最速×無敵=驀進王   作:カニ漁船

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続きダヨ


続・天皇賞・春をバクシンリベンジ!

 春の天皇賞は1周目のホームストレッチに入っている。先頭を走るのはバクシンオー、ゲフリーレンはバクシンオーに競りかけることを止めたのか、ライスシャワーとビワハヤヒデの位置に控えるみたいだ。いくらバクシンオーを自由にさせたくない、逃げさせたくないと思っていても、それで勝てないほどに潰れてしまったら本末転倒だから。勝利のためには仕方ない選択肢だった、というのが僕とタキオンの見解だ。

 

「そもそも、スピードの絶対値が違いすぎるからねぇ。委員長君のスピードは出走者どころか学園でも飛びぬけている。勝てるウマ娘なんてそれこそ一握りだ」

「強者らしく全てを正面から粉砕する……悪くありませんわね」

「ただ、懸念すべきなのは。ライスシャワーとビワハヤヒデから集中的にプレッシャーをかけられてる、ってことだね」

 

 ライスシャワーに加えて、ビワハヤヒデからも相当なプレッシャーを受けている。バクシンオーにはあまり効いてないけど、全然というわけじゃない。

 

「3200mの長丁場で終始プレッシャーをかけられる。バクシンオーにかかる負担は相当なものだ。かなりのスタミナを削られるだろう」

「で、でもでも!バクシンオーさんなら大丈夫!頑張れ~!バクシンオーさ~ん!バクシンバクシーーン!」

「私はむしろライスさんの圧をまともに受けても普通に走ってるバクシンオーさんが怖いですね」

 

 それは本当にそう。メジロマックイーンやトウカイテイオーですら屈しそうになった圧なのに、バクシンオーは普通に走ってるからね。凄まじいメンタルだ。

 

《まもなく第1コーナーに入ります。先頭を走るのはサクラバクシンオー、サクラバクシンオーが快調に飛ばしています。ただ、少しペースを落としているか?2番手は半バ身差変わらずライスシャワー、外にビワハヤヒデ。続くようにゲフリーレンです》

《ゲフリーレンは競りかけるのを止めましたね。分が悪いと察したか?》

《縦に長くなったバ群、後方集団にはナイスネイチャとマチカネタンホイザ。後ろから2番目、マチカネタンホイザから2バ身離れてナリタタイシンが控えます。最後方はナリタタイシンからさらに3バ身遅れてジャカルタファンク。さぁ先頭サクラバクシンオーは第1コーナーに入ります。先頭はサクラバクシンオーだ》

 

 駆け抜けるバクシンオーを見つめる。迷いはない、ただ、彼女の勝利を信じていればいい。バクシンオーは、必ず勝つと。

 

 

 

 

 

 

 さて、第2コーナーを越えても競りかける気配はなし、ですか。では、このままのペースを維持しましょう!模範的な走りは委員長の得意分野ですから!

 ただ、少々まずい状況なのは変わりありませんね。

 

(ライスさんの圧に加えて、ハヤヒデさんも加わっています。スタミナを地道に削られていますね)

 

 問題はありません、と言いたいところですが。さすがにすべてを無視できるわけではありませんから。ライスさん達の圧は確実に私を蝕んでいます、影響は0じゃありません。

 まぁこの状況でも勝つのが私、サクラバクシンオー!委員長の走りは天下無敵、誰にも負けない最強の走りです!

 

《向こう正面に入ります。先頭はサクラバクシンオー、サクラバクシンオーが変わらずハナをキープしている。ゲフリーレンは何とか競り合おうとするか?ペースを上げている。ライスシャワーとビワハヤヒデこれにはつられない、サクラバクシンオーのマークを絶やさない様子》

《確実にスタミナを削っていますね。万全のサクラバクシンオーをそれほど脅威に見ているのでしょう。ゲフリーレンの動き出しも想定内か?》

《後方でも動きがあります。最後方2番手ナリタタイシンが徐々に位置を上げてきた。続くように後方で待機していたウマ娘達が差を詰めてきたぞ。少しずつペースが上がり始めます天皇賞》

 

 大阪杯ではブルボンさんの前からのプレッシャー。この天皇賞ではライスさん達による後ろからのプレッシャーですか!えぇ、もちろん構いません。存分に警戒してください。

 

(警戒されるのは私が模範的な委員長である証拠!みなさんが私を模範としているということです!)

