今年で9歳のベル・クラネルはそろそろどこかしらの派閥に入ったらどうか、という話があった。
そして四派閥のうち、ゼウスかロキの二択に絞られていた。
ヘラ・ファミリアは男子禁制であり今更例外を作るわけにもいかず、フレイヤ・ファミリアはアルフィアが反対している為に。
そんな彼は幼い頃から走り込みなどをやってきたが、最近ではアイズにジャガ丸くんを奢る代わりに座学や稽古をつけてもらっていた。
彼には恩恵が刻まれていない為、座学はともかくとして稽古ではできることがたかが知れている。
しかし、それでも剣の振り方や立ち回りなど、学べることは多かった。
アルフィアが指導することはメーテリアによってNGが出されていた。
姉さんは絶対やり過ぎるから、という理由である。
アルフィア本人は当然反論したが、どういうことをやるかメーテリアが問えば滝壺に叩き込むやらモンスターの巣穴に放り込むやら、恩恵なしでやったら死ぬ事間違いないようなことしか出てこなかった。
メーテリアが怒ったのは言うまでもなかった。
そんな事もあり、ベルが頼んだ相手がアイズであった。
今日もまたいつもと同じように教えてもらっていたのだが、その休憩中のことだ。
「そういえば、アイズさんって必殺技とかあるんですか?」
ベルの何気ない一言に、アイズはジャガ丸くんを食べる手を止めた。
「……魔法じゃなくて?」
「魔法じゃなくて……技名を叫んでズバーっとやる感じのやつです」
ベルの言葉に、アイズはムムムと唸る。
「……アリーゼが、そういうことをやっていた気がする」
フフーン! これが私の必殺技!
カウンターでぶっ飛ばしたが、アストレア・ファミリアの面々が呆れていたのが印象的だった。
「アリーゼさんが!?」
目を輝かせるベルを見ながら、必殺技はあったほうがいいのだろうか、とアイズが思っていると彼は必殺技への熱い思いを語り出していく。
その最中、予想外の情報が飛び出してきた。
「ゼウス様が言うには、必殺技は技名を叫ぶことにより自己暗示を施し、己の限界を超えた一撃を繰り出せる……らしいです」
「神ゼウスが……?」
思わぬ情報源にアイズは思案顔となる。
レヴェリアをはじめ、誰からもそんなことは聞いたことがなかったし、やっているところを見たのはアリーゼが初めてだった。
「帰ったらレヴェリアに聞いてみる」
もしかしたら、レヴェリアにも必殺技があるのかも――?
そう考えて、ワクワクしてきたアイズであった。
一方その頃、レヴェリアは執務室にて紅茶とクッキーを持ってきたヘイズにお礼として、撫でくりまわしていた。
「ふへへへ……」
撫でくりまわされ、ヘイズはふにゃふにゃになっていた。
「レヴェリアさまーもっとー」
「よーしよしよしよし! よーしよしよしよし!」
「ふわぁああ……!」
ヘイズからの求めに応じて、レヴェリアはさらに撫でくりまわす。
恍惚とした表情となっている彼女を見て、レヴェリアはほっこり顔。
「レヴェリアさまー」
ヘイズが両目を閉じて唇を突き出す。
口づけをしてほしい、という明確なアピールだ。
先月、2人は肌を重ねて深い関係となっており、2人きりの時にヘイズはこうして甘えてくることがよくあった。
レヴェリアが応じて触れるだけの口づけをすれば、にへらとヘイズは笑う。
突如として執務室の扉が開かれたのはそんな時だった。
ノックもなしに扉を開けたのはフレイヤであり、彼女は慌てた様子だ。
それを見てレヴェリアもヘイズも、この後の展開が予想できてしまった。
ろくでもない事で大騒ぎとなるのは、いつものパターンである。
「大変大変大変!」
そう言いながらレヴェリアへ詰め寄っていくが、途中から何やらおかしくなる。
「大変大変大変変態変態変態レヴェリア!」
「今日もたわけているようで何よりだな」
レヴェリアはフレイヤの頬を素早く摘んで、むにむにと上下左右に動かす。
変態であることはどうやっても否定できないが故、ささやかな抵抗である。
「学級文庫、文庫本って言ってみろ」
「がっきゅうふんこ! ふんこほん!」
女神としての意地でレヴェリアのトラップを回避してみせたフレイヤは、頬を引っ張られているにも関わらずドヤ顔だ。
今日も平和だなぁ、と2人のやり取りを見ながらヘイズは思いつつも、レヴェリアが変態という部分については心の中で同意する。
レヴェリア様ったら本当に変態さんなんですから――!
