最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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弥生賞が終わった後のインタビューとか。


弥生賞後の反応

 弥生賞はサクラバクシンオーの逃げ切り勝ち。結果だけ見たらそうなるだろう。ただ、内容的にあまり褒められたものではない、というのがファンの間での認識である。

 

「確かに逃げ切ったけど、あれじゃあ本番の皐月賞はねぇ」

「サクラバクシンオーだけ飛び抜けてたしな。まぁ短距離のウマ娘が中距離を、しかも重賞を勝っただけで滅茶苦茶すげぇんだけど」

「……いや、冷静に考えてジュニア級は短距離しか走ってないのに、ぶっつけ本番の中距離で勝ち負けに絡めるって大概おかしいことしてねぇか?」

「サクラバクシンオーのトレーナーさん、凄くない?普通に」

 

 道中のペースは滅茶苦茶であり、サクラバクシンオーの能力差だけで押し切ったレース。レース後のサクラバクシンオーが息も絶え絶えだったことから、ファンの目にはそう映った。能力だけで勝ったのは確かに凄いが、このままで皐月賞は大丈夫なのだろうか?と思わずにはいられないというのも事実。

 

 

 ただ、敵情視察に来ていたトレーナー達は頭を悩ませていた。

 

「マスター。本当にバクシンオーさんは勝ちましたね……マスター?」

「……」

 

 ミホノブルボンの言葉にも反応せず、ひたすらに考えるミホノブルボンのトレーナー。彼の頭の中にあるのは、この弥生賞の意図だ。

 

(今回の弥生賞、お世辞にも良い内容とは言えないだろう。ただ、サクラバクシンオーは2000mが限界だと見せつけるようなものだった……)

 

 明らかなスタミナ切れ、慣れていない中距離のペース。素人目にも分かる。()()()()()()()

 だが、頭の中を支配するのは──そんな単純なはずがないということ。

 

(アイツとて、この内容になることは想定済みのはずだ。でなければ弥生賞に出走しない)

「なにを考えている……高村聖」

「高村聖……バクシンオーさんのトレーナーですね」

 

 ミホノブルボンのトレーナーにとって、高村聖は得体の知れない相手だ。自分と同じように、スプリンターと評されたウマ娘を中距離以上で走らせようとする変わり者でもある。そのため、少し親近感のようなものを覚えていた。

 今回の弥生賞も、かなり期待していた。果たしてどのようなレースっぷりを見せてくれるのだろうか?生粋のスプリンターとも呼ばれているサクラバクシンオーを、彼はどこまで育て上げたのか。

 結果は……謎を残すものとなったが。

 

「ただ、皐月賞の前に中距離を走らせたい、ということは分かった。ぶっつけ本番でこうなったら、間違いなく負けたからな」

 

 謎は深まったが、それでもトレーナーの自信は揺るがない。皐月賞はミホノブルボンが獲る、その確信があった。

 

「皐月賞の前に、まずはスプリングステークス……獲ってこい、ブルボン」

「命令を受諾。ミッション『スプリングステークスの勝利』……更新しました」

 

 ミホノブルボンの次走であるスプリングステークスも近い。前哨戦を勝って、皐月賞へと弾みをつける。そう考えていた。

 

 

 違う場所では、ライスシャワーのトレーナーも頭を悩ませていた。

 

「う~ん……皐月賞前に中距離を走りたい、ってのは分かるんだけど……こんな結果になるなんて」

「だ、大丈夫?お兄さま」

「あぁ、うん。大丈夫だよライス。でも……凄かったな、サクラバクシンオー」

「う、うん……確かに凄かったね、バクシンオーさん。あんなペースで勝っちゃうんだから」

 

 あんな滅茶苦茶なペースで、最終的にはゴリ押しで勝ったのだから凄い。ライスシャワーはそう考え、苦笑いしながらお兄さまの言葉に答えた。

 ただ、お兄さまの考えは()()()

 

