最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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短距離ウマ娘育てなさ過ぎてマスチャレ勝てねぇやガハハ。


幕間 他陣営の夏合宿

 夏合宿。ミホノブルボンのマスターとライスシャワーのお兄さま、そしてニシノフラワーのトレーナーは、合同トレーニングをしていた。ミホノブルボン達のトレーニングを見守る傍ら、3人で話をする。

 

「ありがとうございます、ライス達とのトレーニングを受けてくださって」

 

 今回の合同トレーニング。先に持ちかけてきたのはお兄さまの方である。理由は1つ、菊花賞を勝つためだ。

 お兄さまの言葉に、マスターとニシノフラワーのトレーナーは頭を下げる。

 

「いや、こちらの方こそありがたい。君達とのトレーニングは、必ず実りのあるものになるだろうからな」

「そう言っていただけると嬉しいです。ニシノフラワーのトレーナーさんも、ありがとうございます!」

「フラワーも、次のスプリンターズステークスに向けて頑張っていきたいですから!胸を借りるつもりで行きたいと思います!」

 

 それを最後に、3人の間に会話は無くなる。ミホノブルボン達の声だけが響いていた。

 

「ほらほら~!みんなもっと頑張らないと!それじゃあバクシンオーちゃんには勝てないわよ~!」

「いや~マルゼンに誘われてついてきたけど、中々楽しいね。ルドルフは別の子とやってるみたいだし」

「ステータス『まだまだ』……!ついていきます!」

「ライスも、まだ……頑張れるッ!」

「わ、私も!頑張ります!」

 

 今回の夏合宿では、ライスシャワーとミホノブルボン、ニシノフラワー以外のウマ娘もトレーニングしている。マルゼンスキーに加え、彼女に誘われる形でミスターシービーも来ていた。これにはマスター達も驚く。

 

(まさか、ミスターシービーまで協力してくれるとは……!これはありがたい!)

(彼女もまた、クラシック三冠を獲った猛者。そんな相手とのトレーニングは、必ず実りのあるものになる!)

(凄いメンバーだなぁ。こんな環境でトレーニングできるなんて、感謝しなきゃ!)

 

 ただ、必ずミホノブルボン達に良い結果をもたらしてくれるだろう。そう思っていた。

 

 

「あ、ちょっと電話だ。席外しますね!」

「あぁ、分かった」

 

 ニシノフラワーのトレーナーが席を外す。マスターとお兄さまの2人となった。

 トレーニングを見守っている中、ふとお兄さまが呟く。

 

「もう、最後の一冠ですね」

「……あぁ」

 

 2人の頭の中にあるのは、クラシック最後の冠──菊花賞。そこに出走してくる()()()()()について考えていた。

 

「サクラバクシンオー……彼女がどこまで成長してくるか」

「トレーナーがトレーナーだ。間違いなく、完璧な仕上がりと予想を超えた成長をしてくるだろう」

 

 サクラバクシンオー。現在無敗のクラシック二冠ウマ娘であり、無敗のクラシック三冠に王手をかけているウマ娘である。また、NHKマイルも制しているため史上初のクラシック四冠ウマ娘の称号を手にするかもしれない、とも言われていた。

 適性なんて関係ないとばかりに結果を残してきた、間違いなく世代最強のウマ娘。全距離制覇も夢じゃないと評されるほどである。

 

(けど、だからどうした?)

 

 お兄さまの頭をよぎるのは、日本ダービーでのライスシャワー。サクラバクシンオーをあと一歩というところまで追い詰めていた。

 

(京都の芝3000m……長距離の舞台ならば、ライスは勝てる!)

 

 お兄さまには自信があった。元よりライスシャワーはステイヤータイプ、距離が長いほど有利とは常日頃から考えていたこと。また、日本ダービーで徹底マーク作戦も間違ってないことは分かっていた。残り半バ身というところまで追い詰めた。ならば菊花賞は行ける。そう考える。

 

(甘い考えかも知れない。だけど、ライスだってこの夏合宿で成長する!それこそ、バクシンオーにだって負けないぐらいに!)

