夏合宿のトレーニングに励むサクラバクシンオー達。
「ねぇキタちゃん、ちょっといいかな?」
「どうかしたの?リッキーさん」
困惑した表情でキタサンブラックに尋ねるコパノリッキー。彼女が指を差した方向には──不思議な色に発光している高村がいた。
「……なんでキタちゃんのトレーナーさん緑黄色に発光してるの?」
何故人体が発光しているのか?どういう原理で光っているのか?色々と問い詰めたい気持ちを抱えるコパノリッキーだが、原因を聞いてみることに。キタサンブラックはあっけらかんとしていた。
「あ~、今日は緑黄色なんですね」
「え!?そんな反応なの!?もうちょっと驚いた方が良いんじゃない!?」
「目に優しい色だ。この前は赤色に光っていたからな」
「むしろ光っていることに疑問を持つべきじゃないかな!?」
キタサンブラックはいつものことなので気にしていないかのように、ドゥラメンテは天然なのかどうなのか分からない発言をする。なお、サクラバクシンオーは。
「簡単なことですリッキーさん!トレーナーさんは偉大なトレーナー、模範的な委員長です!偉大な相手が輝いて見えるのは当然のことなのですッ!つまり、トレーナーさんが光っているのも不思議なことではありませんッ!」
光っていることは偉大なことだと熱弁していた。むしろ、その内自分も光るだろうとサクラバクシンオーは自慢げに語る。偉大になっても物理的に光ることはないだろうと思わずにはいられないコパノリッキーだった。
「……ちなみに誰の言葉なんですか?それ」
「確か……タキオンさんが言ってましたね!」
「あの人が元凶かぁぁぁぁぁ!?」
「とりあえずトレーニングやるよ~」
自分の身体が発光していても気にすることなく進める高村トレーナー。コパノリッキーは諦めた方が良いのだと思い気にしないことにした。
「そうそう、ここでトレーニングするのだったら気にしないのが吉さ」
「いや、あなたの仕業なんじゃないかな!?」
「おやぁ?憶測で判断するのは良くないねぇ。私がやったという証拠でもあるのかい?」
「……普通にこのメンバーだったらタキオンさんしかいないと思うけど。生徒会にもよくしょっ引かれてなかった?」
「ぐうの音も出ない正論だねぇ!ま、発光は私のせいだから当たり前だが!」
頭を抱えるコパノリッキー。高村トレーナーのチームは大概癖が強かった。
今日も砂浜でトレーニング。日差しに気を付けながら走り込みに取り組んでいた。
「バクシンバクシーーーンッ!委員長のバクシンは砂浜でも止まりませんッ!バクシンバクシーンッ!」
「バクシンわっしょーーい!」
「バクシン、バクシン……!」
「ドゥラメンテちゃん、そんな切羽つまったような声を出さないでも」
「バクシンだねぇ」
サクラバクシンオーを先頭に、バクシンという掛け声で走る。高村はウマ娘達の体調を見ながら淡々と回数を数えていた。
(砂浜での走り込みはパワーを使う。パワーが不足している、ということではないけど、加速をつけるには必要なものだ)
ただ、パワー一辺倒ではない。スピードを持続させるためのスタミナに、最後の直線で競り合いに勝つための根性も鍛えている。特に、根性は一番不足しているステータスなので重点的に鍛えていた。
それと同時に、適性の方を見る。
(砂浜という環境に加えて、コパノリッキーが教えることでダートの適性も上がってるなぁ。今更ダートのレースに出走させる気はないんだけど)
バクシンオーのダート適性がわずかに上がっていた。まだまだレースで走るには物足りないどころじゃないレベルだが、一緒にトレーニングしていけばいずれは走れるようになるだろう、というのが高村の見立てである。もっとも、高村自身ダートのレースを走らせる気はなく、サクラバクシンオーが望まない限りは出走させる気もなかった。
ここで高村が気になったのは、適性の上がり幅である。
(よく一緒にトレーニングしているからか、キタサンブラックの方が成長のスピードが速いな)
