高村が担当しているチームの部室。
【議長】と書かれた机上札を持ち、サクラバクシンオーは高らかに告げる。
「それではッ!我がチームの名前は【バクシン!苫小牧】でいきましょう!」
「ちょっとお待ちなさいな」
そう。サクラバクシンオー達は現在、チームの名前を決めようとしていた。
◇
バクシンオー達が会議をしている横で仕事をしているんだけど、チームの名前って重要なのかな?ドゥラメンテとかアグネスタキオンとかはそこまで興味を持ってないけど。
「やはりチームの名前は必須でしょうッ!」
「そうです!こう、なんか、テンションが上がります!後、分かりやすいです!」
バクシンオーとキタサンブラックの言葉によって、名前を決めることになった。新たに入ってきた2人のウマ娘と一緒に。
「えぇ、確かに私はチーム名はなんでもいいと仰いました。ですが、いくら何でもその名前は無しではなくて?率直に言ってダサいですわ」
「んな!苫小牧ディスですか!?そんなの許しませんよ!」
「別に苫小牧を愚弄しているわけではありません。ただ、シンプルにダサいと言ってるのです」
議論が白熱しているなぁ。
新規入部した内の1人はジェンティルドンナ。どういう子なのかはよく知らない。ただ、ある時このチームの門を叩いて彼女は言った。
「私の強さをより引き出すのに、あなたが最適と判断しました。私のお願い、無下にはしませんわね?」
「担当契約?いいよ」
そんなわけでチームに加入したジェンティルドンナ。これで5人目である。
入部したのはもう1人いる。ホッコータルマエだ。
「私、地元を盛り上げたいんです!だからお力添えをいただけませんか!?」
「契約?いいよ」
彼女の地元でもある苫小牧。そこのローカルアイドル?というのをやっているらしい。彼女にハスカップやホッキ貝等色々と頂いたのだがどれも美味しかった。個人的に注文するのもアリかもしれない。
ジェンティルドンナとホッコータルマエ。新たに2人のウマ娘が入部して、ついに担当ウマ娘が6人となった。こんな大所帯になるとは思わなかったが、冷静に考えるとまだ大人しい方か。
(最初の担当、バクシンオーが無敗の三冠を獲ったわけだし。注目度的にはかなり高いらしいしね)
これは他のトレーナーさん達からの言葉。実感はないけど、シンボリルドルフのトレーナーさんはかなりの人気だって聞くし、三冠ウマ娘のトレーナーというのはやはり人気なのだろう。
6人に増えたチーム。最初にやることは……チームの名前決めである。それでいいのだろうか?
(バクシンオー達が決めたことだから文句はないけど、大丈夫なのだろうか?)
というかバクシン!苫小牧って。僕もなんでもいいとは言ったが、さすがにそれはあんまりじゃないだろうか?
「おかしいですね?我々の象徴であるバクシンとタルマエさん希望の苫小牧を合わせた完璧なネーミングだと思ったのですが」
「待ちたまえ委員長君。勝手にバクシンを我々の象徴にしないでいただけるかな?」
「でもタキオンさん、あたし達といえばバクシンじゃないですか?」
「……否定したいけど、委員長君のインパクトが強すぎて否定ができない」
うん、確かにそうだね。いざ僕のチームの象徴は?って聞かれたら多分バクシンって答えると思う。みんなも納得したような表情してるし。
「なら、バクシン!苫小牧は完璧だと思います!チームの象徴であるバクシンと、苫小牧!これほどしっくりくるネーミングはありません!」
「ですからダサいと申し上げているのです。何故その2つを掛け合わせる必要があるのですか?なにも無理矢理使う必要はないでしょう?」
「こういう細かいところから苫小牧をアピールしていかないといけませんから!」
まぁ……インパクトはあるけど。でもさ、いざインタビューされる時のことを考えるとさすがに嫌だな。
「考えてごらんなさい。我々がインタビューを受ける時、バクシン!苫小牧のみなさんです、と紹介されるのですよ?私はごめんですわ」
ジェンティルドンナの言葉に全員が沈黙した。考えてみたらそうだ、と思っているのかもしれない。
「う~ん、何がいけなかったんでしょうか?」
「安易に2つを掛け合わせたからじゃないかな」
「うぅ~、完璧なネーミングだったのに~」
「ホッコータルマエ、さすがに無理があったと思うよ」
こうして第一案である【バクシン!苫小牧】は没となった。ホッコータルマエはそこまで残念に思わなくても。
その後も会議は進む。
「他のチームは、星を由来としている。シリウスや、レグルス……星の名前がモチーフになっていることが多い」
