もしマシュがキャプテン・アメリカのデミサーヴァントだったら 作:きりえらいと
自由と平和と博愛、それらを守る不屈の盾だった。
相手がどんなに強大だろうと、自分がいかに劣勢だろうと決して諦めずに立ち上がり続けた。正義という曖昧で、そして、自由という不確かなものを信じ、そのためだけに戦い続けた。
その姿は見方によっては滑稽で、とても馬鹿馬鹿しいものだった。
だが、その心は、魂はどこまでも美しく、その信念は本物だった。
故に、人も、王も、神すらも、等しく呼ぶのだ。
————キャプテンと。
「起きてください!」
炎に包まれた荒廃した街、1人の少女は叫んでいる。彼女は青を基調としたコスチュームを着ており、星条旗のようなデザインのラウンドシールドを持っている。
「起きてください!先輩!!」
彼女は必死に呼びかける相手は赤毛の少女だ。彼女はひび割れたアスファルトの上で倒れており、その上にリスのような生き物、フォウが乗っておりパチパチと頬を叩いている。
「正式な呼び方をしないとダメなのでしょうか? マスター起きてください!マスター!」
少女は必死である。それもそのはずで、彼女達の周りには骸骨の化け物、スケルトンが無数がいるのだ。スケルトン達は武器を構え、一斉に走り出し、彼女達に襲いかかって来た。
「っ!ハァアアアアア!」
スケルトンの攻撃を盾で受け止め、そのまま押し返し、後ろにいるスケルトンを巻き込んで吹き飛ばした。力任せだが、
「マスター! 」
未だに眠っている少女に語りかける。スケルトンの剣を盾で受け止めて反対の手で殴り飛ばす。本来、彼女にはここまでの戦闘能力は無い、逆上がりも出来ないか弱い少女、それが、彼女、マシュ・キリエライトである。なのに、こんな戦いが出来ているのは、ひとえに彼女の中に眠っていたとある英雄が力を貸してくれたらからに他ならない。
「マスター!起きてください! 起きないと
殺されますよ、の、言い間違いだが、この物騒な言葉でようやく少女は目を覚ました。何が起きたのか把握していないのか、あたりを見渡している。彼女の名前は藤丸立香、どこにでもいる普通の少女である。レイシフトと呼ばれる特殊な技術への適性があったため、カルデアと呼ばれる組織に連れてこられた一般人だ。
「……ここは?……?」
立香は頭を抑えながら、記憶を探る。献血をした結果、何かの適性が高いなど言われ、強引な勧誘を受けた。そして、カルデアと呼ばれる組織に半ば拉致に近い形で連れてこられ、到着後、すぐに実験開始の説明会に参加したのだ。しかし、追い出されて、自室へと案内され、Dr.ロマンと……………。
(……そうだ。)
ふわふわとした記憶はすぐにつながった。
そうだ、司令部が爆発したのだ。せめて何か力になれるのでは?と、思い助けに行ったが、そこでマシュが血塗れで下半身が瓦礫に潰されていて……。
「マシュ!大丈なの?」
そう叫んで立ち上がろうとした瞬間、立香の顔の真横をマシュが投げた盾が通った。額から変な汗を流しつつ、ゆっくりと盾が飛んでいった先を見ると、そこには、マシュの盾により砕かれたスケルトンと、廃墟の壁に突き刺さったマシュの盾があった。
「先輩……。マスター良かった。どこがお怪我はありませんか?腹部が重かったり。お腹が痛かったり……。」
(なんで、そんなお腹ばかり?)
