転生したら【 暗 黒 破 壊 龍 ジ ェ ノ サ イ ド ・ ド ラ ゴ ン 】だった件   作:馬路まんじ……?

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4:新人ちゃんたちと俺と脳みそ壊れた新人くん

 

 冒険者のメインの仕事は『狩り』だ。

 

 

 当たり前だよなぁ。

 元々は“魔物を狩って未開の土地を切り拓いていく者たち”を指す名称だったんだから。

 

 

 だけど今はちょっと違う。

 どっかの『恥ずかしい名前のドラゴン』が調子こいて暴れた結果、人類はかなりの余裕を得た。

 

 そのおかげで若者をじっくり育てる余裕も出来たわけで、

 

 

「ほーれお前らへばるな。もっと打ち込んでこい」

 

「「「ジェイド先輩、地味につえぇ……!」」」

 

「地味にってなんだ」

 

 

 冒険者ギルド脇の訓練場にて。

 俺は三人の若者パーティを相手に『戦闘訓練』を行っていた。

 駆け出しほやほやの五級冒険者たちだ。

 

 

「簡単にへばるな。心を鍛えておけ。『スキル』の使用にも精神力を消費するからな」

 

「ひぃ、先輩厳しいっスよ……! 会った時にはご飯とか奢ってくれたのに……」

 

「関係あるか」

 

 

 これもギルドからの正式な仕事だ。

 

 たとえこの三人パーティ『未知の光』が田舎からの駆け出しで、訓練前にたまたま出会って奢ってやったり世話してやった仲だからって、それで手を抜くヤツがいるかよ。

 

 

「じゃあ最後に一人ずつ復習していくぞ。ほい、剣士のエイジ、こい」

 

「お、おうっス!」

 

 

 ともかく今は若者を育てる余裕が出来た。

 強い魔物も壊滅状態になったことで、死亡率はググググッと落ちたそうだ。

 無駄に暴れた甲斐はあったな。

 

 

「うおおッ! 万年三級野郎に負けてられるかァッ!」

 

 

 と、剣士くんが正眼で打ち込んできた。

 こっちも集中しないとな。

 

 

「剣には剣で相手してやる」

 

 

 スキル発動≪収納空間(アイテムボックス)≫、解放。

 

 手元に訓練用の木刀を具現する。

 

 

「からのほいっと」

 

 

 高速の横薙ぎ。

 それが見事に脇腹にヒットして、

 

 

「うぎゃあ!?」

 

 

 剣士くんはあえなくダウンした。

 南無。

 

 

「うぅ……防ぐことも出来なかった……」

 

 

 対処できなくて当たり前だ。

 

 

「正眼による突撃は速く鋭く攻撃できるが防御に欠ける。特に横下方向には剣を動かしづらくなるしな。馬鹿正直にやったら死ぬぞ」

 

「はひぃ……」

 

 

 とアドバイスするのも束の間。

 今度は横合いから槍使いのヴィータが突っ込んできた。

 

 

「おりゃ喰らえぇっ!」

 

「奇襲か、いいぞ。魔物との戦いにルールなんてないからな」

 

 

 だが甘い。

 俺は今度は訓練用の木槍を顕現。

 

 その『柄の下部』を握って突き出すだけでハイ終わりだ。

 

 

「おらよ」

 

 

 ヴィータは勢いそのままに、俺の槍先に腹を突かれることになった。

 

 

「ぐぇえ~~!?」

 

「槍の魅力は何より『リーチ』だ。だが逆に言えば、もっとリーチのある相手には工夫しなきゃ無力ってことだよ。それこそ奇襲かまそうが、矛先を『置かれる』だけで対処されちまう」

 

 

 今見事にカウンターを食らったみたいにな。

 

 今回はお互いにギルド支給の同じ長さの槍を使ってたが、その場合でも持ち方を変えればこの通りだ。

 二度と油断するなよ。

 

 

「さて最後は」

 

 

 首を傾ける。

 すると頭の横を高速の矢が駆け抜けていった。

 

 頭のヒヨコさんが『ピギャー!?』と悲鳴を上げた。

 

 

「弓使いのシーラが相手だな」

 

「ちっ、外した……! てかなんで頭にヒヨコ飼ってるの……!?」

 

「かくかくしかじかだ」

 

 

 この子も奇襲を仕掛けてきたか。

 しかもエイジとヴィータがやられてる間にしれっと遠くに移動していた。

 弓使いの距離だな。

 

 

「ナイスポジショニング。弓使いは冷静でなきゃな」

 

 

 ちなみに彼女とヴィータは女の子だったりする。

 エイジくんモテるんだなぁ。

 

 

「じゃあ最後は遠距離対決と行くか」

 

 

 スキル発動≪収納空間(アイテムボックス)≫、解放。

 

 そこから訓練用の弓矢を取り出すと、向こうは目を丸くしてきた。

 

 

「……流石は『マルチウェポンのジェイド』と呼ばれる先輩。マジでどんな武器でも使ってくるんですね」

 

「小器用なだけだ。その道の達人の腕には及ばんよ」

 

 

 実際、俺の邪龍ボディが優秀なだけである。

 

 まず動体視力やらがすごいからな。

 まるで止まった空間にいるようなものだ。

 おかげで彼らの繰り出す剣や槍をじっくり見極め、冷静に対処することが出来た。

 

 

「さて、遠距離対決のコツは簡単だ。相手より速く攻撃をして当てればいい」

 

「だったらッ」

 

 

 矢をつがえんとするシータちゃん。

 でも、

 

 

「『弓対決』なんて誰が言ったよ?」

 

 

 持ったままだった槍を投擲。

 彼女の腹にずごっと当たり、一撃で沈めるのだった。

 

 

「放つだけなら投げ槍のほうが速い。ほい、これでお前ら全滅だ」

 

「おえぇぇえ……っ!? うぅっ……!」

 

 

 えずきながらシータちゃんがこちらを見上げてくる。

 

 

「ジェ……ジェイド先輩、ずるくないですぅ……?」

 

「いや言っただろ?」

 

 

 魔物(おれ)との戦いに、ルールなんてないってな。

 

 

 

 

◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 オレの名はエイジ!

