最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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新衣装のヘリルビが良すぎて目が焼かれた。


末脚の正体

「それで、俺に用事というのはなにかな?聖トレーナー」

「御無沙汰してます。こちら、お土産です」

「別にいいのに……」

 

 困り顔で自分が用意したお土産を受け取るのは、シンボリルドルフのトレーナーだ。自分は現在、彼のトレーナー室にお邪魔している。ここに来た理由は、ライスシャワーの末脚の正体について聞くためだ。

 

「本題に入る、前に。日本ダービーは御覧になりましたか?」

「あぁ、日本ダービーね。観に行ったけど……そうだ!」

 

 彼は立ち上がって自分の手を握る。とても嬉しそうな表情をしているが?

 

「日本ダービー制覇おめでとう!これでサクラバクシンオーは無敗のクラシック二冠、さらには変則三冠じゃないか!」

「あり、がとうございます」

 

 凄く嬉しそうに、それこそ我が事のように祝ってくれる。こうまで反応するのも珍しいかもしれない。

 

「これで残すところは菊花賞だね。クラシック級ウマ娘のほとんどが初めて挑戦する長距離の舞台、一筋縄ではいかないよ」

「重々承知しています。勿論、万全を期して挑むつもりです」

「ま、君ならば大丈夫さ!頑張ってね!」

 

 応援の言葉を貰った。少しばかり嬉しい。

 

「話が逸れましたね。本題の方に入りたいと思います」

「おっと、そうだった。あの日本ダービーがどうかしたのかい?」

 

 この人に聞きたいことはライスシャワーの末脚について。あの速さについて何か知っているのではないかと思い、忙しいところ時間を作ってもらった。

 

「日本ダービーの最後の直線でライスシャワーが見せたあの末脚……あなたなら何か知っているんじゃないか?と思いました。なので、こうして聞きに来た次第です」

「あぁ、アレか。確かに凄かったよね~。あわや!ってとこまできてたね」

「それで……知ってますか?なんというか、雰囲気も変わっていましたけど」

 

 自分の質問に、シンボリルドルフのトレーナーは頷いた。肯定、つまりは知っているらしい。

 

「うん、ルドルフやテイオーも辿り着いたからね。その時と同じ雰囲気だったから、何となくの察しはついているよ」

「もしよろしければ、教えていただいても良いですか?あの末脚の正体について」

「勿論構わないよ……とはいっても、君の場合自力で辿り着いてて、後は答え合わせみたいなものだろうけど」

 

 図星である。でも答えを聞いたわけじゃないから合っているかどうかは不明なので、答え合わせするのは大事。

 

「ライスシャワーが見せたのは──領域ってヤツだね。ゾーンとも言われてるよ」

 

 やっぱりそうだったみたいだ。

 

「ただ、ルドルフ曰くライスシャワーの領域(ゾーン)はまだ未完成だったらしい。完全には至っていなかったと言ってたよ」

「アレで未完成ですか。完成した時はどうなることやら」

 

 まぁどうにかするしかない。菊花賞までには間違いなく完成させてくるだろうし、領域も織り込み済みで作戦を立てるとしよう。

 

 

 聞きたかったことは終わった。後は()()()()()()()を済ませよう。

 

「答えてくれてありがとうございます。それで、もう一つ用事がありまして」

「もう一つ?良いよ!なんでも聞いてくれ!」

「これは聞きたいことというよりはお願いなんですが……」

 

 この人にお願いしたいのは、夏合宿での合同トレーニングだ。菊花賞を勝つために、また力を借りたい。受けてくれるかは分からないけど……いや、この人の場合受けてくれそうだな。とにかくお願いしてみよう。

 

「今度の夏合宿、合同トレーニングの提案をしに来ました。また、自分達とやってくれないかと。菊花賞を勝つために、力添えをいただきたく」

「夏合宿の合同トレーニングか……」

 

 考え込むシンボリルドルフのトレーナー。しばらく考え込んだ後、彼は口を開く。

 

「いいよ、また一緒にやろうか!」

 

 快諾、快諾である。本当に良い人だ、この人。

 