と、マシュの少しズレた発言で立香のパニックになっていた思考は何とか落ち着きを取り戻した。
しかし、落ち着きを取り戻したからこそ、現実が襲いかかった。まずは、炎に包まれた街だ。倒れた標識から日本だと分かるが、知らない場所だ。そして、先ほど襲ってきていた骸骨の化け物。不思議な事に消えてしまっており、常識外の存在であることを示している。
「……だ、大丈夫だけど……。それより……ここは?いや、マシュ?身体は大丈夫なの?」
「……はい、私はこの通り問題ありません。ここは西暦2004年、日本の冬木市に当たります。どうやら、私たちはこの時代にレイシフトしてしまったようです……。」
マシュは真剣に状況を説明してくれる。しかし、立香にはその内容の半分も理解することができない。わかるのは、よく分からないうちに危険な場所にやってきてしまったこと、そして、マシュが無事であったことだけだ。
「……よく分からないけど、マシュが無事で良かった……。けど、その格好は?」
立香はマシュの姿を見て指摘した。見るからにアメリカンな姿で、出会って間もないが、マシュのイメージとかけ離れていたのだった。
しかし、マシュはその問いに答えようとしたが、口ごもってしまった。理由は単純に、魔術の知識が無い相手にどうやって説明すれば良いのかわからなかったからだ。そんなおり、マシュの持っていた通信機が鳴った。
『よかった、2人とも!』
通信機から立体映像が映し出された。そこには、カルデアの医療部門のトップ、ロマニ・アーキマン、通称Dr.ロマンがいた。立香にとって彼はサボり魔、自室に何故かいた男、と、あまり良いイメージは無いが、それでも第三者と連絡が取れる事は喜ばしかった。
『2人ともよく、コフィン無しで意味消失に耐えてくれた』
しかし、喜ばしいのと同時に、2人の会話に着いていけず、自分の知識の無さや戦力外である事が痛感してしまう。だが、分からないなりに2人の会話を聞いて、なんとか自分なりに解釈をしていく。
マシュには
ここは別の時代であること、
マシュはめちゃくちゃ強いこと、
そして、自分が弱点であること、
なんとか、それを立香は噛み砕いて理解した。だが、そんなおり、
『………通信が安定しない。ここから2キロほど離れた霊脈に行ってくれ……』
通信が乱れて切断されてしまった。
まだ何も理解できていない。しかし、それでも立香は自分に出来る事をやろうと意を決した。
「とりあえず、行ってみよう。」
「はい!」
マシュは頷き2人で目的地へと歩き出す。
道中、スケルトン達に襲われたが、マシュの方が圧倒的につよく、問題なく進むことが出来た。だが、その時、女性の悲鳴が響いた。
「キャァアアア! なんで! なんで!」
スケルトンから泣き叫びながら逃げ惑う女性が1人いた。しかし、彼女の放つ攻撃は的確にスケルトンを倒しており、ある程度、安全な距離を保ち続けていた。だが、助けないわけにはいかない。
「マシュ!お願い!」
「はい!」
立香に言われるのとほぼ同時にマシュは駆けた。盾越しに体当たりをして一体を倒し、続いて後ろから来たスケルトンを蹴りで突き飛ばした。スケルトンの方が数は多く有利のはずだが、スペックがあまりにも違いすぎた。みるみるうちに残りのスケルトンは3体となってしまった。3体のスケルトンは弓を構えており、マシュを狙っている。
「ハァアア!」
マシュは盾を投げた。盾はスケルトンに命中して吹き飛ばすとら物理的にはあり得ない反射をして、2体目、3体目のスケルトンを吹き飛ばし、マシュの方へと戻りキャッチした。
「所長!ご無事ですか!」
そう叫びながらマシュが近づくと、女性、カルデア所長、オルガマリーは唖然とした表情となった。
「どういうことよ……?」
その表情はどうして今になってデミサーヴァント実験が成功したことに対するものである。