隅から隅まで貪られて、圧倒的な快楽を味わったことを思い出したヘイズは、だらしのない顔となってしまう。
このままでは話がまったく進まないので、レヴェリアが尋ねる。
「で、たわけ。どうかしたのか?」
「レヴェリア、あなたにお客さんよ。テルスキュラから来た姉妹だって」
「アルガナとバーチェか?」
「ティオネとティオナって名乗ったみたい。カーリーとカリフ姉妹からの手紙を持ってきたらしいわよ」
フレイヤが懐から手紙を取り出し、レヴェリアへ手渡す。
「テルスキュラに来いってことかな……」
「そうでしょうね。何だかんだで行ってないでしょ?」
フレイヤからの問いかけに、レヴェリアは頷いてみせる。
その理由は遠いとか行く暇がないとかではなく、もっと別のものだ。
「行ったら中々帰してくれなさそうだからな……」
「エッチー! スケベー!」
わーわー騒ぎ出すフレイヤの頬を軽く突いてやりつつ、レヴェリアはまずカーリーからの手紙を読み始めた。
にょっきりと横からフレイヤが顔を出して、一緒になって読み始めたのは御愛嬌。
ヘイズはこの隙にそそくさと退室する。
自らの唇を人差し指で愛おしげに撫でながら、にっこにこ笑顔であった。
さて、手紙にはアルガナとバーチェがレベル6になったことや、彼女達も含めた派閥大戦でレヴェリアと戦った面々が欲求不満云々とあった。
次に使者として派遣したヒリュテ姉妹について書かれており、手紙の最後はテルスキュラに来るように、と締められていた。
「レヴェリア、どうするの?」
「まずはヒリュテ姉妹に会ってみようと思う。お前はもう会ったのか?」
「まだよ。別件で来る途中で、ヘルンとばったり会って2人が来たことを聞いたの」
「別件?」
レヴェリアからの問いに、フレイヤは満面の笑みを浮かべて彼女に抱きついた。
「あなたに構ってもらうっていう重大な用事!」
「……まったく、このたわけめ」
そう言ってレヴェリアは軽く溜息を吐いて、フレイヤの頭を撫でくりまわす。
ある程度構ったところで、アルガナとバーチェからの手紙を読んだのだが、どちらも過激なことしか書いてなかった。
それを見て、レヴェリアはテルスキュラ訪問を先送りすることにした。
ヒリュテ姉妹を鍛えてみてはどうか、どこまで伸びるか見たい、などとカーリーの手紙にも書かれていたので問題なかった。
「本物だぁ……!」
目を輝かせて、ティオナはしげしげとレヴェリアを見つめる。
「見すぎだろ」
注意するティオネはレヴェリアを値踏みする。
カーリーだけでなくアルガナやバーチェなど年長のアマゾネス達から、ティオネとティオナに限らず若いアマゾネス達は教えられてきた。
かつて行われた派閥大戦。
テルスキュラのアマゾネスも含め、全世界から集まった強者達を幾度もなぎ倒し、己こそが『頂天』であると実力で以て示したレヴェリアのことを。
そして派閥大戦後、彼女に抱かれたことを惚気マシマシで。
なお、色ボケしたアマゾネス達がこれまでのように『儀式』を行わないことは、カーリーにとっては想定内。
故に、彼女はレヴェリアをダシに使った。
レヴェリアは強い女が大好きじゃろーなー、という感じにアマゾネス達を煽った。
『儀式』は女同士の矜持を賭けたものとなり、より激化することとなった。
その一方、カーリーは『儀式』で戦闘不能となった場合、敗者を殺すのではなく治療するよう命じた。
