最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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バクシンオー編最終回


驀進街道

《春のスプリント王者ケイエスミラクルを!クビ差で下したサクラバクシンオー!6番手から全員抜き去った!そしてそして!これだけの激闘!当然のレコード勝ち!やはり時代最速の称号はこのウマ娘にこそ相応しい!そう思わせるだけの走りを見せてくれました!さらにサクラバクシンオーはスプリンターズステークスを二連覇!凄まじい強さです!》

《ケイエスミラクル達も良い走りだったんですけどねぇ。しかしこれはサクラバクシンオーがただただ強かった!》

「うおおおぉぉぉ!よくやったぞバクシンオォォォォォ!」

「めっちゃ熱い勝負だった~!」

 

 サクラバクシンオーのレコード勝ちで決着したスプリンターズステークス。勝者であるサクラバクシンオーはキョロキョロと辺りを見渡すと──己のトレーナー、高村を発見する。

 

「ッ!トレーナーさ~ん!やりましたよ私ッ!これで時代最速ですよ~!」

 

 手を大きく振って高村の反応を待つサクラバクシンオー。次いで、バクシンオーの表情が驚きに包まれる。

 

「おめでとう、バクシンオー」

 

 薄く微笑む高村の目には──しっかりと、目に光が灯っていた。生気が宿っていたのだ。

 嬉しさを隠しきれないサクラバクシンオー。大急ぎで高村の下へと駆けつける。

 

「トレーナーさんッッ!!」

「うわっ、ビックリした。ビックリしてばっかだな僕」

 

 満面の笑みで、サクラバクシンオーは高村へと報告する。

 

「とても嬉しそうですねッ!」

「……まぁね。君が勝ったから凄く嬉しいよ」

「目に光が灯りました!誰の目から見ても分かるぐらいにッ!」

「まだ気にしてたの?ソレ」

 

 苦笑いを浮かべる高村だが、大して気にしていない。笑顔を浮かべるサクラバクシンオーの前で、無粋な発言をする気はなかった。

 そんなやり取りの裏で、負けたケイエスミラクルは……ターフに大の字で寝転がる。

 

(あぁ、負けちゃったな)

 

 時代最速の称号をかけた戦いに、自分は負けた。その事実を受け入れるが……涙よりも先に笑いが込み上げてきた。

 

「あぁ……悔しいなぁ……負けちゃったなぁ……!」

 

 晴れ晴れとした気持ち、負けたというのに、悔しさよりも先に勝負に対する満足感が先に来た。それほど熱い勝負だったということであり、なにより。

 

次は勝たないとね……!」

 

 サクラバクシンオーへのリベンジを誓う。次戦う時はもっと強くなろう、もっと速くなろう。次戦う時も同じくらい、もっと熱い勝負ができるという確信がケイエスミラクルにはあった。

 ダイタクヘリオス達もケイエスミラクルと同じ気持ちを抱いている。

 

「あ~くやC~!けどガチめにボルテマックスファイヤーな勝負だったし!次は勝つべ!」

「……ハァ。まだまだ天風には至らずですか。課題は山積みですね」

「次……ドリームトロフィーでは、誰にも負けない速さを手に入れましょう」

「あうぅ~……で、でも!まだまだリベンジの機会はたくさんあります!今度こそバクシンオーさんに!」

 

 誰も諦めていない。サクラバクシンオーというウマ娘にリベンジするために、すでに前を向いていた。

 

 

 いの一番にトレーナーへと勝利を報告したサクラバクシンオー。ターフへと戻り、観客に向かって手を振っているとケイエスミラクルが近づく。

 

「バクシンオー」

「やや?ケイエスミラクルさん!どうかされましたか?」

「そうだね……え~っと、なんて言えばいいかな?色々と言いたいことはあるんだけど」

 

 首を傾げ、なんとか言葉をまとめようと拙いながらも言葉を紡ぐ。

 

「まずは、おめでとう。やっぱり強いね、バクシンオーは」

「当然ですッ!私は模範的な学級委員長ですからッ!後は背中を見せて後進を育てる系委員長なので!」

「?そうなんだ。えらいね?」

「えぇッ!」

 

 良く分かっていないケイエスミラクルだが、サクラバクシンオーの勢いが凄いので乗っかることに。上機嫌なサクラバクシンオーは何かに気づいたように手を叩く。

 

