最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

21 / 67
さらっと明かされたNHKマイル挑戦。結果はいかに?


NHKマイルをバクシン!

 次走がNHKマイルとなったバクシンオー。脚のケアは欠かさない。

 

「ちょわ~」

 

 マッサージケアだったり湯治療法だったり。疲労が溜まらないように、溜まった疲労をしっかりと取り除くように細心の注意を払っている。トレーニングも基本軽め、バクシンオーが走り過ぎないように注意深く観察。全てを制するために必要なことだ。

 

(MCローテ、だったかな?確か)

 

 アプリのシナリオで触れられた過酷ローテ。マイルのMとクラシックディスタンスのC、2つの頭文字を取ってMCローテ。なんにせよ、大事にならないようにしっかりとしないとね。

 今のところ、バクシンオーに異常は見られない……というか。

 

「さぁトレーナーさんッ!今日も元気にバクシンしましょうッ!バクシンバクシーーンッ!」

 

 元気が有り余りすぎて逆に困っている。トレーニングをし過ぎないように制御するのが凄く大変だ。

 これは本当に余談なのだが、シンボリルドルフのトレーナーが自分のトレーナー室へと訪れてきた……ふくれっ面のテイオーと一緒に。

 

「も~!負けた負けた!負けちゃったよ~!」

「まぁ相手が相手だったからな……でも、次は勝とう!そのためにも、また一緒にトレーニングしないか、聖トレーナー!」

「いいですよ」

 

 トウカイテイオーは春の天皇賞でメジロマックイーンに負けた。一応長距離Aになってはいるものの、あっちも長距離はA。五分の勝負を制したのはメジロマックイーンだったらしい。その後、またこちらとの合同トレーニングを提案してくれた。本当にありがたい限りである。

 そんな調子で、なんとか無茶をさせない範囲でトレーニング。あっという間に時間は過ぎていって。

 

「NHKマイルもバクシーーンッ!」

「本当に元気だね」

 

 NHKマイルの日がやってきたわけだ。

 

「さぁさぁ!ここも勝って見事なバクシンを披露してみせましょうッ!それ~!」

「頑張ってね。負けるとは思ってないけど、観客席で応援してるよ」

「お任せくださいッ!委員長の模範的な走りを御覧にいれましょうッ!」

 

 バクシンオーの気合は十分。状態も良好で問題なしだ。NHKマイルが始まろうとしている。

 

 

 

 

 

 

 東京レース場は晴れ。多くのファンが詰め寄っていた。

 

「皐月賞ウマ娘がNHKマイルに参戦!こりゃ見るしかないでしょ!」

「しっかし大丈夫なのかね、バクシンオー。日本ダービーにも出るらしいけど」

「しかも新人トレーナーらしいからな~。あんまり功名心に駆られるタイプじゃなさそうだけど、そうでもないのかね?」

「いやいや、多分サクラバクシンオーの方から言い出したんじゃない?なんかほら、言いそうな雰囲気あるし」

「「「それは言えてる」」」

 

 皐月賞からのNHKマイル、そして日本ダービーに向かうローテに疑問を感じずにいられないファン。その答えは本人達のみ知るところである。

 

《晴れ空の下、東京レース場芝1600m、NHKマイルの幕が上がろうとしています!芝の状態は絶好の良バ場日和、世代の快速自慢達が集うこのレース、栄光の座を掴むのはどのウマ娘か!》

《今回注目されているのは、やはり皐月賞ウマ娘のサクラバクシンオーでしょう。皐月賞のレコード勝ちでその速さは証明済み、このNHKマイルでも好走が期待できますよ!》

《他にもアンコールワンモアにスプーキーナイトなど、有力なウマ娘が参戦!各自ウォーミングアップを済ませるウマ娘達。どのようなレースになるのか楽しみですね!》

 

 1番人気はサクラバクシンオー。2枠4番からの出走であり、本レースにおいて最も注目を集めている彼女。中にはサクラバクシンオーの勝利はほぼ決まっていると話すファンの姿もあった。

 最前列には高村トレーナー達の姿もある。チームメンバー総出で応援に来ていた。

 

