最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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決戦の日。


再・スプリンターズSをバクシン!

 中山レース場に集まったファン。秋のG1戦線、始まりを告げるレースでもあるスプリンターズステークスの日を迎えていた。

 

《晴れ渡る青空の下、中山レース場芝1200m。時代の最速を証明する戦い、スプリンターズステークスの日を迎えました!前回の電撃戦を制したのは無敗の三冠ウマ娘サクラバクシンオー。果たして今回の戦いを制するのはどのウマ娘か!》

《メンバーもさらに豪華になってのレースですからね。昨今では短距離路線にも注目が集まっているので、これは楽しみですよ》

 

 現在、短距離路線は注目を浴びており、その理由が出走するメンバーの豪華さである。

 名家として有名な【華麗なる一族】のダイイチルビー、最強マイラーとして名高いダイタクヘリオスにヤマニンゼファー、そして現役最強スプリンターとして評価を二分する【奇跡のウマ娘】ケイエスミラクル。彼女達の台頭に加え、下の世代からは桜花賞ウマ娘のニシノフラワー、なにより三冠ウマ娘にしてケイエスミラクルと同じく最強スプリンターと称されているサクラバクシンオーの存在があった。加えて、現クラシック級にも短距離やマイル路線で強いウマ娘が続々と現れてきており、さらに注目が集まっている。

 元々短距離路線はさほど注目されていなかった。やはり王道の中距離や長距離にファンは集まっており、それ以外は注目されず。しかし、著名なウマ娘が続々と現れてきたことで短距離戦の面白さに目覚めたファンが大勢いた。また、高松宮記念の勝負も外せないだろう。あの戦いはファンの間でも人気のレースの1つである。

 今回のスプリンターズステークスを制するのはどのウマ娘か?

 

「頑張れよ~サクラバクシンオー!」

「ケイエスミラクルかサクラバクシンオーか……他が勝っても全くおかしくねぇからな!」

「ルビー様~!頑張って~!」

「前回の悔しさを晴らしてくれヤマニンゼファー!」

 

 ウマ娘が続々とターフに姿を現す中、ファンは胸を高鳴らせていた。

 

《続いて入場してきたのはニシノフラワー!桜花賞ウマ娘、前走のアイビスサマーダッシュを制してこのスプリンターズステークスに出走!気合は十分、中山の舞台で蕾は花開くか?》

《サクラバクシンオーと同世代ですが、短距離の強いウマ娘ですからね。アイビスサマーダッシュを快勝して勢いに乗っています》

《さらにヤマニンゼファーも登場!安田記念ではサクラバクシンオーの2着と敗戦、リベンジを誓うそよ風!しかし、彼女の風はそよ風というにはあまりにも強烈、気づいたら吹き飛ばされてしまうでしょう!》

《今年は短距離に力を入れているとの情報でしたからね。高松宮記念も4着に入線していました。スプリンターズステークスではどのような走りを見せてくれるのか?》

 

 会場の熱気はどんどん上がって行く。最前列には高村達の姿もあった。

 

「す、凄い熱気ですね!春天やダービーにも劣ってないですよ!」

「それだけ注目されてるからね、今回のスプリンターズステークス」

「無敗の三冠ウマ娘の出走、奇跡のスプリンターに華麗なる一族……注目度は段違いだろう」

「マイラー最強格の2人、しかも片方は有マ記念でテイオー君を下した覇者だ。是が非でもみたいだろうねぇ」

 

 いつものスタンスで観戦する高村。出走するウマ娘のチェックをしていた。

 

《華麗なる一族のダイイチルビー!前々回のスプリンターズステークス覇者であり、短距離とマイル戦では目覚ましい活躍を残しています!中団から鋭く伸びる末脚は驚異の一言、油断をすればすぐさま置き去りにされるでしょう!》

《高松宮記念では3着、安田記念は4着と少し不満が残る結果か?このスプリンターズステークスで挽回したいところとインタビューで答えていましたね》

《さらにはダイタクヘリオスがターフに姿を現しました!メジロパーマーとの大逃げで沸かせた有マ記念は記憶に新しいでしょう!最強マイラー筆頭のウマ娘、中山の舞台に笑顔を届けるか!》