デミサーヴァントとは人間をサーヴァントにした存在である。サーヴァントとは人間を超える存在である英霊を使い魔とした存在であるが、元が人間を超えた存在、そして、英雄英傑の類であるため扱いが難しい。そこで扱いやすいように人間にその力を与えたのがデミサーヴァントである。
しかし、その実験は失敗に終わり、マシュに与えられた力は目覚めなかった。それが今になって現れた。その謎にオルガマリーは困惑と苛立ちあたえた。しかし、今はそれどころではない。その疑問を頭の片隅に追いやり、今はこの異常事態に集中をする。
まずはマシュの盾を触媒に召喚サークルを設置、それにより、カルデア本部との通信を安定化させることだ。オルガマリーは思考を切り替えて、的確に2人に指示を出して通信を安定化させた。
「シーキューシーキュー、よし、通信が安定した!」
Dr.ロマンの声が聞こえる。彼はオルガマリーの生存に驚き、オルガマリーが彼が指揮をしている事に憤慨した。しかし、医療部のトップでしか無い彼が指揮をしている理由を聞くと、オルガマリーは納得せざるを得なかった。
「レフ教授も含めて、ほとんどのカルデア職員は命を落とした。今残っているのは20人にも未たない」
その言葉にオルガマリーは目に見えて狼狽えた。しかし、それでも所長として考え、Dr.ロマンに指示を出す。その様子を見ながら、立香は現状の危機的状況を再認識した。
レフ教授はカルデアに来て出会った2人目の職員だ。カルデアで沢山の人が亡くなった、その事実は知っていたがそれでも顔を知っている誰かの名前が出たことがなかった。
(レフ教授……。私は……)
親しいわけでは無い。今日会っただけで思い出も何も無い。しかし、知っている人が亡くなった。この事実な立香の心に強く響いた。
(私にも出来ること)
Dr.ロマンやオルガマリーが話していることな難しくて分からないことも多い。特に魔術関係や組織体系のことはほとんど分からない。しかし、それでも何者かに攻撃され、カルデア職員のほとんどが亡くなってしまったことや、自分たちの命も危ないことは分かる。
(もうすでに、私は当事者なんだ)
「この特異点の原因の調査。悪いけど、あなたにももう少し手伝ってもらうわ。」
オルガマリーのその言葉に立香は頷いた。自分に出来ることなら少しでもやりたい。そんな思いで決断した。調査はそれなりに順調に進んだ。調査と言っても調べるのはオルガマリーで、護衛はマシュだ。立香に出来ることはマシュの近くにより、魔力供給の効率のため出来るだけだ。無力感を堪えながら立香はマシュの隣に立ち続けた。
そんな中、突如、カルデアから緊急通信が入った。
「みんな!逃げて! サーヴァントだ!」
Dr.ロマンの悲鳴にも似た声に、3人はすぐに反応出来なかった。そして、最悪なことに、その意味を理解した時には既に遅い。すでに、彼女たちの前には3騎の影があった。
「サーヴァント戦はまだ早い!なんとか離脱するんだ!」
ロマンの悲痛な声に立香は返事が出来なかった。魔術の知識も、戦闘の経験すら無い立香ですら目の前に現れた
(……戦ったら負けるかも。けど……)
逃げられる訳がない。
もしかしたらマシュ1人なら逃げられるかもしれないと、立香は考える。自分というお荷物さえいなければ、盾を捨てて全力で走れば、どうにかなる可能性はある。しかし、マシュがそんなことをしないことは彼女だって分かっている。
だから、
「マシュ!お願い!」
そう叫び、魔術の準備する。
彼女が着ている服は魔術礼装である。この服に組み込まれた術であれは、知識のない彼女でもなんとか使用する事ができた。
「はい!」
マシュは飛び出し、右手で構えたラウンドシールドで殴る。しかし、それはいとも簡単に防がれる。身を引き、蹴りを入れようとした瞬間、背後から別のシャドウサーヴァントが攻める。寸前でかわす。
(戦い方が上手い!)