「だったら、我々もそれに倣うのが通例、というヤツだろうねぇ」
他のチームは星を由来にしている。それに倣うというドゥラメンテの案は悪くない。
「それでは!早速図書室で星の本を借りてきます!バクシンバクシィィィィィン……」
行動が早いなぁ。そしてすぐ戻ってきたし。
「お待たせしましたッ!では、いい感じの名前を決めていきましょう!」
本を広げ、全員で覗き込む。微笑ましい光景だ。
「……多すぎるな。当然だが」
「星の数なんて数えきれないからねぇ。それに加えて」
「名前の由来とか意味まで考えたら明日の朝までかかっても終わりませんよ~」
「ま、こうなって当然ですわね」
ジェンティルドンナは分かっていたのだろう。闇雲に考えたところで時間だけが過ぎていくと。結構冷静な子だな、ジェンティルドンナ。
あーでもないこうでもないと試行錯誤をするバクシンオー達。けど、あまり良い案は思い浮かばなかったみたいで。
「ちょわ~……難しいですね、チーム名を決めるの」
「これだ!って感じの名前が決まりませんね。星の意味とか知っちゃうと、どうしても考え込んじゃいます」
「願いを込めたくなるからな。難しい問題だ……」
「なんでもいいと言ったのは、こうなることが予見できたからだねぇ。結局、回避できなかったわけだが」
「……今からでもバクシン!苫小牧に」
「却下ですわ」
ホッコータルマエ、名残惜しそうにしてるけどいい加減諦めなよ。全員から否決食らうことになるよ。いや、バクシンオーは肯定してくれそうだけど。
「ふぅ、このままでは埒が明きませんわね。トレーナー?」
「なにかな?」
急に指名されたからビックリした。ジェンティルドンナは妖艶な微笑みでこちらを見ているけど、嫌な予感しかしない。
「ここはあなたのチーム。ならば、あなたがチーム名を決めるのが道理。違いますか?」
「……なんでもいいんだけど。僕は拘りないし」
「そうは言うが、我々も半分は拘りがないんだ。かといって、これ以上時間だけを浪費するのはよろしくない」
気づけば全員が僕を見ていた。うん、全会一致というヤツだね。
「ここはトレーナーさんにビシッ!と決めてもらいましょうッ!」
「よろしくお願いします!丸投げしちゃいますけど……これ以上あたし達では決められそうにないので!」
「君ならば任せられる。頼んだ」
「バクシン!苫小牧も捨てがたいですけど……捨てがたいですけど!」
そんな未練がましく見ないで欲しい。
それにしてもチーム名、チーム名……。
(あんまり思い浮かばないな。アプリとかだとシリウスや、アルケスなんて名前だった気がする)
期待の籠った目で見てるけど、応えられるかどうかは不明だよ。チーム名、チーム名か……。
「……【流星】の意味を持つ、ミーティアで良いんじゃない?」
必死にひねり出したけど、もうこれでいいんじゃないかな?別に天体の名前に拘る必要はないわけだし。某種が思い浮かぶけど。
さて、評価はというと。
「素晴らしいと思いますッ!」
「いいと思います!」
バクシンオーとキタサンブラックは即肯定。この2人は基本こうだね。
「私も賛成だ。流星……成程な」
「現時点ではかなりマシだ。賛成させてもらうよ」
ドゥラメンテとアグネスタキオンも賛成、と。これですでに過半数だけど。
「私もそれで構いませんわ。これ以上時間を浪費するわけにはいきませんもの」
「な、名残惜しいですけど……!トレーナーさんが決めたことなら!」
ジェンティルドンナも賛成、ホッコータルマエは……ギリ賛成で良いだろう。ということで、決まりだ。
「それじゃあ、【チーム・ミーティア】で行こう。理事長にもそう伝えておく。トレーニングはまた明日にしようか」
そもそも今日は休みなんだけどね。一応伝えておかないと。
「いや~、これからが楽しみですね!」
そうだね、バクシンオー。
後日、秋川理事長にチームの申請書類を提出した。
「うむっ!良いチーム名だ!これからも君の活躍、期待しているぞ!」
「トレーナー生活、楽しく過ごしてくださいね。高村トレーナー」
「?はい。勿論です」
理事長達は凄くニコニコした様子で僕を見ていたけど、なんだろうか?
我慢できずに聞いてみると、どうも僕が楽しそうにトレーナーをしているのが嬉しかったらしい。こうしてチームを持つようになって良かったと。まぁチームを結成するまでの早さに驚いていたけど。
新たに2人のメンバーを加えたチーム・ミーティア。うん、頑張っていこう。