「これは溺れてしまう……」
ベッドの上に仰向けになりながら、アリィは呟いた。
「溺れてもいいんだぞ?」
隣から掛けられた声にアリィが顔を向ければ、柔らかな笑みを浮かべたレヴェリアがいた。
シンドの戦い後、戦場の後始末を兵達に任せて主だった家臣達と一足早く、ソルシャナへ帰還した彼女は歓呼の声でもって民衆から迎えられた。
ところどころ崩れたり、火災で焼けたところがあったものの王宮は居住・執務に支障がない状態であったのは幸いだ。
それから数日が経過した昨夕のこと。
『
ワルサ本国の軍事拠点を隈なく叩き潰し、その牙を完全に砕いた――そう告げた後、彼女は報酬を請求した。
その意味が分からぬアリィではない。
来たるべき時が来た、と彼女は意を決し、レヴェリアと褥を共にして――極上の快楽を味わい、肉体的にも精神的にも深く満たされた。
レヴェリアもまた王族であるからこそ、これまでのアリィの苦労をよく理解し、共感してもらえたことも大きい。
「いや、いい」
レヴェリアからの問いかけに、アリィは否と答えた。
レヴェリアはとことん甘やかしてくるだけでなく、さらには尽くしてくれることを昨晩、身を以て理解した。
それは大変心地が良いが、底なし沼のようでもあると感じたが故の否定だ。
「それよりもお前はもう少し、恥じらいをもったほうがいいんじゃないか?」
「誰彼構わず見せているわけではない。別に問題はないだろう」
アリィの言葉に、レヴェリアはそう返す。
互いに全裸であるものの、アリィはシーツを纏っているのに対してレヴェリアは隠す素振りもない。
彼女の身体を見たことで、昨晩の様々な痴態がアリィの脳裏に蘇る。
前半はアリィが緊張していたこともありレヴェリアがリードしたが、後半はアリィが主導した。
王子として娶る妻を喜ばせる手解きを受けていた為、それを実践した形だ。
しかし、終盤ともなると思い返すだけで羞恥に顔が真っ赤になるようなことを、雰囲気に流されたアリィはノリノリでしていた。
なお、レヴェリアが生やせることもしっかりとアリィ自身が確認している。
あれこれ思い出したところで、アリィはジト目で告げる。
「レヴェリア、お前はそもそも……その、何だ、破廉恥が過ぎる。生やす前も生やした後も、普通の行為から外れたことを……!」
「お前がそれだけ魅力的だからな」
ああ言えばこう言うレヴェリアに、アリィはムッと頬を膨らませるが、口では敵わないことは昨晩散々に分からされている。
ごほん、とアリィはわざとらしく咳払いをして、身体を起こしてベッドの上に座る。
その様子にレヴェリアもまた起き上がり、おもむろにアリィへ手を伸ばし、彼女を自身の方へ引き寄せた。
そして、自らの胸にアリィの顔を埋めさせて、その頭を撫で始めたところで尋ねた。
「抵抗しないのか?」
「抵抗したところで無駄だろう」
「よく分かっているじゃないか」
ぐぬぬ、とアリィは呻くが気持ち良いことは否定できない。
「しばらく激務が続くのだから、今は英気を養うと良い」
レヴェリアからの言葉に応えるように、アリィは両手を彼女の背中に回して抱きしめる。
その行動に、レヴェリアは微笑んで彼女の額に口づけた。
この後、2人はそれぞれの務めを果たすべく一時の別れとなる。
刹那の時を惜しむよう、抱擁を交わすのだった。
アリィとの逢瀬を終えた後、レヴェリアはリオードへ向かった。
フレイヤとアスフィ達がオアシスの屋敷に戻っており、彼女達と合流する為だ。
そして、屋敷でレヴェリアを出迎えたフレイヤは拗ねていた。
頬を膨らませた彼女は、無言でレヴェリアをじぃっと見つめる。
私、拗ねてます――という分かりやすいアピールだ。
彼女に対して、レヴェリアは提案する。
「フレイヤ、オラリオに帰ったら1週間程、アパートでも借りて2人きりで過ごさないか? オラリオ内ならば、今回のような大きな騒乱に巻き込まれることもないだろう」
「この私がそんな提案に乗ると思うの? がっかりよ、レヴェリア。がっかりだわ」
腕を組んでそっぽを向くフレイヤ。
しかし、彼女はレヴェリアへチラチラと視線を向けている。
「2週間。その間、私は男装しよう」