キタサンブラックのダート適性の上がり幅が、サクラバクシンオー達と比べて少し抜けていた。この事に関して高村は、コパノリッキーとよく一緒にトレーニングしているからだろうと推察している。やはり既知の仲というのが大きいのだろう。自主トレでも2人は一緒になっていることが多かった。
もしかしたらキタサンブラックがダートのレースを走る未来もあるかもしれない。そんなことを思いながらサクラバクシンオー達を見守る高村。
「そろそろ休憩にしようか。みんなお疲れ様」
「い、委員長はまだまだいけますよ~!」
「まだいけても、体調を悪くするかもしれないから。まずは休憩ね。休憩が終わったらまた走り込み」
「分かりましたッ!休憩後も全力でバクシンですッ!」
サクラバクシンオーは元気よく返事をする。まだまだいけるといった感じだった。
「水分補給を忘れずにね。夏の砂浜だから普段以上に消耗しているから」
「分かりましたッ!……ところでトレーナーさん、ロイヤルビタージュースは持ってきていませんよね?」
訝しげな表情で高村を問い詰めるサクラバクシンオー。ロイヤルビタージュースを持ってきていないか警戒していた。余程飲みたくないのだろう。キタサンブラック達もサクラバクシンオーと同様に警戒している。高村は呆れた表情をしていた。
「別に飲ませる気はないのに」
「それでも!あの飲み物を常飲するトレーナーさんはどうかと思いますよ!」
「そうですそうです!体壊しちゃいますよ!」
「中になにが入ってると思ってるのさ君達」
実際のロイヤルビタージュースはそんな怪しい成分は入っていない……はずである。
夏合宿には他のウマ娘達も来ている。
〈ミツケタ!ミツケタ!〉
「……カフェのお友だちさん?」
高村の周りを嬉しそうにキャッキャと跳ねているお友だち。そんな高村達の下にマンハッタンカフェが近づいてきていた。
「お友だちが、急に飛び出したと思ったら、来ていたんですね、高村トレーナー」
「うん。マンハッタンカフェがいるということは、シンボリルドルフ達も?」
「はい。近くで、トレーニングしています。今は、ダイタクヘリオスさん達と、トレーニングしています」
マンハッタンカフェからの情報を聞いて、少し考え込む高村。
(合同トレーニングをお願いしてみるか?)
ただ、彼にとって気掛かりだったのはダイタクヘリオスがいることだった。ダイタクヘリオスはスプリンターズステークスで対戦予定の相手、向こうが断ったらどうするかと考えたが。
「お?ちゃんバクたちもトレしてんの!んじゃウチらともトレしようぜぃ!」
ダイタクヘリオスがテンション高くサクラバクシンオー達の下へとやってくる。高村の杞憂は秒で吹き飛んだ。
「っぱ大人数でトレすんのはアリよりのアリ!みんなで集まってフェスして、テンアゲでトレした方が効率も上がるってもんよ!」
「……というわけなんだけど、どうかな?高村君」
ダイタクヘリオスのトレーナーが不安げに高村を見る。元よりお願いする気だった高村は首を縦に振った。
「こちらからお願いしたいです。今日は一緒にトレーニングをしましょう」
「お?高ちー分かってるぅ!んじゃちゃんバクたち!ウチらに続け~!」
「ヘリオスさん達とのトレーニングも久しぶりですねッ!久しぶりのバクシンバクシーーンッ!」
ただ、少しばかり人数が多かったのでグループ分けでトレーニングをすることになる。サクラバクシンオーはマンハッタンカフェとメジロパーマー、そして最近シンボリルドルフのトレーナーのチームに加入したシュヴァルグランとトレーニングすることになった。
「あ、あわわ……」
「やや?緊張しているみたいですねシュヴァルさん。ですがご安心くださいッ!この学級委員長の笑顔を見ればたちまち元気になりますッ!にこーッ!」
「ま、眩しい……!」
「シュヴァルさんは、少し、気弱な方なので。あまり、刺激しないで、あげてください」
「ま、今日はよろしくねみんな!」
今日も充実したトレーニングを過ごしたサクラバクシンオー達である。
◇
夏合宿。とても充実した日を過ごせていますね!キタさんやドゥラさん、タキオンさんも強くなっていってます。委員長として誇らしいですよ!