「頑張れバクシンオーさーーん!ファイトでーーす!」

「トレーナー。バクシンオーの調子は?」

「問題なし。99%勝てるよ」

「1%という不確定要素があるからねぇ。まぁ負けることはほぼないだろう」

 

 アグネスタキオンはストップウォッチ片手に、高村はいつものようにノートに何かを書きながらレースを観戦する。

 そしてこのレースは、ミホノブルボンとそのマスター、ライスシャワーとお兄さまといった日本ダービーに出走予定のメンバーも集まってきていた。目的はただ一つ、サクラバクシンオーの偵察である。

 

「しっかりと目に焼き付けておけブルボン。サクラバクシンオーの強さを」

「はい、マスター。ステータス『観察』……片時も目を離しません」

「ライス、しっかり見ておくんだよ」

「わ、分かった……!」

 

 皐月賞では苦汁を嘗めさせられた2人。次の日本ダービーは負けないと意気込み、サクラバクシンオーの走りを見るために東京レース場へと足を運んだ。

 今全てのウマ娘がウォーミングアップを済ませ、ゲートインの時間がやってくる。1人、また1人とゲートへと入っていった。

 

《ウマ娘達がゲートへと入ります。注目を集めているサクラバクシンオーはどのような走りを見せるのか?他のウマ娘が皐月賞ウマ娘の喉元に刃を突き立てるのか?非常に気になるところです。そして今、最後のウマ娘がゲートに収まりました。東京レース場G1、NHKマイル。1600mの戦いが今──》

 

 静寂が訪れた数秒後、ゲートが開く。ウマ娘達が一斉に駆け出し、NHKマイルの幕が上がった。

 

《スタートしましたッ!勢いよく飛び出したのはスプーキーナイトにサクラバクシンオー!この2人がハナを奪い合うのか!?16人のウマ娘達に出遅れは無し、揃って綺麗なスタートを切ります!4枠8番のスプーキーナイトと2枠4番のサクラバクシンオーのハナの奪い合いっ、と》

《サクラバクシンオーは控えましたね。スプーキーナイトにハナを譲る形になりました。スプーキーナイトはこれ幸いと離しにかかりましたね》

《隊列は固まった様子を見せています。スプーキーナイトの他にもジュエルガーネットにオリジナルシャインも行きます。サクラバクシンオーは行きません、先行集団を引っ張ります!サクラバクシンオーの他にはアンコールワンモアが内に、クスタウィも内にいますね。サクラバクシンオーは外へと位置を取ります》

 

 3人の逃げウマ娘がペースを作る展開。サクラバクシンオーは逃げウマ娘3人から1バ身程離れた位置につけていた。彼女が先行集団を引っ張るような形になっている。

 サクラバクシンオーは外につけ、最内にはアンコールワンモアがつける。真ん中にはクスタウィとシャドウストーカー、サクラバクシンオー達先行集団の後ろにジュエルスフェーンが追走。

 レース展開を見ながら冷静に分析をする高村達。忙しなくノートに走り書きをする高村とタイムの計測を続けるアグネスタキオンの2人だった。

 

「委員長君は閉じ込められるのを嫌って外につけたねぇ。多少のロスは許容範囲、ってことだ」

「多少のロスはあっても捲れる、って判断だろうね。中団もそう離れていない位置につけている、団子状態だ」

「逃げウマ娘の3人はできる限り差をつけたいところだが……厳しいだろうねぇ」

 

 サクラバクシンオーを楽にさせないためにペースを握りたい3人。だが余程のハイペースじゃない限りはサクラバクシンオーを抑えることは叶わず、かといってハイペースになると自分達が潰れるという八方塞がりの状況。せめて先行集団で脚の削り合いにならないかと思うが……サクラバクシンオーは外へと進路を取り、囲まれて蓋をされないように走っていた。また、常に周囲を警戒するように走っており、少しの動きも見逃さないようにしている。

 だがそれも、残り800mを過ぎると状況が一変。

 

「さぁッ!ここから解禁ですッ!バクシンバクシンバクシーーーーンッ!」

 