今までマシュは存在の差、性能の違いでスケルトン達を倒してきていた。しかし、目の前にいるのはマシュと引けを取らない存在である。今まで上からゴリ押ししていたマシュには荷が重い。
「マシュ! 身体強化!」
立香は礼装を使用し、マシュの援護をする。しかし、それでも焼け石に水だ。そもそも、マシュは護るべきものがある。多少の援護はあるが、後ろにいる2人の存在は今の戦いにおいて圧倒的な枷、足手纏いでしかない。
「ーーーー!」
声にならない声を上げ、マシュは吹き飛ばされた。2転3転したのち、顔を上げる。そこにはサーヴァントの影が真っ直ぐ、マシュを見て、釘のようなものがついた鎖を構える。
(私が、負けたら……。)
心を奮い立たせ、立ち上がり、盾を構え直す。
「——-まだ、やれます!!」
その時、
「
炎の球が、影めがけて放たれた。
続いて、1人の
「はっ、やるじゃねぇか嬢ちゃん。俺はキャスターのサーヴァントだ。故あって助太刀するぜ」
その後は圧倒的だった。
3対2とはいえキャスターの存在は大きく、あっという間に影を撃退してしまった。
『つまり、あなたは、この街で起きた聖杯戦争のサーヴァントであり、唯一の生存者なのですね』
そこから始まるのは情報交換である。キャスターが言うには、この聖杯戦争は別のものに
「ああ、目的は一致している」
「手を組むということね。お互いにセイバーを倒したいけれど戦力が足りない。ええ、合理的ね。」
キャスターの言葉にオルガマリーは頷いた。
その後は休憩を挟みながら、セイバーのいる洞窟を目指した。その途中、キャスターはあることを言った。
「お前さん、宝具使えねぇのか?」
宝具、それはサーヴァントの切り札である。強力だったり、微妙だったりする、そのサーヴァントそのものと言っても良いものだ。
マシュはこれを使えない。理由はマシュが自分に力を与えたサーヴァントを知らないからである。その存在が何を思い、どう戦ったのか、それが分からないから使う事ができない、と、マシュが答えると、キャスターは首を横に振る。
曰く、サーヴァントと宝具は同じモノなのだから、サーヴァントになった時点で宝具は使えるはずである。とのことだ。
そして、
「だから、今からお前のマスターを殺す。嫌なら宝具を使って止めてみろ。」
サーヴァントもマスターは一蓮托生、マシュの問題は立香の問題だ。そんな論理は強引すぎると、オルガマリーは止めようとするが、しかし、キャスターはお構いなしに杖を槍のように構え、突きを放った。
「マシュ!」
そこから始まるのは、影との闘いとの比ではない。本物のサーヴァント戦だ。キャスターが繰り出す様々な技がマシュを翻弄する。マシュをも上回る接近戦、そして、それを避けても放たれる
マシュは攻撃を受けるたびに少しずつ後退していく、そんな彼女を見て、立香は魔術を行使しようとする。しかし、2人の動きが早すぎる。
(マシュ……。私は……)
彼女はまだ、礼装に慣れていない。と言うよりも魔術を使うどころか存在を知ったのも今日が初めてだ。そんな簡単に使えるわけがない。下手に援護をすればマシュの邪魔になるし、パスが繋がっているとはいえ、動き回る相手に魔術を使うなんてことは今の立香には出来ない。
自分の情け無さ、ここに来てずっと感じていた。守られ、そして、何もできない。礼装での援護なんて強敵との戦いでは全く役に立っていない。その申し訳なさから、つい、マシュから視線を逸らしてしまった。
「目を逸らさない! いい? マシュは今、あなたのために戦っているのよ? マスターなら自分のサーヴァントをしっかり見なさい!」
「————-っ!」
その言葉にハッとした。マシュは自分達のために、守るために戦ってくれているのだ。ならば、目を逸らす訳にはいかない。今、目の前で起きていることを、見届ける事がせめてもの責任だ。
「さぁ!これで仕上げだ!もろとも燃え尽きな!!
