やってきた年末の大一番有マ記念。秋シニア三冠がかかっているトウカイテイオーが出走するということで話題を呼んでいた本レースだが。
《来た来た来た!トウカイテイオーが来た!トウカイテイオーが来ました!爆逃げコンビを射程に捉える!メジロパーマーとダイタクヘリオスが必死に逃げ粘ろうとしているが、トウカイテイオー速い速い!これが帝王の強さか!?》
《いえ、しかし!メジロパーマーとダイタクヘリオスも驚異の粘りですよ!トウカイテイオーに負けていません!》
《このレースでも波乱を呼んでいた爆逃げコンビの逃げ!凄まじいハイペースの逃げについてこれるのはトウカイテイオーのみだった!さぁトウカイテイオーが捕まえるか!?トウカイテイオーが並ぼうとしているぞ!二連覇なるかトウカイテイオー!》
残り100mというところでトウカイテイオーが爆逃げコンビを捕まえる。後は抜き去るだけ……なのだが。抜き去ることができない。
「ガス欠がなんぼのもんじゃ~い!アガってフェスってパリってけ~!」
「勝、つん……だぁぁぁぁ!」
裂帛の気合いで逃げ粘るメジロパーマーとダイタクヘリオス。その気合に、トウカイテイオーも応える。
「ボクだって、負けるわけにはいかないんだよ!」
最早領域は使えない。意地と意地がぶつかり合う有マ記念。粘る逃げコンビと追い上げるトウカイテイオー。先にゴールラインを割ったのは──ダイタクヘリオスの身体だった。
《ダイタクヘリオス!ダイタクヘリオスだ!ダイタクヘリオスが逃げ粘った!暮れの中山を太陽が照らす!見事に輝いたダイタクヘリオス1着ゥゥゥ!トウカイテイオーは二連覇ならず!2着はトウカイテイオー!3着はメジロパーマーです!》
「うぇ、ウェイウェイウェ~イ……!ぶちかましやったぜ……うぷっ!?」
「あぁ!?さすがにそれはまずいよヘリオス!控室まで我慢して!」
「ちょ、まじつらたん……ガチめにギブ……っ」
「ヘリオスぅぅぅぅぅぅ!?」
前評判はトウカイテイオーの圧倒的1番人気。枠番も悪くない、実績や強さもトウカイテイオーの秋シニア三冠は揺らがないだろうと思われていた。そんな状況での、ダイタクヘリオスの勝利である。中山レース場に集ったファンも驚愕していた。
「ま、マジかよ……!?ヘリオスってマイラーだろ!?今回の有マ記念だって、メジロパーマーが出走するから出てきたみたいな感じだったのに!」
「もう最近距離適性の壁とか分かんなくなってきたよ~!?どうなってんの~!」
「それはそれとしてすげぇぜ逃げコンビ!またレースを沸かせてくれよ~!」
ダイタクヘリオスに賞賛の言葉を贈るファン。もっとも、ダイタクヘリオス自身は慣れない長距離に加えてペース配分ガン無視の逃げを繰り広げていたので絶賛死に体である。吐きそうになっていた。
「あ、あはは……でも、頑張ったねヘリオス」
「本当にあの御方は、理解の範疇を超えていますね。まさか、本当に勝つとは」
「トウカイテイオーというあまりにも巨大な烈風を前に、臆することなく己の風を吹かせるその姿……あれこそが、ヘリオスさんなのでしょう」
ケイエスミラクル達も拍手を送る。年末の大一番、太陽が輝いていた。
その後、ダイタクヘリオスはサクラバクシンオーへと宣戦布告。
「ちゃんバク!ウチはちゃんバクが負けたテイオーに勝った!てなわけでウチはちゃんバクよりも爆上げでバクシンでヨロ!」
「な、なんと!……た、確かにそうかもしれません……しかしッ!ならばその座を奪えばいいだけのこと!時代最速は私であることを証明しましょう!」
「モチオッケー!ウチも来年からは短距離でバイブス上げてくんでシクヨロ!パリってくぜ~、YO!」
「バックシーン!」
サクラバクシンオーも気合を入れていた。
◇
年が明けて。色々とやることが山積みだ。
(ひとまずローテは完成した。今年一年のローテが)
バクシンオーはまず、春の天皇賞を目標に動く。彼女自身出走したいレースの1つに挙げていたのでこれは既定路線。高松宮記念に関してだが、こちらには出走しない。これは本人も了承済みだ。
(今のバクシンオーの心はまだ渇いている。その渇きを満たすために、まずは意識から変えないといけない)
現状、バクシンオーは自分に敵がいないと考えている。その認識から変えよう。短距離で自分に比肩しうる存在がいることを認識させ、脅かす存在がいるのだと教える。そうなればバクシンオー自身のやる気もさらに上がるというものだろう。別に走ってもいいのだが、今回に関しては春天が優先。1月から3月までは準備期間だ。
「さぁキタさん!雪合戦といえども容赦はしませんよ!この委員長に胸を借りるつもりで挑んできてくださいッ!」
「よ~しドゥラさん!バクシンオーさんを倒すよ!」
「あぁ、分かった」
「あ、ちょ!流石に2人相手は想定外です!いえ、ここを乗り越えてこそのバクシン!模範的な学級委員長!私は臆することなく攻めましょう!バクシンバクシーーーンッッ!」
それに、ケイエスミラクルがどれほど仕上げてくるのかも知っておきたい。スワンステークスで復帰してはいたが、データが足りないというのが現状。高松宮記念に出走予定らしいので、データをまとめておきたいところだ。後スワンステークスは観に行けなかったし。