 サクラバクシンオーの雰囲気が変わり、外から一気に上がってくる。3バ身先にいる逃げウマ娘3人めがけてペースを上げてきた。少しずつその差を縮めにかかる。

 

《残り800mを過ぎました。そしてここでサクラバクシンオーが上がって来たぁ!外から上がってくるサクラバクシンオー!先行勢はまだ抑えたまま、中団以下は動きが見え始めたか?スプーキーナイト達は必死に粘る!まもなく最後の直線へと入ります!サクラバクシンオーが外から猛然と襲い掛かる!》

 

 サクラバクシンオーが4番手に浮上。逃げウマ娘3人が必死に逃げる第4コーナー。トレーナー達は舌を巻く。

 

「ジュニア級のレースとは本当に人が変わったようだな……先行気味に立ち回り、自分の得意分野になったら加速」

「私も皐月賞でやられました。しかし、日本ダービーではそうはいきません」

「徹底マーク……あの程度ではダメってことか。それこそ」

「ずっと後ろに、ピッタリ張り付くぐらいじゃないと……!」

 

 それぞれがサクラバクシンオーを観る。そして、このNHKマイルの勝者は決まった、と感じた。

 最後の直線に入る。サクラバクシンオーが先頭の3人に並ぼうと差を詰め、そうはさせまいと粘るウマ娘達の攻防。しかし──それも東京の坂に入るまでだった。

 

「私のバクシンは止まりませんッ!トリャーッ!」

「ちょ、ちょっと……!」

「キッツ……っ」

「む、む~り~!」

 

 坂を軽快に上がるサクラバクシンオーとは違い、やや苦しそうに走る逃げウマ娘達。坂を上り終わる頃には、先頭はサクラバクシンオーに変わっていた。加えて、坂を上り終えたサクラバクシンオーはさらに加速する。

 

《東京の坂を越えて先頭はサクラバクシンオー!サクラバクシンオーだ!サクラバクシンオーが後続を突き放す!スプーキーナイトはさすがにもう無理か!?アンコールワンモア達も上がって来たぞ!しかしサクラバクシンオーが突き放す!残り100を切りました!これはもう決まったでしょう!》

「バクシンバクシーーンッ!」

 

 番狂わせは起きなかった。盤石の強さを見せつけて、サクラバクシンオーがNHKマイルを制する。2着との着差は6バ身差だった。

 

《サクラバクシンオー!サクラバクシンオーが勝ちました!NHKマイルを制したのはサクラバクシンオー!やはりこのウマ娘は速かった!2着アンコールワンモアに6バ身差をつけての快勝です!》

《第4コーナーから仕掛けて、最後の直線で抜き去る!加速も素晴らしかったですね!》

《サクラバクシンオーの次走は日本ダービー。日本ダービーにも期待が高鳴ります!皐月賞とNHKマイルを制したサクラバクシンオー、日本ダービーに向けて視界良好!》

「見てましたか~?トレーナーさ~んッ!今日も学級委員長が見事勝利を収めましたよ~ッ!」

 

 いつものように手を大きく振るサクラバクシンオー。普段通りの光景にファンは微笑ましい視線を送りながら、サクラバクシンオーの強さに歓喜していた。

 

「やっぱ強ぇなバクシンオーは!こりゃ日本ダービーももしかすると……」

「疲労回復に努めるだけだな!次も頑張ってくれよバクシンオー!」

 

 そんなファンの声を聞きながら、高村はノートを閉じる。

 

(日本ダービーに向けてやることは山積み、だな)

「今のうちに温泉をピックアップしたりしておかないとね。いざとなれば他県へ行くことも考えないと」

 

 勝利の余韻に浸るのはそこそこに、次走である日本ダービーに向けてのプランを考える高村。ただ、サクラバクシンオーが自分に向かって手を振っていたので小さく手を振り返していた。

 NHKマイルを制したサクラバクシンオー。次なる舞台は──日本ダービー




なお、今回観戦しているライスシャワーですが史実ではライスシャワーも出走してます(ダービーのトライアルレースに当たるNHK杯ですが)。マチタンも出走してたり(ちなみに2着)。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。