」
そして、現れるのは木の巨人。炎に包まれたソレは、全てを焼き尽くさようにマシュに、いや、立香に迫る。マシュはソレを見て、立香を守るように盾を構える。
「今だけでいい……。偽物でもいいから……。せめて……!」
マシュは叫びながら盾を構える。すると、盾が輝き白い五芒星が出現した。そして、その星を中心に青い色の円盤状のの結界が構築され、木の巨人を受け止めた。
「ぁああああああ!」
マシュの叫びを聴きながら、立香はマシュの背中を見てるだけしか出来なかった。震えながらも立ち向かうその姿は、とても頼もしくて、眩しかった。
「……止めた?」
何はともあれ、マシュは擬似的にではあるが宝具を使う事が出来るようになった。オルガマリーの考えでマシュの擬似宝具は「
そして、一行はこの街の聖杯を目指して移動を再開させた。
◆
カルデア一行は聖杯があるという、冬木市 円蔵山中腹にある洞窟に辿り着いた。天然半分、人工半分といったこの洞窟は意外にも歩きやすく、怪物さえでなければスラスラと進む事が出来た。
しかし、途中でアーチャーのシャドウサーヴァントと戦闘になってしまった。キャスターはアーチャーとは少なからず因縁があるのか、1人で足止めをしてカルデアを先に行かせた。
「これが聖杯? 超抜級の魔力炉心じゃない……」
地下洞窟にあったのは巨大な魔力炉心だった。記録によればアインツベルンと呼ばれるホムンクルスだけの一族が造ったとされている。そしてその前に1人立っている存在がいた。
「…………。」
彼女は無言でカルデア一行を見ていた。
「……
キャスターから伝えられていたセイバーの真名を思い出して、
華奢な身体、10代半ばから後半のような容姿、そして、あまりにも冷たい目線。どれも誰もが想像する騎士王とは程遠い。
『史実では男装してたんじゃ無いかな? お家事情とかで。あの性格の悪い宮廷魔術師が考えそうなことだ。それより、油断しないで、サーヴァントの能力は見た目では分からない。』
Dr.ロマンの言葉にマシュが頷いた。その時、ぴくり共動かなかったアーサー王が口を開いた。
「その盾、この世界のものでは無いな。面白い。その異物が状況をどう変化させるのか……。見てやろう。」
その言葉と共にアーサー王は聖剣を振り上げた。
瞬間、空間を支配する魔力の奔流を感じた。全てを飲み込むような膨大な魔力。その中心にあるのは、アーサー王の聖剣。人々の夢の結晶、願いから生まれたノウブル・ファンタズムだ。
「下がって下さい!!」
マシュは慌てて前に出る。
この場でマスターと所長を守れるのは自分だけしかいない。その思い、プレッシャーを跳ね除け、盾を構える。
「
聖剣が振り下ろされる。
「
それに合わせ、マシュも仮初の宝具を放つ。
「
「
マシュ達を襲う膨大な魔力は、展開された結界によって遮られた。しかし、拮抗したのは一瞬だけだった。すぐに星にはヒビが入り、砕けそうになる。
(だめ、このままだと……。)
折れそうになる心で、マシュは必死に盾を構えた。
その背中を見て立香は不思議と走り出していた。
(行っても私には何も出来ない。)
当たり前だ。自分には力がない。魔術も扱えなければ肉体も強くない。どこにでもいる一般人、それが彼女だ。
(けど、だからと言って、何もしないで、いいわけがない!)
