最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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シーザリオにジェンティルドンナにオルフェーヴルと引きたい子が多すぎる。


合同トレーニング!

 皐月賞が終わって少し経った。今日はというと。

 

「よ~し、頑張ろうマチタン!」

「頑張るぞ~!えい、えい、むん!」

「さぁッ!共にバクシンしましょうタンホイザさんッ!」

 

 マチカネタンホイザと一緒にトレーニングである。バクシンオーもマチカネタンホイザも気合十分、トレーニングに支障はないだろう。自分の隣ではマチカネタンホイザのトレーナーがエールを送っていた。

 そもそも何故一緒にトレーニングすることになったのか?話は数日前にさかのぼる。

 

 

 皐月賞が終わっていち段落ついた。次走をどうするか話し合っている時、彼女達は突然現れた。

 

「どうぞ」

「「頼もーうっ!」」

 

 ノックの音を聞いて、入室を促した後勢いよく扉を開けて入ってきた2人。特に何も聞いていないのでなんの用事だろうか?と思った。とりあえず次の言葉を待っていると、2人は唐突に頭を下げて。

 

「「お願いしますっ!一緒にトレーニングしてください!」」

「いいですよ」

「「……やったー!」」

 

 合同トレーニングのお誘いをしてきたので了承した。2人が手を合わせて喜んでいた様子が記憶に新しい。

 

 

 事の顛末はこんな感じ。特に意図とか一切聞いてないけど、別に減るものでもないし断る理由もないのでOKした。

 

「それにしても、なんで受けてくださったんですか?高村トレーナー」

「なんで、と言いますと?」

「いや~、ほら。お願いした身でアレなんですけどぉ……私達、一応クラシックの敵同士じゃないですか?」

 

 確かにライバル同士ではある。

 

「この時期だと、作戦とか手の内とかバレるから合同トレーニングなんて嫌だー!……ってなりません?」

「お願いしてきたのはそちらですけどね」

「う゛っ……だ、だから!不思議なんですよ!高村トレーナーなんで受けてくれたんだろうな~って!」

 

 バツの悪そうな表情をした後、気まずさを隠すように大声で疑問をぶつけてきた。どうして自分が合同トレーニングを受けてくれたのか、それが疑問らしい。まぁ気にはなるだろう。

 

「別に断る理由もありませんし。それに見られて困るようなことはしてませんので」

「もしかして……私達ってライバルと思われてない!?」

「お願いしてきた身で言いますか?その疑問に対する回答は否、ですけど」

 

 なにはともあれ、理由はそんなものだ。後はバクシンオーの適性上げ。この前の皐月賞を経て、ついにバクシンオーの中距離適性がBに上がった。これなら日本ダービーは問題ないだろう。後は長距離適性だが、これは夏合宿でAにしたいところ。それまでにBに持っていければいいのだが果たしてどうなるか。

 自分達の視線の先には一緒にトレーニングしているバクシンオー達。アグネスタキオン達のサポートを受けながら頑張っている。というか、ふと気になったのだけど。

 

「そういうあなたは良いんですか?ライバル同士でトレーニングすることに」

「へ?私?」

「はい。別にこちらとしては構わないと先程言いましたが、あなた達は大丈夫なのかと思いまして。条件は同じはずですが」

 

 ライバル同士だから合同トレーニングは嫌!とはならなかったのだろうか?そこが少し引っかかる。

 そう聞くと、彼女はたははと笑って答えた。

 

「ま~そうなんだけどね。でもさ、私もマチタンも強くなりたいの」

「誰もが思うことですね」

「そそ。んで、私一人の力じゃどうしても限界があるし……そもそも私まだまだド新人だし。トレーナーも全然駆け出しっていうか」

 

 彼女はつらつらと語ってくれる。力不足を感じていることを、自分1人の力だけじゃ限界があると。それでもマチカネタンホイザのために何とかしたいと思っていることを。

 

「作戦がバレるー!とか、手の内がー!とかそんなことの前にさ。やっぱり地力をつけないと!実力もないのに作戦も手の内も何もあったもんじゃないし、さ」

「はぁ」

「だから!プライドなんてなんぼのもんじゃーい!って感じで。結果を残しているあなたに合同トレーニングをお願いしようと思いまして!サクラバクシンオーをあそこまで育てたあなたなら、きっと凄いトレーニングしてるんじゃないかって思ったんだ!」