ケイエスミラクルにばかり目がいくけど、他も怖いところ。特にダイタクヘリオスだ。
(有マ記念でトウカイテイオーに勝ったことで勢いに乗っている。高松宮記念にも出走予定らしいし)
「後はバクシンオーのところに宣戦布告に来たし、ね。彼女もマークだ」
バクシンオーも自分が負けたテイオーに勝ったダイタクヘリオスに注目している。距離が違うからあんまり参考にならないことは分かってるみたいだけど。ただ、適性外のレースを勝ったので注目度は上の方。短距離路線に集中すると明言しているしね。これはヤマニンゼファーもそうだが。
今年の短距離路線はかなり注目されている。理由はたくさんあって、まずはダイタクヘリオスのインタビュー。
「ウチ、来年は短距離でビリビリさせっから!みんな応援ヨロ☆」
そしてこれはヤマニンゼファーもそうだ。彼女もまた、ダイタクヘリオスと同様に短距離に集中することを明言している。目的はおそらく、バクシンオー。
次にダイイチルビーだ。あまり出走していなかった彼女だが、現役を続行。短距離路線をさらに沸かせると宣言していた。そしてケイエスミラクルの完全復帰……まぁ短距離は色々と大きなニュースが連続しているというわけだ。
(分からないのはニシノフラワーだけ、か。彼女は最近、ライスシャワー達と一緒にトレーニングしているらしいけど)
ニシノフラワーはまだどこに出走してくるのかは明言していない。高確率で短距離路線に来るだろうけど。
下の世代もバクシンオーが注目しているノースフライトがクラシック級に上がったので、さらに盛り上がること間違いなし!……というのがバクシンオーの言葉。まぁ彼女現時点で世代の中でも抜けて強いからな。ティアラ路線の中だと。
(間違いなく、短距離で熱い勝負ができる。そう断言できる)
「あ、これ流石に厳しいですね!数的有利は覆せませんねッ!?」
「とりゃとりゃとりゃ~!ドゥラさん、畳みかけるよ!」
「あぁ、たとえ雪合戦であっても私は勝利を掴み取る……!」
「は~……かまくらの中はあったかいねぇ」
前回のスプリンターズステークスでヤマニンゼファーに勝ったが、アレは適性と調子の差だ。次は間違いなく本調子に仕上げてくるだろうし、適性もAに上げてくるだろう。つまりは、十全の彼女と走ることになる。さらには領域持ちだ。
続いてダイタクヘリオス。彼女もまた領域持ちであり、短距離をAに仕上げてくるだろう。ギャルトレーナーさんが自分に適性のことを聞いてきたのはそういうことだろうし。有マ記念でトウカイテイオーに勝った実力も本物、強敵なのは間違いない。
ダイイチルビーもそうだが……やはり最重要で警戒しなきゃいけないのはケイエスミラクルだろう。
(ケイエスミラクルに関しては適性の差がない。彼女もまた適性S、さらには……)
領域持ちだ。というのも、彼女のステータスはSSの限界を超えているから。スピードがUランクに到達していることから、ケイエスミラクルは領域持ちだということが分かる。
(現状、バクシンオーのスピードはUに到達しかけているSS。領域も至っているから、良い勝負はすると思う)
ただ、確実に勝てるかどうかは微妙なところだ。やっぱり出走する以上は勝たせたい。万全を期すためにも、今回の高松宮記念は出走しなくてよかったのだと思う……まぁバクシンオーが望むなら何とかした気がするけど。それはまぁいい。というかバクシンオーに大分甘いな、僕。
ノートにまとめて、ひと段落つける。さて。
「そろそろ初詣に行くよ、みんな」
「「「はーい!」」」
「ちょわ~……」
雪合戦をしていたバクシンオー達に声をかけて初詣へ。
「欲しいものがあったら言ってね。買うから」
「それでは!まずは甘酒でも「その前にお参りね」分かりましたッ!」
「タキオンさん大丈夫ですか?」
「ひ、人混みが辛いねぇ……早く帰りたいねぇ……」
「もう少しの辛抱だ。頑張れタキオン」
アグネスタキオンがダウンする前にお参りを済ませ、出店で買うものだけ買って退散。後は部室で過ごすことになる。
「ちょわっ!見てくださいトレーナーさん!トレーナーさんのことが話題に出てますよ!」
「僕の?……ふ~ん、【話題の新人トレーナーの母校に直撃インタビュー!学生時代はどのように過ごしていたのか?】ねぇ」
「あれ?あんまり興味なさそうですね」
そりゃそうだ。仲の良い友達なんて1人ぐらいしかいなかったし。良い思い出も悪い思い出もあるわけじゃないし。今は僕の同級生にインタビューしている場面だ。
「特段思い出に残るようなこともなかったしね。ちなみに今インタビュー受けてる僕の友達だって子、別に関りがあるわけじゃないよ」
「えぇ!?し、知らないんですか!?」
「知らないってことはないけど、話したことはないよ。ただのクラスメイトだったし」
「えぇ~……」
この辺テレビはいい加減だな、と思いつつも屋台で買ってきたご飯をつまむ。特段困るようなこともないので放置だ。というか、仮にも僕の話題なのに何故僕のところにインタビューが来ないのか。
年明けはまったりと過ごす。次の戦いに向けて、英気を養うことにした。