「ですが!ケイエスミラクルさん達もお見事でした!私に勝るとも劣らないスピード、少しでも気を抜けばやられてしまっていたヒリつく勝負ッ!私の心は高鳴り、胸が躍るとても素晴らしい勝負でしたッ!」

「……そうだね。おれ達も同じ気持ちだよ」

「はいッ!なので」

 

 不敵に笑うサクラバクシンオー。お互いになにを言いたいのか分かっているのだろう。ケイエスミラクルもまた、同様に笑う。

 

()()()()、共にバクシンしましょうッ!」

「うん。()()負けないよ、バクシンオー」

 

 お互いに拳を突き合わせて再戦を誓う。そんな2人にダイタクヘリオスがやってきた。

 

「あー!ミラてんもちゃんバクもずり~!ウチも混ぜて混ぜて!」

「毎度、騒がしい御方です。素直に入ればよろしいものを」

「それがヘリオスさんの良さですから♪」

「わ、私も!私も次こそは負けませんから!」

 

 気づけば他の出走者達もやってくる。その光景にサクラバクシンオーは、満足感を得ていた。

 

「えぇッ!次も私がバクシン的勝利を収めましょうッ!みなさん次のレースでもよろしくお願いしますねッ!」

 

 サクラバクシンオーの宣言に、ケイエスミラクル達は──笑顔で答えた。

 

「「「うん(はい)!」」」

 

 スプリンターズステークス。サクラバクシンオーのレコード勝ち。

 

 

 

 

 

 

 レース後部室にて。みんなで祝勝会をすることにした。なんだかんだ三冠を制して以来やってない気がする。

 

「バクシンオーさんのスプリンターズステークスレコード勝ちを祝して~、かんぱ~い!」

 

 キタサンブラックの乾杯の音頭で始まる祝勝会。急遽決まったことなので飲み物ぐらいしかないのがちょっと申し訳ない。

 

「やっぱりバクシンオーさんは凄いですね!レコード勝ちですよレコード勝ち!」

「えぇ!私の委員長力は止まることを知らずッ!模範的なバクシンをすればキタさんもいずれは同じ高みへと至れますよッ!」

「……模範的なバクシンとは?」

 

 アグネスタキオン、もうそれにはツッコまない方がいいと思う。

 

「しかし、バクシンオーのレースにはいつも学びがある。ただバクシンするだけじゃない、常に思考を張り巡らせてレースをしているわけだからな」

「ま~当然ですね!ドゥラさんも私の後ろをしっかりとついてきてくださいね!」

「あぁ。だが、後ろをついていくだけではない……いずれはあなたを超える気概で挑ませてもらう」

「勿論ですッ!ただ憧れるだけは誰でもできますからね!そうでなくては!」

 

 後進の育成にも余念がないバクシンオーだ。キタサンブラックも今の言葉をしっかりと反芻して活かそうとしているね。アグネスタキオンは……いつも通り我関せず。そういえば。

 

(将来を見据えてVRウマレーターを多めに使いたい、って言ってたな。申請しとかないと)

 

 大人気だからね、VRウマレーター。用途によっては優先的に使用できるかもしれないけど、望みは薄だ。早めに申請しておこう。

 後はチームメンバーか。入りたいって子が最近出てきたなそういえば。

 

(2人……まぁ余裕はあるから大丈夫だと思うけど)

 

 いずれはちゃんと挨拶をしないとね。チームのこととか色々と教えて、その上で納得したらチームに加入になるだろう。バクシンオーやキタさんがいるからコミュニケーションに関しては問題はないだろうし。

 

「トレーナーさんッ!」

「どうしたの?バクシンオー」

 

 気づけばバクシンオーが笑顔で迫っていた。いつも思うけど近いな。

 

「ありがとうございます!」

「……ここまで一緒にバクシンしてくれて?」

「はい!やはりトレーナーさんは素晴らしいトレーナーですッ!」

 

 バクシンオーは声高に語る。僕が凄いトレーナーであることを。こっぱずかしいから止めて欲しいんだけど、気分良さそうにしてるし邪魔するのもなんだかな。

 

「……なので!次は秋シニアの三冠を、っとと」

 

 バクシンオーがふらつく。慌ててキタサンブラックが駆け寄った。

 

「今回のスプリンターズステークスは激戦だったからね。多分だけど、秋の天皇賞までには間に合わないと思う」

「な、なんと!?ぐぬぬ~!……ですが仕方なしッ!ケイエスミラクルさん達との勝負はすさまじいものでしたからッ!ここは我慢しましょうッ!」

「そうしてくれると助かるかな」

 

 バクシンオーは分かってくれたのか、元気よく頷きながらはいと答えた。これで一安心、かな?