 

 いつか英雄譚のごとき偉業をなすべく冒険者になった男だ!

 

 ありがたいことに村の幼馴染二人もついてきてくれた。

 

 

『しょーがないから力を貸してやるよ!』

『アナタ一人だと不安ですからね』

 

 

 元気っ娘のヴィータに、クールなシーラ。

 

 

 共に頼れる仲間であり、守るべき大切な女の子たちだ。

 明らかにオレに好意があるな。

 

 よしやってやる。

 彼女たちにふさわしい男になろう。

 

 

 そんな誓いを胸に、冒険者パーティ『未知の光』を組んで活動を始めた、のだが、

 

 

「――はい、訓練終わり。復習したけりゃ俺に言いに来いよ」

 

「「「あ、ありがとうございましたぁ……!」」」

 

 

 ……万年三級と呼ばれる先輩にボコボコにされてしまった。

 

 

 お、おかしい。

 物語の英雄たちは、駆け出しのころから周囲に実力を示したり、秘められた才能に覚醒してるものなんだが……!

 

 それと……、

 

 

「ふ、二人とも大丈夫か!? ……ジェイド先輩、本当に容赦がなかったな。女の子のキミたちまでボコボコにしてきて」

 

 

 気弱そうな大人だと思ってたのに驚きだ。

 

 先日たまたま見かけたが、小さな双子に馬鹿にされっぱなしで苦笑してたような人なのに。

 

 

「女の子を傷付けるなんて何考えてるんだが。二人とも、もしかしたらあの人怖い人かもしれないから」

 

 

 だから関わらないほうが、と言おうとした時だ。

 

 

 ヴィータとシーラは揃って、

 

 

「「悪くないかも……」」

 

 

 と呟いた。

 

 

 えっ、ん!?

 

 

「わ、悪くないって何が!?」

 

「いやその、最初は気弱そうな人だと思ってたけど。でも稽古してみたら明らかに強くて、何より真剣に激しくやってくれてさ……」

 

 

 ヴィータ!?

 思いっきりお腹を突かれたのに何言ってるんだ!?

 

 

「ですね……。訓練が始まるや冷めた目になって、容赦なく屈服されちゃって……。何をしても通じず、まるでヒトじゃない『上位種』を相手にしてるみたいな……」

 

 

 シーラ!?

 突かれたお腹をなに(さす)って微笑んでるんだ!?

 なんで二人ともちょっと顔を赤らめてるんだ!?

 

 

「「大人の男の人って、すごいかも……!」」

 

「ふ、二人ともぉ!?」

 

 

 い、痛い!

 なんか脳が壊れるような、未知の痛みがするんだがーー!?

 

 

 





【今回の登場人物】

俺:気は良いがあまりパッとしないと思われてた先輩。実力は隠してるが、ヘタな指導で死なれると嫌なので教えはしっかりするタイプ。

ヴィータ:新人。女。胸がでかい。がさつ。

シーラ:新人。女。胸はふつう。クール。

エイジくん:ティンタ村出身の15歳。社会というものを知らないがゆえに根拠のない自信を持った男の子。小麦色の髪にちょっと童顔で中性的な顔立ちが特徴。腰付きもくびれが現れるほどに細く、服が靡くたびに見える若々しい肌のきらめきは、見る者によって艶めきさえも感じるものだと無垢な彼はまだ知らない。
村にいたころは同世代の悪ガキたちからは「エーちゃーん」と呼ばれてたまにからかわれていた。その反動か英雄譚に憧れるようになり、自身も強力な魔物を討ち取って詩人に謳われる存在になるべく冒険者になった経緯を持つ。なお幼少期には病状だった時期があり、今も身体は細いほう。それゆえ村にいたときは男同士の遊びに体力が追い付かないことがあり、それを見かねたヴィータとシーラが盤上遊びに誘ってあげたことで幼馴染となった。
エイジは二人を「もしかして自分に惚れてる!?」と思っているが、二人にとって実はエイジは「弟みたいな存在」。それどころか背も低い彼に対してはたまに「出来の悪い妹」とすら思っている。
そうとは知らず、二人を引き連れて意気揚々と都市にやってきたエイジ。
そこでお人よしながらもどこか枯れた雰囲気の先輩三級冒険者・ジェイドと知り合い、その男を親切と思いながらも内心見下すのだった。
それゆえ自信ありげに模擬戦を挑むも、攻撃が一切かすりもせずに敗北。
軟弱な身体つきゆえ真っ先に倒れてしまったエイジが見たのは、男の服の下から覗く鋼の筋肉と、温厚な眼差しの奥に潜む冷たい瞳。
そして、男に対して見たこともない顔をする幼馴染たちで――!(以下略)


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