「マシュ!! 私も!いるから!」
マシュの元に駆け寄り、盾を構える手に自分の手を添えた。何か出来るわけではない。しかし、せめて、近くにいよう。最後まで共に戦おう、そう思ったのだ。
そして、その想いは無意識のうちに令呪を発動させ、マシュの背中を支えた。結界は広がり赤と白のストライプ柄が追加された。
「ありがとうございます。先輩、これで私は、まだ、やれます!!」
この時、マシュから溢れ出す魔力は令呪によるブーストを超えた。
結界はスパークし、まるで雷を纏っているかのようになる。
今にも聖剣により吹き飛ばされそうな身体は、足の
「ァアアアア!!!」
マシュは叫ぶ。
今までにないくらい必死だからか、マシュの理性は今にもなくなりそうだった。生まれてから初めて感じる想いが沸々と湧き上がる。しかし、それはマシュの心の中には外側にあり、マシュを支えてくれているかのようだ。
「ーーーーーーー!」
マシュの声にならない叫びを上げ、力任せに盾を振るい聖剣の斬撃を
「——-ッ」
土煙の中、怪しく光る緑の瞳がアーサー王を見ていた。その持ち主は力任せに盾を振り上げだ。青をベースにしていたコスチュームは右腕の部分だけ赤い鎧に包まれた。
そして、雷と共に盾を力任せに投げた。
(くっ、間に合わない)
回避したたとは言え、元を辿れば聖剣の斬撃だ。余波だけでもかなりの威力で、それをかわしたのだ。アーサー王とはいえ大きく体勢を崩している。さらに宝具使用の直後ということもあり、アーサー王の身体は一瞬硬直してしまった。
雷を纏った盾が迫る。聖剣を防いだ結界を纏い輝いている。あの宝具は投擲武器としての側面も持つようだ。
「ッ!」
盾がアーサー王の胸部に命中、そのまま彼女は洞窟の壁へと吹き飛ばされていった。盾は跳ね返り肩で息をするマシュの足元へと突き刺さった。
「そうか、どう足掻こうが、同じ結末を迎えるのか……。いや……。お前たちもいつか思い知る事になる。グランドオーダー、聖杯を巡る戦いは始まったばかりだ。」
アーサー王の声が小さく響く。しかし、土煙が晴れる頃には彼女は消滅してしまっていた。グランドオーダー、彼女が残した言葉の意味は分からないが、しかし、これで聖杯は手に入れ、無事に任務は完了した。
(………どうにかなった……。)
立香は深く息を吐いた。「任務完了だ」というDr.ロマンからの通信で一気に緊張の糸が途切れた。そして、肩で息をしているマシュに声をかけようとした時、男の声が響いた。
「まさか君達がここまでやるとはね。」
そこに現れたのは、死んだはずの人物、レフ・ライノールだった。カルデアの爆発、それに巻き込まれて彼は死んだはずだ。それなのにこの場にいた。
(もしかして、私たちと同じように……。)
立香は自分たちと同じように爆発の際に、レイシフトしてしまったのでは?と思った。彼女は現場の状態には詳しく無いし、魔術の知識もない、故の簡単な推察だ。しかし、レフが放つ次の言葉全てを打ち壊した。
「その声は……。ロマニも生き残ってしまったのか。すぐに管制室に来て欲しいと言ったのに。時間通りにコフィンに入らなかった魔術師といい、どいつもこいつも統率の取れていないクズばかりで吐き気が止まらない!」
見開いた目から溢れんばかりの侮辱、敵意が見てとれた。目の前にいる存在は決して味方などではない。誰しもがそう理解した。
「………下がってください!あの人は、わたしたちの知っているレフ教授では……。」
マシュも盾を構え直す。しかし、盾を持つだけで全身が悲鳴をあげていた。霊基も、肉体も、全てがボロボロで彼女はすでに戦える状態ではない。それでも、戦えるのは自分だけだと、守りたい、と、思い盾を構える。
しかし、そんなマシュの想いを裏切るかのように所長が走り出した。
「レフ、レフ! 生きていたのねレフ! よかった、あなたがいれば!」
彼女は限界だった。いや、とうの昔に限界なんて超えていた。そんな時に起きたのが今回の事件だ。責任、重圧、プレッシャー、どこまでも真面目な彼女だからこそ、まともな判断が出来るわけがなかった。