 

 つまりは、強くなりたいから自分達と合同トレーニングをしたいってことなのか。作戦とか手の内とか、そんなことを考える前にまずは地力。地力をつけるためだったらプライドもなにもかもを捨てて合同トレーニングのお誘いに来たと。別に合同トレーニングに誘うことにプライドとか関係あるのだろうか?……いや、年下にお願いするわけだから尻込みするか。

 

「1人でうじうじ悩むくらいだったら、マチタンが強くなるために他のトレーナーの力も借りる!それが私のやり方だから!」

「そうですか」

「うわー、反応うっすーい……」

 

 この人は凄いな。担当ウマ娘のために、本当に力を尽くすトレーナーなんだと分かる。それこそ他人の力を借りることも厭わない。自分1人で悩んで、担当ウマ娘が伸び悩むくらいなら他者の手も遠慮なく借りる。そうそうできることじゃないと思う。

 

「いえ、これでも凄いと思っています。マチカネタンホイザのために一生懸命なんですね」

「え?そ、それほどでも~!」

 

 後、結構調子乗りやすい人だね。照れくさそうに笑っている。別に構わないけど。

 

「それでそれで!なんかすっごいトレーニングとかやってるの!?高所トレーニングとか、亀の漢字が書かれた石を探すヤツとか!」

「別に特別なことはしてないです。今やってるトレーニングと変わらないですよ」

「え!そうなの!?」

「ただ、他のウマ娘とトレーニングすると効率が上がります。アグネスタキオン達がサポートに入っているのはそういうことですね」

「成程~」

 

 視線の先ではショットガンタッチをしているバクシンオー達。

 

「さぁご覧くださいタンホイザさんッ!この学級委員長の華麗なる疾走をッ!トウッ!」

 

 バクシンオーは見事な走りでボールをキャッチ……かと思ったらボールの落下地点よりもずっと先を走っていた。なお本人は得意げな笑みを浮かべている。ショットガンタッチとは。

 

「え!はやいはや~い!よ~し私も……ぎゃは!?」

「ま、マチターーンッ!?」

 

 マチカネタンホイザはまだ慣れていないためか、それともつまずいたか。転んでしまった。どうやら怪我はないようだが。

 

「よ~し、次こそ!おりゃりゃ~!」

 

 マチカネタンホイザは根性で何度もチャレンジ。そして何度目かのトライでついにボールをキャッチした。

 

「わは~!やったやった、やったよトレーナー!」

「凄いよマチターン!」

 

 そんな調子でトレーニングは続いていった。

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、高村トレーナーって適性?ってのが見えるんだよね?」

「唐突ですね。そうですけど」

 

 トレーニングをしている最中。ふとマチカネタンホイザのトレーナーから話を振られた。話題は自分のステータスを見る目のこと。

 

「じゃあさじゃあさ!マチタンの適性ってどんな感じなの!?個人的にすっごい気になる!」

「マチカネタンホイザの適性ですか」

「そうそう!それが分かれば、出走するレースも絞れるからさ~。高村トレーナーさえよければ教えて教えて!」

「いいですよ」

「……なんていうか、高村トレーナーって断らないよね。何にでもいいよ、って答えそう」

 

 一応線引きはちゃんとあるのだけれど。それに適性は教えても構わないような情報だ。

 

「ちなみに、あなたとしてはどう思っているんです?マチカネタンホイザの適性」

 

 ちょっと気になったので、教える前に聞いてみる。彼女は少し考え込んだ後、答えが分かったように手を叩いた。

 

「東スポ杯勝ったわけだし、マイルの適性とかすっごくあるんじゃないかな!」

「マチカネタンホイザの適性は中距離と長距離がAです。マイルはDですね」

「……一応聞いておくけど、最高評価は?」

「Sです。滅多にお目にかかれませんが。それを除くとAですね」

「じゃあマチタンってマイルに適性があるわけじゃないの!?」

 

 凄く驚いているがその通り。ジュニア級なんてそんなものだと思うけど。

 