「バクシンオーさん、ちょっといいですか?」
「ちょわ?どうしましたかキタさん。勿論構いませんよ!」
合宿所の部屋で寛いでいると、キタさんが質問をしてきました。その質問というのが、どうやら領域のことのようで。
「バクシンオーさん、どんどん強くなっていってますよね。領域に覚醒してから、ものすごく強くなってます」
「当然ですッ!私は模範的な委員長ですからねッ!私が誰よりも速く走ることで、後輩達も背中を追って強くなる!まさに好循環ですッ!」
際限なく強い相手を求めることも、トレーナーさんは良いことだと言っていました!このトレセン学園は競い合える子が多い、私にずっと挑んできてくれると。そう断言してくれました!だからこそ私はバクシンし続けます。みなさんと走るのが楽しいですからね!
ただ、キタさんは不安げな表情。悩みの種はどうやら他にあるみたいですね。
「どうかしましたか?キタさん。浮かない表情をしていますが」
「いえ……バクシンオーさん達を見ていたら、あたしも強くなれるのかなぁって。不安になっちゃったんです」
強くなれるかどうか、ですか。その答えは勿論決まっています!
「キタさんは強くなれますよ!この学級委員長が保証しましょう!」
「え?ど、どうしてですか?」
驚いた表情のキタさん。私が断言し切っていることに戸惑っているのかもしれませんね。ですが断言するのも当然のこと!
「トレーナーさんの指導は完璧!トレーニングについていってるキタさんは間違いなく強くなっています!きっと世代を代表するウマ娘になれますよ!」
「そ、そうでしょうか?……あんまり思い浮かばないなぁ」
「キタさん」
キタさんの目を真っ直ぐに見て、彼女の肩に手を置いて励まします。
「まずは自分を信じてあげることです。練習とは自信を積み重ねるためにあるものですから」
「自信を、積み重ねる……」
「はい。強くなるためのトレーニングの根本的なところに、自分はこれまで厳しいトレーニングを積んできたんだという自信を積み重ねることにあると私は考えています」
トレーニングは身体を鍛えるだけにあらず。自分にとっての自信を積み重ねる行為、精神を鍛える行為でもあります。トレーニングを疎かにすることは自信をなくすことに繋がる、ここぞという場面で力を発揮できなくなりますから。
「身体だけ立派になっても、心が弱くては意味がありません。身体と心の両方が備わって、初めて強いと言えるのです」
「身体と心、両方……」
「はい!まずは自信を持ちましょうキタさん!キタさんは間違いなく強くなっています!それは私達が保証しますとも!」
私にドゥラさん、タキオンさんだって思っています!キタさんは強くなっていると、自信を持って断言できます!
私の言葉を反芻するキタさん。やがて顔を上げて──
「委員長のお墨付きですよ?自信が持てるでしょう!」
「……はい!そうですね!」
キタさんは笑顔になりました。うんうん、やはりキタさんは笑顔が似合いますね!満点の笑顔です!
「それでは、明日に備えてもう寝ましょう……ドゥラさん達がまだでした!」
「ドゥラさんもそろそろ帰ってくると思いますよ。そしたら寝ましょうか」
「はい!明日もトレーニング漬けですからね。体力を回復しておきましょう!」
ドゥラさん達が戻ってきたのを確認して就寝します。後いくつ寝るとスプリンターズステークスですね!楽しみですとも!
明日はちょっとばかし用事があるので投稿できないかもしれません。