助けてくれる。この場で信じられる人を欲していたのだ。
「所長! 戻って!」
立香は所長を追おうと動いた。しかし、マシュが腕を掴んで止めた。
「ダメです! 先輩、危険すぎます!」
レフは危険だ。アレはまともな存在ではない。そう判断できるほど、その雰囲気は恐ろしかった。
「本当に、予想外だよ。爆弾は君の足下に設置したのに……」
そして、レフは自白を始めた。
彼が爆弾を設置したこと、
所長はすでに死んでいること、
そして、地球の未来を示すカルデアスが真っ赤になっていること、
その全てが所長にとって絶望的で、恐ろしいどころの話では無かった。
「なら最後に君の望みを叶えてあげよう。君の宝物に触れると良い!」
空間を繋げ、出現したカルデアス。
所長の身体は宙に浮き、そこに吸い込まれるようにゆっくりと移動し始めた。
「やめて!あれはカルデアスなのよ。高密度の情報体、次元の異なる領域なのよ!」
そう、それはブラックホールのようなものだ。触れれば一瞬で砕けて無限の死を味わう事になる。そんなこと、レフも分かっている。分かった上で笑っていた。
「いや、いや、助けて、誰か助けて!」
泣き叫ぶ声が響く。
「————-っ!」
マシュは盾を構えて、レフに向けて投げようと振りかぶった。
瞬間、肩が、足が、いや、全身が警笛を鳴らし、膝から崩れ落ちた。
「あっああああ!」
マシュの今にも泣きそうな悲鳴が響いた。
「マシュ………。無理をしないほうがいい。あのアーサー王を正面から撃退したばかりなんだ。戦える状態じゃない。今はゆっくり休むべきだ。」
事実だ。
すでにマシュはボロボロだ。体力も魔力も底をつき、無理して動かした筋繊維はズタボロだ。目はかすみ、今にも意識はなくなりそうなほど疲れ切っている。
「マシュ! ど、どうしたら……。」
倒れたマシュに駆け寄る立香。そんな2人を嘲笑うように、レフは所長をカルデアスへと沈めていった。所長の悲鳴が、恐怖に歪む顔が2人の脳裏に焼き付いていた。
「そんな……。」
「所長……。」
悲鳴が聴こえなくなる。オルガマリーは完全にカルデアスに沈み、見えなくなってしまっめいた。絶望する2人を見てレフは嗤った。
「改めて自己紹介をしよう。私はレフ・ライノール・フラウロス。人類を処理するための、2015年担当者だ。」
人をひとり殺した。何年も共に過ごした人を殺したのだ。しかし、その事について何も思わないのか、当たり前のように言葉を続けた。
「聞いているか?ロマニ・アーキマン。学友として忠告してやろう。カルデアは用済みだ。お前達人類はこの時点で滅んでいる。」
既に手遅れだと。人類史は焼却され、カルデアはもう、意味がないことなのだと言う。その言葉にはきっと嘘はないのだろう。
「私も鬼じゃない、最後の祈りくらいは許容しよう。」
そう言うとレフは姿を消した。しかし、洞窟の揺れが大きくなる。空間が崩壊しようとしているのだ。Dr.ロマンもどうにかしようとしているが間に合わない可能性が高い。
「先輩!手を!」
「マシュ!」
2人はしっかりと手を握り、崩壊する空間に耐え、カルデアへと帰還した。
こうして、聖杯を巡る戦い、
マシュとキャプテンの共通点
・カルデア(アメリカ)のケツ
・オ(雄)ッパイ
・アッセンブル
キャプテンアメリカの宝具
『
ランクB
結界宝具
レンジ???
キャプテンが持つ第一宝具。
詳細は不明、
マシュの扱う
『
ランクEX
召喚宝具
レンジ???
キャプテンが持つ第二宝具。詳細は不明だが、読みの方の文字数でだいたい想像できると思う。
デミサーヴァントとなったことで変質してしまっている。
次回から第六特異点になります。
特異点Fは超駆け足でしたが、次からはちゃんと書きます。
また、一から五はスキップしまく。とはいえ、ブーディカさんがちょっとそっけなくて、エジソンのマシュへの好感度が高めからスタートするくらいで大して変わらないです
第六特異点
鉄鎧平和領域エルサレムウルトロン
〜受け継がれし鉄の意志〜