※3/8トレーニングの期間と一部を修正。
「ええか~?中距離走るんやったらペース配分も考えなあかんで!もしくはがむしゃらに鍛えまくって、スタミナつけまくるとかやな!」
「なるほどバクシン!」
この1ヶ月、バクシンオーの適性を上げるために他のウマ娘とのトレーニングを組んできた。中距離と長距離の適性が高い5人のメンバーと一緒にトレーニングをし、バクシンオーのGランクという適性を改善するために。
「他のみんなも、タマの話を聞いておくといい。私も勉強させてもらっている」
「はい、よろしくお願いしますタマモ先生!」
「な、なんや照れくさいなぁ。褒めても何もないで?」
「タマモ先生、よろしく頼む」
「……うが~っ!みんなしてやめーや!ほら、トレーニングするで!」
タマモクロスは面倒見がよく、みんなから慕われていた。慕っている中にオグリキャップが混じっていたのはちょっと面白かったけど。オグリキャップもタマモクロスには普段から世話になっているのだろう。
「ムムッ!どうやらこの後空が荒れるかもしれません。今から室内トレーニングに切り替えるのが吉と出ました!」
「しかし、空は晴れ渡っているぞ。気のせいではないか?」
「……いや、マチカネフクキタルの言葉を信じよう。室内トレーニングに切り替えだ」
マチカネフクキタルの吉兆もあてにさせてもらった。この後は本当に雨が降り、ずぶ濡れにならずに済んだという体験をしている。マチカネフクキタルはドヤ顔を披露していた。色んなことがあったが、きっと楽しくトレーニングができたことだろう。
(キツいトレーニングが続くよりも、少しは楽しくトレーニング出来た方が良いだろうし、ね)
トレーニング内容は弄らないし、キツいことはキツいのだが。それでも少しは気持ちが楽になるだろう。
そして、あっという間に1ヶ月が過ぎた。
「や~、もう1ヶ月経ったんか。えらいはよう過ぎたな~」
「楽しい時間だった。もし次があれば、その時はよろしく頼む」
タマモクロスとオグリキャップは自分達のトレーニングに戻る日がやってくる。2人には感謝しかない。忙しいだろうに、こうしてバクシンオーのトレーニングに付き合ってくれたのだから。
「ありがとう、タマモクロス、オグリキャップ。おかげでバクシンオーにも良い刺激になった」
「ええでええで!ウチらも楽しめたわ!また機会があったら呼びや?いつでも力なるで!」
これは嬉しいお言葉。なら遠慮はしない。
「じゃあ、またよろしく頼むよ。バクシンオーが強くなるために」
「任しとき!後輩が強くなるんは大歓迎や!」
「私もだ。いずれは一緒に走ろう。勿論、レースで」
こうして次の約束も取りつけた。うんうん、順調に強くなるためのステップアップができているな。
「これで学級委員長としてさらに磨きがかかりましたよーッ!」
そんなバクシンオーのステータスはというと。
サクラバクシンオー
適性:芝A ダートF
距離:短A マB 中E 長F
脚質:逃げA 先行A 差しF 追い込みG
スピード:E 201
スタミナ:F+ 154
パワー :F 126
根性 :F 110
賢さ :F 122
1ランク上がればいいと思っていたけど、マイルがBに長距離がFに、中距離はEと2ランクも上がった。これは嬉しい誤算。ステもまんべんなく伸びている。
(メイクデビューまでにはDに上がればいいと思っていたけど……これならCもいけるかな?)
目標を修正しておく必要があるね。ただ、現状目指すのはメイクデビューまでに中距離と長距離を両方Dランクまであげること、少し高めに設定して中距離か長距離どちらかがCになること。そのためにもバンバン他の子達とトレーニングさせるのがいいかな?というか、サブトレーナーをしていた時と比べて明らかにポンポン上がるな。なんでだろうか?
