最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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夏合宿も終わっていつもの日々に。


スプリンターズSに向けて

 夏合宿も終わり、学園での日々が始まる。

 

「ありがとう、コパノリッキー。夏合宿の間は助かったよ」

「いいのいいの!私も良い刺激になったし、それに風水の魅力を教えることができたからね!また機会があったらよろしくね、高村トレーナー!」

「うん。その時はよろしく」

 

 夏合宿の間一緒にトレーニングしてくれたコパノリッキーと別れ、チームの練習に戻ることに。そして、夏合宿が明けたということは。

 

「バクシンオーはもうすぐスプリンターズステークスだね」

「はいッ!出走の時を今か今かと待ちわびていますよ!委員長の走りが時代最速であることを証明する準備は万端ですッ!」

「いつもみたいに自信たっぷりで安心できるよ。一応、他の出走者達のおさらいをしておこうか」

 

 ケイエスミラクルのキーンランドカップやニシノフラワーのアイビスサマーダッシュも終わったので良いタイミングだし。

 さて、まずは最重要で警戒すべきケイエスミラクルからだ。

 

「ケイエスミラクルは先日のキーンランドカップで勝利した。それも圧勝、およそ短距離重賞とは思えないほどの着差でね」

「あ、あたし知ってます!新聞の記事に載ってました!確か……7バ身差でしたよね?」

「そう。他に有力候補がいなかったとはいえ、キーンランドカップを7バ身差で優勝した。やっぱり彼女のスピードは抜けている」

 

 快速自慢が集う短距離戦でこれだけの着差をつけたのだから、ケイエスミラクルの力があの場でどれだけ突出していたのかは想像に難くない。彼女がスプリンターズステークス優勝における最大の障害だろう。

 

「映像も配信されているし、せっかくだから見ようか。すぐに準備するよ」

「分かりました!さて、ケイエスミラクルさんがこの夏合宿でどれほど強くなったのか、委員長が見定めてあげましょう!」

 

 ウキウキ気分でソファに座るバクシンオーである。

 

 

 そしてキーンランドカップの映像。メンバー全員で見ていたけど。

 

《ケイエスミラクルが今1着でゴールイン!圧倒的スピードだ、まさにモノが違う!桁違いの強さだケイエスミラクル!2着に7バ身差をつけての圧勝、スプリンターズステークスに向けて、凄まじい結果を出しました!2着は……》

「す、凄い……領域を使った気配なんてなかったのに」

「あぁ。実況の言葉を借りるが、まさに1人だけ桁違いだった」

「やっぱり、委員長君と同じ適性Sは伊達じゃないねぇ。ヘリオス君やルビー君みたいな相手がいなかったとはいえ、7バ身差勝利は突出しすぎている」

 

 みんなケイエスミラクルの強さを再認識したようだ。やってること凄いしね。バクシンオーはというと……身体を震わせている。多分、これは喜びの震えだね。というかそれ以外ないと思う。

 口を開かなかったバクシンオーだが、映像が終わって少しした後口を開く。

 

「なんと模範的なバクシンッッ!!花丸ですッ!」

 

 急な大声で他のみんなは驚いていた。

 

「やはりケイエスミラクルさんのスピードは素晴らしいですねッ!この学級委員長と()()のスピード……模範的なバクシンという他ないでしょうッ!彼女もまた、私と同じ学級委員長に間違いありませんッ!」

「学級委員長かどうかはともかく、実力は委員長君と遜色ないだろう。やはり、彼女が一番の敵なのは間違いないね」

 

 アグネスタキオンの言う通りだ。でも、バクシンオーなら。

 

「ですが、夏合宿を経て私のバクシンはさらに強化されましたッ!強化された私のバクシンにトレーナーさんのマネジメントがあれば、私はまさしく無敵!敵うものなしですッ!」

「相変わらず相当な自信だ!スプリンターズステークスが楽しみだねぇ!」

「そうでしょうそうでしょう!ハーッハッハッハッハ!」

 

