アグネスタキオンと契約してから日が経って。中距離の適性を上げるために頑張っている。
「バクシンバクシィィィィィンッッッ!」
「中々興味深いデータだ!今までの委員長君ならば、これだけの距離を保つのはあり得なかった。だが今は保っている!スタミナもつけているようだねぇ!」
「当然ですッ!私は委員長ですからッッ!」
アグネスタキオンの加入によって中距離でAランクの適性を持っているウマ娘がさらに増えた。キタサンブラックとドゥラメンテに関しては……まぁ深く考えないようにした。本人達に聞いたところ。
「「てっきりチームに加入しているものだと思っていた」」
らしい。こればっかりは何も言ってなかった自分に落ち度があるだろう。2人がいつもトレーニングに参加してくれるから、2人の優しさに甘えていた。まぁ、担当増やしても問題ないらしいからいいけど。そんなわけでこの4人体制で挑むことに。
京王杯ジュニアステークスに向けて調整を進めていく中で、クラシック三冠の最後の冠である菊花賞が開催された。ここには無敗の三冠をかけてトウカイテイオーが出走している。バクシンオーもいずれは出走するレースなので、担当している子達全員で観に行った。
結果はというと。
《トウカイテイオー強い強い!これは完全に抜けた、完全に抜け出しましたッ!最後の直線をトウカイテイオーが軽やかに駆けていく!ご覧くださいこの強さ!これが新しい時代を告げる三冠の脚!トウカイテイオー!クラシック三冠たっせぇぇぇぇぇぇい!》
最後の直線で見事に抜け出し、無敗のクラシック三冠を成し遂げた。本人はターフで飛んで跳ねて大喜びしていた。
「や、やったやったぁぁぁぁ!ボク、やったよトレーナー!」
「おめでとうございまぁぁぁぁぁす!テイオーさぁぁぁぁぁん!」
キタサンブラックも大きな声で祝福の言葉を贈っていた。ドゥラメンテはトウカイテイオーを見据えて、闘志を滾らせていた。
「トレーナーさんッ!私もいつかはこの舞台で走るのですよねッ!?」
「そうだね。その予定だよ」
「いやー、今から楽しみですねッ!サクラバクシンオーは長距離でも強しと、みなさんにお見せできる日がッッ!」
バクシンオーにも良い刺激になったようだ。その日以降のトレーニングはさらに熱が入っていた。
これは完全に余談だが、菊花賞後にトウカイテイオーのトレーナーが自分のトレーナー室を訪れた。
「ありがとう高村君!君のおかげでテイオーが菊花賞を勝てたよ!」
嬉しそうに、笑顔でお礼を言ってきた。
「トウカイテイオー、無敗のクラシック三冠ですね。まずは1つ、皇帝に並びました。おめでとうございます」
「あぁ、ありがとう。テイオーも凄く喜んでた。きっと、近いうちに君にお礼を言いに来るだろう。本当にありがとう、高村君!」
「……自分は特に、何かした覚えはないのですが」
自分がやったことは、あくまで適性という概念について教えたぐらいだ。スタミナが不足していることは、この人だって分かっていただろう。なにより、菊花賞を見据えるなら自分が指摘せずともスタミナの強化は遅かれ早かれやっていたはずだ。
適性についても、シンボリルドルフとトレーニングをしていたらいずれは上がっていたものだ。ますますもって感謝される理由が分からない。
そう疑問に思っていると、彼は首を横に振りながら答えた。
「それでも、お礼を言わせてくれ高村君。君の力添えがあったからこそ、この勝利はあった。確信をもってそう言える」
「はぁ」
「今度また一緒にトレーニングをしよう!あぁそうだ、君のことを話したら数人のトレーナーが君に興味を持ってね。是非とも今度の話し合いに参加して欲しい!」
それじゃあまた!と残して彼は去っていった。お礼を言いに来ただけだったのだろう。それにしても……うん。
(本当に分からない人だ)
まぁいい、話し合いに誘われたら参加しよう。お世話になったわけだし、好意を無下にするわけにはいかない。
そうして迎えた京王杯ジュニアステークス。バクシンオーは絶好調でレースを迎えた。
《サクラバクシンオー強い!あまりにも強い!小倉ジュニアステークスに続いての独走状態!他の子達も必死に追いかけますがサクラバクシンオーには届かない!最後の直線、サクラバクシンオーが独走する!》
「バクシンバクシィィィィィンッッ!」
バクシンオーは他の出走者を圧倒。まぁステがバクシンオーだけ飛び抜けているし、この結果も納得がいくものだ。
「いけいけ~!バクシンオーさーん!」
「やはり、彼女が本領を発揮するのは短距離だねぇ。凄まじい勢いだ」
「……強いな」
バクシンオーの勢いは衰えることなく、他の子達も必死に走っているが追いつくことはなく終わった。
《サクラバクシンオーの独壇場!完全に独り舞台だサクラバクシンオー!これがサクラバクシンオーの強さだ!他のウマ娘を圧倒して今ゴォォォルイン!1着はサクラバクシンオー、サクラバクシンオーです!2着に7バ身差の大楽勝です!》
「やりました~ッッ!やりましたよトレーナーさ~んッッ!私達のバクシン的勝利で~すッッ!」