「ありがとうございます」

「気にしないでくれ。トウカイテイオーの時はこちらがお世話になったわけだし、それに君の力をまた借りたいと思っていたからね。こっちにも利益があるわけだし、断る理由なんてないよ」

「自分の力を?」

 

 何かあるのだろうか?生憎と、適性についての情報はほぼほぼ出尽くした……いや、一応距離Sに関する考察があるな。でも誰にも喋ってないし、それではないか。

 

「実は最近、新しい子をスカウトしてね。ルドルフやテイオー以外とトレーニングするのは良い経験になるし、なにより君のトレーニング理論をまた聞きたいからね!」

「はぁ」

「楽しみだな~。夏合宿もよろしくね、聖トレーナー!」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 まさかここまで快諾されるとは思わなかった。というか、新しい子をスカウトしたのか。ちょっと気になる。

 

「ちなみに、スカウトしたウマ娘の名前は?」

「ん?サトノダイヤモンドとマンハッタンカフェだね。聞き覚えあるんじゃないかな?君は特に」

「……どっちも聞き覚えがありますね。自分は特に」

 

 サトノダイヤモンドはキタサンブラックが、マンハッタンカフェはアグネスタキオンがよく口にしている名前だ。それに、どっちも長距離適性が高かったはずだ。

 

(なんだろう。自分に風向きがありすぎてちょっと怖い)

 

 これは間違いなくバクシンオーの適性上げが捗る。長距離適性Aも夢じゃないだろう。

 

「それじゃあ夏合宿はまたよろしくね、聖トレーナー!」

「はい、よろしくお願いします……というか、下の名前ですね」

「あ、もしかして嫌だった?なら戻すけど」

「別にいいですよ。なにかが変わるわけでもありませんし」

 

 ただ珍しい。自分を下の名前で呼ぶ相手なんて、家族以外だと数えるほどしかいなかったし。その中で特に仲が良いと言えるのは1人だけだ。果たして彼は元気にしているのだろうか?

 

 

 さて、用事も終わったので帰るとしよう。そう腰をあげようとしたとき。

 

「それにしても、凄いね聖トレーナーは」

「……なにがです?」

 

 座り直す。どうしたんだろうか?

 

「いやね、よくバクシンオーをここまで育て上げたなぁって。菊花賞も最有力候補じゃないか」

「はぁ」

「生粋のスプリンターと言われていた彼女が、クラシック最長距離の菊花賞に挑む。本当に凄いことだ、新人とは思えないよ」

 

 そうだろうか?……いや、冷静に考えたらそうだな。ただ、適性が見えるからこそ挑める。これもステータスが見える目があってこそで、適性上げに関してもそうだ。そしてここまで育ったのもまた。

 

「バクシンオーの才能のおかげみたいなものです。彼女は素直で、常に前向きですから」

「そうかな?君の指導によるところも大きいと思うけど」

「そうですかね?……あんまり、そう思ったことがないので」

 

 やるべきことをしっかりとこなす。そりゃあトレーニング理論とかは過去のデータを参照に色々と引っ張り出すし勝てるように色々と試行錯誤しているが、それは()()であって褒められるべきことなのだろうか?

 

(努力は当然、やるべきことをやるのは当然……いらん事まで思い出しそうだ)

 

 主に前世のこと。まぁ普通の人生だから思い出したくない嫌な過去なんて何もないんだけど。

 正直な話、やるべきことをやっているだけで。それは当然なだけだ。褒められることとは思っていない。自分ができることをバクシンオーにしてあげてるだけ。ただそれだけ。

 

「今のサクラバクシンオーの成績は、君がいたからこそだと思っている。他の人達もそう思ってるんじゃないかな?」

 

 シンボリルドルフのトレーナーは優しい表情をしている。

 

「それに、たとえ当然だったとしても。頑張っていることは褒められるべきことだよ」

「……はぁ」

「俺達が担当に接するのと同じだよ。良いことをしたら褒める、頑張ったらお疲れ様って言ってあげる……大人だって、褒められたら嬉しいものなんだから」

 

