歌い出しそうな彼女に、アリーゼは尋ねる。

 

「でもレヴェリア様、それって噂に聞く闇派閥の根城とかじゃないのかしら?」

「ならば尚更、持っていっても問題ないな。救界(マキア)に資するとなれば、闇派閥の者達も感涙に咽ぶだろう」

 

 そう告げてレヴェリアは、鷹揚に頷いてみせるのだった。




色々と忙しいので次回更新遅れる可能性が高いかも……
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