 

 甘い考えかも知れないが、お兄さまは本気でそう思っている。ライスの実力ならばバクシンオーにだって負けていない。これまで負け続けてきたが、菊花賞ならば勝てる。そう思っていた。

 問題は、サクラバクシンオーの適性だろう。とは言っても、お兄さまもマスターも考えは一緒だった。

 

「サクラバクシンオーは長距離を走れるようになってくるだろう。最早あのウマ娘に適性などあってないようなものだ」

 

 その言葉にお兄さまも同意するように頷く。最早スプリンターなどといってはいられないだろう。ここまで結果を残してきたのだ、誰もがサクラバクシンオーは長距離も走れると思ってくるはずだ。

 

(本当に恐ろしい。ミホノブルボン以上に向いてないとまで言われていたのに)

(生粋のスプリンターをここまで育て上げた男……高村聖。なんと恐ろしいトレーナーだ)

 

 サクラバクシンオーをここまで育て上げた高村聖という男に畏怖を抱かずにはいられない2人である。

 

「ミホノブルボンは、どうですか?菊花賞」

「……問題ない、と。大手を振っては言えないな。だが間に合わせる、必ずな。そして菊花賞を勝つ……サクラバクシンオーにも、他にも負けない」

 

 確固たる信念をもってマスターは答える。

 

(これは、菊花賞も手ごわい相手になりそうだ)

 

 そう思わずにはいられないお兄さまだった。

 

 

 そして、ライスシャワー。ライスシャワーは日本ダービーでのことが頭によぎっていた。あの時発揮した、自分でも信じられないくらいの末脚。

 

(マルゼンさんに教えてもらった……ライスが日本ダービーで、領域に入りそうになったって。ライスの領域は、まだ未完成だって)

 

 あの時マルゼンスキーも日本ダービーを観に来ていたようで、ライスシャワーの末脚に驚いていたらしい。ただ、それと同時に未完成だとも。

 

(もし完成していれば、ダービーはライスが……)

「……ううん、これはダメだよね。あのダービーでライスは負けた、ちゃんと受け入れなきゃ!」

 

 領域が完成していれば、自分は日本ダービーを勝っていたのではないか?一瞬思ったライスシャワーだが、すぐにその考えは間違いであると気づく。ライスシャワーは日本ダービーを負けた、そのことを正しく刻みつけなければならない。

 そして、今回の夏合宿でやることは明確化していた。自分の力をつけることと同時に、領域を完成させること。それがライスシャワーの目標だった。

 

(マルゼンさんやシービーさんが協力してくれるって言ってた。ライスが領域に辿り着くために、頑張ってくれるって。だから……)

「頑張るぞ~……頑張るぞ~……!」

「ライスさんから『やる気の向上』を検知……こちらも、負けていられませんッ!」

「わ、私だってっ!やぁぁぁぁぁっ!」

 

 ライスシャワーに触発されて、ミホノブルボン達も気合を入れる。その様子に、マルゼンスキー達は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 トレーニング後、ライスシャワーはマルゼンスキーと話す。

 

「ライスちゃん、今日のトレーニング良い感じだったわよ~!バッチグー!」

「あ、ありがとうございますっ!」

「この調子なら、菊花賞だっていい勝負ができると思うわ。バクシンオーちゃんがどれだけ強くなってるかによるけど」

 

 マルゼンスキーの言葉に、ライスシャワーは俯く。

 

(まだ、いい勝負どまり……だけど、ライスはっ)

 

 ライスシャワーの頭にあるのは、勝ちたいという感情。菊花賞でサクラバクシンオーに勝ちたい、あの背中を追い越したいという気持ちだった。

 ライスシャワーのそんな気持ちを察したのか、マルゼンスキーは優しい目をする。

 