これにより、敗者が味わったのは絶望だ。
敗者となった自分はレヴェリアから見向きもされなくなる――その思いで、心がいっぱいになったところでカーリーは問いかけるのだ。
敗北したままでいいのか、と。
いいわけがない、と敗者は闘志を滾らせて勝者を引きずり下ろすべく奮起。
そして、リベンジマッチにて勝者と敗者が入れ替わるということが多々起きていた。
敗北を糧に、より強くなっていくアマゾネス達にカーリーは満足であった。
それはさておき今回、ティオナがレヴェリアに会ってみたいとカーリーに直談判したことが事の発端だ。
派閥大戦でオラリオに行った際、アマゾネス達がレヴェリア関連の書籍を大量に購入して持ち帰っており、彼女について書かれた本は山程あったことが原因だ。
レヴェリアに並々ならぬ興味を持ったティオナとは違い、ティオネは大して興味がない。
強いことは間違いないだろうが、アルガナ達が話をかなり盛っているんじゃないかと疑っていた。
故にティオネは自分の目で見て感じなければ、信じられないという立場だ。
彼女のように考える若いアマゾネス達は多く、レヴェリアの実力がどんなものか見てきてくれ、と頼まれていた。
言われるまでもなく、ティオネ本人もやる気満々であった。
姉妹揃って注目する先がレヴェリアであることに、フレイヤは嬉しそうに微笑む。
しかし、それはそれとして何だかレヴェリアに負けた気がするので、我儘な小娘は対抗心を燃やした。
「ねぇねぇねぇ、私は?」
「もしかして……たわけの女神様?」
「ああ、たわけの女神様ね」
姉妹の言葉に、フレイヤの頬は餅のようにぷっくり膨らんだ。
「たわけの女神様……」
その呼称はレヴェリアのツボに入った。
手で口元を抑えて顔を逸らしてくすくすと笑うレヴェリアに、頬を膨らませたままのフレイヤはずずい、と迫って無言で彼女の頬を突く。
2人のやり取りに、肩を竦めつつティオネは自身の目的を単刀直入に告げる。
「レヴェリア、私はアルガナからうざったいほどにアンタのことを聞かされてきた。だけど、信じていない」
「ティオネ、やめといた方がいいと思うよー?」
ティオナの言葉に、ティオネは睨みつける。
その様子からここに来るまでの間、幾度も似たようなやり取りをしたことが窺えた。
「いいぞ。そちらに合わせて私も素手でやろう」
「はっ! 吠え面をかかせてやるよ!」
啖呵を切ったティオネに、その意気や良しと言わんばかりにレヴェリアは鷹揚に頷いた。
場を移してホーム内の原野、その片隅にてレヴェリアとティオネは対峙する。
先手を譲ったレヴェリアに対して、ティオネはまっすぐに突っ込んだのだが―ー
「……は?」
腕を掴まれたと思ったら流れるような動作でもって、レヴェリアにより地面に転がされた。
かすり傷どころか痛みすらほとんどないことから、細心の注意を払って無力化されたことに気がついたティオネは憤怒の表情で立ち上がった。
「ふざけんじゃねぇぞてめぇ!」
怒声を発するティオネに、レヴェリアは涼しい顔で告げる。
「次からは痛いぞ。それでもやるか?」
「当たり前だ!」
叫んで突っ込んできたティオネに対して、レヴェリアはいつもの鍛錬と同じように対応した。
すなわち、即死しない程度の絶妙な力加減でもって攻撃を開始したのである。
ティオネを容赦なく素手で叩きのめしているレヴェリアを見ながら、ティオナは傍らにいるフレイヤに尋ねた。
