転生したので、欲望の為に突っ走る   作:やがみ0821

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輝夜回。
フェチ要素あり。


たわけ黒妖精王女による姫口説き

「【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】様は乾く暇がありませんねぇ」

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべ、ゴジョウノ・輝夜は告げた。

 以前よりレヴェリアは彼女を不定期に食事に誘っており、ランクアップ耐久戦があったことで途切れた期間があったものの、耐久戦が終わった後には復活している。 

 今日もまた行きつけの極東料理屋、その最奥にある座敷の個室にて2人は雑談に興じていた。

 

 既に夕食を終えたことから食器類は片付けられており、机の上には緑茶の入った急須と湯呑み、お茶請けしか残っていなかった。

 もっともこれはいつものことであり、店の従業員達は2人が揃って出てくるまでは部屋に近づくことはない。

 

 フレイヤ・ファミリアの団長とアストレア・ファミリアの副団長が食事を共にする――

 

 そこでやり取りされる情報には、どんなものが含まれているか分からない。

 レヴェリアが料理の代金とは別に心付けを多めに毎回渡していることもあり、店側もまた相応の配慮をしていた。

 

 実際のところ、聞かれて困るような話はあまりない。

 レヴェリアを輝夜が面白おかしくからかったり、レヴェリアが極東の料理や文化などを輝夜から教えてもらうなど他愛もないものばかりだ。

 オラリオ内外の情勢について話し合うこともあるが、その頻度は多くなかった。

 

 

 輝夜の言葉に、思い当たる節しかないレヴェリアは肩を竦めてみせる。

 1ヶ月程前、デメテル・ファミリア直営レストランで出会ったシル・フローヴァのことだ。

 レヴェリアのファンを自称する彼女は、レヴェリアのことを何でもかんでも知りたがり、ぐいぐいと押してくる。

 あんまりいなかったタイプだな、と思いながらもレヴェリアは食事がてら彼女に会う為、ちょくちょくレストランへ足を運んでいた。

 

 フレイヤが女神ではなく街娘として生まれていたら、こうなるんじゃないか?

 

 この1ヶ月、シルと接した彼女はそのように考えていた。

 

 一方、レヴェリアが何かしらを言う前に、輝夜は軽く溜息を吐いてみせる。

 エルフの時間感覚は分からないが、ヒューマンの時間感覚ではそれなりに長い付き合いだ。

 これまで食事をしながら様々なことを話して親睦を深めており、今では本性をさらけ出してタメ口でもって接するのが当たり前となっていた。

 

 それこそ、あけすけに遠慮なく言いたい放題だ。

 

 そうなったのは輝夜にとって初めて本性を出した時、レヴェリアが嬉しそうに笑みを浮かべて発した言葉にある。

 

 ようやくお前と仲良くなれた気がする、と。

 

 そこで盛大に煽ってやったが、それすらも彼女は喜んだのでド変態だと輝夜は確信した。

 本当に王女なのか、と彼女が呆れたことも多々ある。

 その最たるものがベヒーモスやリヴァイアサン討伐時に真正面に立って囮となった時の話だ。

 輝夜もその話は以前より知っていたが、本人によって語られると迫力や生々しさが違った。

 王女のやることじゃないだろ、と全てを聞き終えた彼女は真顔でツッコミを入れてしまったが、黒竜にもそうするつもりだと返された上、それこそが私の義務である――レヴェリアがそう断言したことは輝夜の記憶には鮮明に残っていた。

 

 そこでレヴェリアがジト目で問いかけた。

 

「おい、何だその溜息は?」

「私がいるにも関わらず、ぽっと出の女にうつつを抜かされているので……」

 

 よよよ、と着物の裾で目元を隠してみせる輝夜。

 勿論、嘘泣きだ。

 

 レヴェリアと関係を深めておけばアストレア・ファミリアに益を齎し、あちこちに融通を効かせられて楽ができるという目的があったのだが、ここ最近はそれ以外にも理由ができた。

 輝夜個人としてレヴェリアには恩があったのだ。

 