「いや、()()()()()()。そうじゃないんだライス」

「ふぇ?そうじゃないって……何が?」

「確かに能力だけでゴリ押したサクラバクシンオーは凄いけど……思い出してみて?彼女の適性を」

「え、え~っと……バクシンオーさんはスプリンター……ッ!」

 

 ハッ、と気づいたような表情をするライスシャワー。お兄さまは頷いた。

 

「そう、彼女は本来スプリンターだ。スプリンターの彼女が、中距離の弥生賞を制した……これは、本当に凄いことだよ」

 

 サクラバクシンオーはスプリンターとしての才能はピカ一であり、日本どころか世界を狙える器であると太鼓判を押されるほどである。ただ、他のトレーナーから匙を投げられるほど中距離以上の適性がなかった。

 そんな彼女が中距離の弥生賞を制したのである。彼女を知っているトレーナー陣からすれば、信じられない気持ちになるだろう。

 

(恐ろしい手腕だ……彼女のトレーナーである高村聖。まだ新人らしいけど……)

「噂通りの人物、ってことか」

「も、もしかしてバクシンオーさんのトレーナーさんのこと?」

「うん、そうだよ。生粋の短距離ウマ娘であるサクラバクシンオーを中距離で勝たせた……間違いなく、彼の指導のおかげだろうね」

「す、すごいなぁ……」

 

 鋭い目でサクラバクシンオーを見据えるお兄さま。間違いなく強敵となること、ライスシャワーのライバルとなる相手だから胸中は穏やかではないが、それでも。

 

「ライス。まずはスプリングステークスを頑張ろう!皐月賞に出走するために、勝つんだ!」

「そうだねお兄さま。頑張るぞ~、おー!」

「おー!」

 

 傍から見たら微笑ましいやり取り。これがライスシャワーとお兄さまのいつもの光景である。

 

 

 マチカネタンホイザの陣営はというと。

 

「うっひゃ~、凄いねバクシンオー!」

「本当ですな~。私もあぁなるぞ~!」

「うん、頑張ろうねマチタン!」

「トレーナーさんも一緒に頑張りましょう!目指せG1制覇~!」

 

 こちらもこちらで微笑ましいやり取りである。

 

 

 

 

 

 

 弥生賞の勝利者インタビューにて。

 

「凄いレースでしたね、高村トレーナー」

「確かに、そうですね。ただ勝てたので」

「サクラバクシンオーはこのまま皐月賞に?」

「それ「勿論ですともッ!皐月賞でも見事バクシンし、クラシック三冠を制してみせますよ~!バクシンバクシーンッ!」そういうことです」

 

 苦笑いをする報道陣。気持ちは何となく分かる。

 

「それにみなさん、皐月賞はどのようなレースかご存じでしょうかッ!」

「え?え~っと……最も速いウマ娘が勝つレース「そう!その通りですッ!」うひゃあ!?」

 

 食い気味に反応するバクシンオーに気圧される記者の1人。情けない声を上げていた。

 

「最も速いウマ娘が勝つ皐月賞……最も速いウマ娘とはまさに私のことッ!中距離もバクシンできることが証明された今日、皐月賞は私が貰ったも同然ということですッ!」

「え、えぇ……?」

「最も速いウマ娘が勝つというのであれば、私が負ける道理はありませんからッ!ハーッハッハッハ!」

 

 自信満々に高笑いをするバクシンオーである。報道陣は縋るような目でこちらを見てくる。

 

「バクシンオーが言った通りですね。最も速いウマ娘が勝つのであれば、それはバクシンオーのことですから。それに今回はあくまで様子見……次までには調整します」

「よ、様子見って……」

「皐月賞はもっと完璧なレースをしますよ、バクシンオーは」

「当然ですともッ!模範的な走りをすることをみなさんにお約束しましょうッ!」

「あのレース内容で、どこからこの自信が湧いてくるんだ……」

 