 やっぱり、バクシンオーは揺らがない。相手が自分と同等の実力の持ち主だとしても、バクシンオーは絶対の自信をもって対処する。自分の勝利を微塵も疑わない、凄まじいメンタルの持ち主だ。これこそがバクシンオーの魅力なんだろう。

 続いてはニシノフラワーだ。アイビスサマーダッシュを無事に勝利した彼女。バクシンオーと一緒に新世代スプリンターと評価されている。

 

《ニシノフラワー!ニシノフラワーが突き抜ける!新潟の千直で蕾が花開く!ニシノフラワーが突き抜けた1着ゥゥゥゥ!》

「フラワーさんも凄いですよね!ちょっと陰に隠れがちですけど」

「今の短距離は群雄割拠、それでもバクシンオーに並ぶ評価を得ている。警戒すべき相手だろう」

「ドゥラ君の言う通りだ。確かにあまり目立ってはいないが、フラワー君も強敵であることに間違いはないよ」

「フラワーさんも良いバクシンですねッ!どんどん強くなっているようで私も嬉しいですよッ!」

 

 他にもヤマニンゼファー、ダイタクヘリオス、ダイイチルビーの映像を見る。彼女達は前哨戦を挟まずに出走してくるから実力は参考にならないけど、位置取りに関しては予測を立てられる。ダイタクヘリオスに関しては位置取りも何も逃げで走ることがほぼ確定だけど。

 今日は一日対策会議。スプリンターズステークスに向けての準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 なんというか、一日が過ぎるのが早い気がする。

 

「バクシンバクシーーーンッ!今日も委員長は絶好調!止まること知らずの大バクシンです!みなさんちゃんとついてきていますか!」

「勿論ですバクシンオーさん!バクシンバクシーン!」

「バクシーン」

「バクシン……慣れつつある自分が怖いねぇ」

 

 トレーニング。対策。仕事。1日が終わる。次の日はまたトレーニングから始まる。何だろう、今までと変わらない日々を過ごしているのに、楽しいって気持ちがあるから随分と気が楽だ。

 それでもやっぱり不安はあるもので。スプリンターズステークスで戦う強敵達のことだ。

 

(バクシンオーが認めた通り、ケイエスミラクルとバクシンオーは同等。勝てるかどうかは……本当に分からない)

 

 ステータス的にもほぼ差はないとみてもいいだろう。スタミナの値は長距離も走る分バクシンオーの方が上だが、スピードに関しては差がない。そして根性の値は、明確にバクシンオーが劣っている。賢さとパワーはほぼ同じだ。

 つまりまぁ、今回も勝てるかどうかは分からない勝負ということだ。

 

(……嫌だな)

 

 バクシンオーの勝利は信じている。でも、ステータスが見えるこのチートのおかげかせいなのか、心の底から信じることができない。良い面ばかりしかないと思っていたこのチートにも、悪いところはあったんだなと認識する。

 さてどうしたものか、と考えている時に扉が開く音が聞こえる。

 

「トレーナーさん、この学級委員長が一番乗りですッ!」

 

 バクシンオーがやってきた。いつものように一番乗りである。微笑ましく思いながら挨拶。

 

「おはよう、バクシンオー。今日も元気そうだね」

「当然です!父上や母上からもいつも元気だねと褒められましたから!私が元気になれば他のみなさんも元気になる、人を元気にするにはまず自分からッ!トレーナーさんも元気になったでしょう?」

「……否定はできないかな」

「それは良かったです!」

 

 う~んこの鋼メンタル。実際バクシンオーの笑顔を見て不安は無くなったから間違ってない。

 

「トレーナーさんは……スプリンターズステークスの研究ですか!いつも熱心にご苦労様です!」

「まぁ、これが仕事だからね。バクシンオーが勝つために、最善を尽くしたいから」

「成程……ですが心配はありません!私のバクシン的スピードとトレーナーさんの模範的な頭脳があれば、スプリンターズステークスの勝利は揺らぎませんッ!勝利は確実なものでしょう!トレーナーさんもどっしりと安心してレースを観てくださいッ!」