「そうね、ライスちゃんは勝ちたいんだもんね。いい勝負どまりじゃあ、終われないわよね?」

「あ……ご、ごめんなさい!ライス、ライス……っ」

「良いのよ。あたしも悪かったわ。でもね、バクシンオーちゃんはとても強い。それこそ、ライスちゃんのずっと先を行く強さよ」

 

 優しい目から一転、今度は現実を突きつけるように厳しい言葉を投げるマルゼンスキー。自覚しているのか、ライスシャワーはまた俯く。

 現状、サクラバクシンオーの強さは世代の中でも圧倒的だ。これまでの結果が証明している。特にスピードにおいては、彼女に勝てるウマ娘はそうはいないだろう。それがマルゼンスキーの見立てだった。

 

(あの子が()()したら、熱い勝負ができそうねっ!)

 

 マルゼンスキーが闘争心を滾らせるほどには。

 ライスシャワーも世代の中では突出した強さを持っているが、それでもサクラバクシンオーには敵わない。あくまで、現時点ではだが。果たして、第三者からサクラバクシンオーの方が強いと言われて、ライスシャワーは何と答えるのか?マルゼンスキーは彼女が口を開くまで黙っていた。

 俯いていたライスシャワー。やがてその顔を上げる。彼女の表情は。

 

「それでも……っ!ライスは勝ちたい、バクシンオーさんに勝ちたいです!確かに今は先ですけど、それは今の話だから!この夏合宿で、バクシンオーさんを超えます!超えてみせます!」

「……そう」

「だからマルゼンさん、お願いしますっ!ライスを、鍛えてください!」

 

 曇りのない、決意に満ちた表情だった。そして、頭を下げてマルゼンスキーにお願いをする。

 

(……それでいいのよ、ライスちゃん)

「モチのロンよ!ライスちゃんだけじゃない、ブルボンちゃんやフラワーちゃんもそう!み~んなまとめて、お姉さんが鍛えてあげるわ!」

 

 後輩の成長に嬉しさを隠せないマルゼンスキー。胸を叩いてそう答えた。

 

 

 ライスシャワーとマルゼンスキーの話は続く。

 

「菊花賞で勝つには、やっぱり領域の完成が必要ね。日本ダービーはあと少しだったもの」

「や、やっぱりそうですよね」

「別に絶対必要ってわけじゃないんだけど、それでも勝つには領域は持っておきたい手札よ。使えるというだけでも十分なアドバンテージだから」

 

 領域に到達したものとして、マルゼンスキーはライスシャワーへと語る。領域を持つことの優位性を。

 

「それに、ダービーであそこまで追い詰めたんだからあとちょっとよ!バクシンオーちゃんも成長するけど、それはライスちゃんも同じだもの!」

「は、はい!」

「気分は前向き、いつでもチョベリグな気分で行かないと!そして、この夏合宿で領域を完成させるわよ~!」

「お、おー!」

 

 気合を入れるライスシャワー。果たして彼女の夏合宿はどのような結果になるのか。

 

 

 

 

 

 

 ところ変わってマチカネタンホイザ陣営。こちらも夏合宿に励んでいた。

 

「ええか~?まずは気合や!気合があれば何でもできる!気合がないヤツはなんもできん!分かったか!」

「は、はい!」

「えぇ返事や!やったら、ウチとオグリでビシバシ鍛えたるで~!」

「よろしく頼む……もぐもぐ」

「いつまで食っとんねんオグリィ!」

 

 オグリキャップとタマモクロス。2人の協力を取り付けることができたマチカネタンホイザ陣営。どういう繫がり?と思うが、マチカネタンホイザのトレーナーが2人のトレーナーに頼んだら快く承諾してくれた。

 

「後進が育つのは嬉しいからね!」

「一緒に頑張ろうね~」

「や、やった~ッ!」

 

 マチカネタンホイザ陣営も、充実した夏合宿になりそうだった。




他陣営も充実した夏合宿を過ごせてそう。
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