《彼女もサクラバクシンオーと同じでどこにでも出走してきますね~。しかも自滅覚悟の大逃げスタイルはかなりの人気を博しています。このスプリンターズステークスでも逃げてくれるでしょう》

「よっしゃお前ら~!今日もフェスってパリってんか~!?バイブスブチ上げ、夜まで続くぜパーリナ~イ!」

 

 テンション高くダイタクヘリオスが登場。会場の熱気はさらにアガる。

 

「一気にお祭りっぽくなったな」

「あ、あたしもあんな感じになればお祭りウマ娘として!」

「止めといた方が良いと思うよ」

「いぇ~い!ヘリたんアゲアゲでいこ~!」

 

 高村達の近くでダイタクヘリオスのトレーナーがこれまたテンション高く応援していた。高村はチラリと視線を移した後すぐにノートへと視線を落とす。

 入場してくるウマ娘達。ついに──大本命が姿を現した。

 

《そしてっ、ついに来ました!高松宮記念覇者、このスプリンターズステークスを制して現役最強スプリンターの名を手にすることができるか?春のスプリント王者ケイエスミラクル!儚げな印象からは想像もできないほどのスピードを叩き出す彼女、キーンランドカップの7バ身差圧勝で証明!奇跡のスプリンターが、この電撃戦に出走です!》

《実はスプリンターズステークスにはまだ出走したことがないんですよね。前回は体調不良で出走見送り、前々回は当日になって出走取り止めでしたから。これが初めてのスプリンターズステークスとなります》

《そしてもう1人、こちらも現役最強スプリンターとして名高い無敗の三冠ウマ娘サクラバクシンオー!恐るべきことに、たった1回の出走で現役最強の短距離ウマ娘と呼ばれるようになった彼女、ケイエスミラクルと評価を二分しております!距離不問のオールラウンダーはどのようなレースを見せるのか!》

《前回のスプリンターズステークスでの強さは見事でしたからね。シニア級のヤマニンゼファー相手に2と半バ身差で快勝、こちらも意気込みは十分ですよ》

 

 ケイエスミラクルとサクラバクシンオー。2人のスプリンターがターフに姿を現した瞬間、会場のボルテージは最高潮を迎えた。

 

「うおおおぉぉぉ!きたぁぁぁ!」

「ケイエスミラクルー!応援してるわー!」

「今日も気持ちの良いバクシンを見せてくれよー!」

 

 ファンに一礼するケイエスミラクル。笑顔で手を振るサクラバクシンオー。どちらも自信に満ちた表情をしていた。

 手を振るサクラバクシンオーに、ケイエスミラクルが視線を送る。

 

「ついに、この時が来たねバクシンオー」

「はいッ!高松宮記念からずっとずっと待っていましたよッ!」

 

 ケイエスミラクルの言葉にサクラバクシンオーは笑顔で返す。お互いに待ち望んでいた勝負に口角が吊り上がる。理由はきっと、楽しみだったから……()()()()()()()()()

 

「バクシンオー。今回のスプリンターズステークスは過去最高のメンバーらしいね」

「らしいですねッ!みなさんとても気迫のこもった、良いバクシンをする方々ばかり。油断をすればすぐに置き去りにされてしまうでしょう!」

「そうだね。ゼファーもそうだし、ルビーだって強い。ヘリオスも、フラワーも強い。みんな強い子達ばかりだ」

「違いありませんッ!そして──それはあなたも同じでは?ミラクルさん」

 

 気づけばヒリついた空気が流れている。表面上は笑顔の2人、しかしその間には……雷が走っているように見えた。

 

「……おれにはこんなの似合わないと思ってた。みんなに恩返しがしたいから、その気持ちでずっと走っていた」

「そうですか。それがあなたのバクシンですね!素晴らしいバクシンです!」

「うん、ありがとう……でも、今のおれは違うよ」

 

 鋭く睨みつけるケイエスミラクル。確固たる自信をもって、揺るぎのない信念をもってサクラバクシンオーに宣言する。

 