「……フレイヤ様、レヴェリアってもしかしてかなりアマゾネス?」
かなりアマゾネス――良く分からない表現だが、そこはフレイヤ。
ニュアンスを正確に捉えて答える。
「かなりじゃないわ。めちゃくちゃアマゾネス」
「皆がメロメロになるわけだねー」
呑気なことを2人が言っている間にも、ティオネは満身創痍となっていた。
彼女は地面に血反吐を撒き散らし、荒い息を繰り返しながらも――まだ闘志を失っていなかった。
それを見たレヴェリアは治癒魔法を唱え、彼女を癒やす。
展開された黄金のドームを見て無邪気にはしゃぐティオナとは対照的に、ティオネは唾を吐く。
「情けを掛けたつもりか? 舐めやがって!」
悪態をつくティオネに対して、レヴェリアは不思議そうな顔となった。
その様子にフレイヤは察した。
ティオネが満足するまで徹底的にやるつもりだ、と。
そして、その通りだった。
ティオネの瞳をまっすぐに見つめ、レヴェリアは告げる。
「納得できるまで掛かってこい。死にかけても癒やしてやる」
その言葉を聞いたティオネは目を大きく見開いた後、獰猛な笑みを浮かべてみせる。
「その言葉、忘れんじゃねぇぞ!」
叫びと共に彼女は殴りかかった。
「で、結局日没までフルボッコにされたんですねー」
そう言ってヘイズは呆れたように溜息を吐く。
団員達でごった返している食堂の一角にて、アスフィ達と共にティオネとティオナも夕食を取っていた。
ヒリュテ姉妹がしばらくホームに滞在することはフレイヤとレヴェリアの連名にて通達済みであったので、気に留める者は誰もいなかった。
物凄い勢いで料理をかっ食らっていたティオナが、食べる手を止めて言う。
「ティオネが中々納得しないから、あんな酷いことに……」
「仕方がねぇだろ……」
ティオネはそう返したが、何だか妙にしおらしい。
その様子を見たアイシャが笑みを浮かべ、からかうように問いかける。
「……惚れただろ?」
「うっせぇ」
ティオネの答えに、誰もが察した。
だが、こうなることは予想できていたので驚きはない。
「アスフィ、レヴェリアは?」
そんなやり取りを横目に見ながら、アイズが尋ねた。
いつもならば食堂に顔を出している頃合いだが、まだ来ていなかった。
「レヴェリア様なら書類を片付ける為、執務室で食事を取るとのことです」
「ヘルンが給仕をしてますよー」
日没までティオネの相手をしていた為、書類が片付かなかったが故の残業だ。
アスフィとヘイズの説明にアイズは頷き、続けて尋ねる。
「そういえばフレイヤは?」
「フレイヤ様は神デメテルと飲みに行っています。今夜は帰ってこないそうです」
アイズの問いに答えたのはアスフィだ。
そこそこの頻度でフレイヤがデメテルと飲みに行くことはある為、珍しいことではなかった。
必殺技について尋ねたかったアイズだが、今夜はダメそうだった。
「アイズ、レヴェリア様に何か用か?」
「フィルヴィス、必殺技ってある?」
尋ねてきたフィルヴィスに、アイズは単刀直入に問いかけた。
彼女の言葉にフィルヴィスは首を傾げる。
「必殺技……?」
「うん。ベルがゼウス様から聞いたんだって」
アイズはそう前置きした上で、ベルが言っていたことをそのまま皆に教える。
その上で彼女は問う。
「レヴェリアにも必殺技ってあるのか聞きたくて」
「聞いたことがないですね」
真っ先に答えたのはアスフィだ。