 ゴジョウノ――五条家は暗部担当であり、家に生まれた女は標的の男と交わることで怪死させられるよう、幼い頃より毒を摂取し体内に蓄積させられる。

 代々そういった生業をしてきたのだが、ある時に伝わってきたのがレヴェリアの名と破格の治癒魔法の話だ。

 

 自分達が使っている毒も解毒できてしまうのではないか、という懸念を抱いた五条家はずっと前――レヴェリアがフレイヤと別行動をしていた頃――には暗殺すべく手を回した、と輝夜は聞いたことがあった。

 結局大損害を被って手を引く羽目になったのだが、それもあってか当時を知る老人達はレヴェリアに恨み骨髄だ。

 奴を見かけたならば最優先で殺せと常々周囲に言っていた程に。

 

 そして、老人達の懸念が正しかったことを最近、輝夜は身を以て知ることとなった。

 人造迷宮(クノッソス)発見によるお礼の模擬戦やら合宿への初参加やらで何度もレヴェリアの治癒魔法を浴びたことで、すっかり健康体だ。

 輝夜自身が経歴などを一切話しておらず、この事に関してはレヴェリアはまったく知らない。

 対するレヴェリアもゴジョウノという家名や輝夜自身の教養の高さなどから、高貴な身分だと予想はすれど尋ねたりすることはなかった。

 

「ところで、どうして私に手を出されないのですかぁ?」

 

 煽りつつ、目を細めた輝夜はレヴェリアへちょっかいを掛ける。

 片方の足を伸ばし、白い足袋下に包まれた足先でもってレヴェリアの膝をつつく。

 この手のちょっかいはこれが初めてではない。

 

 レヴェリアに下心がないといえば嘘になる。

 以前に似たような煽りをされた時には、輝夜のどういったところが魅力的であるかを事細かに説明した程だ。

 輝夜の容姿が優れていることなど誰にでも分かる為、これまでの交流を通してレヴェリアが感じた内面的な魅力が中心である。

 

 羞恥のあまり顔を真っ赤にした輝夜からは盛大な罵倒を浴びせられたが、そういうところも愛らしいぞとレヴェリアが返していた。

 

 手を出さないのかと今回も煽られたレヴェリアは、真正面から斬り込みを掛ける。

 据え膳食わぬは女の恥、いざ吶喊の精神である。

 これまでと同じくいいようにあしらわれる事は重々承知の上で、彼女は真摯な表情で告げた。

 

「輝夜の作った味噌汁が食べたい。赤味噌で具材が豆腐と玉ねぎと油揚げならば尚良し」

お前の故郷(ダークエルフの隠れ里)、やっぱり極東にあるだろ」

 

 呆れ果てた顔で輝夜はツッコミを入れた。

 そう判断するに足るレヴェリアの発言は今回だけでなく、これまで多々あった。

 その最たるものが過去、時の権力者によって詠われた『望月の歌』だ。

 どういう解釈がされているかを教えてほしい、とレヴェリアが言ってきたことがあり、輝夜には驚きと困惑しかなかった。

 

 輝夜は思う。

 

 まったくこのたわけ妖精はどうしようもない奴だ――

 

 飢えた野獣の如く、ガツガツときたのならばやりようがあった。

 だが、レヴェリアは難攻不落の城を攻め落とすかの如く、慎重に着実に距離を詰めてきた。

 さらに彼女の言葉は社交辞令やお世辞ではなく、本心から出たものだということが嫌でも分からされてきた。

 

 その極みが、己の魅力について事細かに説明された事案だ。

 

 いつものように煽ってみたら、とんでもないモノが出てきた。

 それこそ、藪から蛇どころか藪から竜が飛び出してきたようなものである。

 

 黒髪が綺麗だの肌が白くて美しいだの、ありきたりな事を言ってくるかと思いきや、お前の容姿が優れていることなど今更伝えるまでもないとレヴェリアは真っ先に告げてきた。

 そして、そこから始まる怒涛の熱弁。

 輝夜の内面が如何に魅力的であるか、真剣な表情で語りに語ったのである。

 