 そういうもの、だろうか?……よく分からない。

 

「……分かりました」

「君はどうも自己肯定感が低そうだね……ま、深くは聞かないよ」

 

 シンボリルドルフのトレーナーは立ち上がる。つられて、自分も立ち上がった。

 

「それじゃあ改めて。夏合宿はよろしくね、聖トレーナー。楽しみにしているよ」

「はい、こちらこそ。実りのある夏合宿にしましょう」

 

 こうして、夏合宿はまたシンボリルドルフ達と合同トレーニングをすることが決まった。

 

 

 

 

 

 

 それから夏合宿までには安田記念とか宝塚記念があった。安田記念はてっきりダイタクヘリオスが参戦すると思ったが、どうやら宝塚記念の方に出走するようで。

 

「これは委員長も出走しなければ「ダメだよ。夏合宿を控えてるんだから」はいッ!分かりましたッ!」

 

 安田記念はヤマニンゼファーが制した。

 そして宝塚記念はというと、知り合いではメジロパーマーとダイタクヘリオスが出走。彼女達のトレーナーに誘われて観に来た。後はシンボリルドルフのトレーナーも一緒。彼らは敵情視察だけど。トウカイテイオーは出走しないみたいで。

 

「あ~あ、ボクも出たかったな~」

「テイオーは秋から始動戦だよ。まずは秋の天皇賞を目標に頑張ろう!」

「分かってるよトレーナー。ま、そのためにも今回のレースはしっかりと観戦しないとね~」

 

 有力候補はメジロパーマーとダイタクヘリオス。2人が逃げてペースを作っていた。道中3番手以下を大きく引き離して、最後の直線へと入る。

 

「私が獲る!」

「いいやウチが!」

「私が!」

「ウチが!」

 

 競り合いながら走る2人。3番手との差は、8バ身くらいだろうか?さすがに疲れているのか落ちてきてるけど、アレはもう届かないだろう。

 

「うわ~すっごいペース。あれで走られたらたまったもんじゃないよ」

 

 言いながらもトウカイテイオーは冷静に分析している。

 競り合い続ける2人。勝ったのは──メジロパーマーだった。

 

《メジロパーマー、メジロパーマーだ!メジロパーマーがダイタクヘリオスとの競り合いを制した!夏のグランプリ、宝塚記念を制したのはメジロパーマー!これが爆逃げコンビの逃げだぁぁぁ!2着はクビ差でダイタクヘリオスです!》

 

 周りのファンも大盛り上がりである。

 

「「爆逃げウェーーイッ!」」

「っぱパマちんサイコー!ウチらかましてやったべ!?」

「うん!かましてやったね太陽!トレーナーさ~ん!見てた~!?」

「やったねパーマー!ちゃんと見てたよ~!おめでと~う!ヘリオスも頑張った~!」

「こりゃあ打ち上げも奮発するしかないっしょ!」

「「「ウェーーーイッ!」」」

 

 あ、トーセンジョーダンも混じってる。あそこは仲が良いなぁ。

 

「……冷静に見るだけじゃダメだね。侮っていたらあの爆逃げで逃げられる可能性がある。状況を見極めて、どのタイミングで抜け出すかが凄く大事」

 

 トウカイテイオーは今後のレースを考えているようだ。脅威に見ているのだろう、あの2人を。

 

 

 その後は一番の強敵……バクシンオーのテストを迎え。

 

「見てくださいトレーナーさんッ!」

「……赤点回避だね、おめでとう」

「というか平均点を軽く超えてるねぇ。やっぱり普通に解けば委員長君は優秀なわけだ」

「えぇ!学級委員長ですのでッ!」

 

 無事に補習を回避した。これで夏合宿の心配は無くなった。そして──

 

「来ましたよ夏合宿ッ!」

「海だー!頑張って鍛えるぞ~!」

「技術向上の夏にする。頼んだぞトレーナー」

「モルモット君、後で日焼け止めを塗りたまえ」

「バクシンオーに頼んで」

 

 夏合宿を迎える。




同じメンバーでの夏合宿~新メンバーを添えて~
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