この面子でもっとも付き合いの長い彼女だが、そういう話は聞いたことがなかった。
「そもそも必殺技なんて考えもしなかったが、あったほうがいいのか?」
首を傾げて問いかけるフィルヴィスに、アウラもまた首を傾げる。
「話を聞いた限りでは、己の持てる全てを振り絞って繰り出す技でしょうから、隙のほうが大きいような気がします」
「消耗も大きそうだな」
アウラの言葉に、メルーナが続ける。
「私も必殺技は聞いたことがないねぇ」
「必殺技、ちょっと憧れちゃうかも」
アイシャの言葉に、ティオナが言った。
そんな妹をティオネがジト目で見つめる。
またコイツは変なことを言い出したな、という呆れた思いが込められていた。
「リリには関係ない話ですねぇ……」
そう呟いてリリルカはスープを啜った時、ヘイズはにこにこ笑顔で告げた。
「リリにはあるじゃないですか、必殺技みたいな魔法が」
口に含んだスープを吹いたりはしなかったが、変なことを言い出した彼女にリリルカはジト目で見つめる。
「確かにあるニャ。初見殺しもワンチャンあるかもニャ」
「初見殺しはあるかもしれないけど、必殺技とは言えないでしょ」
クロエとルノアの言葉に、リリルカはいよいよ困り顔となる。
アイズとティオナは目を輝かせ、そんなものがあったのかとアイシャ達はリリルカを見つめる。
「そのリリルカさんって同姓同名の別人とかじゃないですか? あるいはレヴェリア様が化けているとか……」
「それですよ、それ!」
ヘイズに言われても、リリルカは何だか分からない。
それを見て察したアスフィが尋ねる。
「もしかしてリリの魔法でレヴェリア様に変身することで、一瞬だけ相手の隙を突けるとかそこらのチンピラならビビって逃げていくとか、そういうやつですか?」
「そういうことニャ。そこらの連中なら一撃はぶち込めるニャ。たぶん」
クロエの言葉に、リリルカは盛大に溜息を吐く。
使いどころが恐ろしく限定的であり、そんなことをするくらいなら普通に戦った方がよっぽど早い。
「リリの魔法が能力まで模倣しているかもしれない……そう思わせれば……!」
「ないです。あと体格差がありすぎるので、そもそも変身できません」
ヘイズの言葉を、リリルカは切って捨てた。
フレイヤの見立てでは、【魔力】を伸ばしつつランクアップを重ねていけば体格差があっても変身できるとのことだが、虚仮威しくらいにしかならなかった。
己の欲望の為に色んなものに変身しまくっている
「実戦で使えるかどうかは別として、どんな必殺技がほしいですか?」
問いかけたのはアウラだった。
それから一同は、ああだこうだと必殺技について大いに盛り上がった。
その頃、レヴェリアは仕事の手を休めて夕食を食べようとしていた。
一口食べて、傍らに佇むヘルンに微笑みかけて確信を持って告げる。
「ヘルンの手作りだな」
「はい……!」
その一言に対して、ヘルンは驚きつつも嬉しく思いながら肯定した。
そして、彼女はおずおずと尋ねる。
「どうしてお分かりに……?」
「こういう時に私がどういうものをどういう味付けでどれくらい食べたいか。よく考えられているからな」
レヴェリアはそう答えて、料理を食べ進めていく。
あっという間に平らげて、彼女が満足げな顔となった事にヘルンは喜びで胸がいっぱいになる。
同時に、フレイヤから出かける間際に言われたことを思い出す。
この機会にイケるとこまでイクのよ!