「おれはキミやルビー達に勝って──現役最強スプリンターとして君臨する。勝つのは、おれだ」

 

 ケイエスミラクルの宣言にサクラバクシンオーは……不敵に笑う。

 

「良いでしょう!私も全力をもってお相手しますッ!しかし、負ける気はありませんよ!」

 

 ポーズを決め、ケイエスミラクルだけではなく他の出走者全員に向けて言葉を発するサクラバクシンオー。

 

「決めましょうかみなさん!最もシンプルで、最も分かりやすいやり方で!時代最速を決める電撃戦を!誰よりも速くゴール板を駆け抜けることで!誰が時代最速の称号に相応しいのかを!」

 

 サクラバクシンオーは高らかに宣言する。自信に満ちた声で、自分の勝利を疑わない言葉で。

 

「そして!誰よりも速くゴール板を駆け抜け、私こそが時代最速のウマ娘であることを証明しましょう!私こそが驀進王であると!全てを従えて、私が最強であると証明しますとも!」

 

 サクラバクシンオーの宣言に他のウマ娘が──燃え上がる。大胆なまでの宣戦布告、ウマ娘としての闘争本能が刺激された。

 

「うっへっへ、テンションブチ上げマックスじゃんねちゃんバク、ミラてん!ゆーてウチも今の言葉でアドレナってんぜ~!」

 

 ダイタクヘリオスが笑顔で燃える。

 

「フフ、ミラクルさんをあそこまで燃え上がらせるなんて……罪な俄風。ですが、私とて負ける気はありません……この中山に、烈風を刻みましょう!」

 

 ヤマニンゼファーが静かに、されど鮮烈に滾る。

 

「積み上げてきた努力は、この時のため!もう絶対に負けません!」

 

 ニシノフラワーが決意を固める。

 

「華麗であれ。至上であれ。常に最たる輝きを……この中山を、ルビーの輝きで満たしましょう」

 

 ダイイチルビーが矜持を固める。

 ヒリついた空気にサクラバクシンオーは嬉しさを抑えきれずにいる。

 

(楽しい勝負になるでしょう。私が待ち望んだ勝負、熱い勝負ができる!)

 

 思い出すのはトレーナーである高村とのやり取り。サクラバクシンオーの勝利を信じているという言葉を思い出す。

 

(トレーナーさんが私の勝利を信じている。キタさん達が私の勝利を信じている!故に私は負けませんッ!相手が誰であっても、バクシンして勝利を掴み取るのみッ!)

 

 サクラバクシンオーは揺らがない。必ず勝つと意気込んでレースへと臨む。

 

 

 ウォーミングアップを終えたウマ娘達。ヒリついた空気のままゲートへと足を運ぶ。

 

《緊迫した空気の中、ウマ娘達が続々とゲートに収まります。絶好の良バ場日和、力を発揮するにはもってこいの舞台!1番人気サクラバクシンオーは大外の8枠、差がない2番人気ケイエスミラクルは真ん中4枠からの発走!ニシノフラワーにダイイチルビーもゲートに収まります》

《過去最高レベルと称されるこのスプリンターズステークス。誰が勝つのか全く予想ができませんね。1200の電撃戦を制するのはどのウマ娘になるのか?一瞬たりとも目が離せませんよ!》

 

 最後のウマ娘がゲートに入る。中山レース場は静寂に包まれていた。

 

《最後のウマ娘がゲートに入りました。時代最速を決める秋のスプリント戦。瞬き厳禁、一瞬の勝負!》

 

 誰かの息を呑む音が聞こえそうなほど静かな空間。静寂を切り裂いて──ゲートが開く音が響き渡る。ウマ娘達が一斉に駆け出す。

 

《最速の電撃戦が今ッ!幕を開けました!スプリンターズステークス開幕です!やはり飛び出したダイタクヘリオス!大外からサクラバクシンオーもすさまじいスタートを切ったぁ!出遅れはありません綺麗なスタート!》

 

 スプリンターズステークス、開幕。




開幕のスプリンターズステークスでござい。
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