 

 

 全員が帰った後、トレーナー室で1人残り作業を進める。今やっているのは、ネットの記事のプリントアウト。書かれているのは勿論、スプリンターズステークスの記事だ。

 

「明日は朝一で新聞を買いに行かないと。忙しくなりそうだ」

 

 ちょっとウキウキしながらスクラップブックの作成に勤しむ。我ながら、よく変わったもんだ。間違いなくバクシンオーのおかげだろう。

 

(……前世でずっと育成していたのも、きっと彼女が推しだからなんだろうな)

 

 彼女の底抜けの明るさに、どこまでも真っ直ぐな姿に憧れに近い感情を抱いていたのだろう。僕はただ仕事をこなすだけの人間だったから、なおさらバクシンオーの姿が眩しく見えたに違いない。生ける屍……ゾンビじゃないか。ゾンビなのは目だけで十分だよ。

 ただ、今の僕が担当しているのはバクシンオーだけじゃない。アグネスタキオンにキタサンブラック、ドゥラメンテがいる。後は、加入するか分からないけど2人のウマ娘。彼女達のレースもサポートしていかないとな。

 

「交友関係も随分と広くなった。シンボリルドルフのトレーナーさんにギャルトレーナーさん、後はミホノブルボンのマスターさん」

 

 他にも色々といる。ちょっとテンションの高い新聞記者さんとか諸々。ライスシャワーのトレーナーは……なんていうか、不思議なほど接点がない。彼にトレーニングのことを教えたっきり会ってない気がする。

 

「向こうとしては僕達のこと苦手だろうしね……菊花賞のことがあるし」

 

 これから先のことを考えるとワクワクが止まらない。これが生き甲斐ってヤツなんだろうな。うん。

 

「……久しぶりに、両親やアイツにも会ってみようかな?」

 

 随分長いこと帰ってないから、両親には驚かれそうだ。アイツに関しては僕の唯一の友達である。僕とは真逆のアグレッシブさがあるからまぁ元気にしているだろう。

 

 

 スクラップブックを作成しながら未来のことに思いを馳せる。明日もきっと、良い日になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 次の日。またバクシンオーが誰よりも早くトレーナー室へとやってきた。

 

「トレーナーさん!おはようございます!」

「うん、おはよう。今日も早いね」

 

 2人っきりでの会話が始まる。

 

「トレーナーさん、色々とありましたねッ!」

「そうだね……三冠の挑戦に、短距離に戻ったこととか。色々とあったもんだ」

「えぇッ!ですがこの道筋には、トレーナーさんの存在が必要不可欠でした!」

 

 自信満々に、そう言い放つバクシンオー。ちょっと照れくさい。

 

「何度でも言いたくなりますねッ!あなたはとても素晴らしいトレーナーだと!」

「本当に何回も言うね。何回目?」

「分かりませんッ!ですが何度言ってもいいものですから!」

 

 違いない。

 

「これからもきっと、強い相手との勝負が待っているでしょう。勝てるかどうか分からないギリギリの勝負の連続です」

「……だろうね。けど」

 

 もう迷わずに言える。自信をもって言える。

 

信じるさ。君の勝利を、君のバクシンを、ね」

「ッ!はいッ!どこまでも、いつだって信じていてください!」

 

 バクシンオーは笑顔でポーズを決める。いつもの慣れ親しんだポーズだ。

 

「なぜなら私は──最速無敵のバクシンオーですから!




次はアグネスタキオン編……なのですが。新時代の扉を見てから書くかどうか迷いどころさん。とりあえず番外編書いて次の作品のリンクを貼り付けると思います。この作品はあくまでバクシンオー編なのでね。


色々とやらかしてしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました!次のアグネスタキオン編も読んでくださると嬉しいです!
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