彼女はすごくいい笑顔で親指を立てていた。
今回に限らず、ステイタス更新時など色々な場面でヘルンにレヴェリアに関する助言を授けているフレイヤだが、基本こんな感じであった。
ともあれその助言に従って勇気を出し、ヘルンは無言でご褒美を要求してみることにした。
おもむろに、彼女は頭をレヴェリアの前にぐいっと突き出してみる。
その意図にレヴェリアはすぐに気が付き、手を伸ばして優しく撫で始める。
「こういうのは好まないと思ったのだが……」
「……嫌いではないです」
レヴェリアの言葉に、そう答えたヘルンであるが緊張と羞恥と興奮で顔は真っ赤だ。
そんな彼女にレヴェリアは微笑みながら尋ねる。
「今度、2人で出かけないか?」
これまでも2人で出かけたことはよくあったが、この状況での誘いがこれまでと同じ――夕食前にはホームに帰る――ものでないことをヘルンは察した。
彼女は小さく頷いてみせれば、レヴェリアはさらに言葉を続ける。
「おいで、ヘルン。もっとしっかりと撫でたいんだ」
その言葉を聞いたヘルンが顔を上げれば、そこには笑顔のレヴェリアが手招きしていた。
吸い寄せられるように近ついたヘルンはレヴェリアによって優しく抱きしめられ、撫でられ始めた。
翌日、アイズは必殺技について尋ねる為、レヴェリアのところに赴いた。
ベルから聞いたことをそのまま話したところ、レヴェリアが何か言う前に答えたのはフレイヤだった。
構って構って、とレヴェリアのところに今日もまたいつものようにやってきていたのである。
「ねぇねぇ、レヴェリア。あるんでしょ? 必殺技」
私すっごくワクワクしてます、という表情で目を輝かせている。
仕方がない、とレヴェリアは告げた。
「私の必殺技はエターナルフォースブリザードだ。氷結系最強魔法で、大気ごと相手を一瞬で凍結させる。結果、相手は死ぬ」
ブフッとフレイヤは吹き出した。
アイズは大きく目を見開いて、感嘆の声を漏らす。
「まあ、嘘なんだが」
「嘘なの!?」
あっさりとネタバラシをしたレヴェリアに、アイズがガーンとショックを受ける。
おずおずと彼女は問いかける。
「じゃ、じゃあ必殺技は……?」
「ないんだな、それが」
がっくり、とアイズは項垂れた。
しかし、レヴェリアは少しの間を置いて告げる。
「魔法やスキルと組み合わせて11の斬撃をほぼ同時に叩き込むモノならあるぞ。実戦で使ったことはないが」
「ねぇ、レヴェリア。それって世間一般では必殺技っていうのよ?」
思わずツッコミを入れたフレイヤに、アイズもまたコクコクと頷いてみせる。
どんなことをするのか気になったアイズが問いかける。
「どうやるの?」
「輝夜の【ゴコウ】を再現して保持、さらに【ゴコウ】を再現した上で、それらを連続発動しながら突きを放つ」
レヴェリアの説明に、輝夜と幾度も刃を交えているアイズは瞬時にそのエグさを悟った。
10の刃に加え、突きまで飛んでくるなら回避はまず不可能で、受けたところで防御ごと抜かれる――必殺技と呼ぶに相応しいモノだ。
「あの魔法は任意の位置に魔力の斬撃を生み出すものだ。輝夜は居合と組み合わせているが、私は右片手一本突きを使ったな」
「それって本人に対して使ったことはあるの?」
「話してみたら、やってみせろと言われてな。受けた輝夜は見るも無惨な姿になったが、やる気を出していたぞ」
フレイヤの問いに答えたレヴェリアは更に言葉を続ける。
「今、話したような実戦では使ったことはないが試したことがある……そういうものならいっぱいあるが、聞きたいか?」
「聞きたい!」
「私も聞きたい!」
アイズとフレイヤにせがまれ、レヴェリアはこれまでに試してきたことを話し始めたのだった。
レヴェリアの【ゴコウ】2発と右片手一本突き
攻撃を受ける側からすると九頭龍閃と牙突がほぼ同時に飛んでくるようなもの。突きを斬撃飛ばしに切り替えることもできる。
なお、輝夜に悪・即・斬と言ってもらうことがよくある。
レヴェリア「アウラ、【
アウラ「もう(魔法スロットが3つ全て埋まっているから空きが)ないです」
レヴェリア「そうだ、私の全力全開の斬撃を【
フレイヤ「色んな意味でダメ」