「もう仕方がないわね! アリィに構ってばかりで、寂しかったんだから!」
食い気味に承諾したフレイヤは素直に心情を吐露して、レヴェリアの胸に飛び込んだ。
そんな彼女の頭を撫でながら、レヴェリアは告げる。
「フレイヤ、ラシャプ達のことは改めて礼を言いたい。ありがとう」
「ん、いいわよ。あなたとの旅行を邪魔されたんだもの。相応の罰を与えたに過ぎないわ」
そこで言葉を切り、フレイヤは清々しい顔でもって告げる。
「股間を全力で蹴ったから、スッキリしたわ」
これにより、ラシャプ達は全員が送還された。
幾人かの男神は悶絶しながらも幸せそうな顔だった、とレヴェリアはワルサへ向かう途上でメルーナから報告を受けていた。
「それと、クロエとルノアだけど恩恵が封印されていたわ。私が送還した神の中に主神がいたみたいね」
「改宗は?」
「バッチリよ」
「ありがとう。しかしラシャプ、前は耐えたのに今回は無理だったのか……」
レヴェリアがしみじみと呟いたところで、フレイヤはピンと閃いた。
「ねぇねぇ、レヴェリア! 蹴ったところが穢れちゃったわ! なんかこう、いい感じに浄化して!」
「日数が経っているが、どうしてもと言うなら治癒魔法で……」
「違うの、そうじゃないの。分かっているでしょ?」
「勿論、分かっているとも」
レヴェリアは答えながら、フレイヤの頭を撫でくり回す。
にへら、とフレイヤが笑みを浮かべた時だった。
「お取り込み中のところ、失礼するわ」
その声にレヴェリアとフレイヤが顔を向ければ、そこにはクロエがいた。
彼女の後ろには、呆れているアスフィ達の姿があった。
その反応から、これからクロエが何を言うのか彼女達は知っているらしかった。
あえて標準的な口調でもって声を掛けてきたことから、お願い事だろうとレヴェリアは予想する。
どんな事を言い出すのだろうか、と思いつつレヴェリアは視線をフレイヤに向けたが、彼女も知らないようであった。
「ねぇ、レヴェリア様。私、
そして、クロエは上目遣いでもってレヴェリアにおねだりを実行した。
それに対して、レヴェリアがフレイヤをチラリと見ると、ニコニコ笑顔であった。
「いいんじゃない? クロエとルノアの入団祝兼アスフィ達の慰安ってことで」
もっともらしい言葉を述べているが、長い付き合いのレヴェリアはジト目でフレイヤを見つめる。
ろくでもない事を思いついたに違いなかった。
だが、フレイヤが易々と口を割らないこともレヴェリアはよく知っていた。
軽く溜息を吐いた後、彼女は告げる。
「
「バニーガール目当てでしょ?」
「……話の途中で口を挟むな、たわけ」
指摘してきたフレイヤに対して、そう言いながらレヴェリアは彼女のオデコにデコピンを食らわせた。
その行動からフレイヤの指摘が正解であることをアスフィ達は察したが、それよりも話の続きが大事だ。
悶絶するフレイヤを尻目に、レヴェリアは話を続ける。
「テリー・セルバンティスという面白い男がいた。ヤツはドワーフで、出会った時は素寒貧だった」
そこで言葉を切った彼女は、懐かしむように微笑む。
「私を見て、駆け寄ってきてヤツは言った。100万ヴァリス、俺に投資してくれ、と」
「それで投資しちゃったの?」
オデコを擦りながら問いかけたフレイヤに対して、レヴェリアは頷いてみせる。
「貸してくれではなく投資してくれ、と言ってきたからな。だから、
「で、結果は?」
「2ヶ月程前、ヤツから手紙が届いた。顔役の1人になったからあの時のお礼をしたい、いつでも来てくれ、とな」
「良かったわねぇ……で、レヴェリア。怒らないから、何で
「多分あるんじゃないかって思っていたものを探してみたんだが、無かった。それはともかく、そろそろ出発しよう」
フレイヤの問いかけに誤魔化しながら答えつつ、レヴェリアは告げた。
そんな彼女に飛びついて、頬をつつき始めるフレイヤであった。
レヴェリアが購入した元奴隷達→シャルザードへ戻る
マルザナ達捕虜→シャルザード軍へ引き渡し済み
レヴェリアの知り合ったテリー・セルバンティスは本物の方。
ちなみに、レヴェリアが探していたものは逆バニーがいるカジノ。