 淫乱スケベ欲望まみれクソボケたわけ変態レズカスクズ妖精――恥ずかしさのあまりに、悪口全部乗せ欲張りセットみたいな罵倒を輝夜がしても、レヴェリアは怒るどころか愛らしいと言ってくる始末。

 

 何を言っても駄目だ、と輝夜は匙を投げつつも、正直悪い気がしなかったのも事実である。

 そういうこともあって情が湧いているのだが、素直にそれを認めるのは甚だ癪であるのが輝夜という女だ。

 

 輝夜は片足の足先でのちょっかいをやめて、両足を動員してその足裏でもってレヴェリアの両膝を擦り始めた。

 着替えるどころかシャワーを浴びてきたわけでもない輝夜が、1日中履きっぱなしの蒸れた足袋下。

 そんな汚れ物を履いたまま足裏で膝を擦るとは最悪の所業である――普通ならば。

 

 だが、レヴェリアにとってはご褒美だ。

 足先でつつくなどはあったが、ここまでスゴイ事をしてくれたことはこれまでにない為、風向きが変わったかとその長耳がピンと立った。

 

「【黄金の戦乙女(ヴィンゴルヴ)】様は、私にどういう利益を頂けるので?」

 

 すりすりと緩急をつけて足裏でレヴェリアの膝を擦りながら、彼女は問いかけた。

 試されていると確信したレヴェリアは躊躇なく告げた。

 

「『仏の御石の鉢』、『蓬莱の玉の枝』、『火鼠の皮衣』、『竜の顎の玉』、『燕の子安貝』を創ればいいか?」

 

 この世界でも『竹取物語』は細部こそ異なっているものの、大筋のストーリーや要求物は同じである。

 故に輝夜も知っているが、彼女からすれば斜め上の回答だ。

 しかも用意するのではなく創り出すというところが、稀代の魔道具作成者(アイテムメーカー)でもあるレヴェリアらしい。

 

「お前なら本当に創りかねんが、そんなものを貰っても困る……だが」

 

 呆れ顔で輝夜は答えたところで、そっぽを向いて声を潜めて告げる。

 

「……心意気は嬉しく思う」

 

 答えながら、レヴェリアの膝をぐにぐにと足裏で押してやる。

 その行為にレヴェリアは頬を緩ませつつ、新たな提案を行う。 

 

「それならば黒竜の首級でも渡せばいいか? 灰になってしまうかもしれんが……」

「お前は私を何だと思っているんだ?」

「妖怪首おいてけ」

「アウラだろ、それは」

 

 やれやれと溜息を吐いてみせる輝夜に、レヴェリアはくすりと笑う。

 そして、彼女は何気なく問いかける。

 

「場所を変えてじっくりと話し合う必要があると思うが……どうだろうか?」

「せっかくのお誘いですが、明日の警邏は私が担当なので……」

 

 そう答えた時、輝夜は見た。

 レヴェリアの表情こそ変わっていないが、その長耳がゆっくりと垂れ下がっていくのを。

 

 意外と可愛らしいんだよな、このたわけ妖精――

 

 そう思いつつ、輝夜は告げる。

 

「だが、明後日ならば良いぞ」

 

 瞬間、垂れた長耳が勢いよく立った。

 予想通りの反応をしたレヴェリアに、輝夜はくすくすと笑うのだった。

 




 輝夜により実家のことや政争やらを聞いたうえで、彼女の実家が独断で何かしらのちょっかいを掛けてきた時のレヴェリア

 対話で解決できるよう努力する。武力行使は最終手段→ノーマルルート

 暴発を防ぐには、極東を一つに纏めるしかない。その為には私自身が外圧になることだ→ペリー的黒船ルート

 外に目を向ける前に朝廷は足元の飢えたる民を助けよ! その為にも君側の奸を排除すべし!! 尊皇討奸!!! 維新断行!!! →思想強め皇道派ルート

 朝廷を東西南北に分裂させ、互いに監視させたり争わせたりして利益を得よう→ブリカス仕草ルート


 なお、ノーマルルート以外は輝夜に初手大説教されて全て阻止される模様。
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