手をブンブン振って喜びを表現するバクシンオー。取り合えず自分は手を小さく振って応え、キタサンブラックが大きく手を振り返して応える。アグネスタキオンは怪し気に、ドゥラメンテはしきりに頷いていた。
その後の控室。
「それではトレーナーさん!次のレースはいかがしましょうかッ!?私としてはホープフルステークスなんかいいと思うのですがッッ!」
「うん、ひとまず今年のレースはこれで終わりかな」
「ちょわッッ!?それは本当ですかッ!?」
「本当。後は来年に向けてトレーニングをしていこうか」
「分かりましたッッ!」
特に異論をはさむことなくバクシンオーは了承した。というわけで、この京王杯ジュニアステークスがジュニア級最後のレース。後はクラシック級に向けてトレーニングを続けていくだけである。
◇
レース後、トレーニングを続けるバクシンオー達。なんとか年末までに中距離の適性を頑張ってあげたいところ。
(せめてCにはもっていきたい。Cまでいけば、後はステでどうにかなるレベルまでは来たし)
レースで適性を上げることもできるのだろうか?と思わずにはいられないが、Dで検証するにはあまりにもリスキー。さすがに適性Dのままかもしれない状態でホープフルステークスに向かう気にはなれなかった。あの勝ちっぷりを見てると、Dでも勝てたんじゃないだろうか?と思うが。
「さぁさぁ!今日も元気にバクシンしますよッ!委員長に続け~ッッ!」
「バクシンバクシーン!張り切っていこー!」
「バクシンバクシ~ン」
「……え?私も言わないといけない感じかい、これ?」
「別に言わなくてもいいよ。基本ノリだから」
そんなわけでトレーニングをしていく。
「ところでトレーナーさんッッ!今日はやけに眩しいですねッ!トレーナーさんが輝いて見えますよッ!」
「バクシンオーさん!トレーナーさんは物理的に輝いてますよ!?どういう原理ですか!?」
なお現在、自分の身体は光っている。理由は簡単で、アグネスタキオンの薬を飲んだらこうなった。
「おやおや、知らないのかい?キタサン君。偉大な相手というのは輝いて見えるものだよ」
「なんと!そうだったのですねッ!ではトレーナーさんが輝いて見えるのは当然ですねッ!」
「そうか。では、いずれはグル姉も輝いて見えるようになるのか」
「それはないと思うよドゥラさん!?」
「とりあえずトレーニングやってね」
そんな調子でトレーニングを進めていた。
嬉しいことに、トウカイテイオーのトレーナーが自分の話を広めたのか、他のトレーナーから合同トレーニングを持ちかけられることも少しあった。
メジロマックイーンのトレーナーとか。
「中々興味深い話を聞いてね。是非聞かせて欲しい」
ダイタクヘリオスのトレーナーさんとか。
「適性上げの理論……こっちも興味ある!知りたい知りたい!上手くいけばヘリオスが有マで爆逃げパーリナイできるよ~!」
「パマちんと爆逃げぶちかましウェ~イ!」
やたらテンション高いなダイタクヘリオスのトレーナーさん。ちょっと困惑したけど時折トレーニングをした、というよりは割と高頻度でこの人達は来た。メジロパーマーと一緒に。
(メジロパーマーも中距離と長距離がA……願ったり叶ったりだ)
それにダイタクヘリオスも、これまでメジロパーマーと一緒にトレーニングしていたのだろう。長距離適性がDくらいはあった。
そんな調子で、トレーニングを進めていた。
12月の終わりの頃。
「ようやく、か」
バクシンオーのステータスを確認する。
サクラバクシンオー
適性:芝A ダートF
距離:短A マA 中C 長C
脚質:逃げA 先行A 差しF 追い込みG
スピード:C 471
スタミナ:D 329
パワー :D 301
根性 :E+ 288
賢さ :D+ 384
中距離の適性がCになった。うん、これなら今後は中距離のレースに出走しても問題ないだろう。とりあえず、どのレースに出走するかだが。
「本当だったらスプリングステークスに出走しようと思ったけど……マイル戦だしな」
なら、弥生賞だろうか?……うん、それで行こう。マイルをすっ飛ばして中距離戦へ。
後は有力なライバル候補だ。現時点で注目すべきはやはり、ミホノブルボンだろう。
「朝日杯を勝ったウマ娘。現時点のクラシック最有力候補、だね」
後は、まだ誰も注目していないけどライスシャワー。彼女は距離が長くなればなるほど有利だから、皐月賞以降にならないと脅威にはなりえないだろう。いや、彼女中距離適性Aなんだけども。バクシンオーよりもよっぽど適性がある。クラシックで注目すべきはこの2人だろう。
(欲を言えばBになればいいんだけど……高望みかな)
Cに上がったばかりでBになって欲しいはさすがに高望みし過ぎだろう。とにかく、弥生賞には適性Cで挑むことになりそうだ。
「日本ダービーまでにBになれば御の字、かな?ただ、さすがに菊花賞は長距離Aで挑みたいな……この期間でどこまで成長するか、だけど」
今度またシンボリルドルフとのトレーニングを頼んでみようか?それもいいかもしれない。
ひとまずジュニア級はこれで終わり。来年が本番だ。
「……獲るか、クラシック三冠」
バクシンオーが勝つために、頑張ろう。
いよいよクラシック戦ですよっと。次走は弥生賞。