 

 ま~当然でしょう!私のペースは完璧、レース運びも最高ですから!みなさんが私に注目するのもまた当然のことです!

 どれだけマークされようが構いません。私のスタミナを、存分に削っていただいて構いません。徹底的に自由にさせなくても、もちろん構いません。

 

「私は全てバクシンして勝つだけ!バクシンは全てに通ず!バクシンバクシンバクシンシーーン!!」

 

 私のバクシンはとどまることを知らず!誰にも止めることなどできませんよ~!

 

「こ、ここでペースアップ!?ふざ、けっ」

 

 やや、まだ本気のペースアップではありませんが……まぁいいでしょう。

 

 

 気がかりなのは……やはり、ライスさん達がどこで仕掛けてくるか?ですね。

 

(ロングスパートを仕掛けるならばそろそろ、第3コーナーの手前辺りが無難でしょうか?)

 

 ……まぁいいでしょう!最終的に全てバクシンすればいいわけですから!

 第3コーナーが見えてきました。さぁ、委員長に続いてくださいね!

 

 

 

 

 

 

 ライスシャワーは改めて感じていた。サクラバクシンオーというウマ娘の強さを。

 

(効いているけど、微々たる差。これまでとは全然違う!)

 

 ライスシャワー自身、多少なりとも自信があった。メジロマックイーンやトウカイテイオーにも通用したプレッシャー、サクラバクシンオー相手にも発揮できると思っていた。

 だが、サクラバクシンオーは揺らがない。絶対の自信と気迫をもって走り続けている。どれだけ自分がマークしようが、ビワハヤヒデが揺さぶりをかけようが決してぶれない鋼のメンタル。崩れることなく先頭を走り続け、ほぼペースを乱していない。これが……自分が追いかけてきた相手、最強の姿なのだと実感する。

 

(……負けない、絶対に!)

 

 それでも、ライスシャワーは背中を追いかける。否、追い越す気で走っている。最後にはサクラバクシンオーを出し抜き、自分が勝利してやるという気概を見せている。

 

「ついてくついてく……バクシンオーさんについていく!!」

 

 第3コーナーを迎える勝負。3200mの長丁場もここまで来た。

 

《第3コーナーへ入ります。2周目の、内回りの第3コーナーを曲がっていく各ウマ娘。先頭サクラバクシンオーを追いかける12人のウマ娘達。ゲフリーレンが2番手に躍り出ました、一番外にゲフリーレンサクラバクシンオーに並ぼうとしている。その差が1バ身になった3番手ライスシャワー外ビワハヤヒデこちらは変わらず。後続も差を詰めてきたぞ、最後の勝負所に向けて位置を整えている!》

 

 ライスシャワーも揺らがない。ベストのタイミングを見極め、サクラバクシンオーを出し抜くチャンスを狙う。

 

 

 ライスシャワーの隣を陣取り続けていたビワハヤヒデは、初めて戦うサクラバクシンオーに驚嘆していた。

 

(やはり、いざ戦うとその強さに驚かされる。これがトゥインクル・シリーズ最強の驀進王か!)

 

 ビワハヤヒデの心が高鳴る。強敵との戦いに心が躍り、勝つためにはどうすればよいのかをプランニングする。

 

(勝利の方程式は整っている。後は、ライス君をどう攻略するかだ)

 

 同じくステイヤータイプのウマ娘。分があるのは彼女の方だろうと冷静な分析をする。ただ、勝てないわけじゃない。タイミングを完璧に合わせれば、勝つことは十分に可能。それは、サクラバクシンオーにも同じことが言えると判断した。

 

「バクシンバクシーン!委員長はコーナリングも模範的!このまま駆け抜けちゃいますよ~!」

「スピードっ、イカれてる……!」

 

 ゲフリーレンが必死に追いかける。サクラバクシンオーは意に介さず自分の走りを貫いている。ゲフリーレンとサクラバクシンオーの間が──空いた。

 

「ッここだ!」

 

 瞬間、ビワハヤヒデは一気に加速。サクラバクシンオーとゲフリーレンの間を位置取り、ライスシャワーの出所を封じた。

 

(これで抜け出すのに手間ができる。最内はバクシンオー君、真ん中は私、外にはゲフリーレン君だ。抜かすためには大外しかないのではないかね?)