 そこがバクシンオーの良いところなので。

 

 

 さて、弥生賞を無事?に勝ったバクシンオー。

 

「ハーッハッハッハ!やはり私は優秀ですねッ!ま~ちょっとペースが乱れましたが、次は修正しますともッ!えぇ、勿論直せますよ!なんせ私は学級委員長ですからッ!」

「アレをちょっとで済ませるあたりメンタルお化けだねぇ委員長君は」

「そこがバクシンオーの良いところだからね。ひとまずお疲れ様」

 

 インタビューで色々とあったものの、無事に弥生賞を終わらせることができた。色々と課題を見つけることができたし、実りのあるレースとなっただろう。

 

「ウイニングライブを終わらせて、今日はもうゆっくり休もうか。反省会はまた明日にでも」

「分かりましたッ!」

 

 その後はウイニングライブを観て解散である。キタサンブラックが凄くテンション高かった。

 

 

 その後一夜明けて。スクラップブックの作成に勤しんでいると、バクシンオーが扉を勢いよく開けて入ってきた。

 

「トレーナーさんッッ!今日もトレーニング頑張りましょうッ!」

「今日はレース明けだからお休みだよ。昨日の反省会といこうか」

「おっと、そうでした!いや~私としたことがうっかりうっかりッ!」

 

 いつにも増してテンションが高いバクシンオー。理由はやっぱり、弥生賞の勝利だろう。

 

「それにしても、無事に勝利しましたねトレーナーさんッ!これで私が中距離以上を走れることが証明できましたッ!いよ、私優秀ッ!みんなが憧れる学級委員長ッ!模範的な生徒ッ!」

「走れたことは間違いないから、否定はしないけどね。ただ、大分ペースが乱れてたね。なにがあったの?」

 

 中距離初挑戦の今回。バクシンオーのペースはとんでもないくらい乱れていた。あんなに乱れてたらスタミナを余計に消耗するだろう。その理由をバクシンオーに尋ねる。

 バクシンオーは少し困り顔で答えた。

 

「そ、その~……最初はずっとバクシンしようと思ってたんですよ」

「うん」

「ただ、もう少しペースを落とした方が良いんじゃないか?と思っていたら、今度は後ろとの差が詰まってきまして。慌ててまたペースを上げて……の繰り返しですねッ!」

「うん、まぁ中距離初挑戦ならそんなものかな?」

「会長さんも言ってましたのでッ!正しいフォームで、正しいペースで走ることができたら中距離以上は走れるとッ!まぁつまりは、模範的な走りをしようと考えていましたッ!」

 

 模範的な走りをしようとした結果、あの変なペースが生まれた……ってことか。バクシンオーなりに模索していたのだろう、中距離の走り方を。

 ただ、ここは釘を刺さねばならない。

 

「無茶なペースのアップダウンは余計にスタミナを消耗するから、できる限りやらない方が良いかな?今回はゴリ押しで勝てたけど、皐月賞はこうはいかないよ」

「それは勿論分かっていますともッ!ご安心ください、何となく分かってきたのでッ!」

 

 もう理解しつつあるのか。普通に凄いな。

 

「ま、皐月賞はちゃんとした作戦もあるからね」

「ちょわ?作戦?」

「うん、丁度いい感じのが」

 

 皐月賞に向けて調整をしよう。後はそうだな……スプリングステークスも観に行かないとね。敵情視察は大事だ。

 

(スプリングステークスはクラシック級の有力なウマ娘が多く出走するからね。観に行って損はない)

 

 それはともかくとして。

 

「今日はトレーニングお休みね。やるにしても、ビデオ研究とかに留めておいて」

「分かりましたッ!それではキタさん、一緒に将棋を指しましょう!」

「はい!お任せください!」

「我々は外で走ろうかドゥラ君。君のデータを取らせてもらうよ?」

「構わない」

 

 さて、今日も頑張ろう。




スプリングステークスに偵察しにいきますわよ。
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