「適性は指標みたいなものなので。ただ、マチカネタンホイザの実力を引き出すなら中距離から長距離路線に進むことをお勧めします」

「成程成程……中距離以上、と。ちなみに、身体能力的なものも見れるんだよね?」

「見えますよ。見ますか?マチカネタンホイザのヤツ」

「お願いしますっ!」

 

 ノートを取り出して、マチカネタンホイザのページを開く。隣からはほへ~、という声が聞こえた。

 

「結構詳細に書いてるんだね~……ちなみに、バクシンオーのステータスを見ても?」

「構いませんよ。はい」

 

 バクシンオーのステータスが書いてあるノートを渡す。ノートを見て……顔を青ざめさせた。わなわなと震えている。

 

「……え?同じクラシック級でございますか?」

「同じですね」

「……そりゃあ勝てないじゃん。無理ゲーじゃんこんなの」

 

 項垂れるマチカネタンホイザのトレーナーさん。しかし次の瞬間にはガバッ!と顔を上げた。

 

「しかーし!まだまだマチタンには伸びしろがある!そうだよね?高村トレーナー!」

「はい。これはあくまでも現時点でのデータなので」

「ならば!いつかはマチタンが超える日だって来るはず!というわけで……頑張れ~!マチターン!」

 

 マチカネタンホイザが成長するのと同じくらいバクシンオーも成長するわけだが、黙っておこう。

 

 

 その後もトレーニングをしながらお互いに意見交換をする。

 

「……というわけで、効率を求めるならこちらのトレーニングがよろしいかと」

「ほへ~……」

 

 結構実りのある合同トレーニングになった。バクシンオーの適性上げにもなるしね。

 

「それにしても、凄いね~高村トレーナーは。もう熟練って感じだ~」

 

 唐突に、そんなことを言い出したマチカネタンホイザのトレーナーさん。自分が、熟練?

 

「熟練、ですか」

「うん!私なんかよりもずっとしっかりしてるし、トレーナー業も板についてるし!いいな~、私もいつかはそうなりたいな~」

 

 そう呟いた後、彼女は何かに気づいたようにギョッとした目でこちらを見てきた。

 

「い、今気づいた……!そういえば高村トレーナーって、私よりも新人じゃん!?」

「今気づいた感じですか。さらに言うなら歳も自分の方が下ですよ」

「うぇええ!?そ、そんな……てっきり年上だと思っていた……」

 

 ……自分はそんなに老け顔なのだろうか?

 

「ちなみに、どうして年上だと?」

「いや、顔は童顔だからワンチャン年下?と思ってたけどさ。こう……目が、なんというか……日々社会の歯車として過ごすブラック企業のサラリーマンみたいな目をしてるから。後私よりも何倍もトレーナーらしいし」

 

 ……まぁ、当たらずとも遠からずではある。今は違うけど。

 

「一応、最年少トレーナーという触れ込みだったのですが」

「……忘れてました」

「別にアイデンティティというわけでもないですし、構いませんよ」

 

 そんなこんなで合同トレーニングも終わりの時間である。

 

「今日は本当にありがとう高村トレーナー!マチタンにも良い経験になったよ~!」

「ありがとうございます!」

「こちらも、良い経験になりました。お互い、次のレースを頑張りましょう」

 

 マチカネタンホイザは日本ダービーだろうか?次会う時はライバルだろう。

 

「こっちは日本ダービーだけど、サクラバクシンオーはどうするの?やっぱりダービーだよね?」

「いずれは日本ダービーに行きますが……次走は違いますね」

「へっ?」

「バクシンオーの次走は「NHKマイルです!次もバクシンしますよ~ッ!」そういうことです」

 

 バクシンオーの次走はNHKマイル。本人たっての希望だ。ここから日本ダービーなので結構な過密ローテになる。だから色々と予約しておかないと。マッサージとか。

 マチカネタンホイザ達は……大口開けて固まっていた。まぁビックリするよね。バクシンオーは高笑いしているけど。

 

(とりあえず、次走に向けて頑張るか)

 

 マイルはAだし、自信はある。それでも万が一がないように、ね。




たましってるか。バクシンオーの時代はNHK杯でNHKマイルカップは存在しないんだ(1996年創設)。
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