 

 後はこのペースを維持すればライスシャワーは封じたも同然。ビワハヤヒデの方程式は完成する……はずだった。

 

「やや?ハヤヒデさんも来ましたか!では、さらなるバクシンをお見せしましょうッ!」

「……はっ?」

「委員長のバクシンはここからでも発揮できます!バクシンバクシーーンッッ!!」

 

 ここでさらなる加速を見せるサクラバクシンオー。単独で抜け出そうとペースを上げた。

 

「っさせ、るかっ!」

 

 ビワハヤヒデも負けじと競り合う。ここで仕掛けたのには虚を突かれたが、置いていかれるわけにはいかない。なにより、差が開いたらライスシャワーが突っ込んでくる可能性がある。ライスシャワーとサクラバクシンオーの2人を相手取るか、多少のリスクを冒してでもサクラバクシンオー一人を相手にするか。考えるまでもなかった。

 

(だ、が……っ)

 

 問題がある。ビワハヤヒデはついていけても──ゲフリーレンがついていけるかどうかは別問題。3人が競り合うことで壁になるかと思われたが、ゲフリーレンは徐々に引き離されていく。気持ちの問題とかではない、純粋な能力不足。よって、ライスシャワーが抜け出すためのスペースが、できてしまった。

 気づけば第4コーナーも終わり際。最後の直線へ入ろうとしていた。

 

《第4コーナーを回ります、まもなく最後の直線へ入るウマ娘達。先頭はサクラバクシンオー、そしてビワハヤヒデ!ゲフリーレンは少し厳しいか?引き離されていく!》

《後方からはナリタタイシンが上がってきていますね。ナイスネイチャ、マチカネタンホイザも続いていますよ》

《ライスシャワーはっ、ライスシャワーも動いた!ライスシャワーが外へ進路を取る!ゲフリーレンが落ちた穴を埋めるように上がっていくライスシャワー、ビワハヤヒデとサクラバクシンオーに並ぼうとしている!さぁ最後の直線だ、最後の直線、先頭で入ってきたのはサクラバクシンオーとビワハヤヒデの2人だ!》

 

 勝利の方程式は破綻した。ならばと、ビワハヤヒデは次のプランへ切り替える。

 

(このままバクシンオー君と競り合う!ライスシャワー君は多少なりとも外を回ったロスがある、不利なのは変わらない……)

「そんなことを感じさせないほどのっ、プレッシャーか……!」

 

 しかし、外からくる。かつて名優を下した鬼の末脚が、驀進王に土をつけた数少ない鬼神が。

 

「負けない……負けない……!」

 

 ライスシャワーの前に壁はない。彼女の末脚が、炸裂する。

 

 

 

 

 

 

 う~ん、大阪杯と同じでとてもまずい状況ですね!はい、大変まずいですよこれ!

 

(外を陣取られてのよーいどんですか!ライスさんの末脚は知っています。だからこそまずいですね!)

 

 スタミナは十分でしょうし、スピードだって申し分ありません。後は実力がものをいう勝負ですか!

 

「望むところです!勝負と行きましょう!」

「負けるか……このまま、押し通る!」

「勝つ……勝つ……!」

 

 あぁ、それにしても。

 

《最後の直線で並んだ並んだ!ライスシャワーの末脚が炸裂する!後方からはナリタタイシンが飛んできた、マチカネタンホイザも突っ込んできているぞ!後続も追いついてきた、サクラバクシンオーはどうか!?》

 

 熱い、とても熱いですね!みなさんの熱を感じます、勝ちたいという思いを感じます。その熱さが私にも伝わってきて──どうしようもなく渇いてくる。

 

(とても、とても渇きます。強い相手と戦うたびに、自分が窮地に陥る度に。身体の奥からもっと、もっとと。際限なく求めてしまいます!)