 

 ……本当に強い子だ。羨ましくなるほどに。

 

「本当に強いね、バクシンオーは」

「やや?私が強い……まぁそうですねッ!模範的な学級委員長、皆が憧れる存在ッ!私はそんな存在となるべく、ひたすらとバクシンしてきましたから!」

 

 だったら、僕ももうちょっと自信を持った方が良いかもしれないな。バクシンオーとまではいかないけど、ほんの少し自信を持とう。

 バクシンオーは笑顔を崩さない。崩さないまま、僕に頭を下げたっ?

 

「ありがとうございます、トレーナーさん!」

「……なにが?」

「私をここまで強くしてくれたことですッ!」

 

 バクシンオーに告げられたのは、感謝の言葉。

 

「私の要望を叶えてくれた、私の思うがままにバクシンさせてくれました。短距離で熱い勝負がしたいというワガママも、叶えてくれました!」

「短距離でバクシンしたいに関しては、僕がなんとかしなくてもダイタクヘリオス達がなんとかしたと思うけどね」

「それでもです!トレーナーさんは逐一私の要求を飲んでくれましたね?私がひたすらにバクシンできるようにと、私の勝利のためにずっと付き添ってくれました!」

「君のトレーナーだからね」

 

 バクシンオーはずっと興奮しっぱなしだ。とてもテンションが高い。

 

「次のスプリンターズステークス、きっと熱く楽しい勝負ができるでしょう。私の心が燃え上がるような、とてもドキドキするレースが!」

「……そうだね」

「トレーナーさんにはどっしりと構えていて欲しいです。ですが、わがままを言うならば!」

 

 両手でこぶしを握って、僕を見ている。

 

「どうか、私の勝利を信じていると一言おっしゃってください!こう、力がグワーッ!と湧き上がる感じがするのでッ!」

「……」

 

 なんだ、そんなことか。

 

「バクシンオー」

「はいッッ!」

「いつだって変わらないよ。僕は君の勝利を信じている……安田記念以外、口に出してはいなかったけどね」

 

 本当に安田記念以外は口に出していなかったな。もしかしたら、バクシンオーもちょっと不安に思っていたのかもしれないね。僕に信頼されてないって。実際はそんなことはないのだけれど。あ~……でも、僕あんまり表に出さないしな。これも反省だ。

 

「スプリンターズステークス。ケイエスミラクルを筆頭に凄く強いメンバーが集まっている。前評判では、過去最高レベルのメンバーって触れ込みだ」

「はいっ」

「勝てるかどうかは分からない。凄く厳しい勝負だ。安田記念以上に、難しい勝負を強いられるだろう」

「はいっ!」

()()()()、僕は君の勝利を誰よりも願い、信じている。君ならどんな相手にも勝てるって、誰よりも速くゴール板を駆け抜けて、時代最速を証明してくれるって──信じているよ

「~~~ッ!」

 

 ……なんかこっぱずかしいね。願わくばこれっきりにしたいものだ。バクシンオーはというと……歓喜に打ち震えているのかな?なにかに耐えるように身体を震わせて、やがて。

 

「トレーナーさんッッッ!!!」

「うわっ、ビックリした。なんだい?」

 

 目を輝かせて、いつも以上の調子で。彼女は嬉しそうに告げた。

 

「スプリンターズステークス、私は過去最高のバクシンをお見せしましょうッ!」

「うん」

「どっしりと構えて観ていてください!この学級委員長が──スプリンターズステークスを勝つ姿を!

「うん。いつもみたいに観させてもらうよ」

 

 バクシンオーとの話は終わる。アグネスタキオンといったメンバーが続々と集まってきた。いつものようにトレーニングをし、本番に備える。

 

 

 そして、スプリンターズステークス本番を迎えた。




次回 スプリンターズステークス
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