「他の子達もありがとうね。良ければまた参加して欲しい」
今後のトレーニングを考える前に、キタサンブラック達にもお礼を言わないと。彼女達にも凄くお世話になったから。
「いえいえ!お役に立てたならよかったです!わたし、まだデビュー前なのでバンバン呼んじゃってください!……まぁトレーナーさんもいないんですけどね」
「私も同じだ。強者と共にトレーニングをすることで、私もまた高みへと至れる……そんな相手とトレーニングするのならば、是非呼んでほしい」
「また知っているパワースポットがあったら教えてください!後、個人的に占いのお店もやっているので是非!」
「キタさんもドゥラメンテさんもフクキタルさんもありがとうございましたッ!また一緒にバクシンしましょうッ!」
彼女達としても良い経験になったようだ。現に、ステータスも上がっている。ドゥラメンテは長距離適性がCからBに上がってるし。こっちも割とすぐに上がったな……。不思議だ。
(満足してもらえたならよかったかな)
これで一緒にトレーニングするのは終わりだ。明日からはまた、バクシンオーのトレーニングと一緒に練習してもらえる相手を探さないとな。
「それじゃあみんなお疲れ様。気を付けて帰ってね」
「「「はいッ!」」」
今日も充実したトレーニングだった。
そして後日。
「さぁキタさん、ドゥラメンテさん!今日もバクシンしましょうッ!」
「はい!張り切っていこー!」
「……バクシーン」
何故かキタサンブラックとドゥラメンテがトレーニングに参加するようになった。嬉しいっちゃ嬉しいけど。
◇
タマモクロスとオグリキャップは帰路につく。2人は寮が同じ部屋なので、必然的に帰る方向も一緒だ。
「いや~、それにしてもえぇ経験になったわ~!たまにはええかもしれんな!」
「あぁ、そうだなタマ。とても新鮮な気分だった」
サクラバクシンオー達とのトレーニングは2人にとっても良い刺激になったようだ。満足げな表情で練習のことを振り返っている。
そして、タマモクロスは呟いた。己がこのトレーニング前に考えていたことを。
「にしても……噂っちゅうんもあてにならんなぁ。普通にえぇトレーナーやん、あの人」
「確かに。料理を作ってくれる良い人だった」
「オグリの良い人基準そこかい!まぁそれ抜きにしても、噂が独り歩きしとる状態やな、アレ」
噂、というのは高村聖に関するものだ。彼、このトレセン学園において他の人達からはあまり評判が良くない。その大体の原因が──あの生気を感じさせない瞳である。
「特売の時はホンマにビビったで。ゾンビに会うたかと思うたわ」
「タマ、ゾンビは創作上のものであって実際にいるわけじゃないぞ」
「知っとるわ!例えやた・と・え!あのトレーナー、死んだ魚みたいな目しとるやろ?」
「あぁ、DHAが豊富そうだった……ところでタマ、DHAというのは何なのだろうか?」
「知らんで言ったんかい!……まぁウチもよう知らんけど、目にええらしいで」
タマは物知りだな、というオグリキャップの言葉を無視してタマモクロスは出会った時のことを思い出した。あの時も生気を感じさせない、死んだ魚のような目をしていたため強く印象に残っていた。
(そらあんな目でジ~っと見られたら怖いわ。本人に悪気はないとはいえ)
あの目でウマ娘をジッと見ているのだ。怖くもなるだろうし、「人体実験をしてそう」だの「モルモットを選別してる」だの「アグネスタキオンの同類」だの言われても仕方ないだろう。ただ、本人はウマ娘が怪我をしないか見ているだけで悪気は一切ない。
概ねウマ娘達からはそのように思われていた。ただ、実際に接してみると悪い人物ではないと判明したので噂はあてにならないな、と思う2人である。
「チヨノオー達にも教えないといけない。彼は悪い人物ではないと」
「ええか、オグリ?そん時はウチも呼ぶんやで?ろくなことにならん気がするからな」
「タマは心配性だな。私なら大丈夫だ!」
「自信だけは認めたるわ」
ひとまず知り合いのウマ娘達の誤解は解いておこうと決心する2人である。
「後は~、担当のこともそうやな。評判悪いんは」
そして、最近はサクラバクシンオーを担当しているというのもよくない噂に拍車をかけていた。こちらは主にトレーナー陣の評価だが。タマモクロスも小耳に挟んだ程度であり、あまり詳しく知っていたわけではない。ただ、今回のトレーニングで大体の事情は掴んだ。
「あのトレーナー、担当を適性外で走らせようとしとるやん?それで余計にやろうなぁ」
「?どういうことだ、タマ?」
「ええか、オグリ。ウチの見立てやとサクラバクシンオーは生粋のスプリンターや。一緒にトレーニングしてよう分かった。バクシンオーの適性は短距離やってな」
もってマイルやろ、と続けるタマモクロス。その言葉にオグリキャップも納得した様子を見せていた。この2人も感じ取ったのだろう。サクラバクシンオーは
そして、タマモクロス達も他のトレーナー達と同様に感じていた。サクラバクシンオーの圧倒的な才覚を。
「おまけに世界狙えるレベルのスプリンターや。それを中距離以上で走らせようとしとるんやから、他のトレーナーもえぇ顔せんやろなぁ」
「だが、タマ。バクシンオーの目標は……」
「せや。全距離で結果を残すこと……これまた難しいこと言うわホンマに」
あまりにも高すぎる目標。世界で結果を残せるレベルのスプリンターとしての才能。なのに適性外の距離を走らせようとしている。それらを踏まえた上で高村トレーナーに下された評価は──散々なものとなった。
スプリンターとして伸ばすべき才能を、適性外の中距離以上に注ごうとしている。結果を残せるのかも分からない、残せない確率の方が高いものに注力する彼をよく思うトレーナーはいないだろう。トゥインクル・シリーズは彼が考えているほど甘くない、現実を知るべきだ……それが大半の意見である。
「実際、どないするんやろなぁ?中距離以上で走らせる言うても、適性考えたらめちゃ厳しいで?」
「だからこそ、私達とトレーニングをしたのかもしれない。少しでも上へ行くために」
「……やろうな。どんな狙いがあるかは知らんけど」
2人は高村聖というトレーナーについてそれぞれの私見を述べていく。まとめとしては、悪い人物ではないがそれはそれとして考えが読めない不気味なトレーナー……という評価に落ち着いた。
「ま~でも、悪い人やないしな!それが分かっただけでもえぇやろ!」
「そうだな。今度また、一緒にトレーニングをしよう……ジュル」
「絶対食べ物貰えるからやろ?今度はクリークを誘うてもええかもしれんな~」
「あぁ、クリークはステイヤーだしバクシンオーの目標にはピッタリだ」
そして、今度またお呼ばれしたらトレーニングに参加しよう。そう話しながら、2人は学園の寮へと戻っていった。
無料十連終わっちゃった……。