 

 ですが、嫌な気分にはなりません。むしろ燃え上がります!この渇きこそが私の原点、どこまでも果てしなく渇望する、スピードを追い求め続ける!

 

《外からライスシャワーか?ライスシャワーか!?ライスシャワーが飛び出そうとしているが!サクラバクシンオー!サクラバクシンオーだ!》

《まだ来ますか!?余力を残していたとでも!?》

《残り200mの競り合い、サクラバクシンオーとライスシャワーが抜け出した!ビワハヤヒデはじわりじわりと引き離されている!い、いやっ、これは!》

 

 私は誰よりも速い!誰よりも速いこのスピードで、誰よりも速くあなたに勝利を!私をこの舞台にまで連れて来てくれた、私の目標を夢物語で終わらせなかったあなたに!この気持ちを、ありがとうを一秒でも早く伝えたい!

 

「委員長の進化はとどまることを知らず!無限に進化し続ける、それこそが模範的な委員長の務めッ!」

《サクラバクシンオーが抜け出した!サクラバクシンオーが単独で抜け出した!サクラはまだ終わらない!阪神にサクラ吹雪が舞っている!サクラの旅路は終わらない!》

 

 私のトレーナーに、最大の感謝を込めて!

 

「さぁ、これこそが──最速無敵のサクラバクシンオーですッッ!!

 

 どこまでもバクシンしましょう!トレーナーさんと一緒なら、私はどこまでも走れるのですからッッ!!

 

 

 

 

 

 

 観客は息をのむ。サクラバクシンオーの強さに驚愕し、その走りに魅了され、気づけば声援を送る。

 

《サクラだサクラだ!まだまだサクラの季節は終わらない!阪神の舞台でサクラが咲き乱れる!鬼神も、鬼脚も、勝利の方程式すら崩して!どこまでも鮮やかに咲き乱れるのは!》

 

 そして、阪神のサクラは──圧倒的なスピードで天皇賞を制した。

 

《サクラバクシンオー!サクラバクシンオーだぁぁぁ!やはり強い、やはり強かったサクラバクシンオー!阪神レース場に舞うサクラ吹雪、サクラの季節は終わらない春二冠!阪神の舞台で満開に咲き乱れたサクラバクシンオー一着ゥゥゥ!》

「バクシン的ッ!勝利ですッ!」

「「「わぁぁぁあああ!!」」」

 

 満面の笑顔で勝利を喜ぶサクラバクシンオー。観客は彼女に声援を送り、勝利を祝福する。敗れたライバル達もまた、悔しさで歯噛みをしつつも拍手を送って健闘を称える。

 そんな中で、ライスシャワーはサクラバクシンオーへと歩を進める。

 

「やっぱり、強いねバクシンオーさんは。ライス、また負けちゃった」

 

 悔しそうに、だがどこか納得したように。ライスシャワーは勝利を祝福する。サクラバクシンオーは、笑顔だった。

 

「ライスさんもよいバクシンでした!次もまた、どこかで走りましょう!」

「っ、うん!その時は負けないよ、バクシンオーさん!」

 

 1着と2着の称え合い。観客は惜しみない拍手を送っていた。

 

 

 その後、キョロキョロと誰かを探すサクラバクシンオー。目的の人物を見つけると、その日一番の笑顔を見せた。

 

「トレーナーさんッッ!!」

「うん、バクシンオー」

 

 目的の人物、高村聖は──微笑んでいる。サクラバクシンオーは、嬉しそうに報告した。

 

「勝ちました!」

「ちゃんと見てたよ。おめでとう、バクシンオー」

 

 簡素なやり取り。このやり取りこそが、彼ららしさなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 あぁ、やっぱりすごいな、バクシンオーは。

 

(どこまでも想像を超えていく。見たことない世界を見せてくれる)

 

 きっと、これからのレースも彼女はバクシンしていく。そのサポートを、しっかりしないとね。

 

「今後も頑張ろうか、バクシンオー」

「はい!トレーナーさんッッ!!」

 

 頑張ろう。これから先も、トレーナーとして。




多分この後春シニア三冠取ってたり安田記念かマイルCSでフーちゃんと戦うバクシンオーがいたりするかもしれない。
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